ライトノベル作法研究所
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  4. ストーリー公開日:2013/08/09

下読みによるラノベ新人賞攻略Q&Aまとめ

●ストーリーについて2

■質問2014/07/12
 目的のページ内で物語を終わらせるコツとは?
●ジジさんの回答
 100作ほど書いて感覚をつかむのがひとつ。
 それまではプロットを5ページほどの単位で細かく作り重ね、そのとおりに書いていく。それでもはみ出すなら、そのはみだす原因となった箇所をプロットと見比べて、細かく削って調整する。
 慣れるまでは設計図を細かくしていくしかありません。
 長い物語でも短い物語でも、文量の調整において重要なのは「その長さの物語にいくつエピソードが入るのか?」の見極めです。
 感覚としては、6000字ほどの短いものなら大事件ひとつに人間関係をからめたらいっぱいになりますし、100000字クラスのものなら連動する大事件を3から4、そこに3000字程度でまとめられる人間関係と設定を基にした説明エピソードを、重要度に合わせて適時投入……長くなればなるほど計算は複雑になりますが、流れとしてのプロットを作ればあとはそれを崩さず、必要に応じて膨らませたり削ったりしながら調整します。

■質問2014/07/12
 ライトノベルにおける性表現の許容範囲について質問したいと思います。一般文学では性に関する用語として、「セックス」、「自慰」、「ペニス」などがごく普通に使用されていますが、ライトノベルでは、どこまでが許容範囲でしょうか? 私の作品には「オナニー」という文言が登場しますが、大丈夫でしょうか?
●ジジさんの回答
 文学というものはそもそもが青年向け――現代で言うヤングアダルトのジャンルです。
 そして一般向けの最重要要素は「共感」ですので、それを得るために、その年代(青春時代)にありがちな恋愛感情の持て余し――若さゆえの苦悩や懊悩を表現する手段として「性」が取り上げられがち、という背景があるわけです。
 ここで大事なことは、「性」はテーマではなく、「青春」を掘り下げるための手段であるということです。
 話がズレましたが、性の許容範囲は、程度問題でしょうね。例に挙げていただいた文言程度の内容なら特に問題はないかと思いますが、私が全年齢向けで商業作品を作る場合、直接的な文言は絶対に入れません。
 これは全年齢向けというものが年齢のみならず、男子にだけ向けた媒体ではないからです。
 そして「全年齢向け」の看板を掲げるラノベに直接的な性表現が本当に必要か? それは本当に物語をよりよく成立させるために不可欠なものなのか(大切なストーリーがエロシーンによって不当に削られてしまっているのではないか)? という疑問もあります。
 ただ、前述したとおりエロは程度問題ですので、それが物語を成立させる設定(ネタ)でないかぎり、よほど露骨だったり大量でさえなければ大丈夫かとは思います。

■質問2014/07/09
 主人公が、あることを始めた理由が復讐なのですが、この復讐というのは達成されるべきなのでしょうか?
●ジジさんの回答
 その必要はありません。
 が、主人公の目的が達成されないだけで終わってしまうとどうにもならないので、かならず復讐が達成されるよりも大きなカタルシスにつながる「復讐をあきらめるに足る(もしくは結果的に達成されずに終わるに足る)だけの理由」を提示してください。

■質問2014/07/05
 プロローグに衝撃的、インパクトのある、もしくは興味をそそるような展開を入れるべきでしょうか? それともまだ足りないでしょうか?
●ジジさんの回答
 一応今簡単に考えつく展開パターンを挙げてみます。
1.冒頭にまさに日常が破壊されるその瞬間のシーンを入れる
2.1章で綴られる日常描写、その1パートごとに崩壊の予兆(伏線)となる短エピソードを挟み込んでいき、1章の最後で一気に伏線を起爆させ、崩壊させる
 1は王道の手法ですので、2のほうがおもしろくできそうな気がしますね。1と2を合わせるのもわかりやすいでしょうか。
 どのような手法を使うにしても、「章や項で描かれる事件とは、その長さに比例するだけの大きさがなければならない」ことは意識してください。
 応募作には、物語の始まりを語る章が事件の大きさに比べて長すぎ、冒頭から冗長になってしまっているものが多いです。

■質問2014/07/03
 これだ! と思われる作品はありますか? またそれは如何なるものでしょうか?
●ジジさんの回答
 設定にこだわりぬき、それが最初から最後まで物語を進行する力にできている作品ですね。

■質問2014/07/03
 作品の構成、物語の纏めが上手いと思う作品はどの様なものでしょうか?
●ジジさんの回答
 最初に提示された謎や、物語が始まるきっかけになる事件がきちんと展開し、最後にきちんと畳めている作品です。
 投稿作品の場合、かなりの率で物語がきちんと始まっていなかったり、きちんと展開できておらず、結果的にきちんと終われていないものなので。

■質問2014/04/04
 ストーリーにおける「嵐の前の静けさ」とは具体的に何をさすのでしょうか?
●ジジさんの回答
 クライマックス(嵐)を「予感」させるための、物語の谷の部分になります。
 たとえばミステリであれば、クライマックスは探偵が謎解きを語るシーンですよね。
 その前の項に、別角度のエピソード(日常シーンや、学園ものなら事件と関係ない文化祭の描写など)を置くわけです。そこに探偵が事件の真相やトリックに気づくための伏線を張っておくことで、物語に緩急をつけつつ読者の緊張感を保つ効果を狙う。それが「嵐の前の静けさ」です。

■質問2014/04/02
>作者の都合という問題については、設定やキャラの出来がいいことで引き起こされてしまうこともあります。
> 知らず知らずのうちに、作者が設定やキャラに合わせてストーリーをねじ曲げてしまうのです。
 ジジさんは、以上のようにおっしゃっていますが、設定とキャラが良ければ、自然とストーリーが良くなるような気がします。
●ジジさんの回答
 たとえば「頭脳戦」をテーマにした物語があるとします。物語は当然、舌戦、論戦、陰謀などが交錯する展開になります。
 が、その物語に、すばらしい剣術の腕前を持つ魅力的なヒロインがいたとしします。
 そして作者がこのヒロインの魅力を見せよう見せようとすることで、最初は確かに展開できていた「頭脳戦」という見せ場が、途中から「肉弾戦」にすり替わっていたりするわけです。
 この作者が意図しない失敗は、応募作においてはそこそこ以上の頻度で見られるものですので、誰かに原稿チェックをしてもらう場合はその点に注目してくれるようお願いするとよいかと思います。

■質問2014/04/02
 キャラや設定の魅力を腐らせないようにするために、作者がストーリーを曲げてしまい、それで、作品の整合性が取れなくなり、作品を殺してしまうのですね。作家になるには、自分の書きたいことを取捨選択することが大切なんでしょうね。
●ジジさんの回答
 「書きたいこと」と「書かなければならないこと」の整合性を取って書ければ、かなり期待値が上がりますね。ただし、キャラと設定を重視するラノベならではの動かせない傾向を第一に考えながら……ということにはなります。
 特に、「なにも考えずとも勢いの乗った原稿が書けるタイプ」でないなら、なにかしら計算することが必要になりますし、もし計算するのであれば、まさに「設定」、「キャラ」、そして「整合性」の三要素に絞るべきかと思います。

■質問2014/03/29
 最近、隆盛を誇っているラブコメなんですが、賞に応募する際のメリット、デメリットってどうなのかしら?
●ジジさんの回答
  ライトノベルの賞において、ラブコメ単体を題材にしたものはほぼ見かけません。
 理由についてですが、ラブコメというものは「読者が好む形」というものがかなり明確に定まっているため、個性を出しづらいからではないかと考えています。
 他のジャンル以上に「そもそも素材としてひねりにくい」、「他人が気づかない別角度から描けたとしても、それが読者の好みにはまらない(結果ワンパターンになってしまう)」こと、それがデメリットかと。
 逆にメリットですが、「他の題材との親和性が高い」ことでしょうね。
 異能力ものだろうが異世界ものだろうがSFだろうが、すべての題材に加えることのできる万能食材という感じです。
 まとめて言えば、単体で応募作を作るには相当にハードルが高いのがラブコメのデメリットであり、ほかのネタと混ぜることで豊かな味と彩りを演出できることこそラブコメのメリットであるというのが私の見解になります。

■質問2014/03/28
 小説を書くのにプロット作りは必須だと思いますか?
●ジジさんの回答
 必須かと問われれば、必須まではいかないかなと思います。
 ただ、文筆を職業にするなら、作れたほうが楽だとも思います。
 以下、プロットを作ることのメリットです。
「新人賞に応募するなら、あらすじが書きやすい」
「設計図があれば評価シートの指摘をどこに入れればいいかが簡単にわかり、反映しやすい」
「プロになったら、他人と打ち合わせしやすい」
 というか、新人作家の頭の中におもしろい構想があったとしても、その物語を刊行するためには担当編集者が編集会議でそれを説明し、出版枠を取ってくれなければなりません。よほど信用があるお抱え作家なら「じゃあおもしろいのができあがってくるって信じたからな」ということで枠だけ確保して待ってくれるかもしれませんが、そうでなければ最悪、編集者からの連絡が途絶えます。
 その他、プロットという設計図(デッサン)があれば原稿用紙に物語という本線を入れやすくなる。プロット作りに慣れるとエピソードの配分や文量がそこから算出できるようになる、といったメリットもあります。

■質問2014/03/28
 ラノベのレーベルへの応募を検討しているのですが、萌えやラッキースケベは必要でしょうか?
●ジジさんの回答
 ラッキースケベは必要ありません。
 そこに文量を割くなら、ご自身が考える魅力的なヒロイン、そして主人公とヒロインの関係性を深める恋愛フラグ(もちろん恋愛でなくともかまいませんが、読者は基本的に主人公とヒロインの恋愛が見たいものです)のエピソードを作ってください。
 ヒロインが魅力的に描けていれば、かならずそこに萌えが匂い、需要が生まれます。
 ただ、読者が好む傾向というものは確実に存在しますので、それを踏まえた上でそれを踏襲するのか隙間を狙うのかを考えるべきかとは思います。
 あと、これは参考になるかわかりませんが、手元に見当たらないのでうろ覚えですが、10年ほど前に出版された『このラノ』のキャラクターブック(そんな感じのタイトルの別冊でした)で、「萌えのパターンは全部で3つ。ひとつめは単一の属性に特化した萌え、ふたつめは互いに引き立て合う属性を掛け合わせた反対色的な萌え、三つめはギャップ萌え。今すでに主な萌えはだれかに抑えられているので、これから書くには隙間狙いしかない」というようなコラムがあり、非常に感銘を受けたものです。

■質問2014/03/28
 続編が作りやすい作品は優遇されますか?
●ジジさんの回答
 優遇されません。
 一作できちんと完結させてください。
 主人公さえ生きていればなんとでもなりますので、続編のことは受賞した後に考えましょう。

■質問2014/03/27
 「意外性がない」と評価される理由とは何ですか? その意外性を出すには?
●ジジさんの回答
 絶対こうなる、と思わせておいて裏切る、しかないと思います。
 私としては意外性より厚みのある物語を練るほうが重要だと思います。

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