第4研究室 創作に関するQ&A 182P | トップへ戻る |
秋津さんからの質問
 一般的な感性とは何?
 
 こんにちは、秋津と申します。こちらへの投稿は初めてになりますが、どうぞよろしくお願いします。
 早速なのですが、私がお聞きしたいのは、一般的な感性とは何かです。
 最近書き始めた小説があります。
 その小説の主人公の片割れの少女は、人よりも良く食べるため、
 真夜中に空腹のあまり目を覚ますという事態にしばしば見舞われます。
 そして、その少女は人よりも獣に近い性質を持つため、
 腹が減った=獲物を捕まえて食べると言う選択をするのですが、
 その狩りと捕食の描写がグロテスクで気持ち悪いと友人一同に抗議されました。

「草叢から飛び出した獲物に少女は勢い良く襲い掛かり、両手で獲物の体を捕らえ押さえつけた。
 “チッチチィッ!”
 捕らえられた獲物は死に物狂いで暴れ回った。
 だが少女はそれをしっかり押さえつけ後ろ首を一咬みする。
 ごきりと骨の砕ける鈍い音が響き渡り、あっという間に獲物はおとなしくなった。
 獲物が息絶えたことを確認してようやくセレスティアは手を緩める。
 捕らえた獲物は大きな野鼠。その場にしゃがみこんだ少女は黙々とそれをむさぼった。」

 十歳前後の女の子が動物をかみ殺して貪り食うという設定自体も
 受け付けられなかったようなのです。
 これがグロテスクさを演出しようとして、この反応なら目的達成と喜べたのですが、
 私はグロテスクを演出しようとしたわけではありません。
 この少女もちょっとだけ世の中の常識からはみ出している子のつもりで描きました。
 普通は皆こう考えるだろうと思って描いた描写が、
 一般的ではないと批判されてしまったこともしばしばあります。

 特にこれぐらいなら気持ち悪くもなんともないと思って描いた描写が、
 気持ち悪いといわれることが多いです。
 私の感性は狂っているのでしょうか?
 だとすれば、一般的な感性のわからない人間に小説は描けないのでしょうか?
 そして感性を治せるとしたらどう治せばいいでしょうか。
 どうぞ、ご教授願います。
 

● 答え ●

chiiさんの意見
 こんにちは、chiiです。
 む、なかなか難しい質問ですね…。
 一意見ですが、参考までに。

『例えに出された小説について』
 読み手としては、主人公に自分の感情を重ねて見てしまうので、
 正直なところ、あまり良い気分のする描写ではないのは事実かと思います。
 なぜなら、少女もねずみも本来なら無垢であるべきという固定概念があるからです。
 また、ねずみはかわいい反面、病気を媒介するものでもあるので、
 それを生のまま食べるというのは、衛生的にも受け付けない方もいるでしょう。

 ただし、問題となるほどグロテスクかと言えば、まったくそんなことはありません。
 もっと残酷な描写、目を伏せたくなる文章は山ほどあります。
 (私の場合、『頭蓋骨のホーリーグレイル』とか思い出しますね)
 問題は、少女のその行動に意味があるのか、という点にあると思います。
 少女の嗜好、獣らしい性質が物語の鍵になるのなら、気にする必要はないかと思います。
 単なる食いしん坊というキャラ付けの説明だけなら、
 わざわざ狩りに興じるよりは、植物を取ったり、
 他人の家に盗みに入ったりした方が効率的だと思うので、必要ないと思います。


『感性の治し方について』
 そもそも、一般的な感性とは何なのでしょう。
 私たちはそれぞれ別の生き物で、考えていることも感じ方も誰一人同じ人間はいません。
 突き詰めて言うと、一般的な感性など存在しないというのが私の考えです。

 それどころか小説家を目指すのなら、
 他人とはやや異なった視点で物事を考えられることは幸運なことではないでしょうか。


 面白い小説に不可欠なオリジナリティーとは、そういったところから生まれてくるものです。
 秋津さんは、他人の意見に耳を傾け、自分をかえりみることができています。
 それは狂った感性ではできないことと思います。

 とはいえ、どうしても気になるようでしたら、
 ありきたりですが、『読書』をおすすめします。

 
 お嫌いでなければ、ライトノベルだけでなく一般文芸書も分け隔てなく読むことをおすすめします。
 小説の中は、私たちの日常が大変簡略化され、しかしリアルに描写されます。
 小説を多く読み、それぞれの知識、世界観を自分の中に蓄積していけば、
 様々な人間の感性を理解できるかと思います。

 また最後に余談ですが。私個人の見解として。
 ライトノベルに限らず、ドラマ、漫画、映画には、よく人の死、暴力、世界の滅亡などが出てきます。
 単なる娯楽に過ぎないといえばそれまでですが、一時の享楽のために、
 私たちは本来笑えない出来事を楽しみ、自らの小説で頻繁に取り上げます。
 巻き添えを食らって死ぬ名も無きエキストラには同情しませんが、
 ヒロインが若くして死ねば、感動して涙を流します。
 そういった意味で、私の感性も狂っているのかしら…と、
 秋津さんの質問に答えていて考えたりしました。

 …かといって、ラノベ書きは絶対やめる気はないのですけれどね(^_^;)


世羅 悠一郎さんの意見
 世羅 悠一郎です。
 ええと……前置きしますが、かなり個人的な意見になります。

 それ、“ちょっとだけ”ではなく“かなり”常識からずれてると思います。
 鼠と言えど、人間の口で骨を噛み砕くという行為はかなり困難ですし、
 世界がどういうものなのか解らないのですが、
 手持ちの食料を漁る前に捕まえに行くというのはちょっと。
 一足飛び……を超えた行為だと思います。

 要は細かいさじ加減の問題ではないでしょうか。

 小匙一杯で足りなければいきなり大匙一杯を投入してしまう……というような。
 つまり、一つずらしたつもりだったのにもっとずれていた、と。
 こういう時は、順序立てればよいと思います。

 例えば――。
 腹が減った→手持ちの食料を漁る→周囲に賄える場所がないか探す。
 という手順を普通は思考の段階として踏むわけですが……。
 で、この後、すぐに賄えない場合は大抵諦めて寝るか探すかに選択肢になるわけですが。
 この後、周囲になければ諦めて寝て空腹を凌ぐかどうしても探すかの二択が挟まります。
 ……まぁ、目が冴えちゃうので寝る方向が多いのではというのは個人的意見ですが。
 で、探しに行くとなった時、更に人間なら狩りの道具を持っていくという選択肢が再び挟まります。
 幾ら獣に近くても。人間の中で生活するのなら。
 また、人間なら捕まえた後にもう一つ選択肢が挟まります。
 即ち、調理するかしないか。
 人間だったら調理する選択肢が必ず入りますよね。
 お腹壊したくないですし、まず美味しくないですし。
 さて、こうして順序だてると幾つ飛び越えてるんでしょうか?

 思うに、秋津さんは感性がずれているのではなく、論理飛躍しすぎているのではないでしょうか。
 順序立てれば、まず幾つずらすかで失敗しないと思います。


 追伸:記事の描写だけならそんなにグロテスクではないと思います。
 ずれ方がちょっと飛び過ぎには感じますが。
 想像力と感性の高いご友人をお持ちなのではと拝見します。
 大事になされると宜しいかと。


ぺーさんの意見
 個人的には、グロテスクか? と言われれば大してグロテスクでは無いし、
 気持ち悪くも無いと思いました。
 それどころか、文章としてもキャラクターとしても悪くないと。
 音などの五感描写が入っているのもいいですね。
 口についた血の色なんか描写すると迫力が増しそう……。

 問題はですね、「狙い」が思いっきり外れているということです。

 この少女もちょっとだけ世の中の常識からはみ出している子のつもりで描きました。

 ここが大きく外れちゃったわけですよね。
 エピソードには、何らかの狙いや伝えたいことがあるわけですが、
 野鼠を素手で捕まえ生で喰う少女は、ちょっと常識が無い子では無く、
 人間性が非常に薄い、いわば「狼少女」や「もののけ姫」って感じです。

 個人的には「狼少女」や「もののけ姫」も凛々しくて素敵だとは思います。
 ですからご友人と違い、設定自身は全然受け入れられます。
 が、狙いが「常識知らずの女の子」だとすると、やはり問題です。
 狙い通りの効果が出ているのかかなり疑問です。

 これは感性の問題ではありません、やり方を知っているかどうか、つまり技術の問題です。

 常識知らずの女の子の書き方を知ればいいだけなのですから。
 ですから、常識知らずの女の子が出てくる本を読んで、どのように描いているか見てみることです。

 
秋津さんの返信(質問者)
 秋津です。ご意見ありがとうございます。
 成る程、さじ加減ですか。
 確かに間違ってしまっていた気がします。
 私の設定ではこの少女は、獣に五歳位まで育てられたという設定です。
 しかし保護された後、彼女の保護者となった人間の尽力で人間社会になじんできますが、
 それでも獣の性質が残ってしまっています。

 彼女の保護者たる人間は彼女に人間社会で生きて欲しいので、
 その性質を消し去らなければ彼女は人になれないと思いその性質をけす事を望みます。
 しかし人ってそんなに良い物なの? 獣の性質は捨てなければならないの? 
 そもそも人ってなんなの? という疑問が彼女の頭を離れないのです。
 その一方で、保護者の事が大好きなので、
 自分の性質に頭を痛める保護者の苦悩を辛く思っています。

 獣を捨て去り人に成るか、それとも捨てずにいっそ人や保護者を捨て獣になるか、
(魔法が存在する世界なので獣になる術は存在します。
 違法性の高い術ですし、人としての理論思考は失われます。)
 それとも別の道があるのか? 少女は保護者である人間と一緒に、
 その答えを見つける旅をしているという話で、テーマは人で居ることに価値はあるのかでした。

 その、獣に近い部分以外では普通の人と変わらない。
 ほんのちょっと違うだけなのに世の中に馴染みきれない少女という設定で、
 どちらかというと受け入れない世界の方が度量が無いという描き方をしたので、
 ちょっと変わった子といったのです。
 しかし、獣のように生物を食い殺すという少女では、
 人間社会に受け入れてもらえないのも当然と考えられてしまいますか?
 私はそれぐらいならギリギリ個人の嗜好かと思いそういう設定にしました。
 しかしよく考えると、さじ加減間違えてしまった気がします。
 世間に受け入れてもらえるかもらえないかギリギリの異常性というのを良く考えてみることにします。

 理論立てて考えるという方法、良い方法ですね。早速参考にさせていただきます。

 それと描写がグロテスクではないといっていただいて安心しました。
 はい、大切にします。良い奴らなので末永く付き合いたいですし(笑)
 ありがとうございました。


黒尻尾の駄猫さんの意見
 通りすがりの野良猫です。
 解決されたようですが、駄文を残します。

 伊藤勢というマンガ家の作品でモンスターコレクションという物があります。

 そのなかで、暗殺に長けた青年が町へ偵察に行った帰りに山で大型の齧歯類を捕まえてきて、
 袋から出すんですが、非常に愛くるしい仕草に、
 彼の仲間の女性キャラが「まあ、かわいい」と声を上げます。

 で、次のコマで、イキナリ青年はその大型の齧歯類の首をナイフで撥ねます。

 動揺する仲間を余所にテキパキと皮を剥いで精肉するのですが、
 その遣り取りや動作には非常に説得力がありました。


 今回のご相談での例文では、少女は口でネズミの首を折るシーンがありますが、
 この辺がなにやら「野性味」を演出しようと誇張を感じました。


 ネズミというとイメージ的に片手でも押さえ切れそうなサイズで、
 ドブネズミでも両手で押さえると隠れてしまいそうです。

 同じ齧歯類で、ウサギやモルモットなら暴れるところを口でも押さえ込んでとどめを刺す、
 という描写なら説得力がありそうですが、ネズミなら、
 そのまま手で仕留めてしまえるような気がするのです。

 過ぎた誇張はシーンに違和感を与え、場合によっては予想外の反応を受けてしまう事もあります。

 そういう意味では、他の方も仰るとおり匙加減だと思います。


 なお、余談ですがオイラはケンタッキーフライドチキンの鳥の足は舐るように肉を歯でそぎ落とし、
 軟骨もバリバリ食べます。時に骨を歯で砕く程、夢中で食べます。

 駄猫の癖にネズミは試した事はないですが、
 鳥の太股の骨より細いならオイラはバッキリやれそうですw
 ではでは。


秋津さんの返信(質問者)
 貴重なご意見をありがとうございました。
 しっかり参考にさせていただきます。

 なのですが、後一つだけ、ちょっと抽象的な話なのですが気になることがあるのです。
 例えば。

 その食卓には、色とりどりのご馳走が並べられていた。
 薄く切られた熊のてのひらには蜂蜜のソースがかけられ、上品な香りを立ち上らせている。
 からっと揚げられた蜘蛛の唐揚げはキツネ色に輝き、
 その横の皿にはサルの脳みそがこんもりと盛られていた。
 そして何より、テーブルの中央では、
 彼女の大好物の芋虫のバター焼きがホカホカと湯気を上げている。
 目を奪われんばかりのご馳走に、彼女は思わず涎を垂らした。

 という文で、極端なことなのですが、これを書いた人間にとっては、
 目の前にこれらのメニューが並べられていたら飛びつきたく成るほどのご馳走だったとします。
 ですからご馳走の描写としてこういう事を描いたとします。
 でも、世間一般の人間にとってこのメニューを見て食べたがる人はあまり居ませんよね?
 でも是を描いた人間にとって是は大のご馳走で、実際に美味しい。
 だから美味しいものの表現に美味しいものを使うのは当然だろうとこう描きました。
 それは小説書きとしては間違っているのでしょうか?

 小説は、その人の個性を出す物。皆と同じ表現を使っては面白くないと良く言います。
 独特の感性が大切なのだと言います。

 しかし、外れすぎた感性で書いた小説は面白い以前の理解不能な物でしょう。


 何処までがその人の個性を出して良くて、
 何処までが世の中に合わせなくては成らないのでしょうか?
 それが解らないのです。

 私は、お世辞にも人の心が解る人間ではありませんし、常識がある人間でもありません。
 世の中に合わせる能力が極端に低いようなのです。
 もし、小説を書きたいと思ったら個性を磨くだけでなく、もっと色んな人と触れ合ったり、
 ご意見いただいたようにもっと本を読んだりして、
 世の中の人間は例外も有るけど、おおよそこう考えるのだと学ぶ事も重要なのでしょうか?

 それが少し気になってしまっているのです。

 よろしければご教授願います。


峰しずくさんの意見
 こんにちは。

 彼女のキャラクターを生き生きと表現するのに、これらゲテモノ食いが成功するのか、
 失敗するのかは作品が完結してみないとわかりませんが、僕はこれでいいと思います。


 おっしゃるとおり、気持ちが悪いとか、御馳走になんかとても思えない、と読者が感じるのは、
 これは感性の問題なのかもしれません。しかし、本当に変な感性というのは……。
 例えば、普通の少女の日常を描写するにあたって、
 授業中の小学校に押し入って散弾銃やマシンガンをぶっ放し、
 多くの罪の無い子供達が血みどろになって倒れる姿を見て、
「あ〜、すっきりした。たまにはストレス発散しないとねえ」
 みたいな台詞でも言わせれば、そりゃあもう感性が狂ってるとしか思えませんよね。

 ここはやはり、愛らしいクマのぬいぐるみにやつあたりして、壁に投げつけて、
 「あーすっきりした」とのたまったあと、
 「ごめんね、クマチ〜ン。またやっちゃった」とぎゅ〜と抱きしめでもして、
 このクマをプレゼントしてくれたおばあちゃんの顔のひとつも思い出し、
 「ごめんなさい」と反省なんぞしたら、これはもう普通の感性でしょう。


> その食卓には、色とりどりのご馳走が並べられていた。
> 薄く切られた熊のてのひらには蜂蜜のソースがかけられ、上品な香りを立ち上らせている。
> からっと揚げられた蜘蛛の唐揚げはキツネ色に輝き、
 その横の皿にはサルの脳みそがこんもりと盛られていた。
> そして何より、テーブルの中央では
 彼女の大好物の芋虫のバター焼きがホカホカと湯気を上げている。
> 目を奪われんばかりのご馳走に、彼女は思わず涎を垂らした。


 う〜む、なかなかのグルメでいらっしゃいますなあ。
 熊の掌をどのようにして食するかは存じ上げませんが、
 高級食材であることには間違いありませんし、
 蜘蛛をから揚げにするのが良いかどうかもしりませんけれど、
 サイクル野郎(庄司としお作)という漫画には、
 「手足をちぎって食べるとチョコの味がする」というくだりがありました。
 サルの脳みそも御馳走ですし、芋虫のバター焼きとくれば、
 オーストラリアのアボリジニーの貴重な蛋白源ときいたことがあります。(美味しんぼより)

 まずは書きたいこと、表現したいことを思いっきり書き込んでみる、
 それでいいんじゃないでしょうか?


まいちんさんの意見
 こんにちは。まいちんです。

> 世の中の人間は例外も有るけど、おおよそこう考えるのだと学ぶ事も重要なのでしょうか?

 重要だと思います。
 なぜなら、読者を気味悪がらせる意図がないにもかかわらず気味悪がられたら悲しいからです。
 
 自分の作品を意図した通りに受け取ってほしい、という気持ちがあるのでしたら、
 それを学ぶのは非常に重要なことです。


 読者がどう受け取るかなど関係なく、ただ自分が書きたいだけなら、
 それを学ぶのは重要ではないでしょうが、
 秋津さんの書き込みを見る限りそうではないように感じます。

 えと、「こうしたらいいんじゃないか」と自信を持ってお勧めできる方法は、
 申し訳ないですが思いつきません。ごめんなさい。
 ですが一度思い切って、カウンセラーなどに行ってみてはいかがでしょうか。
 いや別に病んでるから行けとかいう話ではなく(病んでるとはこれっぽっちも思ってません)、単に

> 気持ち悪くもなんともないと思って描いた描写が気持ち悪いといわれることが多いです。
> 私の感性は狂っているのでしょうか?
> そして感性を治せるとしたらどう治せばいいでしょうか。


 の相談をしてみたらどうかと。
 彼らは心を扱うスペシャリストとしての教育を受けてきているので、
 私が適当なことを書くよりも、よほど効果のあるアドバイスをしてくれるんじゃないかと思います。

 ちなみに私も、秋津さんの描写を見てグロテスクと感じるひとりです、
 気分が悪くなって目をそらす(申し訳ないですが)までの心情をなるべく詳しく書いてみます。
 だれもがこういう感情の遷移をするわけではないでしょうが、一例として参考になれば幸いです。

 冷静に描写を読んで「彼女の好物なんだな」と解釈するよりも先にまず、
 自分がそのメニューを見た気になってしまうのですね。


 キツネ色に輝く蜘蛛の唐揚げや芋虫のバター焼きが並ぶテーブルを想像し、
 味とかもそれとなく勝手に想像して、……うげげ、自分はこんなの食べたくないな、
 と思ってしまうわけです。
 (想像を煽るような描写力が長けているため、そこらへんの作品よりも二割増でリアルに想像し)

 すると、自然と「自分が食べたくないようなものばっかり想像したくない」
  ↓
 「読み進めたくない」と、なってしまいます。
 

 また、それらをいかにも美味しげにむさぼり食う彼女の姿を想像して
  ↓
 自分には理解できない感性だ。
  ↓
 自分の中で「食品」と分類されていないものを食う存在に恐怖を感じる。
  ↓
 恐怖を感じてまで読み進めたくない!

 とか、そんな感じでしょうか。
 たいしてためになることを言えた気もしませんが、参考になれば幸いです。頑張ってくださいね。


sakuraさんの意見
> その食卓には、色とりどりのご馳走が並べられていた。
> 薄く切られた熊のてのひらには蜂蜜のソースがかけられ、上品な香りを立ち上らせている。


 熊の手は中華料理で知識上知ってはいます。
 そして少し値段が高いことも。
 中国は地域によってはゴキブリや蠍(さそり)まで食べる国ですので、
 中国で書かれたなら問題は少ないでしょう。
 が、此処は日本で熊は食事用のものではなく、ほのかな恐怖まであります。
 それを食べることを書かれていたりしたら気がめいったりしてもおかしく有りません。

> からっと揚げられた蜘蛛の唐揚げはキツネ色に輝き、
 その横の皿にはサルの脳みそがこんもりと盛られていた。


 蜘蛛のから揚げの色までありますよね?
 実際に食べたことのない人間がこんなの見せられたりすると吐き気までします。
 サルの脳みそも1つ2つなら妥協できてもこんもりと、
 つまりは大量にあるとなればまた少し引きます。


> そして何より、テーブルの中央では、
 彼女の大好物の芋虫のバター焼きがホカホカと湯気を上げている。


 『そして何より』で上の3つより引き立てたいのが芋虫のバター焼き。
 幼稚園、小学校低学年くらいの男の子がつぶしたりして、
 女の子が『きもーい』とか『男子サイテー』とか言ったやり取りが聞こえそうです。
 湯気が出ていると言ったところでまた、リアルなのがめまいをしそうです。

 此処は日本で、こういった食材になじみがないのです。
 なのでグロテスクと取られても仕方が有りません。

(アメリカ人にとってタコやイカを食べることは信じられないことのようですから)

 よって、これを以下のように直してみます。

 日本人には馴染みのない食べ物がこの食卓にはある。
 薄めに切られた熊の手には蜂蜜のソースがかかっており、淡い香りを撒き散らしている。
 その左の皿にはキツネ色に輝く蜘蛛のから揚げがあり、右の皿には猿の脳みそが盛られていた。
 少女が釘付けになっている視線の先はテーブルの中央にあるものだ。
 彼女の大好物ともいえる芋虫のバター焼きが中央の皿にあった。
 湯気を立てている姿はまだ暖かいと自己主張していた。
 日本に住んでいてこういったものに馴染みのない者は「気持ち悪い」の一言で済ますだろう。
 彼女の目はこれでもかってくらい輝いていた。
 よく見ると口から透明の液体が垂れている。
 もちろん透明の液体は涎のことだ。


 にしてみては……もっとうまい人いるだろうな〜(遠くを見る目)


ぺーさんの意見
 極端だと自分でも思ってられるようですね。
 この文章の狙いが「ゲテモノ料理が好きなキャラクター」なら成功しているでしょう。

 文章は人に読んで貰うために書くわけです。

 相手の方を見て、書かないといけません。
 秋津さんは分かっていて、あえてそっぽを向いているだけです。

 個性が欲しいばかりに、「独特の感性」という言葉を間違って捉えられていると思います。
 
 「独特の感性」というものは、他人には普段は考えつかず、
 しかしながら「あ、なるほど」とか「そういう意見もあるのか」「鋭いなぁ」「それもアリか」
 と納得出来るものです。

 これは、グロテスクなだけであり、グロテスクな文章を書こうと思えば、
 誰もが一番最初に考えつくタイプのものです。
 ゆえに、独特な感性どころか、むしろ極々一般的な感性と言えるでしょう。


秋津さんの返信(質問者)
 えと、何か誤解を与えてしまったようですので書きます。

 料理の描写は極端な、世間の常識から外れすぎた感覚の例として即興で描いただけです。
 因みに、これらのメニューを私自身は見た事や食べた事はありません。
 世間一般の食べることはあるが、一般ではないものを集めただけです。
 ですから、「書いた人間にとって大好物」という文の書いた人間とは私のことではありません。

 あくまで、抽象的な話として、世間の常識と自分の常識が違うことを理解していない人間の文は、
 宇宙語に等しく理解不能。
 かといって、世間の常識そのものの文では新聞の様なもので面白みは無い。
 世間と自分のギャップの開きは小説書きとして何処まで許されるのか、
 それともギャップはゼロに近ければ近いほどいいのかという事がほんの少し、
 社会学的に気になっただけです。

 最後に、料理の描写で気分を悪くされた方がいらっしゃった用で申し訳ありません。


ぺーさんの意見
 作って演じているギャップでは無く、真のギャップなら見るモノを惹きつけるのではないでしょうか。
 
 アメリカでは、連続殺人犯などが書く文章は、ベストセラーが頻発します。
 理解出来ないところも、またカリスマだと思います。


 不謹慎な話ですが、
 あの、「酒鬼薔薇事件」の手紙の冒頭

 さあ、ゲームの始まりです。

 めちゃくちゃ引き込まれます。
 悔しいですが、小説の冒頭だと考えると、素晴らしいとしか言えません。
 その後の事件がまたトンでもない……完全に常人のワクの外ですからね。
 異常を通り越しています。普通の作家にあんなこと考えつくわけがない。
 作家仲間と「天才」だ、と話していました。
 道を間違えなければ、優れた作家になったかも知れませんね。

 他には、カフカとか幻想的な文章を書きます。
 「変身」とか強烈ですよね。いわゆる「不条理系」です。

 ですが、不条理とグロテスクは全く違うわけで……。
 グロテスクは常人に書けます。「変身」は誰も考えつかないでしょう。

 ゆえに、真のギャップは武器になりうる、というのが意見です。


秋津さんの返信(質問者)
 ありがございました皆さん
 文章へのアドバイスも色々とありがとうございます。
 気になっていた事も、皆様に意見を頂いて考えて、自分なりの答えが出せました。

 私は、今まで小説を書いても自分以外の人間に見せるという事をあまりして来なかったので。
 小説を書く目的=誰かに読んでもらうためということについて考えたのです。

 作ったギャップではなく、真のギャップなら人に感銘を与える。

 ああ、なるほど。
 やはり、作り物と本物の違いという奴でしょうか?
 本物のギャップから書かれた作品は説得力が違うというような意味に解釈しました。

 でも、そうすると良い小説家は幸せになりにくい精神構造の持ち主ではと考えてしまいました。

 お父さんとお母さんとお互いに分かり合える良い家庭環境の構成員として育ち、
 其処を出て自分もその人を解るし相手も自分を解ってくれる人を見つけて結婚して、
 子供が生まれたらその子と自分と自分の親のような関係を築いて、
 その子が巣立って幸せになるのを見送り、
 たとえ別居してても死の時には子や孫や友人が駆けつけてくれて泣いてくれて、
 ああ良い人生だったと幸せな気分で死んでいく。

 そんな、一般的な幸せを手に入れるのは難しそうですね。

 人とは違う感性こそが作家の武器なら、逆に言えば感銘を受けてくれる人は居ても、
 それを理解してかつ一緒の道を歩いてくれる人を見つけるのは難しくなりそうです。
 また、自分と違う感性の相手を理解することはこちらにとっても難しそうですし。
 小説を書くというのは、自分の感性を要約して、
 なんとか人に解ってもらおうとする行為に感じました。
 でも、良い小説を書く人の感性は独特で解りやすくない。
 だから余計淋しくて、何とか解ってもらおうと小説を書く。

 そう考えると小説家って、哀しいですね。
 でも私はやっぱり小説を書きたいですし、良い小説家になりたいです。

 すみません、勝手な私の考えです。
 でも、自分なりに納得がいきました。ありがとうございます。

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