第4研究室 創作に関するQ&A 360P | トップへ戻る |
大和さんからの質問
 抽象的な表現は作者の自己満足?
 
 こんにちは、大和です。
 ある文章上達本に『抽象的な表現は作者の自己満足』と、このようなことが書かれていて、
 改めて自分が今書いている小説を読んでみると、抽象的な表現があちこちに見つかり、
 それを今書き直しているところなのですが、
 どうも表現とは何からが抽象的な表現となるのかが分かりません。
 
 あちこちに見つかった抽象的な表現に、
『暗夜よりも暗い、さながら暗幕を降ろされた暗室のような闇の中。』
 という『闇』を表現したものがあり、正直、今でもこれは抽象的な表現なのか? 
 と、どこか引っ掛かっています。これを書き直して、
『どこまでも闇は広がっていて、どうしようもなく光景は失せている。そんな闇の中に、』
 という風にしたのですが、まだ抽象的でしょうか? その辺りが良く分からないでいます。
 抽象的な表現をよく理解している方、この抽象的な表現なる壁を乗り越えた方、
 乗り越えようとしている方、いろいろな人にこの相談に乗って貰えれば嬉しいです。助かります。


●答え●

monoさんからの意見
 こんにちは。
 抽象的とは何か。
 これは「抽象的⇔具体的」と考えれば良いのではないでしょうか?
 具体性のない曖昧な表現は作者の自己満足でしかない、ということです。
 つまり、闇であればそれがどういう闇なのかを具体的に書けば良いのではないかと思います。

 で、この二つの文なんですが、
『暗夜よりも暗い、さながら暗幕を降ろされた暗室のような闇の中。』
『どこまでも闇は広がっていて、どうしようもなく光景は失せている。そんな闇の中に、』
 上の文は闇を「暗室」という比喩を用いて説明しています。
 それに対して下の文はただ闇が広がっていて光がないことが書かれています。
 どうも私には下の文のほうが具体性がない気がしますが、いかがでしょう?
 
 ひょっとしたら「抽象的=比喩表現」と捉えていらっしゃいませんか?
 比喩は物事を直接的にではなく、何か別のものに例えて表現することなので、
 抽象的とはまた違うものだと思います。


 私の解釈が違っていたらすみません。
 参考になれば幸いです。


砂時計さんからの意見

 どうもこんばんは、砂時計と申すものです。

 どこからが抽象的な表現になるのか――という事ですが、
 はっきり言って比喩を用いた時点で既に抽象的であると言えます。と始めに極論しておきます。

 しかしそれでは身も蓋もないので……
 私自身の考えを述べると、比喩の中でも直喩くらいは問題ないと思われます。
 暗喩は使い方によってはかなり抽象的になったりならなかったり、
 換喩や提喩などを用いたあたりから、いよいよ意味不明なレベルになり始める、と思います。
 
 擬人法まで行ってしまうと、むしろそういう作品(擬人化もの的な意味で)なんじゃないかと
 勘違いされかねません。
 
 つまり、暗喩以降はかなり意味不明なまでに抽象的になる可能性が高いです。
 ですので、余程の自信が無い限りは直喩や隠喩に留めておいたほうが意味不明になりにくいです。

 それと、抽象的な事は必ずしも悪い事では無いと思います。

 確かに、抽象的な文章は作者の自己満足かもしれません。
 読み手の事を一切意識しない陶酔感たっぷりの文章なんか、
 作者かよほどの物好きしかまともに読めません。
 しかし、読み手を意識して、なるべく「分かり易く抽象的」に書かれた文章だった場合、
 (それでも人を選ぶかもしれませんが)ハマれば読み手を引き込む事も出来ると私は考えています。
 
 そもそも小説を書く事自体、一種の自己満足に起因するものですので、
 そこまで「自己満足である」事にこだわり怖れなくてもいいかと思います。
 まぁ、その辺を意識するバランスは当然大事ですが(笑)


 遅くなりまして大和さんの例文についてですが……さほど意味不明という事も無いと感じました。
 ただしあまり乱用すると意味不明で無くとも鬱陶しさが出てくるので、
 全体をなるべく抑え目にして適宜使っていけば問題無いと思います。

 以上、偉そうに言ってるけど自分も壁を登ろうと足掻いている砂時計の意見でした。


飛車丸さんからの意見

 例文に関して。
 前者は問題の無い描写なのですが、後者は問題大有りだったりします。
 この違いは、描写対象に対する「具体性」をしっかりと書いているかどうか、ですね。こ
 の場合は闇の深さ。前者は「A<○<B」と具体性を持っていますが、
 後者はそれが曖昧になっています。

 描写すべき事柄に対する具体性を持ってさえいれば、
 抽象的な表現であること=自己満足とはなりません。

 問題なのは、あくまでも「伝えるべき事柄が伝わっているか」なのです。

 抽象的でもいい。
 でも曖昧になっちゃいけない。

 全てにおいてこの限りではありませんが、大体そんな感じです。


グレー・デ・ルイスさんからの意見

こんにちは。

>  ある文章上達本に『抽象的な表現は作者の自己満足』と、このようなことが書かれていて、

 信じる信じないは人の勝手ですし、その文章上達本を読んだことはありませんが、
 その文章だけ見るとあまり鵜呑みにしてはいけないと思います。
 対偶とればわかるとおり、
 『作者の自己満足でない表現は全て具体的である』って意味ですから。
 世の中に抽象的だけど作者の自己満足じゃない表現なんていくらでもあります。

 むしろ具体的に具体的にと自分を縛らず、
 自由に表現した方がいいと思いますよ。



雷さんからの意見

> 『暗夜よりも暗い、さながら暗幕を降ろされた暗室のような闇の中』
> 『どこまでも闇は広がっていて、どうしようもなく光景は失せている。そんな闇の中』


 強いて言えば、後者の方が好みです。雷です。

 『抽象的な表現は作者の自己満足』というのは、一面正しいです。
 ですが、だからといって抽象的な表現を排除し具体的な表現ばかりに終始しても、
 面白みが無くなります。


 大和さんが例示した文章だと、他の皆さんもおっしゃっているように、
 後者の方がよりあいまいで抽象的です。
 わけがわかりません。
 前者は比喩などで、「どのような闇なのか」具体的に説明しようとしています。

 ですが僕は、前者の文から闇に対する恐怖心を喚起されません。
 暗夜、暗室といった具体的な名称が登場しているからでしょう。
 とくに暗室のあたりから「人工的な暗さ」というイメージができてしまって、
 「カーテンを開ければ明るくなるんだよね」と、妙な安心感を持ってしまいました。

 それにくらべると、後者の方が、まだ読者のイメージする余地があります。
 もしかしたら手を伸ばせばすぐそこに壁があるかもしれません。
 あるいは、どこまで歩いても果てが無く虚ろな空間が続いているだけかもしれません。
 つかみどころが無く、状況が分からず、不安です。

 大和さんは、ただその場所が暗いことだけを表現したいのですか。
 それとも、闇の静けさや深さ、恐ろしさも表現したいのですか。

 それによって演出は変わります。
 演出が変われば、表現も変わります。
 抽象表現と具体表現どちらを選ぶかは、それから決めてください。

 どのようなものが抽象的な表現かについては他の方々が説明されているので、
 もう少し違う視点からお話ししてみました。

 参考にしていただければ幸いです。


ミカヅキさんからの意見

 こんばんわ、ミカヅキです。
 『抽象的な表現は作者の自己満足』
 これを、敢えて自分の考えに近い形に翻訳して考えてみると。
 『抽象的であればあるほど普遍的ではなくなって、一読者にはわかりにくくなる=作者の自己満足』
 ということになりました。

 となると、気をつけたいのは、いかにその文章が表現するものを、
 具体的に読者に理解してもらうか? ということではないでしょうか?

 例えば、より明確な読者の理解を期待する事柄、
 例えば推理小説での殺人現場では抽象的な表現を避ける。
 逆に、できるだけ読者の想像力を掻き立てたい事柄、
 例えばその殺人事件の犯人の輪郭などは抽象的なほうがよいのではないでしょうか?

 その小説の世界が、抽象性にとんだ幻惑的な文章が似合う場合もあれば、
 具体的な描写の方が効果的な場合もありますよね。
 抽象的だからダメということは絶対無く、必要であれば、
 きっちり抽象化した文章を使うべきでしょう。


 大和さんの例文の二つですが、個人的には前者は猥雑でで尚且つ生命力にあふれた神話。
 後者は同じ神話でも、より幻想的な感じがします。
 前者からは世にも醜い、しかし憎みきれないどこか人間的な妖怪が、
 後者からは神のように美しいが、あまりにも非人間的な悪魔神が似合うような気がします。
 どちらがより抽象的か、という問いにあまり重要性は感じられませんでした。
 
 そのシーンに、どちらが似合うと考えるのかという感性も、
 文体以上に重要な作家の個性だと思います。



ラストさんからの意見
 はじめまして、ラストと申します。

 んー。小説というのはどんな作品にもまず自己満足はあるのではないでしょうか。
 なので、考えなければいけないのはあくまでも読者への意識なのかなぁと思ったりです。

 抽象的な表現それ自体が悪いのではなく、使うタイミングが大事なのだと思います。
 
 例えば大和さんの例文をお借りして『暗夜よりも暗い、さながら暗幕を降ろされた暗室のような闇の中。』
 『男は漆黒の装束を羽織り、静寂の中に佇んでいた。無の黒の中に存在する影は、うんたらかんたら』
 と続いたとすると「早く先行けよばかやろー!」となりますよね。
 具体的な状況を何度も遠まわしに、後回しに表すと、それはもう読者を意識していない、
 作者の自己満足と捉えられてしまうのだと思います。
 でも、例えば大和さんの例文の場面がそれこそ物語のクライマックスにちょこんと置いてあったとしたら、
 それは映える演出にもなるんじゃないかと思いますです。
 周りの文や物語とのバランスを考えながらしつこく何かを表すというのはアリなのではないでしょうか。
 要は、いらない場面で何度も続くようだと呆れられるのかなぁと思っています。

 で、

 余計なお世話かもしれませんが、近くの文に同じ様な感じを何度も使うのは、
 よした方がよろしいかもしれませんです。


 前者の方は明らかに「暗」という字が出すぎに感じましたし、
 後者は一文目で闇を強めている分、二文目の頭にまた闇という字があると、
 どうしても読者に疲れる印象を与えてしまうのかなぁと思いますです。
 読者に与える情報をあえて分かりにくくする抽象性や、ここぞと強調するために抽象化する文など。
 使いこなせるのなら、勝手は色々とあるかもしれません。
 抽象さというものを意識するためには、
 まず自分が書くべき情報をきちんと理解するのが大事なのかなぁと思いました。


みつきさんからの意見
 大和さま、こんにちは。

 抽象的表現って、なんというか、そのことそのものを具体的に、ストレートに説明できない時に、
 でも、どうしてもこの感じを、この様子を、遠くの誰かにもイメージとして届くように伝えたい、
 という、非常に切迫した必要に迫られて生まれるもの、だと思うんですよね。
 それゆえの必要美であり、機能美であるのだと思います。
 
 で、その必要がまったくないとき、目で見たものをそのまま、
 ストレートに指し示す言葉を使って表現すればそれで充分に通じるとき、
 伝えられるという時には、余計な抽象的表現をことさらに入れる必要はないのだと思います。

 例に出された文章を元にさせていただきますと、ただ『暗い』ということを表すだけなら、
 『あまりに暗く、手をまっすぐに伸ばすと、もう指先が見えなくなるほど』とか、
 『いくら目を凝らしても、一メートル先にあるはずのものすら見えないほど暗い』とか、
 そんな表現のほうが読み手にストレートに伝わりやすいと思うんですよね。
 なのですが。
 
 『暗闇』の描写の中に、その風景を見ている登場人物が感じている、隠したい恐怖とか、
 見て見ぬフリをしたい絶望とか、茫漠とした不安とか、そういったものをどうしても練りこんで伝えたい、
 それをこっそりひっそりと伝えることがとても大切なことなのだ、というときには、
 少し遠回しな書き方や抽象的な表現を使って、それらを読み手に『感じてもらう』必要がありますよね。
 っていうか、そういう部分はストレートに書きすぎちゃうと、すごーくつまらなくなってしまうというか。
 
 でも、遠回し表現や抽象表現のやり過ぎはやはり禁物で、あんまりやりすぎると、
 厚化粧と同じで、くどくてみっともないことになってしまうんですよね。


 読み手がなんとなく、「ああ、もしかしたら、この人は怖がってるのかな……?」
 「ああ、なんとなく、この人は今、少し不安なのかも……?」と気付ける程度にするのが良いかと。

 それでは、簡単ですがこれにて失礼させていただきますね。
 「ゴールデンウィークも仕事だぜ」という、中村主水の渋い声がどこからか聞こえてきますよ……トホホ。


モザイクスプリプトさんからの意見
 こんにちは。
 あなたが言う抽象的な文、
 『暗夜よりも暗い、さながら暗幕を降ろされた暗室のような闇の中。』
 これには、どちらかというと「まわりくどい」という印象をうけました。
 改善をした文である↓
 
 『どこまでも闇は広がっていて、どうしようもなく光景は失せている。そんな闇の中に、』
 は、まわりくどいままなばかりか、逆に分かりにくくなってすらいます。
 もっと直接的かつ、簡潔に
 「手を延ばした先すら見えない程の暗闇」
 などの表現を使ったほうがいいと思います。
 まぁ、一意見として頭の片隅にでも置いておいて頂ければ幸いです。

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