第4研究室 創作に関するQ&A 339P | トップへ戻る |
愛美さんからの質問
 主人公(ヒロイン)は一人だけなのですか?
 
 こんにちは。
 朝っぱらから棒術の練習らしきことをしていた愛美です。

 本題に入ります。
 主人公(ヒロイン)って一人だけなのですか?
 私の書いている小説では、主人公らしき人物が三人ほど出てきます。
 主人公を絞ってみたのですが、そうすると第三章からの登場となり、
「え? 君が主人公じゃなかったの?」
 見たいな感じになってしまいます。
 主人公(ヒロイン)は一人なのですか?
 また、何人までOKですか?


●答え●

鈴忌さんからの意見
 こんにちわ、鈴忌です。

> 主人公(ヒロイン)って一人だけなのですか?

 普通は一人であることが殆どだと思います。
 ただ、主人公格が複数人存在して、読者が誰かを主人公として選んで
 感情移入するような構造になっている作品もありますね。
 
 ただ、その手の作品は筆力が無いとゴッチャゴッチャになり、
 読んでいて「誰の視線で見たらいいのか分からない」的なことになりやすい上、
 使えるページ数が複数人に割り振られてしまうので、物語として上手に構成しないと薄くなりがちです。


> 主人公を絞ってみたのですが、そうすると第三章からの登場
> となり、「え? 君が主人公じゃなかったの?」
> 見たいな感じになってしまいます。


 主人公交代というのは、結構リスキーな技法で、
 鈴忌も以前に「ヒロインは途中参加」というのをやったのですが、
 色々と賛否両論で微妙な感じでした(苦笑)。

 ちょっと小説の事例から外れますが「主人公交代」についての「非常によい例」を
 二つほど参考に上げさせて下さい。

1,映画「サイコ」
 この作品だと冒頭から登場する横領犯の女性が主人公っぽく最初は描かれています。
 普通のホラー映画だと、女性ヒロインは何度も何度もピンチに遭いながらも辛くも生き残るわけですが、
(ラストシーンで死ぬこともありますが、途中では通常死にません)
 なんと「サイコ」では途中で本当に殺されます。
 で、元主人公が死んだ後に主役になり得そうなのは映画内には一人しかいないので、
 自然と視聴者の視線がそちらに集まり、非常に自然かつスムーズに主人公交代が起こります。
 これは「ホラー映画のお約束」を逆手に取った技法で、
 交代のタイミングその他に関しても文句なしなので、
 「ホラー映画」が大丈夫でしたら一度ご覧になることをお奨めします。
 特に「真の主人公が後から出てくる」の参考になります。

2,映画「エルム街の悪夢」

 基本的には「サイコ」に近いのですが、これもヒロインが途中で死に交代となります。
 技法としては殆どサイコと同じなので、どちらか片方だけで理解できれば不要です。
 もし理解しづらいようなら比較してご覧になると良いかもしれません。
 個人的には、こっちの作品の方が明確ではあります。

 ついでに、比較できないとアレなので「非常に悪い例」。

3,映画「ドリブン」
 ホラーじゃないです。
 レース映画で、この作品は最後まで見れば主人公が誰かは分かると思いますが、開始10分だと
「この人が主人公だな!(←5分後に裏切られる……笑い)」
 とか思うのですが、本当の主人公はその後に出てきて、
 更に悪いことに「主人公の教育係」という立場で
 「シルベスター・スタローン(自分で脚本書いたので目立ちたかったのでしょうが……苦笑)」が
 出しゃばりすぎて「主人公かも?」的な見え方になってしまっています。
 非常にゴッチャゴッチャした作品で初見の開始30分ぐらいだと、
 ヘタをすると未だに主人公が誰か分からない可能性があります。
(小説で言うところの冒頭1/4ぐらいです)

> 主人公(ヒロイン)は一人なのですか?
> また、何人までOKですか?


 基本は一人とおもいますが、別に作者さんの描きたいもの次第では何人でも構わないはずです。
 ただ、複数人出すときは相応の技量が必要とされてきますのでご注意を。

(群像劇とかだと十数人全部主人公とか、ありますしね)

 以上が鈴忌なりの意見です。何かの参考になれば幸いです。
 では、失礼します。


愛美さんからの返信(質問者)
 鈴忌さん、どうもありがとうございます。
 私は……どちらかというと悪い例のような気が。
 最初の主人公が死ぬわけではないので。
 死ぬというか、目的を果すのです。
 途中から。
 そしたら、後から出てきた主人公が目的を果すということで、ついていく。
 みたいな?
 まあ、目的を果したら、また目的がって感じなんですけどね(笑)。
 も〜なにがなんだか訳わかんなくなってきてしまいました。


鈴忌さんからの意見
 再びの鈴忌です。

 あぁ、いえ……別に「主人公交代」のときは「殺せ」と言っているわけじゃないですよ(苦笑)。
 というか、むぅ……例えに出したのがホラー映画っていうのが悪かったかな?

 というか、「一つの物語の中で主人公が切り替わる」あるいは
 「群像劇的に主人公が切り替わる」を想定していたので、
 少し鈴忌の回答内容がずれてしまっているみたいですね(苦笑)。

 愛美さんの作品の構造が少し見えたので、改めて、
 それに沿ったアドバイスを少しさせて頂きたいと思います。

> 死ぬというか、目的を果すのです。
> 途中から。
> そしたら、後から出てきた主人公が目的を果すということで、
> ついていく。
> みたいな?

 「一つの物語」で「主人公が複数」というよりも、むしろ
 「複数の物語が繋がる」というような構造みたいですね。

 こちらの構造の場合は「切り替わり」と考えない方が良いと思います。
 何故なら「複数の別の物語」なわけですから。
 
 で、考えるのは「別の物語」を「いかにして読者に統一感のある一つの大きな物語であると思わせるか」
 という部分です。


 小説に限りませんが、読者や視聴者は冒頭で物語の方向を予想し期待します。
 理想型は「予測を裏切り、期待に添う」ことですが、
 主人公複数型の物語は幾つかの点で困難が伴いやすいです。代表的なものを上げると……

 『冒頭に出てきた人が主人公じゃない可能性がある』

 読者は、物語に興味を持つ場合、だいたい、主人公がどうなってゆくのかに興味を持ちます。
 それなのに、途中で焦点となる人物が切り替わってしまっては、
 「期待」を裏切ることになりやすいんですね。

 回避方法としては「切り替わる前の主人公がどうなってゆくかを、別主人公の視点から描写する」
 とか「主人公を交互に切り替えながら興味を持続させる」とかの方法がありますが、
 なんにせよ、困難さはあります。
(映画「ドリブン」を見ると、コレがよく分かります)


 で、少し余談っぽく逸れましたが意味なく逸れたわけじゃないです(笑)。えぇと、ですね……

> まあ、目的を果したら、また目的がって感じなんですけどね(笑)。

 つまり「目的Aを達成する主人公αの物語」「目的Bを達成する主人公βの物語」
 「目的Cを達成する主人公γの物語」が単に連なっていると上記で書いた「期待と予測」で、
 色々と引っかかってくるわけです。
 なぜなら「主人公α」に期待した読者は「主人公β」に切り替わったら首を捻る可能性があるからですね。
 コレを回避する方法は……

1,オムニバスだと最初に宣言してしまう。

 色々なやり方がありますが、(説明文的に明示するのから、
 ロマサガの吟遊詩人みたいな語り部を冒頭に登場させるのまで方法は本当に色々です)
 最初に「複数の物語が繋がって作られていますよ」というのを読者に示せれば、
 「期待と予測」もそれに従って形成されるので平気になります。
 むしろ、それに添った期待(次はどんな物語?)というのを生み出すこともできるかもしれません。

2,目的に重み付けをして、他の目的を包含させてしまう。

 複数の物語が均衡しあっているから良くないわけで、
 たとえば「大目的」という「作品全体の軸」をまず用意して、
 次に複数の物語が全て「大目的」の「部品」になるように修正します。
 要するに映画で言うところの「メインプロット」と「サブプロット」に分けるような作業ですね。
 ここで「大目的」というのを「当初想定していた目的以外に設定」すると、
 解決法1で説明したオムニバスに近くなります。
 もちろん、オムニバスではないので「一つ目の物語」の中に次の物語を導く要素があり、
 伏線的に読者の期待感を向けるわけですが、連結してゆくような印象ですね。
 あるいは「当初想定していた目的の一つを大目的にする」というのもスタンダードな手です。
 これをやると、大体の場合主人公は「大目的の部分の主役」に自然と固まってきますが、
 それでもシーン事に主役を切り替えての展開は可能です。
(そうしながらも、物語全体の軸は失いません)

3,別々の物語として複数に分けてしまう。

 もし、単純に同じ世界観を共有しているだけの完全に別な物語だったら
 「別々の作品」にしてしまうのも手です。
 一つ一つが短いのかもしれませんが、その辺りは適度に手を加えてやれば長編になりますし、
 読者も混乱しにくいです。

> も〜なにがなんだか訳わかんなくなってきてしまいました。

 とまぁ……こんな感じでゴチャゴチャ説明しましたが……
 これはあくまで修行中の鈴忌が理解した範囲での話です。
 なので正しいかどうかは保証しかねますが、もしかして何らかの役にたって貰えると幸いです。
 どうぞ、頑張って下さい。

 では、失礼致します。


サイラスさんからの意見
 こんにちは,サイラスです。

> 主人公(ヒロイン)って一人だけなのですか?

 これは作者の力量次第といいたいのですが、2人の主人公(男と女)の切り替えなら、
 『消閑の挑戦者』シリーズ(角川スニーカー、岩井恭平著)が参考になるかと、
 主人公の視点ごとに章が分かれていて(キャラ名、その○という具合に)、
 もう1人の主人公がほとんど入ってこない(但し、最初と最後は一緒)ため、
 視点がはっきりしている点が参考になるかと……

> また、何人までOKですか?

 力量次第です。ただ、僕は二人が限度かと思います。
 
 それともう一つ。愛美さん、がどのようなものを書こうとしているのかはわかりませんが、
 プロットを見直してはどうでしょう?
 もしかしたら、主人公たちが”私が主人公”とみんないっぺんに主張する事態があるから、
 違和感があるのかもしれません。
 解決策としては、場面ごとに主人公をきちんと設定し、それ以外の主人公は入れないように努力する。
 もうひとつは異性の主人公(全編通しての主人公)を用意すること。

 では。


ぺペロンさんからの意見
 主人公=語り部、もしくは狂言廻しとして考えるならば、
 状況、場面、それらによって変えることはあり。
 ただし、その狂言廻しが物語のテーマにおける主題そのものを担うのだとしたら、
 それは一人でなくてはならない。

 例を上げると、アニメの新世紀エヴァンゲリオンは主人公=テーマそのものなので、
 殆どの場合、主人公の主観で物語が進んでいる。
 逆の例は、東野圭吾の「白夜行」これは主人公(狂言廻し)が一章ごとに変わるが、
 物語上のテーマを担う人物は固定化されている。
 
 ライトノベルで例を上げると、『イリヤの空、UFOの夏』
 一応主人公は浅羽という少年にスポットライトが当たっているが、
 物語そのものの中心は全てイリヤという少女が中心となっている。
 
 つまり、物語を進行させる人物(狂言廻し)と、
 その物語における真の主人公(テーマ上の主役)は別物だという事。

 
 だ駄文失礼いたしました。


龍衣さんからの意見
 龍の衣と縦に書いてシュウと読む、龍衣です。

 私が好きな小説は、結構視点が切り替わる作品が多いですよ。
 サイラスさんが先に紹介した『消閑の挑戦者』の作者、
 岩井恭平さんの『ムシウタ』はその特徴が顕著ですね。
 
 基本的に、三人くらいがメインになっていて、
 章の題名は「1.00 ○○(名前)part1」という表記の仕方。
 そして、その三人以外の視点が入る場合は、「The others」と表記されます。
 章の間は、題名に書かれている人物以外の視点で物語が書かれることは無いので、
 混乱することはありません。
 しかも、ある巻ではその構造を利用した、巧みなミスリードを展開してくれます。とっても面白いです。
 
 さらにシリーズモノなので主人公とヒロインがちゃんといるのですが、
 途中から名前が会話の端に出てくるだけとか、空気のような扱いになる巻もあります。
 それでも、その二人の存在感は圧倒的です。

 さらに北方謙三先生の『水滸伝』もすごいです。
 108人の豪傑(なかにはそう呼べない人もいますが……)の反乱を書く話なので、
 当然の事ながら視点の入れ替わりは激しいです。
 作者も主人公を明確に決めていないそうなので、明確な主人公はいません。
 しかし、視点となる登場人物の人格がしっかりと描写されているため感情移入もしやすく、
 時系列が乱れるということもありません。
 多くの人間の思惑や信念が、視点の切り替わりで交錯し、人間ドラマにもスリルと感動があります。

 もう一つ、中国の小説家で金庸という作家さんの作品です。
 日本で言う大河ドラマ並みのスケールの大きな作品を書く作家さんで、
 中国では知らない人はいないという重鎮です。
 彼の作品のほとんどが、主人公の登場が遅いです。
 その分一つの物語が5〜7巻に及ぶ大作なので、全部読んでしまえばそこまで気になりません。
 傑作と名高い『秘曲笑傲江湖』(東方○敗の元ネタです)では、
 主人公の登場は三章で、しかも本格的に活躍するのは四章以降。遅すぎです。

 上に挙げた三作はどれも人気があるものばかり。特に後の二つは長さが半端じゃありません。
 しかも、ライトノベルじゃありません。
 文庫本一冊分の作品と比べるのは無理がありますが、視点の切り替えは登場人物同士のすれ違いや、
 対立をより明確に書き出すことが出来る手法だと思います。
 十人前な結論ですが、生かすも殺すも技量しだいではないでしょうか?


なごり雪さんからの意見
 こんにちは、なごり雪です。

> 主人公(ヒロイン)って一人だけなのですか?

 一人じゃなくてもいいと思います。
 自分も複数の主人公を使って構想する事が多いです。

 主人公という形で一人一人を扱えば、かなり強くスポットを当てる事ができますし、
 心理描写を使う事ができるのでうまく書く事ができれば、
 それぞれの人物がとても理解しやすくなると思うので。

> また、何人までOKですか?
 
 書き方、書きたいこと次第だと思います。
 自分が読んだ作品の中では、ライトノベルでは
 『とある魔術の禁書目録』 『ヒトカケラ』が参考になるのではないかと。

 「とある魔術」の方は、ある程度話が進んでから 第2主人公のような立場の人物が出てきたり、
 普段から多方面視点というか多人物主観の手法を用いています。
 一人一人が物語の主人公という構成ですね。
 「ヒトカケラ」の方は、一つの物語をそれぞれの登場人物が主人公のような物語構成となっています。

 個人的には「とある魔術」が好きですね。
 現15巻で、全部で30人くらい居ると思いますけど、
 ほとんど全員の名前と人物像がはっきり出てくる所がさすがと思います。

 少しでも助けになれば幸いです。
 それでは、駄文失礼しました。

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