ライトノベル作法研究所
  1. トップ
  2. ライトノベルの書き方
  3. ギャグの作り方
  4. パロディは共感のためにある公開日:2014/07/11

パロディは共感のためにある

 ライトノベルにおけるパロディの目的とは、作中のキャラクターがオタクであることを示して、読者に共感してもらい、キャラクター、作品、作者を好きになってもらうことです。

 人間は自分と同じ価値観、属性を持っている人間に対して、こいつは俺の仲間だ! と共感して好きになります。
 ライトノベルとは10代のオタク向け、あるいは少年の心を持ち続けているオタク向けの小説です。彼らに作中のキャラクターを好きになってもらうためには、キャラクターがオタクであることを示すのが効果的なのです。
 そのため、例え読者が元ネタを知らなくても、既存の漫画、アニメ、ゲーム、ラノベのパロディを入れて笑いを取ろうとします。

「撃滅のセカンドブリッドを喰らいたくなかったら、それ以上は口にしないことだ」
「す、すいませんでした……。抹殺のラストブリットは勘弁してください」
引用・やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 2巻 著者:渡航 2011年7月刊行

 こちらは、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。2巻』で主人公の比企谷八幡が、美人女教師の平塚静に怒られている場面です。
 平塚はアニメ『スクライド』(2001年放送)の主人公の技を叫びながら、比企谷にパンチを喰らわせています。それに対して、比企谷は同じくスクライドネタで攻撃をやめるように懇願します。息のあった師弟関係ですね。 

 ここで重要なのが、彼らが漫画、アニメのネタで盛り上がっていることがわかることです。

 『スクライド』のことを知らなくても、ラノベ読者なら『撃滅のセカンドブリッド』という言葉から、これが漫画、アニメに登場する必殺技名であることが推測できます。これによって、比企谷八幡と平塚静が重度のオタクであることがわかり、彼らに対する読者の好感度がアップします。彼らは我々と同じなのです!
 また、万が一、元ネタがわかったら、さらに楽しめるので、10代の少年だけでなく、大人のオタクの心も引っ掛けるフックとして機能します。

「じゃあ、鍵! お前は、アニメを見たり漫画を読んでて、こう思ったこともないというのか!」
「? なんだよ」

「『戦いは無益なことよ』とか正論言うヒロイン、ちょっとウゼェ、と」
引用・生徒会の六花 著者:葵 せきな 2009年7月刊行

 こちらは『生徒会の一存』シリーズ第6巻での主人公、杉崎鍵とヒロイン椎名深夏のやりとりです。彼らは、漫画、アニメのあるあるネタで通じあっています。
 これによって、二人がオタクであることがわかり、同じく、オタクであるラノベ読者の二人への好感度がうなぎのぼりにアップします。

 また、ヒットしたライトノベルは、レベルの高い年季の入ったオタク向けのネタを、そのまま読んでも違和感のないようにさり気なく織り交ぜています。これによって、購買層の間口を広げているのです。

「油断したわ……あんたのフェイスフラッシュをもろに浴びてしまうなんて……」
「俺のフェイス……? ……あ、メ、メイク濃かったか……」
引用・とらドラ!5巻 著者:竹宮 ゆゆこ 2007年08月刊行

 こちらは、『とらドラ!』の5巻で、主人公の高須竜児が文化祭の出し物プロレスショーの悪役メイクによって、元々のヤンキー顔がさらに凶悪になってしまい、ヒロインの逢坂大河をビビらせたシーンです。
 元ネタは少年ジャンプの漫画『キン肉マン』(1979年発表)です。フェイスフラッシュは終盤になって出てきた技なので、このパロディネタは、キン肉マンを最後まで読み込んでいないとわかりません。 作者のオタク知識すげぇ!

 そのまま読んでも違和感がなく、かつオタク知識が豊富で元ネタがわかるとさらに楽しめる訳です。 

 パロディのコツとは、たくさんの漫画、アニメ、ゲーム、ラノベのパロディを随所に散りばめ、作中の登場人物と作者がオタクであることを示して、読者に共感してもらうことです。そうすることで、キャラクター、作品、作者への好感度がアップします。

 そのためには、例え元ネタがわからなくても楽しめるような配慮と、オタク知識に精通することが重要だと言えます。

次のページへ >> パロディのデメリット

携帯版サイト・QRコード

QRコード

 当サイトはおもしろいライトノベルの書き方をみんなで考え、研究する場です。
 相談、質問をされたい方は、創作相談用掲示板よりお願いします。

意見を送る

『パロディは共感のためにある』に対して、意見を投稿されたい方はこちらのメールフォームよりどうぞ。

カスタム検索