ライトノベル作法研究所
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  5. 戦いは更衣室のなかで公開日:2012/07/04

戦いは更衣室のなかで

komarinさん著作

「皆の者、準備はいいかー!!」
「「オォー!」」
 青春の真っ只中をフリーラン中の高校生である我々の叫びは、竜の咆哮が如く雄々しい。
「おし、今日は何の日か言ってみろ佐藤!」
「うっす! プール初日なのであります!」
「うむ! その通りだ! ではプールと言えばなんだ? 佐藤!」
「それはもちろん覗きであります!!」
 佐藤が下卑た笑いを浮かべる。さすがは我が片腕、私とのシンクロ率が暴走レベルだ。
「そう! プールと言えば覗き! ごく当たり前の事だ、覗きが無ければプールでは無いと言ってもいいだろう。覗きをせずになんで共学になんか入ったのかと! 男子校にでも行ってアッーなことでもしてればいいのだと! そう私は思う!」
「「せやなー!!」」
全員が叫ぶ。今の我々はさながら兵隊だ、いや戦場に赴く……戦士だ!
戦友を見渡しながら私は激を飛ばし続ける。
「準備を怠っている者はいないな!? いるなら今すぐ前に出て歯を喰いしばれ! その歯の間にう○ い棒をぶち込んでやろう。……何でか分かるかサトーウ!!」
「わ、わかりません!」
「私の趣味だー!!」
「「イーヤッフー!!」」
こうして盛り上がった我々は時が来るのを、体育の時間になるのをひたすらに待った。しかし余りにも退屈だったので佐藤にう○ い棒を三本刺しておいた。

「……時は満ちた」
 更衣室の中央で私はニヤリと笑う。
「さすが我らがリーダー! たまらなく中二病っす! でもそこがかっこいいっす!」
「今こそ! 我々の真価が問われる時だ! 各自持ち場につけーい!」
「了解!」
 私の号令にそれぞれのポジションに移動する。
 窓の近くにはスタイルが抜群な伊藤、天井と壁の隙間から見える位置には上半身に自信のある後藤、そして絶好のポジション、壁の穴の正面には私が陣を取る。顔は可愛いが体が残念なので佐藤には待機していてもらう。
 これが私たち現役女子高生の本気!
 気になる男子を獲るためなら覗かれることすら望むのだ。
 いつ男子が覗いてきてもいいようにポージングをキメて待ち受ける我々。ポージングと言っても狙いすぎは良くない、相手はあくまでも着替え中の女子を覗きたいのであって、更衣室の中でグラビア的なポーズをしている女子を見たいわけではないのだ。そんなことは長年の研究で分かっている。
 さぁ、こちらの準備はできているぞ! いつでも覗いてこい、この飢えた野獣どもがー!!

――十分後――

「なぜだ!? なぜ誰も覗いて来ない!?」
 私はうろたえていた。佐藤の口にう○ い棒と間違えてからあげ棒を刺してしまうほどに。
 十分間もワイシャツから手を抜く瞬間をキープしていた私は腕がもう限界に近かった。そして靴下を脱ぐ瞬間をキープしていた後藤はキツすぎて涙を流している。
 くそぅ、なぜだなぜ覗きに来ない男共よ! 私たちはこうまでして待っているというのに! 
 私はたまらず目の前の壁にへばりつきその穴の中を、男子更衣室を覗き込んだ。

 そこには、覗かれるのを待ち、ポーズを決めている男子達の姿があった。

「なんで……なんで、男子が覗かれるのを待ってるんだよぉぉおおおおおおお!」
 こうして我々の戦いは幕を下ろした。
 全く、草食系男子にも困ったもんだ。このベジタリアンがっ!!

作者コメント

えー……反省も後悔もしていません!
ひっさびさに書いてみたら……手が止まってしまってこんな物でも書くのに二時間くらいかかってしまいました。感想お待ちしております。

2012年07月04日(水)22時52分 公開

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感想

ラスタさんの意見 +20点2012年07月05日

同志よおおおぉぉぉ――――!
……すみません、取り乱しました

初めまして
ラスタと申します
作品、読ませて頂きました

うん、面白かったです
ギャグが好きな私は気に入りました

しかしながら、やはり描写が少ないです
ギャグ作品にはありがちなことなのですが、やっぱり小説である以上は描写を挟むべきでしょう
その方が情景を想像して、より笑えると思いますし

いやぁ~、笑いましたね
ラスタはギャグが大好きです
男女のミスリードにも見事に嵌りました
私もこういう作品書いたことあるんですけど、この作品の足元にも及ばない駄作でした
いつかこんな笑える作品、書いてみたいです

感想に不備等ありましたら申し訳ありません
私は素人なので見当違いが多々あると思います
ご容赦ください

ではでは、次回作も期待しております

波紋さんの意見 +20点2012年07月05日

こんにちは波紋と申します。早速感想を書かせてもらいます

うーん……感想ですが、

とても面白かったです《笑
いや、本当に、途中まで全然気づきませんでした!
のぞきを大げさにする男たち。まさかの、見られるのを待つ女子たち。そしてまさかまさかの結末。起承転結で構成された見事な展開だったと思います。

指摘としては、結末がなんともあっさりとした言葉でつづられていたこと。
あと、ラスタさんも指摘してましたが、描写が少ないということですね。
男子たちや女子たちの会話等はとても面白かったので、もっと室内の様子や雰囲気等の描写があればより想像がたやすくて感情移入しやすかったと思います。

自分もその場にいるようなドキドキ感とハラハラ感が感じられるような描写があれば、なお良しです。だって、のぞきも、のぞかれるのも、すごーくドキドキしますよね?《笑

それでは、乱文長文失礼しました。
次回作待ってます><

ツンデレ♂さんの意見 +20点2012年07月05日

拝読させていただきました。ツンデレ♂と申します。

最後で笑いました。
この展開は全く想像できませんでした。
不意をついてくるとはさすがです。 

みなさん仰っておられるように、描写を増やせば更に良い作品に仕上がると思います。

次回作も大いに期待させていただきます。
以上です!

純金さんの意見 +30点2012年07月05日

読了しました。

面白かったです。
特に、ワイシャツの袖から腕を抜く体勢で十分間フリーズしていた私を想像すると、『ンフフッ!』という軽く自分で引くような笑い声が漏れました。

何というか、「何やってんだろうこいつら……」感がすごく好みです。

次回作にも期待してます。

赤い杯さんの意見 +30点2012年07月06日

komarin様、こんばんは。
赤い杯と申します。拝読しました。
感想を書かせていただきます。

とても楽しかったです。最近の男性への皮肉がまた、たまらなかったです。
本当にお見事なミスリードでした。全くわかりませんでした。

私には、特に変だなと感じるところはなかったです。

男子がポーズを決めているというのがまた、笑いを誘いました(笑)

失礼いたしました。
次回作も楽しみにしています。

嘉套 祐さんの意見 +20点2012年07月07日

 初めまして嘉套ともうします。

 いいですね、初めて見ました。女子視点の覗き系w
 ただ、冒頭で覗き系だということと、口調が男口調だったのがかみ合って、主人公たちが男の子だと勘違いしてしまいました。

 まあ、ないようがよかったので読後感には全く響きませんでしたけどww

兼子さんの意見 +30点2012年07月09日

こんにちは。拙作に感想ありがとうございました。感想返しにおうかがいしました。

これは、枚数的にいっても内容的にいっても、電撃掌編の『真夏の戦士たち』お題作品なのでしょうか?
仮にそうでないとしても、十分通じるくらい真夏の戦士たち作品として成り立っていたし、面白かったです。

冒頭のしゃべりが軍隊調で、キャラたちの性別を隠蔽しているミスリードは上手かったです。
ただ、「男子校にでも行ってアッーなことでもしてればいいのだと!」の部分は、ミスリードとしてはちょっとズルいかな、と思いました。ノゾキに来る男子のことを言っているわけですが、この一文は無くても良かったように思いました。

中盤で、ノゾキノゾキと言っていた奴らが女子だったことが分かるどんでん返しと、それに呼応した恰好のオチも良かったです。

もう一度振り返ってみてもったいないと思ったのが、最初のパート。キャラは複数いるはずですが、個性も書き分け切っていないですし、名前が出てくるのもごく一部。それでいて中盤ではキャラ名がけっこう出てくるので、それだったら最初のパートから上手い具合にキャラを描き分けがしっかりできていたらな、と思いました。

とまあ、細かいこと言いましたが、全体としては楽しませていただきました。ノゾキネタは誰でも考えつくだろうなとは思いますが、女子視点から肉食ぶりを描くのはひねりがあって良かったです。
簡単ですが、感想は以上です。

makkuxさんの意見 +30点2012年07月09日

拝読いたしました、makkuxです。

男子からの覗きを待っている女子達のあほらしい姿を楽しむ作品だな、と感じました。
草食系男子と肉食系女子、という今時の風景も見え、かなり現代を見ている作品だったとも感じました。

キャラは何気に佐藤が好きです。
棒が口に十本も入るなんて凄い・・・と素直に感心しました。

では、雑記のようになってしまいましたがこのあたりで。
一個人の一意見まで。

名高刀さんの意見 +30点2012年07月10日

名高です。感想を返しに参りました。

面白かったです。
リーダーと女子たちの掛け合いが軍隊風で真剣味が感じられながらも、どこか親しみやすくて個人的に好きでした。
オチもなかなか秀逸だったと思います。

ただ
>覗きをせずになんで共学になんか入ったのかと! 男子校にでも行ってアッーなことでもしてればいいのだと! そう私は思う!
の部分が男子ではなく女子だとしたら今一しっくりこない気がしました。

それと男子のポーズもちょっと気になったんで描写した方がいいんじゃないかなと思いました。

気になったことはそれくらいですが、集団の中にバラつきを混ぜてみるのも面白いかもと思いました。
例えば


「準備を怠っている者はいないな!? いるなら今すぐ前に出て歯を喰いしばれ! その歯の間にう○ い棒をぶち込んでやろう。……何でか分かるかサトーウ!!」
「わ、わかりません!」
「私の趣味だー!!」
「「イーヤッフー!!」」
やはり我々の統率力は素晴らしい。……決して「でもアイス棒のほうが合っているよね」という呟きなど聞こえなかった。

とかそんな感じでしょうか。

ともかく全体的によく出来ていたと思いますし、指摘した点も小さいものに過ぎないと思うので30点で。

それでは以上が感想になります。
次回作も楽しみにしております。

ようらんさんの意見 +30点2012年07月14日

ようらんと申します。作品、読ませて頂きました。

いやはや、久しぶりに読むという行為で声を上げて笑いました。
オチが秀逸な作品であることは間違いないと思うのですが、バックボーンが少し不透明に感じましたね。
どういう学校あるいは校風で、普段の男子女子の立ち位置だとか、そのあたりに興味を持ったという点で気になりました。掌編ですから、難しい部分ではありますが。短編でも勝負できそうな気がします。

ともあれ、肉食系女子が好きな自分には有り難い作品でした。

otasamさんの意見 +30点2012年07月14日

はじめましてotasamと申します。

とても面白かったです。
まさか・・・・・・女子だったとは全然気づませんでした。完全にしてやられました。
サトーウの扱いの酷さもなかなかw

そしてまさかの覗かれるのを待つ男子というのにはツボりましたw

次回作も期待させていただきます。

江戸ノ野良さんの意見 +30点2012年07月16日

 感想返しに伺いましたが、読んでいたらそんなことは途中で忘れてしまいそうになりました。江戸ノ野良です。

 始めから雰囲気自体が笑えます。そして無駄にアホな掛け声にくすり。騙されていたことに気づいたときは「うそだろー」という類の笑いがきました。
 女子たち、可愛いですね。しかし、冒頭部分を女子だったと思って想像しなおすと、すごく怖いです。真夏だけどむしろ寒い。

 オチでははっきり言って爆笑でした。ある意味男子たちは全然草食じゃない気もします。

 とにかく、楽しませていただきました。削った感が残念な気もしましたが、十分笑ったので別にいいかもしれません。

 なんだか役に立たない感想ですみません。

しゅんかちさんの意見 +30点2012年07月16日

感想返しに参りました。しゅんかちです。
掌編のコメディーというのは、今まであんまり楽しめたことがなかったんですが、
この作品は短いながらも上手くまとまっていて、すごく面白かったです。

先入観を利用した男女のミスリードが鮮やかに決まっていて素晴らしいです。
こういう話にありがちな、メインストーリーがおざなりになっていることもなく、完成度が高いと思います。

あえて突っ込むとしたら、タイトルの平凡さでしょうか。
もっと読みたくなるようなインパクトのあるタイトルなら良かったかも知れません。
そんなの気にならなくなるほど、導入部分から素晴らしかったですが。

いやぁ、ずっとクスクス笑わさせられて、そのテンションのまま最後のオチで爆笑させられました。
僕はギャグを書くのが全く駄目でして、すごく参考になりますね。

正直自分でもこういうギャグ系の話に30点を入れてるのに驚いてます(笑)
それでは、非常に面白い作品をありがとうございました。

ともまささんの意見 +30点2012年07月16日

 感想返しに伺いました。
 伝えたいことがはっきりしてて、しかも面白い。
 短いページながら落ちもしっかり決まってて、上手いと感じました。
 私もこんな風に書けたらな、と羨ましく思いました。
 次回作にも期待します。

緋虎桜さんの意見 +40点2012年07月18日

はじめまして、ヒコサクというものです。初めての感想なので変な文になるかもしれませんが、すいません。

まず、一言。アイディアがいい!! やばい、最高。
はじめは主人公たちは男子かと思ってました。口調的にも。
で、窓の近くにはスタイルが抜群な伊藤~で、あれ? と思い女子だと気づきました。「覗き」といったら男、という先入観(?)で、まんまとやられました~。なんかくやし~(笑)

オチいいですね。男子も同じくポーズをとっていたって。
ある意味青春……。

あと、佐藤がかわいそうすぎる……いや、そこがよかった!
今後も楽しみにしています!