ライトノベル作法研究所
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  4. ラノベを取り巻く環境公開日:2013/10/27

下読みによるラノベ新人賞攻略Q&Aまとめ

●ライトノベルを取り巻く環境について

■質問 2015/01/24
 現状のネット、スマホ小説の長所や欠点を、ジジさんは、なんだと見ていますか?
 この間、Web小説投稿サイト「小説家になろう」を覗いたのですが、なんていったらいいのかしら、絵のない絵本を読まされているよう感覚に襲われました。一話分の内容が恐ろしく短いうえ、キャラクターの相関図やら間の空きすぎるレイアウト等、物足りなさを感じました。
●ジジさんの回答
 絵のない絵本のような感覚は、スマホ小説には一画面を「空間デザイン」する能力が必要であるからこそ、発生するものです。
 一話分の内容が短い、間の空きすぎるレイアウト等は、スマホ小説(というか、スマホ小説の投稿サイト)がコミュニケーションツールとしての機能を持っており、更新という作業を細かにすることで読者との「繋がり」を保っているからですね。
 スマフォ小説の長所は、
1・通信環境が整っていれば、どこでも見られ、投稿できること。
2・読者との目線が非常に近い、いわば同人誌的なコミュニケーションツールとしての秀逸さです。

 「小説家になろう」もそうですが、スマホ小説の読者になる人は書き手に「斬新さ」や「その人ならではの味」は求めない傾向があるものと思っています。
 求められるものは、自分の好みからはみださない「安定」であり、自分の声が書き手へダイレクトに届き、反映される「極限に近しい距離感」です。
 これはある意味長所にもなるわけですが、馴れ合いは作品のクオリティを下げますし、更新さえすれば繋がっていられる安心感は、書き手から「支持されるものをなんとしてでも書かなければ」という意欲を奪う一面がありますね。
 スマホ小説の審査をしていると、そのあたりが目立って見えてきます。

■質問 2015/01/21
 ラノベでのヴィジュアル的な表現について。質問なのですが、アニメや漫画ではよく使われるけど、文字媒体にすると、イマイチな表現やシーンは何か、聞かせていただければ、と思います。 
●ジジさんの回答
 「動き」でしょうね。
 そもそも文章媒体では、人間や物体の動きは読者に経験則で想像してもらうことが前提ですし(たとえば人間は肘関節が10個あったりしない、地球においては投げられた物体はかならず地面に落ちる、などという強固なお約束があるからこそ、あれこれ“はしょって”描写できるわけです)、想像外のことを知らせようとすればいちいち説明をしなければなりません。
 思考や感情という、内面的なものを描くのは文章媒体の得意とするところですが、行動や動作の過程と読者が経験則で思い描けない結果は苦手ということになるでしょうか。
 だからこそ、読者が思い描いてくれる範疇に収めた、さらっと読める文章表現は大事になりますね。

■質問 2015/01/22
 視覚媒体(アニメ)と文字媒体(ラノベ)のストーリー表現の違いとは何でしょうか?、アニメでは簡単に表現している物語が、文章にした途端に表現するのが難しくなるのはどうしてでしょうか?
●ジジさんの回答
 視覚的表現は、物事や状況の「外見を直接的に」ユーザーへ伝えます。ユーザーが「想像」で情報を補完する必要がないのが特徴かと思います。
 文章表現は、そもそもが直接的表現方法ではないですよね。物の形状から状況、そこにいる人々のことまで、いちいち説明してあげないと1シーンを再現できません。そしてなにより、「ユーザーに対して想像による補完を強いる」のが特徴かと。
 まとめれば、
 視覚表現はユーザーに想像という負担をかけない。
 文章媒体はユーザーに想像を強いないと成立しない。
 ベンダーが一方的にがんばれば成立する視覚表現と同じことを、ユーザーの協力なしには成立しない文章媒体でやろうとしても、うまく行かないのは当然かと。
 このあたりはシナリオなどを書く機会があると思い知ることになります。
〈追記〉
 大事なことを忘れておりました。
 「(理解/補完までの)時間の差」も大きなちがいです。
 ぱっと見てわかる映像や絵と、説明を重ねることで、映像以外の部分(心情や背景)もわかる代わりに補完までの時間がかかる文章では、取るべき手段が同じでよいわけがありません。
 どれだけ文字を尽くしても、読者にその文字の意味や描写を頭の中で映像化してもらえなければ無駄になってしまいます。
 だからこそ、読者対象層ががんばって考えることなく、こちらがはしょっている部分までさらっと脳内再生してくれるよう、わかりやすい描写、わかりやすい文章が重要であると思っています。

■質問 2015/01/19
「ネット上で活動する場合、話が王道で人に受け入れられやすいものを書ける人間に人気が出るのでしょうか?」
●ジジさんの回答
 そのとおりだと思います。
 賞というものは、より多くの「その応募者ならでは」の要素を求めるものですが、ネット読者はもっとシンプルに「読んでおもしろいもの」を求めるものかと。
 このあたりはラノベなのか一般向けなのかでも変わってくるのですが、ラノベの場合は、「うまい」や「その人ならではの味」よりも「安心しておもしろいと読者が思える作品」をアップしてくれる作者こそ正義、という一面がありますね。
 言い方を変えれば、ネット小説の書き手は「プロ作家」と同じ目で見てもらえる・見られてしまうことになります。

■質問 2014/10/01
 「規模の大きくない賞」に応募する価値はあるのでしょうか?
●ジジさんの回答
 中小のレーベルには、以下のメリット・デメリットがあります。
〈メリット〉
・大手に比べれば競争率が低い(デビューしやすいかはともかく)
・編集者が抱えている作家の数が少ないので、それだけ目と手をかけてもらえる可能性が高い
〈デメリット〉
・レーベル消滅の危険がある
・本が注目されず、売り上げが伸びない可能性がある

■質問 2014/10/01
 ボツになった作品は、プロになったら使えるのか?
●ジジさんの回答
 使えます。
 新人賞は、設定とキャラのエッジの立ったものが上がりやすく、その中でマイナス点の低いものが受賞しやすい傾向があるのですが(以前、私は出版社が確実に手に入れられるものは受賞作のみ、と述べたのですが、まあ、そのあたりの心情と言うか、事情ですね)、プロになればエッジだけでなく、「安定感」が重視されるようになります。確実に売れる見込みのある、いわゆる王道を書ける能力ですね。
 実際、デビュー作がヒットする作家はそれほど多くありません。たいがいは2、3作めに、応募作なら確実に受賞できないであろう内容の作品を当てるパターンが多いものです。典型的な例で言えば、濃厚なパロディやエロコメ、テンプレ作品ということなります。
 ですので、賞には通じないけれどもプロ作品としては通じる作品というものは、確実に存在するのです。また、プロになれば編集者というアドバイザー兼プロデューサーがつきますので、そのあたりも関係してきます。
 さらに、新人のうちはとにかく企画が通らないものですので、多様なストックを持つことでその危機を乗り切れる可能性があります。
 ゆえに、手持ちの武器は、持てるだけ持っておくのがよいですね。

■質問 2014/10/02
 プロになったら王道を書ける能力が大事、王道がヒット作になるというのは意外でした。だから、王道なのでしょうか?
●ジジさんの回答
 このあたりが難しいところなのですが、王道とは多くの読者に支持されるからこそ王道という大きな一面があるのです。
 ただ、その王道というテンプレは、賞においては敬遠されがちです。なぜならそのテンプレは、多くの有能な作家と真摯な読者が力を合わせて築き上げてきた、物語形式の強固な鋳型だからです。
 ようは、「王道はその応募者が考えたネタではない」ということですね。
 ちなみに、ボツになった作品を世に出せる例として、立場は応募者の方とちがいますが、野村美月氏の『陸と千星(ファミ通文庫)』のあとがきを見ると業界の薄闇が垣間見えます。

■質問 2014/09/29
 最近(2014年後半)「小説家になろう」作品(小説投稿サイトからデビュー)は売れるけど、新人賞受賞作品が売れにくいという現象が起こっているようです。ボカロ小説にも負けているそうで……これは新人賞受賞作品の質が落ちているのが原因なのでしょうか。
●ジジさんの回答
 特に質が落ちているとは思いませんが、今はネット発のメディアが盛り上がっているというのは確かかと思います。
 ただ、「おもしろいものはかならず売れる」ものです。

●ジジさんのコラム 2014/07/13
 作家にせよアニメーターにせよ、自分がサービス業であることを意識できなければすぐに暗黒面へ堕ちてしまいます。
 好きな仕事で苦しめる喜び、好きな仕事で苦しんだ結果得られるお金、お金を得られたことで潤う生活と人格、生活と人格が潤ったおかげで上がる作品へのモチベーションとファンへの還元……すべてが連動してこそ良作が送り出されるものかと思いますので、物を作る人間は自分を常に幸せな状態に保つことが大事かと考えています。

■質問 2014/07/11
 これまでにないジャンルの物語を書いてしまいました。この場合は、ジャンルが特定できないということで選考からはずされることはないのでしょうか?
●ジジさんの回答
 「まあこれはラノベってことでいいだろう」というラノベならではの懐の広さ(あいまいさ)をもってしてラノベっぽいと判断できるなら、それはラノベの範疇に入ります。
 ですので書き上げた作品がカテエラ確定でないなら、それでいきなり落とされることはないかと思います。
 ただ、相対評価の中でどの作品を上げるか悩んだ際、おそらくは候補から外される筆頭に置かれる危険性はありますが。とはいえもちろん、作品がおもしろければその危険性は下がっていきます。

■質問 2014/07/07
 ラノベに必要な「今感」とはなんでしょうか?
●ジジさんの回答
 ラノベには今現在好まれる人物像というものが存在し(俺様やらツンデレやらの記号で表わされる人格設定です)、通常、登場キャラクターは数が限定された記号の中のどこかに属するよう創られていきます。この、今現在の好みから外れたキャラは当然人気が出ません。
 また、セリフまわりも同様で、創世記には結構な率で文語調セリフをしゃべっていた主人公が、今やラノベ的常識に沿った口語をしゃべっているわけです(一般エンタメではこのような話し方をするキャラはいません)。
 文章まわしもそうで、ラノベ独特の短文の活用による空間(空白)デザインは他の小説メディアではほとんど重要視されない要素ですね。ラノベ以外で思いつくのはスマホ小説くらいです。
 例を挙げていくと膨大になってしまうので一旦切りますが、強引にまとめるなら「今現在のラノベにおいて常識とされている要素――設定、キャラ、セリフ、文章等、すべての構成要素とそれを組み立てる作家性(感覚)」こそが今感の正体ではないでしょうか。
 たとえば純文学があの時代の今感を映した娯楽読み物であったことを考えれば、そう言ってもよいのではないかと。
 さらに言葉を絞るなら、「ラノベ読者が違和感なく「ラノベだな」と思える要素が今感」。
 ですので、 流行の要素であれば「今感」は出しやすいと言えます。

●ジジさんのコラム 2014/07/08
 アニメやゲームなどの創作物を多人数でよりよく作っていくためにはどうしたらよいかについての私見を。
 作家でもアニメ関係者でも、自分が別の誰かと力を合わせてひとつの作品を組み上げる際は「創作者ではなく制作者」になるのだということを意識するべきでしょうね。
 創作とは、ひとりでひとつの作品を構築する立場になければうまく機能しないものかと思います。それこそ神のように自分の感性と計算、技術だけで作品という世界を構築すれば完璧な世界ができあがるでしょう。が、そこに他人という別の神の意図が入ってくれば話は別です。破綻を避けるには互いの考えを尊重し、すりあわせを実行できる「社会性」が必須です。
 そこを無視して「独自性」や「感性」を押しつければ諍いが起こりますし、他人同士が寄り添うことで機能する「社会」は壊れてしまうわけです。
 長くなりましたが、アニメやゲームなど、個人プレイで作りあげられないものを作る際は、原作者だろうとディレクターだろうと制作チーフだろうとなんだろうと、全員が「制作者」であるべき、というのが私の意見になります。

■質問 2014/07/07
 ラノベに必要な「今感」とはなんでしょうか?
●ジジさんの回答
 ラノベには今現在好まれる人物像というものが存在し(俺様やらツンデレやらの記号で表わされる人格設定です)、通常、登場キャラクターは数が限定された記号の中のどこかに属するよう創られていきます。この、今現在の好みから外れたキャラは当然人気が出ません。
 また、セリフまわりも同様で、創世記には結構な率で文語調セリフをしゃべっていた主人公が、今やラノベ的常識に沿った口語をしゃべっているわけです(一般エンタメではこのような話し方をするキャラはいません)。
 文章まわしもそうで、ラノベ独特の短文の活用による空間(空白)デザインは他の小説メディアではほとんど重要視されない要素ですね。ラノベ以外で思いつくのはスマホ小説くらいです。
 例を挙げていくと膨大になってしまうので一旦切りますが、強引にまとめるなら「今現在のラノベにおいて常識とされている要素――設定、キャラ、セリフ、文章等、すべての構成要素とそれを組み立てる作家性(感覚)」こそが今感の正体ではないでしょうか。
 たとえば純文学があの時代の今感を映した娯楽読み物であったことを考えれば、そう言ってもよいのではないかと。
 さらに言葉を絞るなら、「ラノベ読者が違和感なく「ラノベだな」と思える要素が今感」。
 ですので、 流行の要素であれば「今感」は出しやすいと言えます。

●ジジさんのコラム2014/07/06
 スマホ系の小説について。
 ケータイ小説の進化形といって差し支えないかと思います。
 特徴としては、スマホの一画面をひとつの空間として、文字配置をデザイン化して読者に見せるものであること、そしてE★エブリスタのような投稿サイトにおいて「連載」という形で物語を綴ることが挙げられます。
 また、このようなサイトはコミュニケーションツールとしての一面も持っており、人付き合いのうまい人は人気投票に強い、という傾向もあります。
 このメディアで元気があるのはやはり女子向け恋愛ものですね。スマホで数ページ分更新していくだけで反応が返ってきますし、集英社ピンキー文庫を始め、複数の専用レーベルからかなりの本数が書籍化されていて、書き手のモチベーションも高いです。
 フォント変えや文字のビジュアル化、「のうりん」 (2011/8/12刊行)のようなイラストと本文の連動などは、スマホ小説では必須であり、その能力の高低で人気が上下してしまう現実があります。

■質問 2014/07/08
 スマフォ小説で男子中高生向けのラノベが弱いというか未成熟な原因って、やはり、書き手が少ないうえに、オンラインゲームなど競合するコンテンツが多いのでしょうか? それとも、既存のラノベの電子化が進んでいないような、権利やコンテンツの運用自体が不慣れなため、各社、消極的になってしまっているのでしょうか?
●ジジさんの回答
 ラノベに関しては、まだまだスマホ系作家の青田刈りに乗り出している出版社が少ないということもありますが、スマホ小説サイトよりも確実にデビューできる投稿サイト(まさに「小説家になろう!」ですが)があり、書き手がそちらへ固まってしまっているのが大きな原因でしょうね。
 女子が多いのも、前のレスで述べたデビューへの道が太いという理由が強いかと思いますし。
 また、スマホ小説のラノベは普通のラノベの賞で落選したものをそのまま載せてしまう例も多く、書き手の意識面での問題もあるのかなと。

●ジジさんのコラム2014/07/06
 時代物は、ラノベの応募題材としては非常に難しいジャンルです。SFに科学考証という壁があるのと同様、時代考証という厚い壁があるためです。これは歴史的に架空だから考慮の必要がない、というものではありません。
 架空性を押し出すのであれば、物語の時代設定(戦国時代風の世界なのか江戸時代風の世界なのかで架空世界の有り様も変わってきますので)を緻密に設定し、さらにそれを読者に押しつけないよう伝えるための工夫をしなければなりません。
 まとめるなら、ラノベは読者に想像しやすいもの、というのがひとつの指針です。時代物は中高生読者になじみのない「時代」という大きな専門知識を想像させなければならないため、ハードルが高いのです(逆にラノベ読者は普通の人だと想像しにくい「異能力」などの題材にはなじみが深いですので、特にくどくど説明する必要はないわけですね)。

■質問 2014/07/03
 エロ要素を真面目に、かつ読み物として面白く読めるように書く、というのが現在の私の作風ですが、応募するとしたらどの賞がお勧めできますか?
●ジジさんの回答
 一般の場合、エロ要素を含む作品を出しているレーベルならどこでも大丈夫かと思います。

■質問 2014/07/03
 ライトノベルではなく一般文芸に近いものを書いていますが、もし公募に出すとしたらどういった部分を押し出していけばいいでしょうか?
●ジジさんの回答
 能力や性格、状況ではなく、主人公の「心情」に読者が共感できることが最重要ですね。

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