オレンジフィルム・キッス

●感想
うっぴーさんの感想
　なかなかおもしろかったです。短い作品をこれだけ上手くまとめるとは天晴れですね。
　まず、冒頭の導入が優れています。

《人気の無い校舎裏、薄暗い体育館倉庫、静かな自習室……。
　今日は立ち入り禁止の屋上だった。
　吹きつける秋風が啼いている……。
　綺麗な水を探す魚のように、風は赤い空に留まる場所を探してるようだった。》

　インパクトのある出だしてはありませんが、レベルの高さを伺わせる優れた描写です。これなら、安心して作品に入っていけます。
　ただ、やや情報の提示が少なく要領を得なかった部分があります。セリフや描写の中に、うまく情報を入れていますが、彼らが何歳なのか、どんな容姿をしているのかわかりません。そのため、ちょっとイメージしにくい部分がありました。
　難しいかも知れませんが、もう少し外見描写があると助かります。
　ストーリーは陳腐ですが、独特の描写とセリフ回しで、非常に良い雰囲気を醸し出しています。文章にオリジナリティがあるため、つまらないという印象は受けませんでした。物書きとしての才能があると思います。
　また、ラストの締めくくり方が上手かったです。

《　ゆっくりと、オレンジのフィルムに包まれて、僕達はもう一度キスをする。
　そして、僕たちはつないだ手をゆっくりと、離す……。》

　夕日の情景の美しさが、ムードを高めている上に、タイトルとも連動しております。そのため、かなり読後感が良く、余韻が残る感じがしました。　
　新人賞を受賞できるかはわかりませんが、一次選考は楽々突破できる腕前ですね。二次選考も通過できる可能性が高いと思われます。がんばってください。

亜希さんの感想
　ジャンゴさんこんにちは、亜希です。
　オレンジフィルム・キッス読ませていただきましたので、感想です。

＞綺麗な水を探す魚のように、風は赤い空に留まる場所を探してるようだった。

　この表現に撃沈されました。
　まるで詩のような描写ですね。
　こういう描写がしたいと思わされました。

　夕焼けをオレンジフィルムという言葉にあつらえるセンスも素晴らしいです。
　ジャンゴさんのセンスは、ラノベ研さんでトップ独走だとわたしは思います。
　これは努力しても得られるものではないので、それだけでジャンゴさんは強いですよ。

　これはどちらかというと、少年向けというよりは、少女向けの小説なんじゃないかな、という印象を持ちました。
　全体的に、雰囲気が詩的でロマンチック。男性のお書きになる恋愛ラノベは、どこか萌えを意識したものが多いのでたまにひいてしまいますが、これに限っては女の子ウケは、相当いいと思われます。
（いえでもこれは確実に例のアレですので、師匠においては萌えを意識なさったと思われますが（笑））

　わたしからこの作品について言えることは何もありません。
　すごく好きだからです。
　外見描写はまったく気にならなかったな。
　ただ、ショートということになると、やはり斬新なアイデアが必要になってくるかもしれないので、そういう面で見ると、２次選考突破はどうなのかな、ということは思いました。

　なんにせよ、良作だということに間違いはありません。
　ジャンゴ投稿作品の中で、わたしはこれが一番好きです。
　面白かったです。
　どうもありがとうございました。

ぼんじんさんの感想
　いつもお世話になっています。
　読ませて頂いたので、感想を

　今回のテーマの、「偶然」「うしろ姿」「立ち入り禁止」をうまく散りばめられていると思います。
　このままでも、すごくいいと思います。
　ただ、受賞作のレベルがかなり高いので、重箱の隅を突くような意見を言います（汗

　まず、友香が何故怪我をしているのかが、分かりにくかったです。
　よく読めば分かるのですが、最初見たときは「どういう事だ？」と思いました。
　直接、「どれそれで怪我をした」という表現があった方がいいような気がします。
　それと、うしろ姿をもっと前面に出したほうがいいと思います。
　今のままでも印象は強いのですが、会話部分が良すぎて、「うしろ姿」が薄くなっているように感じました。

　偉そうに書いて恐縮なのですが、電撃に本当に載ってほしいと心から願っています。
　愛情の裏返しと取ってもらえれば、幸いです（笑

　それでは、頑張ってください！

北条眞祈さんの感想
　お久しぶりです、ジャンゴ五郎さん。
　批評掲示板に登場するのもお久しぶりです。

　私、個人的にキッスシリーズ、大好きなんです。
　自分には書けないようなジャンルの素敵な作品ですから。

　批評は、んな細かいこと突っ込まれても困るよ！！　という感じでいきたいと思います。
　これはこの作品がもっとレベルの高い、読者に求められるようなものになれたらなという気持ちからのものですので……。

○今作、目に付いたのが冒頭の「……」です。

　人気の無い校舎裏、薄暗い体育館倉庫、静かな自習室……。

　人気の無い校舎裏、薄暗い体育館倉庫、静かな自習室。

　下のほうが私には歯切れがよいように思えました。

○あと、ぼんじんさんの指摘なさっていること、あと一段階掘り下げれば分かりやすくなるかなぁと思いました。
　しかし、もう一度読み返したいなぁという気持ちを起こさせてくれるような雰囲気の作品でしたので、一度読み返せば理解できる気もします。

○それと
「それを気づかせない君の強さも。」
　というところ、このままでもいいかもしれませんが、「僕」はそれに気づいたのですから、ちょっと変えたほうがいいかなと思いました。

　うーん、こんなに細かく指摘しているのにこれ以外に指摘することが見つからない……。

　やはりジャンゴ五郎さんの作品はキャラクターと情景描写、心情描写が素晴らしいです。

　一次なら確実に突破できると思います。
　頑張ってください。

　でわ、ロムラー北条眞祈でした。

クッパさんの感想
　こんにちは、師匠（笑）クッパです。
　ラノベ研究所が変わっても私は相変わらずなので、今後もよろしくお願いします。
　ただ、今後の批評には私なりの考えがちょこっとだけ大きく入ってきますけど、お許しくださいね。

　相変わらずジャンゴ五郎さんの描くキャラは、ツンデレぶりが素敵です。
　友香も風彦も非常にキャラが立っていて、読んでいるだけで思わず顔がにやけてしまいました。
　相変わらず惚れそうになってしまいます。

　ただ、個人的に気になった点としては……
＞僕はゆっくりと立ち上がった。
　という具合に、一人称の主語に三人称で書いた動作がくっつている部分に、非常に違和感がありました。
＞風彦はゆっくりと立ち上がった。
＞声を聞き流しながら、友香に並んでみようと思って立ち上がる。やっぱり身長も体格も変わらなかった。
　といった感じに変えたほうがいいと思います。同じような箇所がいくつかありました。

　また情景描写ですが、二千字という短い文字制限では厳しいのは分かるのですが……
　綺麗ですけど少し抽象的すぎる感じがあります。
　亜希さんは夕焼けをフィルムに例えたと書かれていますが、想像力に疎い私には少しイメージしにくかったです。
＞綺麗な水を探す魚のように、風は赤い空に留まる場所を探してるようだった。
　という表現も、私は亜希さんとは逆にイメージしにくかったです。
　この辺りは読む人によると思いますけれど……

　そういう感じで、抽象的、という意味ではですが……友香の腕の傷の意味も、少し掴みにくかたっと思います。雰囲気を演出する上では良かったと思いますけれどね。
　ちょっと、折角の設定なのに意味を掴みにくいのでは……と思ってしまった私でした。

　でも凄く気持ちが伝わってきていい作品だと思います。
　それでは。

りゅうのすけさんの感想
　初めまして、りゅうのすけと申します。
　読ませていただいたので、早速感想を書かせていただきます。

　上手いですね。
　二〇〇〇字という枠の中に、よくまとまっていると思います。
　ただ一読した後に思ったことは、「ショートショート？」という素朴な疑問でした。それほどＳＳを読んだことはないので、一概には言えないのですが、ちょっとＳＳとは違うのかな？　という印象を受けました。
　かすかに感じる違和感みたいなものです。
　実際、とても透明感を感じさせる描写で、人物同士のからみも当人たちの気持ちが伝わってくる秀逸なものでした。多少、描写が抽象的すぎる向きはありましたが、物寂しい雰囲気を作り出すのに役立っていると思います。
　ＳＳの枠に入るのか？　ということが最大の欠点にして唯一の欠点ではないかと思いますが、それ以外は基本的に問題のない作品だと思いました。
　
　最後に疑問なのですが、友香のリストカットは風彦に対するいじめが飛び火したからなのでしょうか？　もしそうならば、途端に作品の評価が下がるのですが……（汗）。
　自分のいじめが原因で彼女が傷ついているのに、何もせず黙っている主人公だったら……私はちょっと好きになれそうにありません。

　何はともあれ、面白い作品を読ませていただき、ありがとうございます。
　それでは失礼いたします。

草葉光輝さんの感想
　どうも、ジャンゴ五郎さん。オレンジフィルム・キッス楽しく読ませていただきました。
　恋愛というのは自分が書くぶんにはどうにも触れがたく、難しい感じがして敬遠しているのですが、こーゆーのをうまく書いている人のをみるとやはり『まだまだ自分には技術が足りてないなぁ』と感服するばかりです。
　さて、そんなこんなで激辛批評なのですが･･････難しいです。いや批評するのが。

　個人的な意見を言わせていただくならば、一人称の文、詩的印象が高く、やや敬遠ぎみになりました。風彦から超然とした感じを受けて人間っぽさがあまり感じることができませんでした。
　詩的な言葉はセンスを感じるのですが、やはり一人の人間の思想だと思うと少し引いちゃいました。

　後は欲を言えば、やはり恋愛の一場面だということでしょうか、前後にボリュームをつけて風彦や友香に興味を抱け　るようなシーンが欲しいと思いました。あ、これはあくまで願望なんで、批評というより感想ですな。

エルスさんの感想
　こんばんは、いつもお世話になっております。エルスです。
　２０００字ということは原稿用紙十枚。完敗です（？）。
　私は叙情的叙景的で言葉少なな描写のほうがなれているし好きなので風景や心情表現は気になりませんでした。登場人物の外見描写についても……日本人なら髪が黒くて黒い目が二つ鼻が一つ口が一つなので。
　激辛になっているかどうかわかりませんが、他の方と同じように友香の包帯の理由を明確にすることと、あとカタカナ表記の言葉をなるべく少なくすることも（「瞳を閉じたアイズの後」など）上げさせていただきます。
　電撃ショートは詳しく知らないのですが、二次突破は間違いないとふんでおります。がんばってください。
　それでは、失礼します。

高奈瀬さんの感想
　高奈瀬と申します。はじめまして。

　個人的な印象ですが、電撃Short3は暗示的な作品に対して辛いです。
　これはちょっと厳しいかな、という印象。あくまで印象。
　以下感想。見落としていることがあったらごめんなさい。

　まず全体的に。
　何人かの方が既に指摘していますが、彼女の傷の原因。
　この文章から特定できるんでしょうか？
　幾つか理由を思いついたんですけど、どうしても一つに絞れません。
　一番キレイにまとめようとすると、
＞「あはは、じゃない！！　元はといえば、アンタのお人好しのせいなんだから。イジメられてる子をかばってイジメられるなんて……バカじゃないの！？」
　この台詞の、イジメられてる子＝友香だった。でも、これだと微妙に辻褄が合わないような。
　うーん。僕には分かりません。

　人物描写は二千字Shortなのでこれくらいで良いと思います。
　友香に関してはかなり情報が出てますし。

　それから、三点リーダとか“！”が少しうるさく感じました。
　特に三点リーダ。こんなに必要でしょうか。作品の文体、雰囲気で時間が緩やかに流れていることは十分に感じられるので、わざわざ記号的に間を作らなくても良いと思いました。読み方を押し付けられている感が少々あったので。

　細かいところも少しだけ。

＞僕は友香のそういう所が僕は好きだ。
　どちらの“僕は”が余分なんでしょう？　前かな？

＞友香のビート、僕のビートが互いに重なり合う。
　僕的には大ヒットです。

＞そして、僕たちはつないだ手をゆっくりと、離す……。
　離しちゃうんですか！
　キスで終わらせずに手を離して終わるところが、この作品の世界観を表している感じです。
　
　エントリーされることを祈りつつ。それでは、また。

弓一さんの感想
　ジャンゴさん初めまして、弓一と言います。
　オレンジフィルム・キッス読ませていただきましたので、感想を書きます。

　少年少女の繊細さが、詩的な描写などを使ってよく作品に表れてると思いました。
　最後の締め方が、良いですね。ただ、全体的に少し綺麗すぎますね（笑）。

　いくつか気になった点を挙げておきます。

　「偶然」の出し方が少し無理やりな感じがしました。立ち入り禁止の屋上に友香は「たまたま」くるでしょうか？
　照れ隠しの発言とも考えられますが、その場合、風彦がいつも友香に助けられているような印象を受けてしまい、
風彦が「強くなった」とは思えなくなります。
　どちらかというと、風彦にキーワードを言わせたいが為な感じがしました。
　屋上を立ち入り禁止にしないと、後半で繰り返しが高い効果を出してるものが無理やりになってしまいますしね（汗）。

　他に、友香の自傷の理由ですが、知っているなら口には出さずとも心では言ってほしかったです（笑）
　思春期の女の子とはいえ、友人（恋人？）をイジメから助けるだけの勇気を持っている子ですから、
　きっと深い分けがあって衝動的に傷つけたんだろうと考え、ＤＶかな？なんて所まで深読みしてしまいまひた（笑）。
　ショートとはいえ、話はまとまっていた方がいいので、すっきししない点があるのはマイナスだと思います。

　最後に、台詞ですが、
「だから今度は僕の強さが友香を守るよ」よりも普通に
「だから今度は僕が友香を守るよ」の方が良いと思いました。

　以上です。ジャンゴさんはキャラクターをイチャイチャさせるのが上手いですね。
　読んでて恥ずかしくなるのと同時に、イチャイチャしたくなりました（笑）。

一言コメント
　・雰囲気オンリーの作品ですが、掌編ですからこんなもんでしょうか。