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上の小さん 著作 | トップへ戻る | |
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彼女がいなくて寂しかった私は、出会い系チャットに手を出した。クレジットカードで振込みをし、そして入会した。
はじめる前に説明は熟読したつもりだ。システムも色々とこだわっていて面白そうだ。 早速会員専用のページにアクセスしてみる。チャットにはたくさんの部屋があった。みんなで雑談をする部屋。合コン用の部屋。そして二人っきりで話ができたりメアドが交換できる場所。 しかし、私は大誤算だった。 このサイトは異常に利用者が少なかったのだ。雑談の部屋にたったの3名しかいなかった。 私は払ってしまった5000円をもったいないと思ったが、もう払ってしまったものはしかたないとしてその世界に足を踏み入れた。 上の小さんが入室しました。 たかし:こん みほ:こん〜 よしお:こn こんという妙な挨拶。 略語か、これはこんにちわだ。私はすぐに悟った。そして仲間になるためには彼らを尊重し、彼らの言葉を使うべきなのだと。それはまるでアマゾンの先住民に会いに行く、研究者のようだった。 上の小:こん たかし:はじめまして みほ:よろしく よしお:どうも 上の小:はじめまして、よろしくお願いします。 よしお:じゃあ、自己紹介タイム! たかし:どうぞー上の小さん! 焦った。自己紹介など、大学のサークルのようにしていいのだろうか。私は結構ながながと自分の事をはなすタイプだ。しかし、ここはチャット。そんなに長々と書くことなどできはしない。短く簡潔に書くべきだ。 上の小:21歳、大学生です。みなさんは? たかし:43歳 営業マンどえ〜す みほ:20歳 専門学生です よしお:24歳、じえーぎょ たかし:みほ、二人部屋行かない? よしお:でた、たかしのナンパ! みほ:遠慮します たかし:ふられた〜 よしお:じゃあ、俺といこうよ たかし:どうする、みほ みほ:すみません ついていけなかった。正直いって辛かった。このノリといったものがよくわからなかった。何、顔が見えないとどんどん誘うべきなの? といった感じだ。いや、私はこれと似たようなことをした経験がある。 合コンだった。この世界はまるで合コンのようだった。でも、これは合コンではない。なぜなら男三人に女性一人。いわば、野生動物が一人の女性を奪うために戦うのに似ている。違うのは私達は野生動物ではないこと。あらゆる心理戦でこのみほという女性を奪い合っているのだ。 まず、先制攻撃でたかしがいった。ふられてもふられなくとも大丈夫なように軽いジョークっぽくしている。そしてみほもジョークっぽくふる。それにのっかっていきよしおがいく。そしてまたふられる。 楽しい会話をしているように見えるが、あきらかにこれは心理戦だ。私達はこの場でいま一匹のメスをかけた戦争をしているのだ。 上の小:みほさんはそんなに軽い人じゃないですよね〜 みほ:そうそう たかし:上の小、1ポイントUP よしお:おいおい、二人とももしかしてできるんじゃないの? みほ:そんなわけないじゃん 上手い、心理戦だ。 私は二人のノリにあえてのらなかった。のればノリのいい男になれるが、のらなければ彼女に印象付けられると思った。 だが、二人の返しが上手かった。この返しでいけば、たとえ私と彼女が一瞬でもいい感じになったとしてもすぐにその雰囲気が崩れてしまう。 これでは、私はまるでからかわれている子供のようだ。 上の小:やめてくださいよ たかし:あれ?嫌なの? みほ:ショック 上の小:そんな事ありませんよ たかし:じゃあ、好きなの? このたかしという男。玄人だ。 チャット心理に長けている。私は完全なる初心者だ。このたかしという男の手のひらの上で踊っているにすぎないのであろうか。 このたかしの返しによって私の選択肢は二つにされてしまった。私はみほの事を好きか、嫌いかとしかいいようがない。だが、ここでどっちかはっきりしたことをいう事は絶対に得策ではないだろう。 上の小:さあ、どうでしょう〜 たかし:でたー! みほ:ものまねかよ 上の小:実際、もっと話してみないと分かりませんよ たかし:上の小ちゃんは大人なのね、素敵 みほ:あれぇ、上の小さんとたかしさんでできちゃった? たかし:そうどえ〜す くそ、強い。たかしは強すぎる。このままでは私は完全に殺されてしまう。どう答えればよいのだ? この場合、分からない。正解はなんだ。 物事には正解などないというが、私はあると思う。物事はその時とった行動によって未来が明るいものか暗いものになる。 そうすれば、正解などあるにきまってる。 上の小:やめてくださいよ(笑) みほ:たかしふられた たかし:ショック よしおさんが退席しました。 みほ:落ちちゃった たかし:またね 上の小:お疲れ様です よしおが殺された。間違いない。これは学校にいき、あまり話ができない人がはぶかれていく現象ににている。よしおは私達の間に入ることができず、結果はぶかれてしまったのだ。 危なかった。下手すれば、はぶかれるのは私のほうだった。 たかしはきっと天才だ。一瞬で経験の差を読み取り、経験不足の私を残した。そしてわざと私とたかしとみほの三人で会話がもりあがるように仕立て上げたのだ。 みほ:ねえ、写メみせて たかし:みんなで交換する? 上の小:マジですか みほ:結局男は顔よ たかし:俺おっさんだぞ みほ:いいじゃん たかし:やっぱ遠慮しとく みほ:じゃあ私も見せない たかし:だめ、みほだけ見せて みほ:そんなのずるい! たかし:しかたねえなあ しまった。と思ったときは遅かった。 もう、たかしのはぶきが始まっていた。標的は私。 さっきまで私を中心にして話がまわっていたのに、あっという間にたかしとみほの独壇場になっていた。どうすればいいか。とりあえず、何かを打ってはぶきだけは避けなくてはいけない。さっき死んでしまったよしおのようにはなりたくない。 上の小:●●●これが私のプロフィールです たかし:抜け駆けだ! みほ:どれどれ。ちなみに●●●←私のプロフ ちなみにこのサイトには個別に写真を入れてプロフィールをつくることができる。そして、そのURLをチャット上に入力することで見せることができるのだ。 みほのプロフィールを見てみた。 名前:吉田美穂 年齢:20歳 職業:専門学生 趣味:ニンテンドーDS 星座:おうし座 血液型:A型 一言:素敵な人を探しています 思ったよりも、全然綺麗な人だった。思ったよりもと言ったのは出会い系だったから出会いがないような見た目の人が集まるのとばかり思っていた。 でも、みほは普通に彼氏がいてもおかしくないくらい本当綺麗だった。 だが、ここで下心を見せてはいけない。綺麗だねというのはもう少し仲がよくなってからだ。ここで綺麗だねといってしまえば、見た目で人を選んでいると思われてしまう。 みほ:見たよ、大学生って感じ 上の小:だって大学生だもん みほ:確かにそうだったね 上の小:そういえば年近いよね みほ:うん。もしかして住み都内? 上の小:そう、もしかして同じ? みほ:うん、近いかも! 上の小:今度渋谷行こうよ! みほ:ドライブがいい、車ある? 上の小:カローラだよ みほ:最高! たかし:まてー! たかし:俺のプロフ見てないじゃん たかし:みろよ たかし:●●● 私は気がついたらたかしをはぶいていた。しかし、奴は割り込んできた。なんだかチャットも楽しいなと思っていた時だ。 さすがに上手い。いい感じになっていたところをぶち壊したのだ。 しかももったいぶっていたプロフを見せてきた。もしかして外見に自信があるのかもしれない。 私はたかしのプロフィールを見てみた。 名前:飯田武 年齢:46歳 職業:運送 趣味:酒 星座:おとめ座 血液型:O型 一言:×1だけどよろしこ そして、写メ。 金髪の中年親父がにっこりと微笑んでいた。 みほ:上の小さん、二人部屋に行こう |
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●感想
一言コメント ・おもしろい くだらないことに心理戦などまじめにかたっていておもしろかった。 ・掌編作品に「良作」マークはつかないのでしょうか? ・これはいい。 ・面白い!!最後がうまくまとまっていたように思います。 ・緊迫感のある心理戦が良かったです。その割には全ての心理戦をチャラにしてしまうラストも面白かったです。 |
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