第4研究室 創作に関するQ&A 28P | トップへ戻る |
次もバントさんからの質問  
 世界観の背景はどこまで説明すべきか?

 こんばんわ。次もバント、でお願いします。
 冒頭に変な含みを持たせましたが、とくに意味はありません。

 では本題に入ります。以前は擬人法も知らなかった不束者ですが、小説を書いてます。長編です。
 その長編の構想があまりに大きすぎて、
 現在書いている作品ではすべての設定を説明できません。
 どれくらいの規模かと言いますと、大陸と複数の国、
 それらの間にある政治・軍事・歴史を設定しています。
 そこに登場人物の相関図。魔法、銃器、刀剣、など各備品の設定など。
 ずらずらと列挙しましたが、つまりは膨大です。アホだと思ってます。
 勿論、作品中にすべての背景を絡めるのは無理だとわかっています。
 あくまで本筋の厚みと、事象発生の理由でしかありません。
 ですが作品中に彼らはどうしても出て来ます。出さざるを得ません。

 例を挙げるならば、主人公が移動するシーン。
 その地の文が『大陸南部で……』や『隣国が内乱を手引きし……』となります。
 そこで問題となるのが、どこまで背景を説明すべきか、です。
 実は上の二つは、起承転結で言う結に絡んできます。
 『南部』や『内乱』は問題ありません。作品内で綺麗に処理できる予定です。
 問題は『大陸』と『隣国』です。
 出したからには、読まれた際に何らかの疑問、追及が上がることを予想すると、
 どうしても説明しなければいけません。
 それを回避するために色々と考えましたが、『南部』と『内乱』のみでは余計に伝えきれません。
 でも途方もなく長くなります。文表現が乏しいので大陸の形状までは書けません。
 隣国に触れれば後の作品で使う新たなワードが出ちゃいます。芋づる式です。

 自分で原因を探った結果、この広がり過ぎた背景に沿った、
 同一主人公による複数話の長編を考えていること。
 それが大きな要因であると言う結論にたどり着きました。
 書き始めて日の浅い自分は、様々なテーマで短編、長編を書き、
 技術と経験を蓄積するのが大切であると思いました。
 事実、これ以外の短編、長編の構想は次々と浮かんできます。
 ですが。
 この長編は初めて明確に構想が浮かんだ、最初の子供です。
 愛情が行き過ぎているのは気付いています。失敗するのが怖いんです。
 でも見捨てられない。時間を置いてやり直せば良いと言えばそれまでですが、
 もしも熱が冷めたらと思うと……。

 熱くなって余計なこと書いてしまいました。進退窮まってます。
 つまり何が聞きたいかと言うと、背景とはどこまで許されるのでしょうか? 
 作者の技量でしょうか? です。
 ここまで読んでくれた人へ。意味の伝わりにくい、長い駄文すみません。考えすぎですかね。


●答え●

 事前に考えた世界観の設定を、思わず全部披露したくなるという気持ちはよくわかります。
 作品の執筆に入れ込んでいればいるほど、愛情を注いでいればいるほど、
 あれやこれやと設定を説明したくなってしまうんですよね(汗)。
 私も以前、そうやって設定の説明を詰め込んでしまい失敗した経験があります。
 そこから得た、どこまで背景を説明すべきかという質問に対する答えはずばりコレです。
 
 現在のストーリーの進行に必要な情報だけ説明する。
 現在のストーリーの進行に不要な情報は説明しない。


 これを鉄則として守っていれば、読者を混乱させることはありません。
 残念ながら、人間は大量の情報をいっぺんに理解・記憶できるようにはできていないのですね。
 なので、ストーリーにあまり関係ない設定をずらずら書き連ねると、内容が理解しにくくなるのです。
 特に要注意なのが、人名や地名などの固有名詞。
 これらは覚えにくいものなので、必要なモノ以外は出さないようにした方が賢明です。
 必要な固有名詞であっても、なるべく小出しにしていくように配慮しないと、
 読み飛ばされてしまう危険があります。

>『南部』や『内乱』は問題ありません。作品内で綺麗に処理できる予定です。
>問題は『大陸』と『隣国』です。
>出したからには、読まれた際に何らかの疑問、追及が上がることを予想すると、
>どうしても説明しなければいけません。


 失礼ながら、これは大きな勘違いです。
 設定に対するツッコミが発生することより、物語が退屈になることの方が大問題です。
 ストーリーに関わってこないような細部の矛盾など、大半の読者は気にしません。
 ストーリーさえおもしろければ、最後まで読みます。
 脇道の説明にページを費やすより、ストーリーを進行させるようにしてください。
 
 設定の説明は作者にとっては楽しい作業かもしれませんが、
 読者にとっては興味を引かれないどうでも良い場合であることが多いのです。
 くどくど説明が続いて、ちっともストーリーが進まないと、すぐに飽きてしまいます。
 読者は設定ではなく、ストーリーを読み来ているということを忘れてはダメです。

 ストーリーの進行に必要ない情報を書いてしまったな…… 
 と思ったら、その部分は思いきって削除・修正するようにすることをオススメします。


hiroyaさんからの意見
 まず、モノ書きについて、で頭に入れて欲しい一番重要な問題だと思うのは
『何を書き、何を書かないか』
 これほど重要な問題はないと思うし、どこのどんな人間もここで迷う。
 ちょっとしたルール、マナー、教本を見れば、必ずここにたどり着くと思われる。
 大体が単語、文章、説明などなんだけど、設定もその問題に掛かってくる。
 さて、ここで質問に答えようと思うんだけど……
 実際に読んでみないと分からないのでちょこっとした事を書こうと思う。
 うーん…例えば、だ。前に使った例だけど……

<例1>
 彼は席に着き、いい匂いを漂わせる夕食を前に祈りを捧げた。
 ぼそりと静かに、そして、厳かに言葉がつむがれるのを彼女は聞いた。
 それは●×教の祈りの言葉だった。

 ぶっちゃけこれだけでもいい。さて、これだけでもいいんだけど、こうしてみよう。

<その2>
 彼は席に着き、いい匂いを漂わせる夕食を前に祈りを捧げた。
「ふんにゃらーほんにゃらー」
 ぼそりと静かに、そして、厳かに言葉がつむがれるのを彼女は聞いた。
 それは●×教の祈りの言葉だった。
 ●×教はここら辺りでは珍しく、●×大陸で広まっている。
 ふんにゃらーとは神の名であり、その神は××を司るとされている。
 神は恵みを与えてくれる、というのが教えであって……うんぬんかんぬん。
 大陸では、この宗教が――うんぬんかんぬん……。

 さて、次バトンさんの陥っている状況というのはこんな感じじゃないかな。違ったらごめんよ。
 ぶっちゃけ1の例の長さだけでいい。後に宗教が重要なキーワードだとしても、だ。

・書かない!!
 書かないポイント。今、必要な部分だけを書くという事。
 今、大陸についての情報は必要だろうか?
 どういう神様がいて、どうのっていうのは必要だろうか?
 後々に重要だとしても今、この時に必要だろうか?
 後々に語るパートが出てくるんじゃないか? と考えよう。
 
 書かない、書くをクリアできたら、次はいつ書くのか、が重要になってくるわけだ。
 もし後々に説明できるならば、ここで情報を与えすぎだからちょっと分散させようと考えたりする。
 大陸がどうの……は必要なときに出せばよく、
 こういう日常のシーンでは必要ないのではないか、と思えれば最高だ。
 もし、結果として書かなかったらそれはストーリー上それほど重要ではなかったという事だ。
 
 主人公、キャラクターも知らない事は多いのだから、
 世界観的に重要だとしても――読者にとっても――知らなくても良い事は沢山ある。
 自信を持って情報を切ろう。
 二巻辺りで伏線や、「実はこうだったんですよ」ぐらいにすればいいんだから。
 読者は疑問とか謎とか大好きなので、それほど設定に執着しなくてもいい。
 大切なのは後々にその伏線を拾ってあげて納得させる事。
 それは一巻じゃなくていい。そのほうが面白いんだから。

・どうしても書きたい!!
 さて、どーしても書きたい、というそこの貴方!!
 次のポイントは「どのように書くか」ですよ。
 先ほどの大陸について。
 ぶっちゃけここで大陸まで設定を持ち出すと設定だけの小説になってしまう。
 が、すぐに主人公が大陸出身で、その情報が必要になる場合にはどーするか。

<例3>
 彼は席に着き、いい匂いを漂わせる夕食を前に祈りを捧げた。
「ふんにゃらーほんにゃらー」
 ぼそりと静かに、そして、厳かに言葉がつむがれるのを彼女は聞いた。
 それは●×教の祈りの言葉だった。
「貴方、大陸の出身?」
 彼女は彼に訊いた。
「そうだが――何か?」

 さて、ここで彼女が会話に入ったことで大陸に関して、少しずつ書き出す突破口が開いた。
 これから大陸について少しずつ会話の中で語られればいい。
「大陸って戦争中なんでしょ」
「ああ、ひどいもんだ……俺は一番ひどかった●●って場所にいんだが……」
 ってな具合に。そうすると情報はすんなりと入る。
 ただ、例2ように大陸というキーワードが出てきたからすぐ書かなきゃとか、
 必ず書かなきゃっていう事でもなし。
 ●●って場所はとてもひどかった……とそこでナレーションはいらない。
 そんなん書くなら彼のその時の描写をちゃんと書くほうが情報として重要だ。
 小出しにしたり、場面場面で設定を組みこめるような展開、会話を心がけるのは重要。

「実はあの大陸には妹がいてね」
 という彼女が凄く後々の展開に影響を与えそうな話をしたとしても、気にしなくていい。
 そこでそのストーリーを語る必要もなし。妹に関して設定があっても、設定を出さなくてもいい。
 彼女が彼に大陸の事を聞いた切欠であれば十分だ。
 
 こういうのは構想なしで、普通に出来るようになろう。
 これぐらいのことは書いてる最中に自然とできるものだから。推敲でしてもいいけど。

 まとめると……

・書かなくてもいいことは書かない。
・会話などから情報を入れる。
・設定をそのまま書かない。
・次回に回せ。


 ちなみに、最後のほうでご自分の経験について語られてるけど、とてもいい傾向だね。

 かなり基本的な話をしたので「知ってるわゴルァ」と思ったらごめんよー。
 もー、ちょっと書く、書かないについては詳しく教えられるけど長くなりすぎなのでここで切るのさ。 


蒼い人さんからの意見
 横槍失礼致します。
 やや同じ事で今悩んでいるので、現時点での私の考えをば。

 背景の広がり――それがいかに広大であっても、全て描く必要は無いと思います。

 何故なら、小説はエピソードを扱うのであり、世界の歴史全体を創造するのは、
 あくまで結果であると、私は考えているので。

 描くべきエピソードは何なのでしょう。
 5W1Hに則すとして、「どんな場所で起こる」のでしょう。
 必要な舞台が判れば、使うのは全体の一部であるのも判ります。
 「ロードス島戦記」はフォーセリアという架空世界を全体の舞台にしていますが、
 そこで使われているのはロードス島についての設定が殆どです。
 最寄の大陸に関しては、ごく僅かな量です。

 すなわち、広大な世界でも書き手が描けるのはほんの一部である、と。
 贅肉になるものは削ぎ落とした方が懸命です。
 ストーリーが説明に割かれて進行が遅くなるのが目に見えているでしょうから。

 一度その世界の地図でも書いて、主役達の旅路を線で入れてみてはいかがでしょうか。
 そうすれば、どの部分を削れるかが見えるかと思いますよ。
 国を転々とする構成であるのなら、それを見直すのも一考かと。
 ドラクエを始めとするRPGは世界旅行しちゃってますが、そうする事は必然ではないですから。
 でも、設定は取って置けばお得でしょうね。


あやめさんからの意見
 お気持ちはよくわかります。質問を読んで熱意が伝わりました。
 私の考えを書く前にひとつお尋ねしたいのですが、
 その作品はいったいどういった部分が面白いのでしょうか? 
 未完の作品だと思いますので、予定でも構いません。
 御作を読んだ読み手が、どういった部分で面白いと感じると思いますか?
 作品の面白さが細かに創り上げた国同士の関係や魔術の設定にあるのなら、
 そのままでいいと思います。

 しかし大抵の読み手はそういう長々と続く説明を読みたいとは思わないと思います。

 たとえば楽しみで購入した携帯電話も取扱説明書を隅から隅までは決して読みませんよね?
 あれと一緒です。
 読み手はあくまで面白がりたいのであって、長々とした説明を聞きたいわけではありません。
 私はそれがすべてだと思います。
 作品に込められた面白さを表現するためにはこれを説明しておく必要がある、
 と考えられる部分以外はすべて削ってしまっていいと思います。
 設定が増えすぎて困るのなら、この部分は何のために必要なのかを熟考するべきだと思います。
 私もはじめて書いた作品は次もバントさんと同じような状態になりました。
 500枚ぐらい書いたままで結局ほったらかしにしてあります。長編は大変ですね。
 仰るとおり短編を書いて、まずは完成させることを覚えるべきかもしれません。


峰しずくさんからの意見
 まず、詳細な設定ですが。
 これは、詳細であればあるほどいいと思います。

 なぜなら、適当な設定や思いつきの設定では、後に矛盾が生じる可能性がきわめて高いからです。

 私は設定書を作らないので、気が付いたら「一人っ子」と紹介してたはずなのに、
 後に妹が出てきてしまっって矛盾が起こった、などのことで何度も悩まされました。
 もちろん、発表する前にその矛盾に気付くことの方が多いのですが、
 しかし、妹を出したいのに出せない! と唸ってしまうわけです。

 しかし、一切の設定を創らない私からすれば、書いているのは「物語」であり、
 「設定」ではない、ということも意識して欲しいな、とは思うんです。


 どうせ悩むんなら、「こういう心理の変化は不自然ではないか? 矛盾していないか?」とか、
 そういうことで悩んでみませんか?

 設定を創らない私の、(HPに掲載している作品への)評として、
 時々「設定や世界観がしっかりしている」というのをいただきます。
 なぜでしょうか?
 それは、設定ノートが無いため、「必要に応じて」本文に設定を書くからです。
 書かなくてもいい部分もあるはずですが、書いておかないと、
 メモやノートがないので、作者が忘れてしまいます。なので、書くのです。
 しかも、その場面で必要なことをその場で設定して書いているわけですから、
 読者は必要に応じたリアルタイムで設定を読むことになり、
 「しっかりした設定」と誤解してしまいます。
 これが、世界観の説明を一通りした部分が以前にあったとしても、
 それが昔すぎて印象が薄くなっていれば、「世界観が中途半端」と読者は思うかもしれません。

 その場その場で書き込まれた設定は、とりあえずその場では大切なように思えるかもしれません。
 しかし、それがその後に、何の役にも立たない場合もあります。
 役に立つかどうかは、作者にも実はわかっていません。
 でも、その場では必要なことですから、説得力を増すことはあっても、
 無駄で冗長という印象は与えにくいようです。
 また、後に役に立たなかったとしても、
 読者にとってはとりあえずはその世界観のウンチクみたいなものになるわけで、
 どっぷりその世界に浸かるひとつのきっかけにはなります。
 ウンチク、好きなひと、多いですし。

 私の真似をして、一切の設定をせずにかいてみてはいかがでしょうか、
 なんてバカなことは言いません。

 必要に応じて、その場その場で設定や世界観の説明をされてはいかがでしょうか、という提案です。
 
 へそ曲がりな読者は、「今、考えたな」な〜んて思うかもしれませんが、
 そんなことはどうでもいいのです。作品が面白ければ、ね。

 ではでは〜。


オジンさんからの意見
 設定をどこまで説明すべきか、作者さんたちのご意見はほぼ出尽くした感があり、
 御本人も納得されているようですので蛇足かとは思いますが、
 読者の立場の意見を書いておきます。

 私は、読んだ物語世界の設定を考えるのが大好きです。

 それで気づいたのですが、私の好きな小説では完璧に世界を再構築できたためしがありません。
 どこかに説明されていない部分が必ずあるのです。
 しかし、ストーリーを追うのに何の不便もありません。
 それで私は詳細な設定を、小説内で逐一説明する必要はないと考えています。
 
 説明すべきはストーリーの流れ、登場人物たちの行動や心理を了解するのに
 必要な程度の背景・設定・その世界の説明がなされていれば十分なのです。


>そこで問題となるのが、どこまで背景を説明すべきか、です。
>実は上の二つは、起承転結で言う結に絡んできます。
>『南部』や『内乱』は問題ありません。作品内で綺麗に処理できる予定です。
>問題は『大陸』と『隣国』です。
>出したからには、読まれた際に何らかの疑問、追及が上がることを予想すると、どうしても説明しなければいけません。


 読者は、ストーリーを楽しむために読んでいるのですから、
 登場人物の誰も行きはしない土地の様子や産業を詳しく知りたいと思ったりはしません。
 登場人物が持たない武器や能力の詳細な説明を読みたがりもしません。
 むしろそういう説明はストーリーを楽しむ邪魔と感じることのほうが多いです。
 ストーリーを語ることを中心にして、
 登場人物の行動や心理を納得できる背景が書かれていれば十分なのです。
 大陸や隣国に関しても登場人物がかかわったときに彼らの行動の理由が分かる程度の説明で、
 十分ではないでしょうか?

 以上です。参考になれば幸いです。

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