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オペラ座さん 著作 | トップへ戻る | |
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西の大地に沈み始めた太陽が、空を鮮やかな赤銅色に染め上げる。
病室の寝台で上体を起こした少年は、ほんの僅かな夕刻の空を眺めていた。 茫然と空を眺める少年の名を向島紳と言った。 先天性の心臓病を患う少年は数日前に大きな発作を起こし、この病院に搬送された。紳にとっては特に珍しい事ではなかった。これまでにも同じような発作に苦しんできたからだ。 今もまた大きな咳が彼を襲う。咳にむせ、身をよじり、途端に息が苦しくなった。心臓の脈打つ鼓動が異様なまでに耳に響く。紳はまだあどけない相貌を苦痛に歪ませ、震える指先をナースコールへと伸ばした。 しかし、装置に指先が届く直前、緩やかに呼吸が整い始める。咳も治まり、伸ばしていた腕を戻し額の汗を拭った。紳は安堵の息をついて寝台に身をあずけた。横たわった視線の先の机には、勉強道具が散らばっている。 少年は中学二年の夏を迎えていた。度々の入退院の為に出席日数はほとんどギリギリであったが、勉強の得意な紳は成績でもって留年を免れてきた。 少し勉強の続きをとも考えたが、どうにも気分が乗らない。外は鮮やかな赤銅色から夜の混じり気を帯びた菫色へと変化していた。 再び発作が起こるのではと考えると、起きている気分ではなかった。少し寝ようと考え、紳は目をつむった。 次に紳が目を覚ました時、辺りは薄闇に包まれていた。街の光で霞みながらも夜空を彩る微かな星々と、際やかな円を描く月の明かりが、紳の病室に射しこんでくる。 「だれ?」 紳は不意な気配にびくりと身を縮め、入口に目を向けた。何時間寝ていたのか、今が何時なのか、それらはわからない。しかし、来客が訪れる時間とも思えなかった。 紳は表情を強張らせたが、相手は彼の心情を解してか陽気な口調で応じてきた。 「こんばんは」 紳は再び驚いた。その声が少女のものだったからだ。夜も遅くに少女が自分の病室を訪れる心当たりなど、紳には全くなかった。年は同じか少し下だろう、病室に踏み入った彼女は紳の寝台のすぐそばまでやってきて、近くの椅子にちょこんと座った。 「こんばんは」と、少女は再び少年に微笑みながら言った。紳は恐る恐る「うん」と相槌を打った。少女は白いワンピースに小柄な体で、素朴ながらもどこか華やかさを匂わせる美少女だった。病気のせいでもなく、紳の心臓がやけに大きく脈打った。 緊張する彼をよそに少女があっけらかんと尋ねた。 「少しお話しない? 寝つけなくて、こっそり病室を抜け出してきたの」 「そ、そうなんだ」 最初は幽霊ではと恐れたが、少女の気さくな態度や豊かな表情は、そんな不安を一蹴してくれた。こんな笑顔を見せる幽霊はいないだろう。 「病気?」 「うん。先天性の心臓病。心房中隔欠損って言って心房の中心に穴が開いてるんだって」 彼がそう答えると、少女は「へえ、すごいね!」と屈託のない言葉を返した。 紳は曖昧に微笑むと一つ息を吐き出し、少女に向かって唐突に言った。 「ぼくは死ぬかもしれない」 「なんで? 手術はしないの?」 「手術は、したくないんだ」 「ふぅん。怖いの?」 少女は悪びれずに言った。紳は一瞬答えに窮したが、気弱に本音を語った。 「怖いよ。胸にメス入れるんだぞ。失敗したら死ぬかもしれない」 「…………」 「開胸手術以外にも方法があったんだけど、ぼくは適合しなくてね。結局、手術するしかないんだ」 「そう」 「死んだら、どうなるんだろう」 少女は「さあ?」と関心のない様子で答え、その後に続けた。 「あなた、いつも空ばかり見てるでしょ」 「何で知ってるの?」 「わたしは前からあなたの事を知ってたわ。あなたは気づいてくれなかったけど」 少女は肩を竦めて見せた。その答えは意外なもので、紳は「そうなんだ」と平時を装ったが、驚きを隠しきれない様子だった。 少女は改めて問いかけた。 「どうして空ばかり見てるの?」 「羨ましいんだ」 「何が?」 「空はずっと綺麗だろ。朝も昼も夜も、昨日も今日も明日も――でも、ぼくは明日死ぬかもしれない。明後日死ぬかもしれない。死んだら、何が残るんだろう。何も残らないんじゃないか。こんな体だから学校には通えても、行事にはちゃんと参加できない。クラスでも浮いた存在だし、きっとぼくが死んでも誰も悲しまないんだ」 紳は自暴自棄に言い捨てた。言ってからひどく心が荒んだが、どこかで少女が励ましてくれると打算的になったのかもしれない。 しかし、少女の返事は冷ややかなものだった。 「そうね、何も残らない。それに空はあなたの事、きっと嗤(わら)うわね」 「えっ?」 「だってそうでしょ? 花も咲かせずに蕾のまま枯れちゃったら、何やってるんだって空は嗤(わら)うわ。――短くてもいいじゃない。花の一生は短いけれど、花はきっとそんな事は気にしてないわ。そうじゃなかったら、あんなに綺麗に咲けないと思う。人間だって同じよ」 「…………」 「明日死ぬかも知れない。明後日死ぬかも知れない。いいじゃない。どうせいつかは死ぬんだもん。なら、生きてる間だけでも、綺麗に咲くほうが素敵だわ。他を羨むよりもずっとね」 「……君ってすごいね。ぼくより子供なのに」 「あら? 見た目はこんなだけど、あなたよりも年は上よ」 「まさか」 「どうして? 確かめもせずに嘘だと決めつけるなんて失礼よ」 紳は言葉に詰まった。反射的に否定したが、彼女の言葉は本当なのかもしれない。そう思うと、不思議と少女の姿が大人びて見えた。 「手術が成功したら走れるようになるかな? 来年には修学旅行もあるんだ。行けるといいなぁ」 「さあ、どうかしら」 「そこは励ましてくれよ」 「じゃあ、走れるといいわね!」 「冷たいなぁ」 紳が苦笑を浮かべると、少女は穏やかな笑顔で紳を見つめていた。不器用ながらも彼女なりの励ましだったらしい。 「走れるようになったら、思いっきり走ったらいいわ。走って、走って、息が切れるまで走って、それから空を見て笑ってやればいい。どうだ? ぼくは綺麗だろうってね」 「なんだよ、それ。ぼくは男だから綺麗じゃなくていいよ」 紳は呆れながらも少女とのやりとりを楽しんだ。病院でこんな気持ちになれたのは初めてだ。 「手術、受けてね」 「えっ、あっ、うん……」 「それじゃあ、戻るね。おやすみ」 「うん。おやすみ」 紳は釣られて返したが、少女の名前を聞き忘れている事に気がついて、慌てて呼び止めようとした。 「あっ、名前――」 紳が名前を乞おうとした時、少女の影はすでになく、静寂な病室に彼の声だけが響き渡った。誰だったのだろうか、紳は当然のように疑問を抱いたが、それも朝になればわかる事だろう。紳は再び寝台に身を沈めると、穏やかな気持ちで目を閉じた。 朝陽がまぶたをくすぐって、紳の眠りを妨げた。すでに病院内は人の動きで慌ただしくなっている。紳は起き上がると、昨夜の事を思い浮かべた。あれは夢だったのだろうか、ひどく現実離れした出来事だった。紳は何の気なしに病室から空を仰ぎ見た。藍色の空を薄い雲がゆるりと泳いでいる。 今日は体が軽かった。発作の予兆もない。 ふと誰かに呼ばれたような気がして、紳は目線を院内の庭へと落とした。そこには舗装された道が設けられ、道の両側には緑の芝や木が植えられていた。その庭を散歩する患者、医師や看護婦も庭を横切って建物へと消えていく。そんな情景の中で、紳の目にあるものが止まった。 一輪の花だった。ぼんやりと見ていては、見逃して当然のように慎ましやかに咲いている。近くに植えられた木の緑陰に隠れ、普段ならまず気がつかなかっただろう。 なぜ目に止まったのか、偶然、必然、妙な気分で考えを巡らせていると、寝台のわきに不思議なものを見つけた。呆けながらそれを手にとり、眺めている内に回診の時間がやってきた。現れたのは担当の主治医だ。年は三十代の前半、若く人のよさそうな男だった。 「やあ、紳君。今日は顔色がいいね」 主治医はそう言うと、紳の傍らに歩み寄り、慣れた様子で簡単な検査を行った。その間も彼がやけに庭を眺めているので、主治医は気になって尋ねた。 「何か外が気になるのかい?」 「えっ? ああ、庭に花が」 「花? ああ、白い花かい?」 主治医が聞き返すと紳はそれに頷いた。 「何年か前に、入院していた女の子が植えていったんだそうだよ。特に手入れをしているわけじゃないんだけどね。なぜか、ああやって毎年咲くようになったみたいなんだ。確か君と同じぐらいの――」 そこまで言って男は続きの言葉を飲み込んだ。紳に手術を受けるよう説得しなくてはならない中、その少女の詳細を語るのは非常に都合が悪かった。主治医がしまったという顔であごを撫でていると、紳が口火を切った。 「先生――」 少女の事を問い詰められると思い、主治医は逡巡していた。しかし、紳の言葉は男の予想とは随分違っていた。 「ぼく、やっぱり手術、受けていいですか?」 「はっ?」 何かの聞き間違えだろうかと、主治医は目を瞬いた。しかし、少年の真摯な眼差しを見つめ返す内に、彼も納得して頷いて見せた。 「嗚呼! もちろん、もちろんだよ! 紳君、よく決意してくれたね!」 「先生、ぼく走れるようになるかな?」 「なるとも。君の病気はストレスにも起因していたからね。その様子なら手術を受ければすぐによくなるさ」 「ありがとう」 紳は主治医の励ましに感謝し、再び病室から外を眺めた。彼の手に優しく握られた白い花びらに、主治医は気がつかなかっただろう。 空ばかりを見ていた少年は、今日はやけに下を眺めていた。 病室の外、緑草の中に一輪の花が咲いている。白く慎ましやかなその花は、それでも空を笑うように美しく咲き乱れていた。 |
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●感想
巧鎖さんの感想 こんばんは、拝読させていただきました。 ……読んでよかった。まず最初に思ったことです。 これは凄い、良い意味でやばい作品と思います。中盤から終盤へのくだりが脱帽ものでした。 でもちょっと(おそらく私だけが)気になったところを上げると。 >しかし、装置に指先が届く直前、緩やかに呼吸が整い始める。咳も治まり、伸ばしていた腕を戻し額の汗を拭った。紳は安堵の息をついて寝台に身をあずけた。横たわった視線の先の机には、勉強道具が散らばっている。 こっから改行するかなんかした方が良いかなと思いました。 緩やかに呼吸が整い始める。とかがちょっと弱いかなと。私だけかもしれませんが、装置に指先が届く直是、の部分で指先が届く直前に異常な悪化を見せ、ナースコールに触れられなかったのかと解釈してしまい、戸惑いましたので。 まぁ、私だけの違和感の可能性が大なので、実際は変えなくても良いのかもしれませんが。一応。 それにしても三人称が羨ましい、そして私もこんなの書きたい! そんな風に感動に打ちひしがれた私は、もう久しく付けていなかったこの点数をこの作品に捧げます。 では、次回も長編も頑張ってください! トートさんの感想 こんにちは読ませてもらいました。 まず、落ち着きのある読みやすい文章でした。まぁ可もなく不可もなく。 ところで、綺麗と奇麗はどういう使い分けだったのでしょうか、あまりそこら辺気にしない性質ですが、引っかかりを。あと、主治医の会話で、紳が手術を受ける気になったとき、「はっ?」は無いなぁと思いました。 まぁ私の意見は一人の意見です。私が気になっただけかもしれないですけど、それじゃあまた、、、 デリートさんの感想 こんにちは、読ませていただきました。 とても素晴らしかったです。心が温かくなるような作品でした。 少女との会話の部分からが僕的に一番良かったと思います。 しかし、冒頭から少女との会話の前までが、少し読みにくかったです。 もう少しだけ簡単にした方がよかったと思います。 次回作も頑張ってください! まこきちさんの感想 まこきちです。 はっきり申し上げて、この作品が本屋にならんでいても私は不自然なしと思います。 プロが読者意見を聞くためにアップしてるのかと思いました。 一文一文に迫力があり、それだけで読み進められました。 >今しがたも大きな咳が彼を襲った。 「今しがたも」があるために、アンバランスさを感じました。 「今しがたも」を使うのであれば、「襲った」の語尾を変化させるなどの対応が必要かな。と思いました。 >装置に指先が届く直前、緩やかに呼吸が整い始める この「緩やかに呼吸が整い始める」は、確かにそうなんでしょうけど、 なんとなく、呼吸が正常に戻っていく様子がほしい気がします。 >外は鮮やかな赤銅色から濃い緋色へと変化していた 赤銅色と「濃い」緋色では色の変化がないような気がしました。 例などあげて恐縮ですが、「夕日が沈んで夜になる」カットをもってきて、 「オレンジ色から紫色に変わる」等の、はっきりとわかる変化が欲しい気がしました。 ナマいってすいません。 >再び発作が起こるのではと考えると、起きている 「起」「起」がだぶってますが、どうてもいいといえば、いいですね。 >少し寝ようと考え、紳は目をつむった。 冒頭からこの行の前までがとても迫力があったために、この行でトーンダウンした気がしました。 ただし、私見ですので、ご注意ください。 >際やかな円を描く満月の明かりが、 音読して見ると、「満」がテンポを崩すような気がしました。 私見です。 >病室に踏み入った彼女 「踏み入った」の意味はたくさんあると思いますが、 私の場合これに「押し入った」意味も重ねてしまいました。 >「少しお話しない? 寝つけなくて、こっそり病室を抜け出してきたの」 ここでワクワクしてきました。 >少女は悪びれずに言った。 「言った」の使う回数が多く感じました。 >一輪の花だった。 かっこいいです。第二回目のワクワクです。 いや二回目じゃない、もっとかもしれませんが、お話が面白くて忘れました。 >彼の手に優しく握られた白い花びらに、主治医は気がつかなかっただろう 正直、泣かされてしまいました。 >美しく咲き乱れていた 最後の表現ですが、一輪しかないのに、咲き乱れるのは不自然かなと。 ですが、その言葉で堂々としている感じはでてます。 上記の文章チェックは私見とお考えください。 さて感想です。 両目を潤わさせていただきました。 冒頭でも書きましたが、迫力のある一文一文と、 センスのあるストーリーに、ただ感動です。 はい、ここ!はい、ここ! という具合に、絶妙のタイミングで、 読み手の気持ちを掴んでいく ストーリートリックに完全に持っていかれてしまいました。 ライターさんの感想 どうも、こんにちわ。 とりあえず感想と言うか、なんと言うか……凄いなと感嘆してます。 掌編って元々3人称で書くのは難しいんですよね。描写が薄くなったり表現がくどくなったり、何にしても文字数が足りなくなる。ここの掌編見てても大抵1人称ですし。 それをここまで豊かな描写で書き上げるとは参りました。 まこきちさんも書いてますが、俺もプロの作家じゃないかと思ってますわ。 正直、3人称小説のお手本みたいな作品だと思うよ。 突っ込みたい部分と言えば、まあ他の方が書いてる内容ぐらいかな。 『咲き乱れる』の部分にしても作者殿のも悩んだんじゃないかな? でもタイトルとの結びつきを考えたら咲き乱れないと駄目だわな。でも俺はそこまで違和感なかったんですよ。一輪でもより美しく咲いているイメージとしていいフレーズじゃないかと思ってる。 会話と地の文のバランスがいいんでしょうね。テンポがいい。 掌編にしては長いが、掌編にはなかなか見られない読み応えがある。 ここの評価が100点満点なら90点以上です。なんで、繰上げして50点入れさせてください。 山口さんの感想 拝読しました。 夜中に少女が病室に入ってきて、主人公と語らって消える。ここまで読んだ時点で、「ああ、これは幽霊だな。これで、主人公が再び生きる事への希望を取り戻す。よくあるパターンだ」と思いました。 それだけの内容だったら、評価は+10点だったと思います。 しかし、ここで「白い花」が生きました。少女は亡くなった後も白い花に魂を宿らせ、病室にいる人をずっと見守っていたんですね。この設定にジーンときました。 やっぱり小説には、工夫が必要ですね。勉強になりました。 これからもがんばってください。 白野 紅葉さんの感想 こんにちは、拝読いたしましたので感想です。 初めてでここまで書けるなんて羨ましいですね。 平均点の高さに驚きましたが、読んでみると感動しましたよ。 やっぱり「幽霊と語らう⇒手術への勇気をもらう」のお決まりパターンかなとは考えてたんですが 最後の白い花の辺りでやられました。三人称の使い方も上手くて参考になります。 一応気になった点ということで。 >>「えっ? ああ、庭に花が」 >>「花? ああ、白い花かい?」 二人のセリフが「疑問+ああ」になっているあたり違和感が。 セリフが似てるので、この辺り変更していただけたらなあと思いました。 まあ意図的にやったかそうでなければならないなら良いです。 良かったと思います。次回も頑張ってください。 裕人さんの感想 こんばんは、拝読しました。 王道的な展開ですね。でも、ありきたりではなかったです。 序盤が会話文が少なくて、中盤から急に多くなったような気がします。やっぱこの少女のおかげですね。徐々に生気を取り戻していく少年の姿が微笑ましいです。 「…………」の部分がとても惜しいです。…は万能ですけど、描写に置き換えた方が良いのでは。描写が上手いので、損はしないと思います。 他は、よく出来ています。ただ、面白みがもうちょっと欲しかったです。 以上です。高得点目指して、また次回も頑張ってください。 テンプトさんの感想 はじめまして。 読みましたので感想を。 文章がお上手で、その点だけとればプロ級だと思います。 ただ展開が読めてしまいます、話としてはあともうひとひねり欲しいです。 紳の心象も少し単純だったかもしれません。 文章の上手さでそれらがすべてフォローできている気がしますが。 他の部分も伸ばされるとスキがなくなるのではないでしょうか。 それではこれからもがんばってください。 爆弾岩石さんの感想 拝読させて頂きました。 いや、感想返しに来たつもりだったんですが、語彙力と文章力の高さに逆に勉強させてもらいました。ありがとうございます。 ……ここまで書いた割には点数低いですが、それはやはり、内容がありきたりであると感じたからです。 気晴らしに書いたというのは本当に驚きでしかないのですが、それはそれ、と言う訳でここはやはり厳しくいくべきだろう、と思いこの点数にしました。ご了承ください。 それから、個人的にですが気になった点の指摘を。 良作を見ると粗を探したくなる自分の悪い癖に、久々に火がつきました。何かの足しになってくれれば嬉しいなぁ、と思います。 >茫然と空を眺める少年の名を向島紳と言った。 ここは『少年の名は、』か、『少年は、名を』に直した方がいいと思います。 自信はないです。日本語弱いので。 > 先天性の心臓病を患う少年は数日前に大きな発作を起こし〜〜、今しがたも大きな咳が彼を襲う。 心臓病の発作って咳が出るのでしょうか? いや、知識無いので解りませんが、それは肺の病気のような気が……。 >街の光で霞みながらも夜空を彩る微かな星々と、際やかな円を描く月の明かりが、紳の病室に射しこんでくる。 満月の夜ってあんまり星は見えなくないですか?? いや、見えない事もないとは思いますが、本当にぽつぽつとしか見えないですよ。 >紳は表情を強張らせたが、相手は彼の心情を解してか陽気な口調で応じてきた。 表情を強張らせた相手に対して『陽気』は、何か違和感があります。 ここは『柔らか』かったり『穏やか』だったり、『努めて明るく』だったりの方が良かったかな……、と。 >素朴ながらもどこか華やかさを匂わせる美少女 表現したかった事は何となく解りますが、流石に無理があると思います、はい。 『素朴』と『華やかさ』は対になるものですから、それを両立させようと思ったらそれなりの説明が欲しいですね。 >誰だったのだろうか、紳は当然のように疑問を抱いたが、それも朝になればわかる事だ。 何故、朝になるとわかるのでしょう? 多分、誰かに聞けば、とかそういうことなのでしょうが、もう少し説明が欲しかったです。 >その庭を散歩する患者、医師や看護婦も 今は『看護師』って言うらしいですよ? はい、どうでもいい突っ込みです。 >流し目に見ていては、見逃して当然のように慎ましやかに咲いている 『流し目』ってそういう意味ありましたかね? これもまたあやしい指摘ですが、初めてみる使い方です。 >主治医がしまったという顔であごを撫でて誤魔化していると、 しまったという顔をしている時点で誤魔化せてないですよね、絶対。 それから、これは自分でもよく解らないのですが気になった点です >「こんばんは」と、少女は再び少年に微笑みながら言った。紳は恐る恐る「うん」と相槌を打った。 ここは前半の文で『少年は』と言っているので、後半の文で『紳は』と使うのは変な気がします。逆だったら大丈夫なのですが……。 ……と、最初思ったのですが、これって前半は少女の視点で、後半が紳の視点になってるとも考えられるわけですよね。そう捉えると、文章はこのままで、段落で分けた方が混乱がなくて良いのかなぁとか思ったりして、色々考えてたら訳が解らなくなりました。もし正解が解ったら教えて下さい(待て と言う訳で、自己満足的粗探し、これにて終了です。 長々と失礼しましたが、本当に勉強させて頂きました。ありがとうございます。 それでは、次回作にも期待しております。 稲荷さんの感想 こんばんは、稲荷です。 遅ればせながらお返しに参りました。 拙い感想になりますが、どうかお付き合い下さいませ。 自分の思った良いところも悪いところも皆さんが仰っていて既出なので、割愛させていただきます。 久しぶりに掌編の間で出会えた良い作品だと思いました。元々三人称で書いている身としましては、大変勉強になりました。オーソドックスで山もオチも若干弱いように思いましたが、文章力も高い上に雰囲気がよく、心が温かくなる作品でした。 粗探しですが、 >蒼穹の空 蒼穹が元々「青空」という意味なので、二重に同じ言葉を使っています(頭痛が痛い、のように)。 あと自信がないのですが、後半で人称が若干医師と紳の間でぶれているように感じました。元々紳の思考中心で進んでいたのが、途中で医師の思考が混ざっていたので、そのような違和感を抱いたのだと思います。 拙い感想ですが、以上です。 この調子で次回作も頑張ってください。 千蝶さんの感想 最初はプロの方の書かれた物だと思いこんでしまって、この人の単行本でてるかな、なんて考えてしまいました。 本当に読みやすくて優しい気持ちになれる作品ですね。 引っかかる部分は殆どありませんが、一つだけ。 他の方も書いていらっしゃった事ですが、後半の視点の移動が気になりました。 紳の視点で進んでいた所に医師の心中が混じっていたので、少し違和感を感じます。 ですが、素晴らしい作品であることに違いはありません。 長編も楽しみにしています。 頑張って下さいね! もうエリさんの感想 こんにちは。 感想返し、と言わなくてもこの作品は拝読させていただいていたと思います。 以下感想になります。 文章の巧みさに舌を巻きました。 書店の棚に並んでいても遜色ないというか、下手な作家より上手いのでは。 私は内面を描く話だとどうしても一人称にしてしまうのですが、三人称でここまでの描写…お手本になります。 個人的な意見ですが短編以上の長さで読みたかったです。 というのも展開は王道ですので、やはり他の強みで勝負するのが妥当かなあと。 読んでいて描写にむしろ感動するほどの文章ですので、量を増やしてもっとキャラの内面に割くなりした方が話に深みが出ると思った次第です。 と言っても冗長になりすぎては元も子もありませんからこれくらいが丁度よかったのかもしれませんね…難しいです。 皆さんがもう色々仰ってますので他には特に付け足す部分もありません。 拙い感想で申し訳ないです。 とにかくレベルが高かったので初めての高得点をつけます。 素晴らしい作品でした、楽しんで読ませていただきました。 イチさんの感想 イチです。お初に。 拝読しましたので感想をば。 感想。 「これ、何処で売ってるの?」 最初に見たとき、プロの方かと錯覚しました。いや、ホントに。 風景描写や少女の容姿を表現している部分など、とてもお上手で見習う事が多々ありました。 あえて欠点を挙げるとしたら、冒頭部分が少々読み難いかもということ位です。 縦書き表示なら問題はないのですが、横書きだと「」無しの長文は抵抗があると思います。 小説を読み慣れていない方には特に。 正直、私も最初は敬遠してました(苦笑) 以上が私の感想です。 他にも作品を書かれているようなので、もしかしたらそちらでお会いするかも……。 ではでは。 団子屋さんの感想 掌編で三人称って珍しいですね。 慣れると読みやすいんだけど、慣れないまでは読むの面倒ですね(一人称ばっかり読んでるともう)。 慣れる慣れないもやはり作者の腕によるところが大きいのだろうか……。 描写は問題なかったように思います。話もしっかりしていて、全体的に完成度が高かったです。 でも何かねちっとした文章だったなあ……軽々とは読めませんでした。所々上手いなあという所はあったんですけどね(多分これ私が慣れてないからだとおもいます)。 読みにくいと読みやすいの中間だと思ってください。 肝心の内容は掌編らしくきっぱり終わっていて良かったです。 これじゃあ高得点も納得ですね。 特に突っ込み所はありません。敢えて言えば少女が出てきたところで「やっぱり出てきた美少女!」と最近の私が慨嘆している超個人的すぎますが、そんな感想を漏らした事と「何で手術失敗したのにこの少女はこんなにも前向きなんだろうなあ……」と思った事。私なら主人公の病室に現れたら「手術は怖いよ? もうお好み焼き食べられなくなるよ?」とか言って脅しちゃいますけどね。 希望は大切ですけどね。死んだ人がそれを望むのでしょうか? 私には知るすべはありませんが。 個人的には少女にもうちょっと特徴くっつけて頂けたら良いと思います。白い花=白い尻尾がある。花言葉にちなんだ何かをくっつける。ネコミミならぬ花ミミをくっつける。とかとか。 描写は10点。内容は20点です。 オペラ座さんが入院したら化けて出てやります。 けろさんの感想 良いお話をありがとうございます。 表現の妙や展開の事については既に皆さんが書かれていますので、設定について一つ。 心房中隔欠損の場合、中2まで放っておくことはかなり少ないと思います。もっと幼い時点で両親が決断を迫られ、手術に踏み切っていることでしょう。たぶん1歳頃までに。 何度も発作に襲われながら、なおかつ中2まで手術できる状態ではなかったとすれば、手術したとて元気に走り回るのは困難でしょう。血液循環形態が変わるため、しばらくは心不全に悩むことにもなります。他の方もご指摘の通り、発作で運びこまれて大きな咳というのも不自然に感じます。ちょっとウソっぽいと思いました。 プロとして書くならその辺の取材も必要なのでしょうが、そこまで問うこともないかと思いますので、戯言とお流し下さいませ。 ともかくも、良いお話をありがとうございました。 千草さんの感想 toriさん、はじめまして。 千草、といいます。 色々と無礼な点もあるかと思いますが、よろしくお願いします。 さて、「花咲き乱れて空を笑う」を読了しましたが、 素晴らしい、の一言です。 ラストでタイトルの意味を知り、それまでのこと(少女や少年など)を思い返しては、また胸を突かれました。 こんなにも素直に感動できるお話だったんですね。。。 見習いたいと思います。 言葉少なでしたが、これはとても良い作品です。 ただ、冷静になって再読してみると少し疑問が…… 細かいところまで突っ込むので、少し長いかもです。ごめんなさい。 ここに箇条書きで挙げていきます。 @冒頭の描写に難あり 具体的に言うと、 「茫然と空を眺める少年の名を向島紳と言った。先天性の心臓病を患う少年は数日前に大きな発作を起こし、この病院に搬送された。」 いきなり少年ですか? いや、少年でなくても、「〜と言った。先天性の〜」という文章のつながりはよく分からないです。 それに、なんか少年と紳がごっちゃになってますね。 (私見ですが)紳に統一したほうがよかったのではないでしょうか。 あと、 「紳はまだあどけない相貌を苦痛に歪ませ、〜」 あどけない相貌? 「〜横たわった視線の先の机には、勉強道具が散らばっている。少年は中学二年の夏を迎えていた。度々の入退院の為に出席日数はほとんどギリギリであったが、勉強の得意な紳は成績でもって留年を免れてきた。」 少年? 紳? 他にもあるのですが、細かすぎるのでこの辺りで。 文章は分からなくもないけど、はっきりと頷けるレベルではないです。 もう一度読み返してみる事が肝要だと思います。 おそらく、冒頭が難しいというのはこのこともあるのではないでしょうか。 Aラストは……? ただ、この一文です。 「病室の外、緑草の中に一輪の花が咲いている。白く慎ましやかなその花は、それでも空を笑うように美しく咲き乱れていた。」 咲く、咲くとあまり離れていない文章の中で同じフレーズの繰り返し。 これはよくないです。 なので、多分、こんな風に…… 「病室の外に、緑草の中に一輪の花があった。白く慎ましやかなその花は、それでも空に微笑み返すかのように美しく咲いていた。」 「一輪」と書いてあるので、「咲き乱れる」は使わない。 「慎ましやか」だから、「微笑む」という結びでもいいのかも…… (あくまで、個人的なイメージです) Bはっ? 「ぼく、やっぱり手術、受けていいですか?」 「はっ?」 少しだけ、ね。 イメージや文章のつながり、或いは「〜た」の回数など、 少し考えてもいいのかな、と思いました。 もう十分突きすぎたのでこの辺りで。 点数としては、感動したで50点です。 けれど、眼の肥えた読者には少し物足りないのかなという勝手な予想で、−10点。 よって、合計得点は+40点です。 次回作も期待しています。 頑張ってくださいね(^^ 一言コメント ・何だか心をうたれました。あと題名も内容にピッタリでした。 ・いいお話ですね^^ 新作も期待してます。 |
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