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  3. ラノベ新人賞攻略Q&Aまとめ 公開日:2014/03/30

下読みによるラノベ新人賞攻略Q&Aまとめ

 当サイトの掲示板で質問に答えてくださった、二人のラノベ新人賞の下読みさんと、ラノベ編集者さんのQ&Aをまとめたものです。

●審査基準について

●ラノベ編集者さんのコラム 2014/04/25
1次(下読み選考)小説になっていないものを落とす。
2次(編集者選考)自分が担当できない/したくない作品を落とす。
3次(編集者選考)自分が担当できる作品を通す。
4次(編集者選考)自分が担当したい作品を通す。
 大雑把に各選考の役割はこんな感じです。
 文章・構成力がないと編集者側の負担が増えるので担当したくないと思われ、2次辺りで落とされますし、光る物がない作品は新たに担当したいと思われずに3次・4次辺りで落とされます。
 最終選考はハッキリ言って運です。
 ゲストがどの作品を選ぶかなんて編集者にもわかりません。
 なので最終選考に残す作品はどれが受賞してもいいように4次の段階で絞っておき、受賞した際の担当も編集者間で決めておくのが普通です。

■質問 2015/01/24
 私は、長編部門に短編集を数作まとめて出すか、間に合わなければ短編1作で短編部門に出そうと考えています。そこで、お尋ねしたいのが以下の2点です。
・単純に短編をまとめて出すよりは、最終話で何かしら「まとめ」にかかる方がポイントは高いか?
・逆に短編1本で出す場合、「それ一本きりでまとまった作品(SSになりますが星新一さんのようなタイプ)」と、「シリーズ化できそうな作品(有名どころで「キノの旅」など)」で、どちらのウケが良い等の傾向はあるか?
●ジジさんの回答
 個人的にはいくつもの短編で語られたカケラが最後の最後でひとつの意味を成す「伏線起爆型まとめ」形式が評価されやすいかと思いますが、それを抜きにしても、互いに関係のない短編を並べるのは構成や規定という点で心配があります。最低でも連作短編としての体裁は整えるべきでしょうね。
 また、作品はかならずきちんと「完結」させてください。
 書き手が続きを意識すれば、それは思わせぶりな謎を残したり、その作品には関係ないキャラをわざと登場させてみたり、様々にやらかしてしまうものです。
 続きのことは受賞できてから考えればすむことですし、どのみち編集者が薄ら笑いで要求してきますので。

■質問 2015/01/23
 一次落選の作品に選評をつけるにあたり、注意していることなどありますか?また、あまり上手くない作品を褒めるコツなどはあるでしょうか?
●ジジさんの回答
 その応募作の弱点がなにかを指摘することと同時に、応募者の武器や魅力を伝えることです。
 弱点にしても魅力にしても、「それを見つける」ことを念頭に置いて読むことでかならず目に止まります。

■質問 2015/01/19
 受賞作するような作品というのは、選ぶ人の立場から見て、すべてのページに面白いところがあるようなものなのでしょうか?
●ジジさんの回答
 マイナスポイントが少なく、より高い「総合点」がつけられる作品が大賞受賞作ですので、そういうものではないですね。

■質問 2015/01/19
 自分は電撃大賞に投稿して一次落ちした作品を、別の規模の小さい賞にほんの少し手直しして再投稿しました。その作品が少しでも受賞の可能性があるのかが知りたいのです。
●ジジさんの回答
 もちろんゼロではありませんが、その可能性はないものと思っていただくほうが無難かと。
 基本的に、一次を通らない作品には「一次を通らなかった理由」があります。
 そしてその理由の多くは、「ネタ(設定)がつまらない/キャラに魅力がない/物語が拙い」のいずれかです。

■質問 2014/10/10/05
 三次選考の壁とは、どんなものでしょうか?
●ジジさんの回答
 賞の規模によるかと思いますが、大きい賞ならまだ相対評価の域にあるはずですので、作品の売りが明確に押し出せていない(たとえばテーマがはっきりとしない、キャラ性が弱くて好きになれない、目標達成によるカタルシスが弱い等)のではないかと思います。
 小さな賞なら、編集部内で今感や商業性について取り沙汰されていることもあるでしょう。
 対処法として考えられるのは、「自分の武器を強く押し出す」こと、そしてできるならば評価シートで指摘されているであろう弱点を潰すこと。このふたつですね。

■質問 2014/10/03
 「流行の作品を書くべきか」「書きたいものを書くべきか」これはどちらを優先するべきなのでしょうか?
●ジジさんの回答
 以前、別の方にお返事させていただいたことなのですが、昨今の流行――今感はかならず研究してください。これが踏まえられていないと、まず一次審査で残れません。
 ただし、今感はメインネタではなく、あくまでもテイストで充分です。書きたいテーマ8の中に、今感2を混ぜることを意識してください。
 そして、8:2の比率を実現するには、長編なら設定の中にひとつかふたつ、今感のある要素を入れるとよいかと思います。これは設定でもキャラでもストーリーラインでも、なんでもかまいません。
 これによって、今時の流れを意識しつつもオリジナリティのある作品が完成します。

■質問 2014/09/30
 幽霊を題材にした小説は、新人賞では敬遠されているのでしょうか?
●ジジさんの回答
 幽霊ものは鋳型としては一定の人気があり、数については年度によりますが、応募作の中にかならず存在するジャンルではあります。しかし、テンプレを越えられない作品がほとんどで、評価できないというのが審査側の事情になります。
 幽霊ものの難しさは幽霊ものの主流になっている「恋愛」のカタルシスが演出できない(生者と死者は結ばれない)からです。また、それを回避する方法はまさに「生き返る」しかないのですが、生き返るor生き返らない、大分すれば二種類しかないエンディングはどちらも多数の既存作ですでに描かれています。
 そもそもの幽霊ものの起点であるホラーにも言えることですが、幽霊ものはとにかくオリジナリティを出すのが非常に難しいです。
 ちなみにホラーの幽霊もののパターンを大分しても、幽霊(の呪い)から逃げ切るor幽霊に殺されるの二択になります。
 幽霊ものは幽霊という基本的に「見えない」存在がネタの中心になるので、人間側からの関わり方に強い制限がつくこともネタの多様化がしづらい要因ですね。
 キャラとしての幽霊ヒロインに言えることは、【恋心+アクション=恋】は成り立ちますが、身体がないので【恋+愛情行為(肉体的接触)=愛】が成り立たないからこそ難しいです。
 この部分のギミックを解消し、且つ既存作品との差別化を図れなければ、新しい形の幽霊ヒロインは生まれないというのが、私の考えになります。

■質問 2014/09/29
 下読みは短所のあるものを落とす。編集者は長所のあるものを伸ばす。というすみわけでしょうか?
●ジジさんの回答
 下読みは「設定とキャラが立っていてストーリーがおもしろいもの」上げるのが仕事です。
 下読み段階を経て編集部に上がってきた作品から、「商業性」や「レーベルカラーとの兼ね合い」を判断して最終選考に作品を残し、さらにデビュー後の「新人作家の展望や方向を決める」ことが(賞における)編集者の仕事になります。

■質問 2014/09/29
 作品の面白さを判断する基準は何ですか?
●ジジさんの回答
 設定にオリジナリティがあって興味深く、キャラが魅力的で、ストーリーが起伏に富んでおり、冗長でなく蛇足もなく正しく物語が始まって終わっているものをおもしろいと判断します。
 ここに個人の嗜好はありませんが、下読みには尖った部分のある作品を推してくる人もいるようですので、私個人の基準としては。と付け加えさせていただきます。

■質問 2014/09/29
 「ああ、これはこの作品の影響を強く受けているな」と感じられる作品は、大賞ではどの程度の割合で受け入れられているものなのでしょうか?
●ジジさんの回答
 基本的に、よほど作品がおもしろくない限りは一次で落ちます。

■質問 2014/09/29
 既存作品に登場する名前を流用したネーミングは、どの程度許されるのでしょうか?
●ジジさんの回答
 賞に限って言えば、「一切許されない」と思ってかかるべきです。パロディは程度問題ではあるのですが、他人が考えたネタの流用をその応募者の実力と見なすことはできないからです。

●ジジさんのコラム 2014/07/13
 あえて極論を述べますが、「応募作に求められるものは他の応募者とは一線を画すオリジナリティと、他の応募者には描けない魅力を持つキャラであり、それらを生かしたメリハリ(山と谷/緩急)のあるストーリー」です。
 まずは「ありふれた素材を別の角度から見ること」から練習してみてください。
 たとえば『ゼロの使い魔』(2004年6月刊行、著者ヤマグチノボル)なら、ただの人間である主人公が魔法使いになるどころか、使い魔という普通ならありえない立場を押しつけられる……という、他の魔法をテーマにした作品にはない独自性がありました。
 ありきたりのテーマをとにかく1回でも2回でもひねること。これが第一歩になるかと思います。
 同時にキャラの強化ですね。
 大抵の場合、キャラの弱さはそのキャラの心情面での掘り下げと心情エピソードの不足からきますので、残念ながら落選した作品を、「主人公、ヒロインの心情とその動き(変化)をきちんとドラマ化して描けているか?」という視点でチェックしてみてください。

■質問 2014/07/12
 電撃大賞で拾い上げがある事は承知していますが、実際、それは他の賞でも行われている事なんでしょうか?
●ジジさんの回答
 これは普通に行われています。
 通常の場合、拾い上げは編集部審査の段階で行われます(時々もっと早い段階で行われることもありますが、少なくとも二次以降になります)。
 最終審査には上げられないけれども、手放してしまうのは惜しい。と編集部や編集者が判断した作品が拾い上げという形でレーベルに吸収されることになります。
 もちろん、最終に上がらない作品なわけですから弱点が多く、ものによっては鬼の編集者に1ページ単位でダメな点をあげつらわれる地獄の改稿を強いられることになります。

■質問 2014/07/12
 このジャンルはNGという場合もあるのでしょうか? NGであることが多いジャンルや、商業的に厳しい、これはまず通らないというジャンルがあれば教えて下さい。
●ジジさんの回答
 年度や賞の傾向によって、このジャンルは売れないのであんまり押さないでほしいですねー的なことを臭わされたりすることがあります。
 NGではないですが、同じ出来映えの作品で相対評価する際、選択肢がおのずと限られてくることがあります(絶対評価でおもしろいと言い切れる作品はそれでも上げます)。
 流行のジャンルや商業的に厳しいジャンルの判断は作家としての才覚に直結するものですから、応募者の方が自らリサーチし、判断しなければなりません。
 ただ、少し前に大ヒットし、その後ブームが続かなかった、来なかったようなジャンルは難しいですね。

■質問 2014/07/06
 公募で落選作した作品を、他の公募へ送る際に、手直し程度では無駄になる、というような記述をときどきみかけるのですが、これは文章のレベルをあげたとしても、あまり意味がないということなのでしょうか?
●ジジさんの回答
 一次で落ちた作品なのであれば、全面的に見直しをし、完全リフォームするべきです。
 なぜなら一次で落ちる作品は「一次で落ちるだけの理由」があるからです。その理由は大抵の場合、設定(物語の根幹に関わるネタ)とキャラに魅力がないことにあります。
 私は複数の新人賞に関わっており、年に何度も同じ作品を読むことがありますが、私の経験では一次落ち作品を二次に上げられたことは1度としてありません。何度も使い回される作品は特にそうですが、リフォームされていたとしても肝心の「一次で落ちた原因」がまったく解決されていないからです。

■質問 2014/07/06
 三次選考に進んだ作品を、評価シートにそって改稿してを翌年同じ新人賞に送ると、今度は一次すら通りませんでした。これっておかしくないですか?
●ジジさんの回答
 理由は簡単で、他の応募者の方が他作品とだけ戦っている中、風月さんの改稿作は「去年や一昨年の自分の作品――改稿前作品たちとも戦わなければならない」からです。 
 そして結果的に「(この作品を見るかぎり)伸びしろがない」と判断されていることは確実でしょう。
 何度も同じ作品を応募してくる応募者の方は、審査側に「新しい作品が作れない人」として認識されます。同じ完成度の他作品と並べられれば、作家としての期待値が低いだけに落とされやすくなります。

■質問 2014/07/05
・読みづらい文章。
・最後にストーリーとは関係ないのですが、よくわからない矛盾(描写ミス)。
・キャラが女性ばかりで主人公も女性。
 上記の三つではどれが一番マイナスになりますか?
 いや実はですね、この三つすべて応募作に……ゲフン
●ジジさんの回答
 設定(ネタ)や実際の内容がわからないので、それを考慮しないでの順位づけになりますが、
1位:読みづらい文章
 読みづらさの質によりますが、やはり小説というメディアである以上、文章の質は目に付きやすいものです。うまくない、というものならそれほどのマイナスにはならないかと思いますが、読者対象層にそぐわない文章(やけに難解、スマホ小説系の文法運び等)、オリジナリティが迸りすぎてわけがわからない文章などはかなりのマイナスになりますね。

2位:最後にストーリーとは関係ないのですが、よくわからない矛盾(描写ミス)
 この構成でなぜこのエピソードがこんなことに? となり、構成のチェック欄でマイナスがつくことになります。

3位:キャラが女性ばかりで主人公も女性
 物語において重要キャラが女性のみでなければならない必然性があるなら、この項目は気にしなくても大丈夫かと思います。

●ジジさんのコラム 2014/07/04
 既存作とかぶっている作品が賞を取ることはけしてありません。もちろん、上に上がることもありません。

●ジジさんのコラム 2014/07/03
 ご自身が「作品の売り」だと提示しているはずの設定が生かし切れていない方が多いです。ぜひ、せっかくの設定やキャラを活用して使い倒す術を考えてみてください。

■質問 2014/07/04
 ジャンルによる有利不利はありますか?
●ジジさんの回答
 ジャンルに関係なく「他作品よりも高いプラス評価をつけられる作品」を二次選考に上げることになります。
 このプラス評価とは感情的なプラスということではなく、猛烈に暗いディストピアものがあったとして、「いかに見所のある悲劇を演出し、その中でいかに魅力的なキャラが魅力的なバッドエンドで果てられるか」というマイナス方向のカタルシスがあれば、それはプラス評価するということです。
 設定(ネタ)のオリジナリティ、キャラの魅力、物語の完成度、これらがそろっていればまず下読み段階でジャンルの選択を理由に落ちることはありません。

■質問 2014/07/04
 ライトノベル読者のニーズを押さえた作品とはどのようなものですか?
●ジジさんの回答
 編集部選考前の下読み選考枠(良作を上へ送り出す選考)で言うならば
「ライトノベル的な読みやすい文体」
 が一定以上に意識できており、
「他の同系統作品と差別化できることが最低条件の、良い設定」
 この部分が強く押し出せているなら充分以上に戦える作品であると言えます。

■質問 2014/07/03
 話がまとまっていない作品が送られてきた場合、即一次落ちだったりしますか? そうでなくとも大きな減点要素になりますか?
●ジジさんの回答
 選考は基本的に他作品との相対評価ですし、一次では強い武器を感じる作品は上げてしまうことが多いので、即落ちるとは言い切れませんが、ストーリー、構成でかなりのマイナス評価がつくのは確かですね。

●ジジさんのコラム 2014/07/03
 ご自身が「作品の売り」だと提示しているはずの設定が生かし切れていない方が多いです。ぜひ、せっかくの設定やキャラを活用して使い倒す術を考えてみてください。

●ジジさんのコラム 2014/04/04
 一次審査は応募作の「いいところ」をメインで見ます。
 二次以降は「いいところ」だけでなく、「悪いところ」も審査に加え、総合的な完成度を見ます。

■質問 2014/04/04
 応募作品のだいたいのレベル分布はどのようなものなのでしょうか。
●ジジさんの回答
 一次審査で基準的に文句なく二次審査へ送り出せる応募作は、100本のうち1、2本ですね。
 あとはなにかしらの問題や疑問があり、他作品との相対評価を行うことになります。

■質問 2014/03/31
 ある新人賞の過去の受賞作なんかを見ていくと、どことなく似たような部分を感じたり、数多く受賞作がある中でまず穫った試しのない作風、ジャンルがあったりしますが、やはりレーベルカラーというものは、選ぶ側の好みとして新人賞受賞作に強く反映されるものなのでしょうか
 ちょっと具体的に云うなら、10回以上の歴史のある新人賞でも、ファミ通がエロコメを穫った例はまずありませんし。MFがダークな作風を穫った例もまずありません。
●ジジさんの回答
 好みよりもレーベルの「実績」が関係してくる場合が多いですね。
 自レーベルでうけている系がこれで、主力読者層がこのくらいの年代だから、読者層の求める物語はこういう系だろうという選考側の読みは、選考にも改稿指示にも当然反映されます。
 また、これは応募者の方の読みもあるかと思います。
 このレーベルであればこのジャンルのほうが通りやすいかも……という読みですね。
 実際、応募作のジャンルというものは、ある程度レーベルごとに偏りがあります。
 応募作の一定数が「レーベルカラー」を最初から考慮していれば、必然的に受賞作となる確率がそれだけ高い。ということにつながりますし。
 ただ、それらとは関係なく、「これはすごい」という作品がいきなり賞を獲ることも少なくありませんので、一概には言えない部分もあるのですが。

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