第4研究室 創作に関するQ&A 162P | トップへ戻る |
瑞希さんからの質問
 「〜た」と「〜る」の使い分けについて
 
 これについて、今私は物凄く悩んでいます。
 どういうことかと言うと、
 例えば、「私は昨日勉強をした」は過去の文なので、語尾は「〜た」になります。
 次に、「私は勉強する」は現在の文なので、語尾は「〜る」となります。
 それ位は私も知ってるのですが、どうしても使い分けにハテナマークが浮かぶときがあります。
 例として、片山憲太郎先生の書いた、「電波的な彼女」を挙げます。

> そう言って、美夜はいつの間にかジュウの弁当から取り上げたタクアンをポリポリと齧った。
> こいつも、雨とは別の意味でわけのわからん奴だ、とジュウは思う。


 上の二文は「電波的な彼女」に出てくる文を引用したものです。
 この2つの文はどちらも現在の物です。
 なのに、「齧った」の部分は「〜た」で、「思う」の部分が「〜る」というのはどういうことでしょか?

 これ以外にも、プロの書かれたラノベには「〜た」と「〜る」が混同される文が見受けられます。
 どのようにして使い分ければよいのでしょうか?
 よろしくお願いします。


● 答え ●

ぺーさんの意見
 「た」にするか? それとも「る」にするか?
 これ、悩むんですよねぇ。
 自分も「た」と書いて、いや待てよ。「る」の方がリズムがいいか、と書き直し、
 でもやっぱりなぁと「た」に直す。ってことを繰り返します。

 リズムの問題は
 「迷ったら、音読して耳で確かめる」
 が確実じゃないでしょうか。


 それで、すっきり聞ける方を選ぶといいと思います。
 一応、目安として

 過去形対現在形 が 四対一 ぐらいがちょうど読みやすい。
 動作を過去形、状態を現在系にするといいバランスになる。


 等と言われます。ただ、あくまで目安ですのでこの通り書けば完璧と言うものでは有りません。
 音読して見るなど自分で調整して下さい。


永久本さんの意見
 こんばんは、永久本です。
 自分も文法的な用法はあまり詳しくないのですが、使い方のイメージならばありますので、
 それをちょっとお教えします。
(自分限定かもしれませんが……)

 まず、小説とは漫画や映像作品と違って、視覚的なイメージはありません。
 読者が想像していくものです。
 映画でドラゴンが登場した時、映像で見れば迫力満点な火を吹く竜が登場する訳ですが、
 文章ではそうはいきません。
 小説でドラゴンを表現する場合、「刃も通らない赤い鱗」「馬を一飲み出来るほど大きい口」
 「鳥よりも速く飛べる大きな翼」などなど、
 キーワードを組み込んで読者の想像を誘導してあげるわけですね。

 このように、小説は作者が明確なイメージを持ち、それを読者さんに伝えるための文章を書きます。
 自分の場合、この時の頭の中では、文章構築と平行してアニメーションが作られています。

 バナナの皮につまづく。
 転ぶ。
 持っていたものが飛ぶ。

 といった文章があるとします。
 この場合、文章ではその通りの意味やイメージしか通じませんが、
 自分の頭では、映像のように絶え間なく展開が分かるのです。

(お分かりいただけますでしょうか。シチュエーションを熟考したことのある方なら、
 大分「映像化」の感じが伝わると思うのですが)

 それでですね、その映像の何処を表現するか、というのが問題になります。
 「バナナの皮につまづいた」だと、読者に伝わるイメージは、
 バナナの皮で滑ってすでに転びかけている図です。
 「バナナの皮につまづく」の場合は、歩いていてバナナの皮を踏んだ瞬間がイメージされます。
 同様に、
 「転ぶ」→バランスを崩して転倒する瞬間
 「転んだ」→転んで地面に転がっている図
 という風に読者に伝わるのです。

 ですから、「〜た」と「〜る」は、どのシーンを読者にイメージさせたいかというのに使うわけですね。

 アクションにしても、
 「切りつける」→振りかぶって振り下ろすシーン
 「切りつけた」→振り下ろし終わっているシーン
 となります。

 自分が「切りつける瞬間をイメージさせたい!」と思ったら、
 「切りつける」にすると良いということですね。


 他に「文章のリズム」という重要な物もあります。
「僕はバナナの皮を踏む。思い切り転ぶ。まともに頭を打つ。かなり痛い。ゆっくりと起き上がる」
 とするより、
「僕はバナナの皮を踏んだ。思い切り転ぶ。まともに頭を打ってしまった。
 かなり痛い。ゆっくりと起き上がる」
 とした方が、リズム感があって読みやすいんですね。

 長々と駄文を書きましたが、こういったことは書いて読んで勉強すると、自然と身に付きます。
 ひたすら書きまくって理解してみてくださいね。

 なんとも抽象的かつ意味の通じにくい文章、失礼しました。
 それでは〜。
 

ディディさんの意見
 どうもこんばんは。
 外部リンクになりますが、『モノ書き一里塚』
 http://www.asahi-net.or.jp/~mi9t-mttn/cstory/write06.html
 に記述がありますので、ご覧になってみれば良いのではないでしょうか。
 文章作法や小説の書き方についてはこのサイトだけでなく、
 いくつかのサイトをご参考になさって勉強したほうが迷いがなくなると思います。


日路さんの意見
 こんにちは、日路です。

 「〜た」と「〜る」は交互に使うことが多いです。
 これは別に時制を混同しているわけではなく、リズムを良くするためです。


 そもそも「た」は過去だけでなく完了も表す助動詞なので、
 最後が「た」でも過去時制とは限りません。
 「〜た」の文が延々続く、あるいは、「〜る」の文が延々続く、
 というのは読み下した時にちょっとひっかかりますね。小学生の作文のようで。
 ただし、現在形を多用することで戦闘時のスピード感を表すなど、
 あえて「〜る」系の文を重ねることもあります。
 使い分けは日本語のセンスの問題のような気もしますが、
 読み下してみて違和感がなければだいたい大丈夫だと思います。


みつきさんの意見
 瑞希さま、はじめまして。
 日本語には、英語のような形での現在形や過去形は存在しないということをまず最初に。

 ですから、日本語の決まりとして、文の最初のほうに時期を示しておけば、
 (たとえば、過去の話をするのなら『三年前のあの日の出来事だった』とか、最初に提示しておく)、
 その後の文章では、過去の話をしていても『〜る。』で文章を終わらせてしまって、
 全然問題なかったりします。
 また、いま現在の話をしていても、『〜た。』と『〜る。』
 を入り混ぜて文章を書いていって全然構わないんですよね。

 で。確かに、基本的には『〜る。』は継続しているということを、『〜た。』 は、
 完了していることを表しています。

 ですが、それにプラスして、『〜た。』には観測者から空間的に“少しだけ”離れたところで
 行われていることを表したりもします。


> タクアンをポリポリと齧った。

 というのも、完了として使われているのではなく、
 視点者から見て『少しだけ離れているところ』で行われていること、
 というふうに読むほうが自然ですよね。
 ただ、ちょっと難しいのは、その“少しだけ”が、
 時と場所と本人感覚によってまちまちだということでしょうか。
 ……分かりづらかったらすいません(^^;。

 それではこれにて、失礼させていただきますね。


しきさんの意見
 こんにちは、瑞希さん。私、しきがご質問にお答えします。
 さて、「〜た」と「〜る」の使い分けについての質問でありますが、
 これについては日本語学でも大きな問題として取り上げられており、
 多くの学者がこれについて研究をしております。
 学説について、ここに書いても書ききれない上に理解もしがたいと思うので。
 私流に大雑把に申し上げておきます。
 
 日本語には現在、過去、未来といった厳密な時制が存在しません。
 非常に簡単な分け方をすれば、日本語に存在するのは完了形と未完了形だけだと思ってください。


 また、日本語における視点はかなり流動的で、
 例えば小説においてはそれが顕著にあらわれます。
 代表的な視点でいえば、その文がいままさに小説を書いているときを視点にしているのか、
 あるいはその文が登場人物のいま現在の状態を視点にしているのかです。

> そう言って、美夜はいつの間にかジュウの弁当から取り上げたタクアンをポリポリと齧った。
> こいつも、雨とは別の意味でわけのわからん奴だ、とジュウは思う。

 この文でありますが、前者は筆者が小説を書いている時点から「過去」のことを述べております。
 後者は、いままさに読んでいるこの文を「現在」として、
 つまりは小説の臨場的時間におけるジュウを視点として「現在」のことを述べているのです。
(つまり、いまジュウが行なっている動作は完了しておらず、
 ジュウの眼の前で動作「思う」が進行している)。

 要は英語で使う時制の論理で考えるからいけないのです。
 日本語において時制は「完了」「未完了」のみと考え、
 どの時点からその動作が完了・未完了となっているのかを考えてみて
 「〜た」「〜る」を使ってみてください。
 長文末筆で失礼いたしました。参考にしていただければ幸いです。


峰しずくさんの意見
 こんにちは。
 参考になるかどうか……。
 私もそれは悩みましたが、
 結論として「どっちでもいっしょ。どっちでもかまわない」ということにしました。

 むしろ、日本語のリズムとして、散文の場合は、
 「同じ語尾が続くと読みにくい」ということの方を私は重要視しています。


「朝食を食べた。そして、歯を磨いた。靴紐が切れていることを思い出した。だから交換した」
 
 とすると、いかにも一本調子です。これを以下のように変更するとリズムが良くなります。

「朝食を食べる。そして、歯を磨いた。靴紐が切れていることを思い出す。だから交換した」

 もし、「〜た」でないとダメ、ということでしたら。

「朝食を食べた。まずい。自分で作るのはもうやめておこう。そして、歯を磨いた。
 そうだ、靴紐が切れていたっけ。交換しなくちゃ」

 などと、文章そのものを変えてやります。
 こうすると、語尾が「た」「い」「う」「た」「け」「ちゃ」となり、とても読みやすくなります。
 あえて同じ語尾が続く(続かせる)場合は、最後のひとつだけを変えます。

 成績は悪い。
 人望もない。
 スポーツも出来ない。
 おまけに朝も弱くて、遅刻の常習者だ。

 最後の一行だけ、文章のリズムを変えているわけです。
 時制がどうこうというよりも、単なるテクニックの問題ととらえて解決されたほうが、
 悩まなくて済むと思います。

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