第4研究室 創作に関するQ&A 73P | トップへ戻る |
アゲインさんからの質問  
 実体験を基にした作品に、想像のみで描いた作品は勝てない? 
 
 こんばんわ、アゲインです。

 今回の質問は「実体験を基にした作品に、経験のない作品は負けてしまうのか?」ということです。

 簡単に説明しますと、作品の中に「恋愛」の要素が出てきたとします。
 ここで、恋愛に関していくつか経験済みの人が書く作品と、
 恋愛経験のない人間が書いた作品を比べます。
 すると、やはり経験済みの作者が書いた作品の方がうまく書けていて、
 未経験の作者の作品はそれに打ち勝つことはできないのでしょうか?

 戦闘に関してもそうです。
 柔道、剣道、空手etc...
 これらの心得がある人と、そうでない人、この二人が戦闘中心となる作品が書いた場合、
 心得がある人の方が作品として内容の濃いものになるのでしょうか?

 いろいろと経験の少ない僕にとって、
 実体験を伴った作品に勝つ自信がなくて、かなり悩んでいます。
 もちろん、勝つとか負けるとかは本来ないのでしょうけど、
 やはり実体験を伴った作品というのは人気を得やすいのでしょうか?


● 答え ●

 実体験が大事とは、良く言われることですね。

 確かに実体験が豊富な方が小説の執筆には有利でしょうが、有利というだけだと思います。
 実体験が無ければ、おもしろい小説が描けないなんてことはありませんし、
 実体験が有れば、おもしろい小説が描けるわけでもありません。


 例えば、私はかつて自衛隊に在籍していまして、
 今でも予備自衛官として、防衛庁のお世話になっています。
 そこで、ふつうの日本人ではまず経験できない、
 射撃訓練や、戦闘訓練、営内での集団生活という特殊な経験をしてきました。
 自衛隊標準装備である64式自動小銃と、89式自動小銃を実際に何度も撃ち、
 これらの分解整備もやっています。
 では、そんな私が銃撃戦のシーンをリアリティを持って描けるかというと、これが難しい。
 
 作家には銃を撃った経験などなくても、
 私より、はるかにうまく銃撃戦のシーンを描ける人がいっぱいいるでしょう。


 実際に銃を撃った経験が、銃撃戦のシーンを描くために必須のものではないとうことです。
 本を読んだり、映画を見たりして間接的に得た知識だけでも、
 おもしろいシーンを描く人は描けます。
 逆に、いくら経験を積んだところで、ツマラナイ小説しか描けない人間もいます(汗)。

 新人賞を受賞するのは、たいてい20代〜30代前半くらいの若者が多いです。
 今では、文学賞受賞者の低年齢化が進み、10代の少女が芥川賞を取る場合だってあります。
 第130回(平成15年度下半期)の芥川賞は、当時19歳の綿矢りささんが、『蹴りたい背中』で受賞し、
 ”最年少芥川賞”としてセンセーショナルな話題になりました。

 逆に60歳を超えて定年退職した年輩の人たちが、小説新人賞を受賞することは、まずありません。
 作家という職業は学歴・年齢不問であるにも関わらず、
 40代以上になってからデビューする人間はほとんどいないのです。

 もし、人生経験が豊かなほどおもしろい小説が描けるのであれば、
 年輩者に新人賞受賞者がほとんどいないのは、なぜなのでしょう?
 まだ社会にも出ていない10代の少女が、芥川賞を受賞してしまうのは、なぜでしょう?


 ここからは、完全に私の個人的な意見ですが、やっぱり小説家に必要な能力というのは、
 想像力、いわば空想する力だと思うのですね。
 で、この想像力というのはリビド──つまり性欲と結びついていまして、
 性欲が高まる思春期から、想像力が飛躍的に高まるのです。
 なぜかと言いますと、

 エッチなことを考えることが多くなるからです(笑)。
 
 性欲は、いらやしいものとしてタブー視されていますが、
 これはすさまじいエネルギーを秘めており創作活動などの原動力になるのです。
 性欲によって生じる想像力を糧に、あれやこれやといろんな空想を巡らし、
 それを文章として他人と共有できる共同幻想に昇華する……
 これこそ小説家の神髄なのです!
 しかし、年輩者になると、もう恋愛だとか異性だとか冒険だとかに、
 それほど強烈な憧れや幻想を抱かないのですね。

 あの娘の顔を見ているだけで幸せ、とか、
 ちょっと手と手が触れあっただけで顔が真っ赤になるという、
 うれし恥ずかしドキドキ感情は、若い頃しか味わえないのです。
 恋愛経験を重ねて結婚なんてすると、あーなんだ、女って、男って、こんなものか、
 と幻想が打ち砕かれてしまって、もう以前のような新鮮な感情は蘇ってきません。
 年を取れば取るほど異性に対する幻想も、空想癖もなくなり、想像力が減衰していくわけです。

 だから、作家になれるのは、若者に限られるのだと私は考えています。
 経験の不足は、その溢れんばかりの想像力(空想力)で補え! と、アドバイスします。


こうせつさんの意見
 こんにちは、こうせつです。誰しもが考える問題ですね。

 私に言わせれば「嘘を言いくるめてこそ小説家」です。

 たとえば、友達に昨日遭遇した体験を話すとします。
 けれど、その友達は興味を示さないかもしれない。
 逆に、嘘で塗り固めた空想の方が興味を引いてくれる場合の方が多いでしょう。
 つまりは、技術がものをいうと思います。

 たしかに、それを経験していた人の方が書きやすいかもしれません。
 ですが、考えても見てください。たとえばアゲインさんが何か特別な体験をしていたとします。
 ですが、それをどれだけ忠実に書き表すことが出来るでしょうか。
 作法や細かな点に注意がいくでしょうが、根本的な部分はやはり自分の腕前です。

 では、この辺で。的外れなことを言っていましたら、どうぞ聞き流してくださいませ。


竜宮城さんの意見
 こんばんは、竜宮城と申します。なにとぞ、よろしくお願いします。
 経験の無いものは、有るものに勝てないかと言う質問ですが。
 私が思うに充分勝てます。

 経験も所詮、その人の生きた実感として体得されたものでなくては意味を成さないと思うからです。

 さらに、一流と呼ばれる作家の多くは経験してもいない事を、
 経験者よりもはるかに上手く表現できているのではないでしょうか?
 
 ミステリー作家は実際に人を殺す必要はないし、
 歴史小説家は剣も使えず兵の指揮もできない人がほとんどです。
 彼等は、ただ考え想像しただけなのです。

 
 寄席芸人伝という漫画があります。落語家を中心とした、芸人の話が載った漫画です。
 その中にこんなセリフがあります。
「貧乏知らなきゃ貧乏人を演じられねえ……なんて奴は芸がねえのさ」
 べつに、私は経験を軽んじているのではありません。
 ただ、経験さえ積めばそれだけで良い作品ができるもんでもないと思うのです。
 このへんで、私の意見は終わります。
 お役に立てれば身の幸いです。竜宮城でした。


飛車丸さんの意見
 経験や技術の差を埋めるのが想像力と知識。

 そもそも考えてみてください。
 「ハリーポッター」も「指輪物語」も、作者にとって「未体験」のことばかりです。
 体験が無いなら、本を読み、人に聞き、想像すればいいだけです。
 何から何まで経験しようとすれば、作品が完成する頃にはお星様になっちゃいますよ。


ねこ缶さんの意見
 こんにちは。そして、はじめましてでもあります。
 もうしばらくしてから交流用掲示板で自己紹介しようと思っていたのですが、
 私的にタイムリーなネタなので、ちょっとフライングします。

 私も勝てると思います。やはり、重要なのは想像力と知識ですね。
 柔道、剣道、空手etc...の「心得がある」までいくと、
 それらに関する作品的におもしろい動き(心得のある人から見れば、ありえない動き)
 というものが書き難くなってしまうでしょう。
 
 〈超リアル志向〉をウリにするのでなければ、体験していなくても面白い作品は書けると思います。


鈴忌さんの意見
 こんにちわ、鈴忌です。

>今回の質問は「実体験を基にした作品に、経験のない作品は負けてしまうのか?」ということです。

 まったく同じ文章技量で、同じぐらい読者に配慮する作家であることが前提なら、
 それは「実体験」を持つ人の方が有利だと思います。
 あくまで、「実体験」以外の面が同等の場合ですが。

 実際の所、小説は「体験しにくい」内容を描くことが多いので、
 想像力で十分カバーはできると思います。
 ただ、体験可能なものならば、できるだけ体験しておいた方がよいと思いますよ。


 例えば、柔道とか剣道について書くなら、入門まではしなくても、
 試合の観戦ぐらいはしておいた方が良いんじゃないですかね?
 やっぱり、取材って色々な意味で結構大事だと思いますよ。

 あと、「実体験がない」などの理由で「自分が描写しづらい」ものがあるなら、
 それを避けて「描写しやすい」方向に引き寄せて作品作りをするのも手です。
 同じ主題を扱うにしても、そこへ至る道は決して一つではないと思うので、
 自分が通りやすい道を選んだ方が、
 読者としても理解しやすい作品が作れるのではないかと思います。

 頑張って下さい。失礼します。


みつきさんの意見
 アゲインさま、こんにちは。
 実体験や知識などは、当然ある程度は必要です。
 でも、その多寡によって小説の面白さが決まる、ということはないでしょうね。

 今まで様々な職種のプロ(学者とか風俗嬢とか元傭兵とか)が書く『小説』を読んできましたが、
 残念ながら、作者の知っていることと、読者の喜ぶものは、まったく違うものなんです。


 読者が喜ぶ程度の豆知識や雑学なら、資料文献を当たったり、
 経験者からのちょっとしたインタビューで十分得られるものなんですよね。
 格闘シーンならば映画や漫画の動きを見て書くくらいで充分ですし、恋愛にまつわる出来事なんて、
 雑誌の一、二冊でも読めばすぐに十、二十のエピソードが転がり込んできます。
 それどころか今の時代、映画や小説などで様々な疑似体験することがいくらでも可能ですから、
 なまじ実際の恋愛などにどっぷりはまって変な方向に走ってしまうよりは、
 少しの客観性を残しながら疑似体験するほうがなんぼかマシか……
 とか思ったりも少しするわけです(笑)。
 
 人間って、あまり経験しすぎてしまうとそれに縛られてしまって、
 自由な創造性だとか、発想力だとかを失ってしまうことが多いんですよね。

 プロの作家さんも、『創造の最後のジャンプ力は、「知らない」ということだ』
 とどこかで言っていましたし、実際そうなんだと思います。
 
 ですから、必要なのは10%の実体験と90%の想像力、だと思って、
 広く浅く、たまに深く経験してみるくらいでよいのではないでしょうか。

 それと、これは蛇足なのですが、もし何かを『体験』したら、
 そのとき自分の中で起こった気持ちや感情の動き、肉体生理などを、
 忘れないで覚えておいてくださいね。
 実はこれが、『経験する』ということにおいて一番大事なことだと私は思っています。
 その『心の動き』こそが、他の誰とも違う、
 本当の『経験』や『体験』というものの正体だと思うんですよね。

 というわけで、長々と書きましたが、これにて失礼致します。


どてかぼちゃさんの意見
 アゲインさん。こんばんわ。
 どてかぼちゃです。

 わたしは、経験を重視します。経験の有無は、説得力が格段に違うでしょう。
 想像力は経験と知識を土台にしていると考えているからです。
 まったく知らないことを想像力で補うことは出来ないと思います。


> この二人が戦闘中心となる作品が書いても、
 心得がある人の方が作品として内容の濃いものになるのでしょうか?


 この場合、アプローチが変わるのではないでしょうか。
 心得のある人はより具体的に、説得力を増し、
 逆に心得のない人は、より型破りなものが書けると思います。

> もちろん、勝つとか負けるとかは本来ないのでしょうけど、
 やはり実体験を伴った作品というのは人気を得やすいのでしょうか?


 大学の研究者とか、元銀行員とか、その道のプロが小説を書くことがありますよね。
 あれは、そういう専門家の視点から見た物語が、変わったアプローチで面白いからだと思います。
 売りやすいと言う意味では、有利だと思います。

 でも、経験がすべてではないと思います。
 だったら経験の多い人は面白い小説を書けるのかと言えば、そうではないと思います。

 
 そこを補うのは「感性」だと思います。
 経験や物事をどう見て、どう感じるか、です。
 それは、自分ひとりのものですよね。
 その感性を通して書かれた作品は、その人独自の小説になるのではないかと思っています。

 偉そうなことばかり言ってしまいました。自分がいちばん出来ていないんですけどね。

 あ、恋愛はした方がいいと思います。
 うまくいけば幸せだし、フラれた痛みの分かる奴はいい奴ですから。
 長くなってしまいました。失礼します。


Yesさんの意見
 極端な話。
 赤ん坊に小説は書けるでしょうか? 書けるわけがありません。
 アイデアとは経験の掛け合わせによって生み出される物です。
 言葉だって、経験で得た知識です。その言葉を組み合わせて仕上げるのが小説です。
 言葉を知らなければ文章を書くことも出来ないでしょうし、「文字」という概念を理解すことだって難しい。

 アインシュタインは天才だ、と言われますが、
 そもそもアインシュタインほどの科学知識を持った人が、どれだけいたでしょうか?
 この地球に現存する約66億の人々全員が、アインシュタインと同程度の知識を得たとしたら。
 相対性理論について、多くの人が気づけたんじゃないでしょうか。
 知識がなければアイデアなんて、生まれっこないんです。

 それが例えフィクションでも同じです。

 人間は空を飛べない。自由に飛べるようになりたい。どうやったら飛べるようになるか。翼があればいい。
 道具があればいい。「タケコプター」というアイデアが生まれる。

 壁に止まった蚊を叩いたら、ものすごい大きな音がした。壁が壊れるんじゃないかと思うほどだった。
 ――もし壁が壊れていたら、どうなっただろうか?

 電車で座っていたら、お年寄りが目の前に立った。席を譲ろうとしたら断られた。
 もし次の駅で、この電車に乗ってきた人が僕をみたら、
 ――僕が、お年寄りに席を譲らないで図々しく座ったままの、不届き者に見えるのではないか。
 ――もし僕が危ない人間だったら、それに気がついた時点で、
 そのお年寄りに逆恨みをして、サスペンスが生まれるのではないか。

 経験はあればあるほど良い。
 外へ行って、見たこと感じたことを文章におこしましょう。
 そして「この滝壺に落ちたら、どうなるだろう」なんて考えて、そこからアイデアを出しましょう。
 水に触って、匂いを嗅いで。
 そこでしか生まれないアイデアが、必ずあるはずです。

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