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ブロッコリー噴いた。
比喩でも誇張でもなく、口内にあるおかずをブッ飛ばしてやった。それは鮮やかに流線形を描き、目の前でノロケてる野郎に直撃する。フフ、狙いどおり。 「い、いきなり何するんだよう」 うへぇ、としかめ顔をする朋友の文句はとりあえず無視だ。それよりもしっかりと追及すべきことが俺にはあった。 「いいか野口。小学校から一緒のお前のことを、俺は親友だと思っている。だからもう一度聞こう。『今年のクリスマスは、どう遊んで過ごす?』」 「えっと、彼女が出来たから、今年のイブは一人で過ごしてください」 ブロッコリー噴いた。 「うわ、いつ補充したのさ!?」 「うるせえッ俺にも分かるか! そんなことよりも野口、これは立派な背信行為だぞ!」 クリスマスは二人でパーティーをする。彼女と過ごすなんて『それっぽい』ものは絶対にしない。それが俺と野口の間で交わした協定だったはずだ。 「俺は今年も、お前とばか騒ぎをするのを楽しみにしていたのに!」 こいつと出会った、小学一年のころの映像が脳内でよみがえる。 当時、俺のクラスではクリスマス会が計画されていた。それは担任教師や他クラスも巻き込んだ大規模なもので、学級通信にも『子供たちの心あふれる交流』として掲載された。 だが。 俺と野口だけは、呼ばれなかった。楽しそうに過ごしている同級生たちをドアの隙間から指を咥えて見た悲しさ、空しさは忘れない。 「おまえ、ひとりなのか」「うん、だれにもよばれなくて……」「ふうん、おれもだ」「たのしそうだなあ、みんな」「ちっ、ぐぶつどもが。さんたなんぞにほだされおって」「きみ、むずかしいことばしってるねえ」「とうぜんだ。おれはあたまがいい」「ふーん……うう、さむい……」「おれもだ、はなみずでてきた」「こんびにでもいく?」「いいな、にくまんおごれ!」「ぼ、ぼくがおごるの?」「あたりまえだろ、おら、かねだせよ!」 ……とまあ、こんなセピア色の思い出があるってのに。 それを! 「貴様、女ができただあ? そんなものは粗大ゴミの日にでも捨ててしまえッ!」 「な、なんてこと言うんだよ。佐伯なら祝福してくれると思ってたのに!」 「ふーんだお前もう今日から親友じゃねータダの友達だー」 「そ、そんな! ちょっと待ってよ」 棒読みで冗談くさく言ったつもりだが、なぜか野口はマジに取ってやがる。いつものこいつなら俺の気持ちなんて手に取るように読むのに、判断力が低下してる。きっと女ができたせいだ。 「悪いとは思うんだけど、人生初の彼女なんだよ。思い出作りたいんだ」 「ふうん? 野口の中では、彼女>俺なんだな」 「嫌な言い方だね……あ、そうだ。佐伯も作ればいいじゃない。恋人」 「だるい。金がかかるし気苦労も耐えん」 一番の理由は俺の地味〜な容姿だ。野口は気弱だが優しい性格だし、華奢な外見に甘いマスクと、母性本能をくすぐりまくって笑い殺せそうなスペックを持ってるからな。 「そんな即物的なことだけじゃなくて――って、わ、メールだ」 野口の携帯のランプがレインボーに光る。ちくしょう、携帯までノロケ仕様とは恐れ入る。 「なんだ、彼女からか」 「うん。今日、一緒に帰らないかって。駅前の広場で面白い企画が……って、無理だよなぁ」 野口は図書委員に在籍している。たしか今週は当番だとか言ってたな。 「サボるわけにも、いかないし」 「うん? 図書委員の仕事なんて大した量はないだろう。女を優先させればいいじゃないか」 ここで逡巡されると、彼女>図書委員の仕事≧俺、という構図が出来上がるじゃないか。さすがにツライぞ。 「それが、在籍してる委員全員がそんな考えでね。真面目な委員さん一人に仕事を押し付けてるんだ。自分の当番の日ぐらいは……」 なるほど。たしかにやる気を持って委員を立候補するヤツなんて稀だな。大抵はクジかじゃんけんで運のない奴が的中する。そして、そいつらは実際に仕事はしない。「だって〜やりたくないのに任命されたんだモン〜」などとゆとり発言をかますのだ。 「仕方ない。俺が代行してやる」 「え、でも、悪いよ」 「別にお前のためじゃない。彼女さんを待たせたら悪いだろ」 「で、でも……」 「じゃあ屋台のラーメンを晩メシに奢れ。七時に駅前集合な」 こう提案してやれば野口も了承しやすいだろう。俺個人の事情としても手伝いはしたい。さっき冗談で言った「お前友達じゃねー」という発言、ちょっと後悔してるから。 「本当にいいの? その真面目な委員さんって、東雲さんなんだけど」 「ああ、アイツか。と言っても噂だけで顔も知らんがな」 東雲夕夜(しののめ ゆうや)――こんな流れで紹介するとすごい人気者のようだが、別にそんなことはない。俺と同じ高校一年生で、成績優秀で素行も良い真面目な学生。ただ無愛想でそっけないから友達がいない。 それだけである。 ただグループを組織し、その勢力の浮き沈みに命をかける女生徒達から言わせれば「無愛想で生意気なやつ」という部類に入るんだとか。軽薄な女子連中が仲を深める手軽なツールは他人の悪口と相場が決まっている。そんなときに槍玉にあげられるため、男子の耳にも入るというわけ。 「悪い人じゃないけど、実際友達がいないせいか会話続かないし。居心地は悪いかもよ」 「ふうん」 友達がいない? 俺だって野口以外にいないっての。 そして放課後。 入学以来、一度も利用したことのない図書室に俺は足を踏み入れた。ストーブが効いてて結構暑い。 入口から少し進んだところに、壁にくっ付くように小さなコの字型スペースがあった。貸出や返却といったフダが置いてあることからも、ここはカウンターのようだが。 「なんだ留守か? けしからんな」 野口の言っていた東雲とやらはどこにいる。腕組みをしてしばし沈黙していたら、 「ごめんなさい、ちょっと離れてたから」 唐突に後ろから声をかけられた。だが、俺のザイルのように太い精神はそのぐらいじゃあ揺るがん。あせらず振り向き、声の主である女性徒と相対する――までは良かった。 けれど、向きあった直後に俺は無意識に一歩距離を取っていた。 可愛いかった。 手入れの面倒さから敬遠されるロングヘアを鮮やかになびかせ、化粧もしてないのにきめ細かい白肌が黒髪と相性ばっちり。美形の証と言える切れ長の瞳に、身につけるだけで賢さが異様に上がりそうな金縁眼鏡。優秀なパーツ群をさらに際立たせるかのように、身長は百六十くらい。 文句なしに好みだ。付き合ってください。 とは流石に言わない。 「貴様が……東雲夕夜か」 こくり、と女生徒は頷く。 「貸し出し? それとも返却?」 「俺は図書室は使わないと決めているんでな。用事は別件だ」 「それ、堂々と言うこと? ……じゃあ何の用?」 「図書委員に野口というヤサ男がいるだろう。やつの代役だ。粉骨砕身の覚悟で手伝うぞ」 「……帰っていい。一人でできる」 いきなりお払い箱かよ。そりゃないぜ眼鏡さん。 「まあそう言うな。友に請け負うと言った以上、俺にも責任感がある」 こんな美少女との作業をフイにしてたまるか、という下心もある。 「十進分類法とか分かってないと作業にならないから、いい」 要するに役立たずっぽいから帰れと? むう、なんだか失礼な奴だな。 「飯を奢らせる約束してるんだ。なんでもいいから仕事くれ」 「……分かりました」 俺の言い分に納得したというよりは、話しこんで時間を無駄にするのが惜しいといった感じだった。くそ、絶対に役立ってやるぜ。 「返却された本を書架へ戻すから」 カウンター近くにある小ぶりの本棚に、文庫やハードカバーがランダムにぶち込まれている。ここから手作業で戻していくわけか。 「ふんヌっ」 俺はやる気だけは人一倍あることをアピールするため、一気に五、六冊の本を引きぬいた。フハハどうだ! 「もう少し頭を使って」 容赦のない一撃。わーいお母さん、同級生にバカって言われたよー。 「哲学書と語学の本は棚が離れてる、から……これとこれ、あとこっち」 スイスイと抜き出し、俺へとパスしてくる。東雲も何冊か本を手にとって俺の先を歩きだした。 「そう言えば名乗ってないな。俺は佐伯颯太。イニシャルがSSなんだ。わざわざ言ってみたが特に意味はない」 「すごいですね」 うわ、物凄い切り返し。こいつ人の話聞いてねえ。 ジュッシンブンルイホウ――そんな奥義は習得していないため、俺は東雲に本をパスする役、彼女が乗った脚立を抑える役、その時に微妙に膝をかがめて幸せになる役に従事することにした。目標の布地は見えなかったが心は温かい。真っ白な膝裏は眼福の一言に尽きる。 図書室だからと言って私語禁止ではないはずだ。俺は控えめな声量で、東雲へとコンタクトを図ることにした。 「俺は一年一組だ。お前は?」 「……一年三組。ん、孟子」 要求された書物を渡す。 えっと、だな。 「好きな学食のメニューなに? 俺ラーメン」 「使ったことない。植物図鑑」 とりあえず。 「苦手な教科なに? 俺数学」 「ない。地図帳」 東雲は。 「俺の趣味は音楽鑑賞。お前は?」 「特にない。芥川全集」 そっけない。 作業にまつわる必要最低限のことしか喋らず、俺が何かを話しかけたときにだけ、少しの沈黙を挟み、返答がされる。自分から何かを語ることは一切ない。友人、たしかに居なさそうだな。 ところでさっきから気になってること。 「なあ東雲。俺と会話するのってつまらない?」 「そんなに楽しくはない。有島武郎」 軽く落ち込む。くそ、だったら楽しい話題だ。ゲームとかだめだろうし……そうだ、時期ネタでいこう。 「そういえばあと少しで『あの日』だな」 脚立の上で作業している東雲の健康的な尻を眺めながら、俺は切り出した。 「あの日? ……次は川端」 「おいおい、この時期に『あの日』と言えば、クリスマスに決まってるだろ?」 クリスマス。その単語を発したとき。 棚に川端の全集を入れかけたまま、東雲はフリーズした。 「ん、どうした?」 「……別に」 「なんだ、固まっちまって。も、もしや、一人さびしく過ごすご予定だったか?」 「……」 うわあ地雷かよ。一人で居たいのぉおお、って奴に限って案外さみしがりだったりするんだよなぁ。困った。 「あはは……そう落ち込むなよ。川端の次は、国木田独歩か? だんだんわかってきたぜ」 差し出した分厚い本は華麗にスルーされた。暗い雰囲気をまとって、東雲は下唇をうすく噛んでいる。あらら。 「おいおい、一人身だからってそんな暗い顔すんなよ。良い子にしてたら、きっとサンタさんがプレゼント持ってきてくれるさ」 軽いノリで話を流そうとしたのだが、 「やめて」 いつの間にか東雲は、視線で俺を射抜いていた。賢さ大幅アップしそうな眼鏡の奥から、するどい黒色で。 時間が、止まった気がした。 「クリスマスとサンタ、どっちも大嫌いなの。それに友達っていう言葉もね」 ぴしり。そんな音が聞こえてきそうな言い切り方だった。 「それに、良い子にしててもプレゼントなんて貰えないよ。サンタなんていないんだから」 真冬の外気のように冷たい視線。さっきのそっけない会話の時よりも、強い壁を感じた。 この話題は、そんなに東雲のお気に召さなかったか? ちょっと待て、ただの雑談だろ? こいつへの禁止ワードはクリスマスとサンタ? なんじゃそりゃ。 俺を貫く東雲の視線は、尖ったガラス片のようだ。鋭利ではあるが、叩きつけたら割れてしまいそうな感じ。その瞳で見つめられると、なぜか呼吸がしづらい。 そのとき、中途半端に書架に埋まっていた本が、東雲の頭へとすべり落ちるのが見えた。声を出す前に本は直撃――衝撃で眼鏡がするっと取れて、東雲も不安定な脚立の上でバランスを崩す。 「危ないっ」 支えなくては。低い脚立でも怪我をするかもしれない。足をしっかり踏ん張って――その判断は間違ってはいなかった、が。 パギ、とガラスみたいなモノが割れる音が耳を打った。 たぶん、眼鏡を踏み壊したことに、俺と東雲は同時に気付いたと思う。この時の東雲の顔は忘れられそうもない。 現状を認められないような、呆然とした表情。 俺に抱きとめられたまま、東雲はしばらくそのままだった。 それから数時間後、俺は野口から労働の報酬を受けとっていた。 「……ってわけでさ。お前の仕事をボランティアで請け負ったおかげで、面倒なことになった」 「そっか、それで大盛りを奢らせたんだね。……ただの八つ当たりじゃん。しかも報酬貰ってる時点でボランティアじゃないよ」 「ふん、チャーシューメンを頼まないのは俺の慈悲と思え」 「ずいぶんとみみっちい慈悲だね……それで結局どうするの?」 気にしないで。 弁償は結構。 そうは言うが、破片を片付けてゴミ箱に捨てる間、目も合わせてくれなかった。「施錠はお願い」と残して俺よりも先に帰ってしまうし。 「どう考えても気にしているし、弁償した方がいいに決まっている。そもそも俺がムダ話で東雲の集中を削いだわけだしな。責任があるのは俺だから――」 す、とハンケチに包んだ眼鏡を、懐から取り出した。 「そんな思いが、俺にゴミ箱を漁らせた……」 「なんかカッコ良いようでちっとも決まらない台詞だね」 「なんとでも言え。それで、だ、問題が浮上した」 遠目には細い金色としか思わなかったが、よく見てみるとツルのあたりに綺麗な彫り物が施されている。葉っぱみたいな、花の茎ような、一概にコレとは言えない鮮やかな意匠――玄人はどう判断するか不明だが、素人目にはクソ高そうに見える。 左耳にひっかけるツルの内側には、S・Yというアルファベット入り。しののめ、ゆうや、だ。高校生で自分のイニシャル入り眼鏡とは恐れ入るぜ。そして右ツルの内側には『Carol』と筆記体が彫りこまれている。おそらくは購入した店の名前だろう。 「すごい高そうだね……」 「だろう? 言っとくが俺は貧乏だぞ」 「言われなくても知ってるよ」 眼鏡のことはよく分からないが、普通の眼鏡ショップでこんなモン作ってくれないだろう。 野口が腫れものを触るように眼鏡を取り上げる。 「フツーの眼鏡なら一万、高くても二万あれば十分足りると思うけれど、これはどうかなあ」 「ネットで検索してみようぜ。お前の携帯で調べてくれ」 自分で調べるのが面倒だからではない。 野口はひと月定額料金のブルジョワ携帯で、俺は千五百円以上使ったら機能が停止する平民携帯なのだ。母上サマは俺に金銭の大切さを噛みしめさせたいらしい。だが実際は、不自由という枷を噛みちぎりたいと思うだけだ。 「眼鏡、オーダーメイド、『Carol』……あったよ、サイト」 「おお、さすがだ」 「ずいぶんと老舗みたいだね。へえ、この町にあるんだ」 二人で狭いウィンドウを覗き込む。トップページには店長とおぼしきおいぼれ爺さんが映っている。そして気になる値段は。 フレームは三万円から――レンズは二万円から――文字や模様を彫りたい方は別途料金が――。 「何……だと?」 標準的な組み合わせで七万円、とある。コンビニでおにぎり買うときに百五円のシーチキンか百三十円の明太子かで頭を悩ませるような高校生に、七万円? 「はは、わろす」 「棒読みになってるよ佐伯……しっかりして」 俺が幼少の頃より貯めているブタさん貯金箱だって二万あるかどうか……。母に相談するか? いや待て、もし使い道を詰問されて「七万円の眼鏡を壊しちゃった☆」とか言ってみろ。殺されちまう。 要するに、だ。 「無理だな」 「ここでまともにバイトで稼ぐ、と言わないのが佐伯のこすい所だよね」 「フン、なんとでも言え。七万円って、バイトに明け暮れてる大学生でも簡単に出せる額じゃねえぞ」 「まあ確かにね。ここまで高価だとお互いの両親を巻き込んじゃうに決まってるし。東雲さんもその辺りが面倒だったんじゃないかな」 野口は携帯をパタンと閉じると、この話は終わりとばかりにラーメンを食い始めた。 「そう、だよな」 俺は責任感のある人間じゃないし、金持ちのお坊ちゃんでもない。あんな不注意からくる過失の償いに七万円も払えない。しかも眼鏡の持ち主が弁償はいらないと言っているのだ。後日、改めて頭を下げて、何か別のもので償うのが普通の道だ。 けれど。胸がチクリと痛む。踏みつぶされた眼鏡を見たときの、東雲の表情が頭にこびりついて離れない。 「佐伯、麺が延びるよ」 せっかく大盛りを頼んだのに、麺は汁を吸ってぶよぶよになっていた。 ――クリスマスとサンタ、どっちも大嫌いなの。それに友達っていう言葉もね。 ――それに、良い子にしててもプレゼントなんて貰えないよ。サンタなんていないんだから。 東雲の声が、脳内でリピートした。 ――ああ、なるほど。 俺はあいつの言葉に、引っかかっていたのかもしれないな。 「……野口」 「なに?」 「さっきのサイト、もっかい見せて」 やっぱり俺、弁償するわ。 翌日。 生徒を授業から解放する、昼休み開始の鐘が鳴った。机を引きずる音、飯だーっと叫ぶ者。それら一切に混じらず、東雲夕夜は弁当箱を片手に、横開きドアをスライドさせた。 直後、待ち伏せていた俺と目が合う。ちなみに眼鏡は予備のものだろうか、銀色の薄いフレームに変わっていた。やっぱコイツ可愛いな。眼鏡っ娘最高。 「やあ東雲。奇遇だな」 「佐伯、なんで、いるの」 「授業が早く終わったから、お前が来るのを待ってたんだ。一緒にお昼しようぜ」 「……」 東雲は俺を空気のように無視し、さっさと廊下を歩きだしてしまう。 「へへ、そんなに冷たくするなよ、お嬢ちゃん」 「私、一人で食べたいの。邪魔だから帰って。そもそも佐伯のこと自体、あんまり好きじゃない、から」 ふむ。ここまで拒絶されたら、並の者なら完全に追跡をやめるだろうが――。 「……やれやれ。素直じゃないな」 「ええ!? なんで帰らないの……」 「俺は東雲と一緒に昼飯を食う。そう決めてるからだ」 「なっ。い、意味わかんない」 「食いたいんだもん」 「……黙って」 「だもん。だもんだもん」 こんなくだらんやり取りをするうちに、俺は東雲の進むルートが奇妙であることに気がつく。どんどん校舎の上へと昇っていくのだ。この階段を上がりきれば、たしか屋上があるだけ。それもゲームのように開放はされておらず、頑強な南京錠で施錠されていたはずだが。 そんなことを思っているうちに、ロックされた扉の前に到着。小さくくり抜かれた小窓からは、フェンスで囲まれた屋上がわずかに覗けた。ドア前の狭いスペースには、教室からあぶれたらしい机と椅子が数組放置されている。 東雲は椅子の一つに腰を落ち着けると、埃が拭われている机の上で弁当を広げ出した。 「これぞ隠れ家ってレイアウトだな。よっこいしょ」 「同じ机使わないで」 「ちっ、照れ屋め。こっちのにするか」 俺を退けることをあきらめたのだろう、好きにすれば、と東雲は小さく漏らした。何とか不満を感じさせつつも、同席することに成功。 ここからは俺の巧みな話術で東雲とコミュニケーション・タイムとしゃれこむぜ。 「うお、見事な弁当だな。もしや手作りか?」 無言。 「ひゅーハンバーグうまそー。焦げ目の付け方が絶妙だ」 無言。 「俺は冷凍食品の春巻きを入れている。トレードしないか。意外といけるぞハッハー」 無言。 コンクリートの壁や、雑多に積み重なった机たちに俺を溶け込ませて、あたかも自分しかいないかのように食事を続けている。階段がすぐ近くにあるものだから、自分の投げた会話がそこかしこで反響するのがつらい。壁と会話してるみたいだ。 パサパサとして米を喉に通しつつ、俺はとりあえずの本題に入ることにした。 「昨日はすまなかった」 「……別に、謝らなくてもいいわよ」 「なんだよ聞こえたのかー」 「誠意こもってないね……」 「いや、謝罪したい気持ちは本当だ。お前がなんであんなにマジだったのか知らんが、俺のせいであの事故が起こったのは事実だろ」 俺の下げた頭に、返事は帰ってこない。プラスチックの箸が弁当箱に当たるカチカチ音だけが響く。 「あの、ね。怒ってないから」 その言葉が発せられたのは、東雲の文庫本のように小さい弁当箱が空っぽになったときだった。 「あの眼鏡も安物だし。まあ多少愛着はあったけど、そろそろ替えたいとも思ってたから」 そこまで嘘を言って、俺との仲を切りたいのか。 「だから、気にしないで」 飯を食べている間、ずっと台詞を練っていたのだろうか。すらすらとつっかえることなく、まるで劇の台本を棒読みするように、東雲は続ける。 「友達いない私と食事する――えっと、佐伯が何かしたいって思ってくれてるのは分かったから。その気持ちだけで十分。でも私ね、友達とか、友情とか、そういう曖昧な言葉も、存在も、嫌いなの」 それと――と、東雲は息継ぎも満足にしないまま台詞を全て吐き出してくる。 「だから明日からは、もう私に関わらないで。一人でいたいの。……お願いします」 ぺこ、と頭を下げると、俺の返事も待たずに階段を降りて行った。サラサラの黒髪をなびかせながら、上履きのキュ、という音を響かせながら。風が吹いて何もかも根こそぎ吹き飛ばしてしまったかのように、東雲は俺との関係を『切って』きた。 「……なんだよ」 人との関係を絶つ場合は、徹底的に相手を幻滅させるしかない。たとえば友情がお気に召さないなら、俺の親友である野口を馬鹿にするとか。そうでもすれば俺は確実にあいつを嫌える。 俺だって馬鹿じゃない。本当の本当に、心の底から混じりっけ一つない真心で「近寄るな」と言われれば身を引くさ。 だがあいつの言葉には、それを感じない。 東雲夕夜は、友達を、欲している。 「関わるなって言うけどさ、俺だって放っておけないっての」 本来、面と向かって言うべき言葉は、やっぱり壁に吸い込まれた。 翌日。 「東雲! 昼飯食おうぜ!」 「あうっ……!」 すたすた。 その翌日。 「東雲! 食堂行こうぜ!」 「っ……!」 たったっ。 さらに翌日。 「東雲! 俺、弁当作ってきたんだ! ホラ受け取れ!」 「……!」 たたたた。 さらにさらに、翌日。 「しののめぇ! 今日も屋上前かああ? はは、待てよこいつぅ!」 「ううう〜!」 だだだだだだ。 とまあ、こんな風に。俺は東雲の頼みを無視して毎日ランチタイムを申し込んでいる。 「今に見てろ野口。東雲のやつ、俺抜きじゃいられなくなるぜ」 「それを冗談で言ってなかったら、僕は佐伯颯太という人間に戦慄せざるをえないよ……」 「いやあ。今日も無言のランチタイム、楽しかった!」 「絶対無理して言ってるよね? 朝晩バイトしてるんだか昼間くらい休めばいいのに」 「ばあか、昼しかないからこうしてつけ回してるんだろ」 「最低だこいつ……」 さりげなく野口が言ってしまったが、俺はバイトを始めた。 『Carol』に足を運んで確かめた結果、やはりあの眼鏡は七万円する。自宅に帰ってブタさん貯金箱をカカト落としで破砕した結果、貯金は二万円にギリギリ届く程度だった。当初の目的どおり、目標額は五万円だ。 しかし問題はまだあった。 『Carol』の支払い方法が前払いだったのだ。いきなり足りない五万円をポンと用意するのはスネオでもない限りムリ。もちろん愛するママンにねだれるはずもない。 そこで俺は、同じ町でケーキ店を経営している叔母さんに頭を下げに行った。 「五万円貸してください。働いてきっちり返します」 もちろん何に使うかは洗いざらい白状させられたが、叔母さんは俺の母親には内緒にすると約束してくれた。 高校の授業に影響を与えないように、朝は四時から、午後は五時から四時間勤務。こうでもしないと母親もうるさいからな。 販売しているケーキの特徴と値段を早く覚えなければ、無理を聞いてくれた叔母さんに申し訳ない。ちなみに叔母さんはドーラみたいな人だから、ミスするたびに拳骨が飛んでくる。なんだかファンシーな内装をしたラーメン屋に勤めてるみたいです。 「そうそう。この前、お客で『東雲サキ』という人が来たぜ」 「名前からして、お姉さんとか?」 「ぶっぶー、母上だ。馬を射るなら何とやら、だな。武者小路もそう言っておる」 「あの人、失恋マスターだよ……」 サキさんは娘の誕生日ケーキを予約していった。皮肉にも日付はイブだったが。 「いろいろあったが、とりあえず万事快調だ。イブの夜には眼鏡も完成するらしいし、なんとかクリスマスに間に合うぞ」 「うーん、償いなのは分かるけど。どうしてそこまでするの?」 直球が来た。 「生徒の間で噂になってるよ。佐伯が東雲さんのことを――」 「片思いって? まったく高校生は恋愛の話が好きですな」 「違うよ。ストーキングしてるって」 「ほ、ほお。……まったく。見て分かることでしか物事を判断しないとはけしからん連中だ。星の王子さまでも読めと言っておけ」 大切なことは、目に見えないのだ。 「ふざけないでよ。いったい何が目的なのさ。まさか本当に好きなんじゃ……」 「違うって。まあ惚れてくれたらという下心もそりゃあるけどな」 サンタのことで、ちょっと言いたいことあるんだよ。 そして、とうとうやってきた。 十二月二十四日、クリスマスイブ。道行く人はみな笑顔。音楽は耳に楽しく、風の冷たさすらが楽しい。唯一文句を言うならば天気だな。「雪が降りますよぉ」と言って俺の期待を煽ったお天気姉さんは首をくくれ。曇ってるだけじゃねえか。 俺は叔母さんの命で、サンタの衣装を着ていた。 「ケーキ、いかかですかー」 店の外に小さなテーブルを出し、その上にケーキを載せて客引きを行う。 道を歩くカップルたちは呼び込みをする俺を一瞥し「似合ってね〜ダサ」みたいな視線を飛ばしてくる奴がいた。そんな輩には二人の仲を引き裂くように積極的に声をかけた。やれやれ、叔母さんから食らった拳骨が寒さにしみるぜ。 「おいしいですよー、どうすか、そこのお兄さん」 さっきから声を出しちゃいるが、誰も俺のことなんか気にかけない。みんな予定している映画やらレストランやらに、愛しい人と腕を組んで向かっていくだけだ。俺は寒空の下でジングルベルを聞きながらケーキを宣伝するのがお似合いか。 雪でも降ったら最高の追い打ちなんだがなと思っていたら、足元で何かが鳴いた。黒い野良猫だった。 「なんだ、お前も一人ぼっちか」 「ニャア」 ズボンの裾をぺろぺろとなめてきやがる。可愛いじゃねえか。 「そうだ。あま〜い、ケーキなんてどう?」 「ニャン」 嗚呼くだらない。だがなぜこうも楽しいのだろう。理由は一つ、クリスマスだから。お互いの身の上を同情して猫とシンパシーを感じながら、俺はぼんやりと東雲のことを思った。 クリスマスとサンタが大嫌い。そこまで言わしめる彼女からしたら、今の町の状態は耐えがたいものだろう。今頃、自室に閉じこもって勉強や読書をしているのだろうか。商店街から聞こえてくる微かなクリスマスソングも、ヘッドフォンなんかで遮断しながら。 なにせクリスマスにあんなことがあったんだから……きつい、だろうな。 「フシャッ」 「うお!」 爪で引っ掻かれそうになるのを、全力スウェーで回避。危ねえ危ねえ、油断して近づきすぎていたぜ。袖擦り合っても縁はやっぱり多少でしかない。猫は結局とてとてと元来た路地へと引き返していった。あれだけ強気なヤツなら、俺より生命力が強そうだから心配ないだろう。 「……あう」 「ん? この独特な発声は――やはり東雲夕夜ッ」 これは予想外の出会いだ。紺色のダッフルコートのボタンを首元まできっちり留めており、コートの丈が長いせいかスカートが完全に隠れていて、黒ソックスに包まれた足だけが見える。下に何も履いてないみたいでとてもエロスです。白いマフラーに口元をうずめる様子も限りなくキュートだった。 「どうした頬まで染めて。ようやく俺のスケベ視線に気づいたか」 「……ケーキ、予約してるんですが」 今のはおそらく「佐伯颯太には反応しないが店員とは会話をする」という意思表示ですね。はいはいへこたれないよ。ちなみに東雲の頬が赤いのは寒いせいね。 「ああ、誕生日ケーキだったな」 「な、なんで知ってるのっ」 「ふん。板チョコに『ゆうやちゃん、ハッピーバースデー』と書いたのはこの俺だぞ。ちょっと気を利かせてMS明朝体で書いてみた」 このためにどれだけのチョコを無駄にしたか。そしてどれだけ叔母に殴られたか。 「佐伯は、余計なことばかりするね……」 「うお。すげえな今日は雪が降るか? 今まで俺の会話をドッジボールのように避けるだけだったのに、とうとうキャッチボールを覚えたか!」 違う、と呟きにも似た声がマフラー越しに聞こえた。 「嫌な予感がするの。あなた、どうしてバイトしてるの?」 げ。眼鏡の件を嗅ぎつけたか? いやまあ、明日にはばれるのだが、渡すタイミングとかがかなり重要だからな。できれば自分のペースで事を運びたい。 「欲しいものがあるんだ。地道に稼ぐのさ、偉いだろ」 「ふうん、何それ」 「XB○X360」 ふふ、隠し方が絶妙だろう。 「よくわかんない……電卓?」 バイトしなきゃ買えないってどんな電卓だよ。ダイヤでも入ってんのか。 「こら颯太! 突っ立ってないで声出しな!」 「わわドーラ、じゃねえ店長っ! すんませんでしたッ」 軍隊のように背筋を伸ばして謝罪する。ここ数日のバイトで、俺の猫背はすっかり治ってしまった。 「ったく。ん、この子は? 友達かい?」 「そうっす。マブダチっす。一緒に廊下を駆けっこする仲っす。ケーキを受け取りにきたようっす」 「う、嘘です。嘘。この人はただの同級生」 何このコント。 「アッハハ、颯太も嫌われてるねえ。それで、どちら様で?」 「三日前に予約した、東雲です」 ――彼女が「東雲」と名乗ったその時、俺は大きなミスを犯したことに気がついた。東雲に会ったら、浮かれる前にさっさと店内にケーキを取りに行くべきだったのだ。だって。 「ああ、あんたか。颯太が眼鏡ブッ壊しちゃった子」 「え?」 東雲の軽い動揺。まずい! 「お、叔母さ――」 「でもコイツは、いまどき珍しい馬鹿モンでね。うちで働いて弁償するそうだから、許してやってよ。ああそうだケーキね。中に入ってくれるかい。外は寒くていけないよ」 気まずい雰囲気には気づかず、叔母さんは用意してあった洋菓子を取りに行ってしまった。 残されたのは、俺と東雲の二人だけ。 「どういう、こと?」 「いや、その、えっと」 俺が東雲みたいな喋り方になってる。 「弁償って、『Carol』に……行ったの?」 一歩、東雲は後ずさる。 「おかしいよ。七万もするのに、弁償するなんて。まさか――」 綺麗な声が震える。原因は寒さでは絶対にない。 「聞いたの? うちの、家のこと。そうでしょ? だから、でしょ?」 「……ああ、うん。全部知ってる」 「や、だ……どうして、知ろうとするの……」 混乱と拒絶がない交ぜになった、俺を糾弾する視線。 「ま、待ってくれ東雲。俺には考えがあって――」 「や、やめて!」 通りを歩く人全てが振り向くような大声。視線が集まることにも彼女は気付いていないのか。俺だけを睨みつけてくる。 「なんで佐伯は私に構うの? 知ったからって、無視すればいいじゃない。私は、今のままがいいのに。どうして放ってくれないの。あなたの勝手で、私の覚悟を振り回さないで……!」 なんだ。どうした。喧嘩? 若いねーッ。 思慮に欠ける野次馬の小言が、鬱陶しい。 東雲は俺から逃れるように、走り出した。ケーキも受け取らずに、人ごみをかき分けて、消えた。 「しの、のめ……」 追いかけなければ。そうは思っても足が動かない。 あいつの過去を、俺は『Carol』で聞かされた。知ってしまったから、力になりたかった。 あいつに伝えたいことがあったのだ。だから今まで頑張ってきた。 けれどそれは全て、余計なことだった、のかもしれない。 私の覚悟を振り回さないで。 たしかにその通りだ。俺は彼女のプライベートに、よかれと思いながらも、土足で踏み込んだ。本人の了承も得ずにだ。 つま先を眺めていたら、ポケットの携帯が震えた。 『眼鏡が出来たぞ。取りに来い小僧』 しわがれた声が、そう告げた。 俺は野口とラーメンを食ったその日、『Carol』で東雲の過去を知ってしまった。 東雲がクリスマスを嫌いになった原因は、彼女の家庭にあった。 あいつの旧姓は、横山夕夜という。 父親である横山信二と『Carol』の店長は、年こそ離れていたが、昔から眼鏡の関係で交流が深かったらしい。幼い東雲を一人留守番させるときは、店長に預けるほど信頼されていたそうだ。 そしてあの眼鏡は、横山信二が東雲サキにプロポーズする際に贈ったもの。 俺は本当に間抜けだった。 S・Yだから、東雲夕夜だなんて。イニシャルは逆なんだから、サキ・横山なんだ。結婚した後のイニシャルを刻み込んでのプロポーズ……ずいぶんとロマンチックなやり取りから、横山家はスタートした。 「あの夫婦、初めこそ仲睦まじかったが……娘が十歳ぐらいの頃に、かなり荒れてな。原因は父親の浮気じゃ」 俺に東雲の過去を語る爺さんは、悲しそうに目を伏せていた。 「わしが仲裁に入ったが無駄じゃった。父親は嫁の悪態ばかりつくし、母親は別れたいだのやっぱり嫌だだのと錯乱しての。口論もよくしておったよ。父親が手をあげたこともあった……あの時はひどかったな。ようやく離婚を二人が決めたのは、イブの夜じゃった。娘の誕生日も忘れて書類を作っておったわ」 夜中に怒声を聞き、愛する父が愛する母を殴るサマを見せつけられ、家具は倒れ、食器は割れ、食事は別々になり、挨拶すらも消え失せ、血が繋がっているのに他人のような接し方ばかりになって――挙句の果ては、自分の誕生日すら忘れられる。 それを、東雲は十歳で体験した。十歳と言ったら小学四年生だ。まだ世の中には素敵なものがたくさんあって、将来の夢は宇宙飛行士だとか臆面もなく言える年頃だっていうのに。 ――それに、良い子にしててもプレゼントなんて貰えないよ。サンタなんていないんだから。 父と母に、子供の心をズタボロにされた東雲は、愛情とか友情とかを信じない子になってしまった。当然だ。裏切ってはならない両親が、壊してはいけない家庭を壊したのだから。子供にとって家庭は最初の社会なのに。 東雲は、人の心の信じ方を分からないまま放りだされたのだ。 サンタも、友達の探し方も、分からないまま。 通りを少し外れて路地を進むと、エキゾチックな外装をした店舗が顔をのぞかせた。クリスマスだというのに電飾やツリーはなく、あくまで眼鏡を売るためだけに活動しているようだ。東雲が受け取らなかったケーキを片手に、俺はノブを回した。 「こんばんは」 「おぉ小僧か。ほれ、眼鏡は出来とるぞ」 綺麗に包装された直方体の箱が、カウンターに置かれた。 俺はそれに、手を伸ばせない。 「なあ爺さんよ。俺は正しいことをしてるのかな」 「急にどうした?」 「東雲の過去はあんたから聞いた――いや、聞かされた。それで俺は、あいつの心をほぐそうとストーカー紛いなことだってやった。だけど、東雲自身が望んでないことを押し付けるなんて、正しいのかな。人の心を信じない、友達なんていらないと思ってる東雲の生きるための覚悟を、俺は揺さぶっているだけなんじゃ……」 もし俺の言葉を全てぶつけても、あいつの心が変わらなかったら。 それが怖い。 「……ほう。ずいぶんとくだらんことを言うの。今みたいにあの子の『自由みたいな気持ち』を尊重してやるのか、お前は?」 爺さんは俺から視線を外し、煙草に火をつけた。懐かしい。俺の父と同じ銘柄だ。 「わしはお前なら何とかなるんじゃないかと思っとる。お前は夕夜の過去を知らないのに、眼鏡の修理を申し出て来たからじゃ。あれが高価なことくらい、そこらのガキでも分かる。好かれようなどと下卑た下心では七万円も払えん。そもそも、夕夜に嫌われる。あの子は人との関わりを嫌っておるのだから」 ふぅ〜、と紫煙を吐き出される。その煙は、俺を外へ追いやろうとしているみたいに感じた。 「頼むよ小僧。あの子に、人を信じる気持を教えてやってくれ。お前が正しいと思うものは、夕夜の正しいと思うものとは違うんじゃろ? 夕夜のことを間違っていると思うなら、言ってやってくれ。友達として」 そう、だった。 間違っていると思うから、俺は訂正してやるつもりだったんだ。 「おっと。片恋の人として、かもしれんな?」 「それはノーコメントで。……行ってくる」 東雲に糾弾されたときは、押されてしまったけれど。爺さんのおかげで目が覚めた。 外に出ると、いつからか雪がちらつき始めていた。真っ白な息を吐き出しながら、俺は足に力を込める。 サンタや友達のことを、この雪やあの野良猫のように、一時のものだと思い込んでいる東雲を、救うのだ。 東雲を見つけるまで、俺は、走るのをやめない。 はい、店でお会いした、同じ高校の者です。 お釣りを渡し忘れましたので。 こちらから追いかけますから。 だから「娘さんの電話番号」を教えていただけますか。 「ちょろいぜ」 ケーキ店で控えていた東雲サキの電話に連絡して、夕夜の番号を聞き出すことに成功した。これでもう東雲は俺から逃れられん。 まったく正反対に走っているのかもしれない。けれど俺はダッシュをやめずにコールする。数回の呼び出し音の後、 『……もしもし』 繋がった。 「おっす、オラ佐伯」 『っ! あ、なた。なんで、また……』 「話したいことがある。いまどこだ」 『佐伯なんかと、会いたくないっ』 「なんだって!? 友達にひどいこと言うんだな!」 『は? 私に友達なんていない。そもそも佐伯みたいな奴は、みんなすぐ友達友達って言う! みんな、嘘ばかり。上っ面!』 腕を組んで歩くカップルのど真ん中をぶっちぎり、目の前の信号が赤になれば進路を右に左に変えて、とにかく『止まらないこと』に集中しながら、走り続けた。 「このひねくれモンめ。じゃあぶっちゃけてやる。俺もなあ、昔は友達いなかったんだぜ!」 『うるさい……って、え?』 「頭の悪い奴が大嫌いでさ。俺はクラスの誰よりも頭がよかった。自分よりスペックの低い人間はクズだと思ってたぜ!」 だからクリスマスパーティーにも呼ばれなかった。野口はうじうじしてて鬱陶しい、とかいう理由だったっけ。 「友情の存在を信じるも、サンタの存在を信じるも、とどのつまりは同じことだ。曖昧なくせに、どこかにあるような感じがするトコとか!」 ゴローン、ゴローン……と、公園に建つ時計台の鐘が鳴り響いた。 電話口からはかなり大きい音で聞こえてくる。ツイてる。走る方向は大体間違ってなかったらしい。 「だけど今の俺は友達がいる。サンタも信じてる。きっかけがあったからだ」 『……』 「東雲、さっき言ったよな。どうして俺がお前に関わるのをやめないのか。確かにお前の境遇には同情した。かわいそうだとも思った。でもそんなのは、お前と友達になりたいっていう気持ちからしたら、ひどく些末なんだよ! お前の行動を見りゃ良い奴だってわかる! 委員会、一人でやるくらいだもんな!」 『誰かがやらなきゃ困るから、やってるだけだものっ……』 「それがお前の良い所だ!」 息が切れてくる。東雲が移動していなければ、もうすぐ着くはずだ。 「それに図書館で言ってたな、サンタを信じていないって。俺はそれが許せねえ。だからお前に、サンタが存在することを教えてやる。ついでに友達の存在もな!」 『存在する? なにそれ。じゃあ私の目の前に出してみなよ!』 十数メートル先で、携帯に向かってどなる少女が見える。 「ああ、もちろんだ――!」 俺は携帯の電源を切った。 ダッフルコートに白いマフラーを着こんでいるのに震えている東雲に、俺は―― 「オラア、来たぞ!!」 彼女がばっちり十センチ跳び上がるほどの大声で叫んでやった。 「あうっ!? ……どうして、ここが?」 びっくり、慌てている東雲はどこか可笑しい。 「道行く人に東雲はどっち行きました? って訊ねたらすぐ教えてくれたぜ。嘘だけど」 真っ赤なもふもふジャケットが暑苦しくてたまらない。雪よもっと激しく降れ。俺を冷ませ。 「それと俺は佐伯じゃない。東雲夕夜にプレゼントを渡しに来た、サンタクロースだ」 「春じゃないのに……」 「なんだとてめえ? ……っと違う今のナシ。さあ夕夜さん、プレゼントをあげよう」 下の名前で呼ぶのはサンタ仕様だ。修理した眼鏡が入った箱を、俺は厳かに進呈する。 「……いらない」 「なんでだい?」 「私はサンタを信じてないから。プレゼントをくれるような友達もいない」 「サンタは信じている人の元へ現れるとは限らない。もしそうなら、十歳の夕夜さんにサンタが来なかった説明がつかないだろう?」 「……」 俺だってあんまりお前の古傷はつつきたくないんだ。そう睨むな。 「それに、佐伯颯太のところにサンタが現れた時、彼もまた夕夜さんと同じように信じていなかった」 東雲は箱を受け取ろうとしない。まるで銅像にでもなってしまったかのようにじっと立ったままだ。頭の上に雪がぽろぽろと積もり始めている。 俺は苦笑する。もう、全部言ってしまうか。 「佐伯颯太は、十歳の頃に父親を亡くした。イブの夜に、交通事故で」 「え?」 「スピード違反の車に轢かれた父親は即死だった。だけど……鞄が十メートル以上も吹っ飛ぶような衝撃だったのに、息子のプレゼントだけはきちんと胸に抱えていた。プレゼントは、サンテグジュペリの『星の王子さま』。表紙の端っこ一つ、折れてないほどに綺麗な状態を保っていた」 俺は今、サンタらしく笑えているだろうか。 「『星の王子さま』には、数字や目に見えることばかりを信じる人は悲しい人間であると書かれていた。これを息子に読んでもらいたかったんだ。頭が悪い友達を鼻で笑って、友情に気付こうともしない馬鹿息子にな。死ぬような状況で、父親はその本を守りぬいた」 東雲は静かに聞いてくれた。唇から細い白い息が、きれぎれにこぼれているだけで、瞬き一つしないほど俺の声に耳を傾けてくれていた。 ここからは、俺。佐伯颯太の言葉だ。 「あの時の父さんはサンタだった。クリスマスに、好きな人に何かを贈れば、それはみんなサンタになる。相手が悪い子でも、サンタなんて信じていなくても」 俺は深く息を吸う。全速力をしたのちに語り続ければ苦しくなるのも当然だ。 「これは友達も一緒だ。相手が友情なんて信じてなくても、どっちが片っぽがそれを信じて投げかければ、いずれそれは相手に届く。父さんが俺にしたように」 だんだん雪の降るペースが増してくる。俺は東雲の頭に乗った白い欠片をぱぱっと払ってやった。 「だけど、もういない人の気持ちは、どこを探しても見つからない。悲しいけどな」 サンタとかクリスマスとか、信じるなんて馬鹿みたい。 そうやって切り捨てる暇があったら、探してみればいいのだ。 「見失ったら、探さなくちゃ。信じられなくなったら、信じられるまで探さなくちゃ。そうだろ、東雲夕夜」 「自分から、探していく……」 「そうだ。探せば友達だってサンタだって、いくらだって見つかる。現に今、ここに両方いるだろう」 東雲の瞳から、ぽろぽろっと涙がこぼれ出た。 「おお、うれし泣きしてくれたぜコイツ」 「あう……」 絶望するのなんて簡単なんだから、希望を失わない強さを持とうぜ。 「そうだ、一個言い忘れてた」 「え、なに?」 これ忘れるとか、ありえねえっての。 「ケーキ代よこせ」 「あ、う、うん……!」 「まったく、全速力で駆けてきたから――うおおおお!? 俺のMS明朝体が!」 「あ、ぐしゃってる……」 「お、叔母さんに殺される」 「私が帰りにこけたって言おうか?」 「マジで!? 死ぬほど助かるよ!」 そうしてお金のやり取りを全て終えて。 「ふう。あ、そうだ一個言い忘れてた」 「今度はなに?」 「携帯持ってるんだろ? アドレス交換しようぜ」 「……うん」 しおらしい態度取るなよ。可愛いなあ。 ピローン、という音とともにお互いの情報を交換しながら、 「あ、そうだもう一個言い忘れてた」 「まだあるの? もう、今度は何?」 せえの。 「ハッピーバースデー、そしてメリークリスマス。我が友よ」 |
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作者コメント
何とか間に合った……orz キーワードは「雪」「さがす」です。 「王道」って何なんだろう。 おそらく作者のみなさま、この言葉に首をひねったのではないでしょうか。 僕も悩みました。簡単なようで意外と難しい。とりあえず、自分なりに答えは出しました。ヒロインのために走ること、です。はい意味不明。 クリスマスが舞台なので、少し時期がずれていますが、楽しんでいただけたら幸いです。 それではどちらも時期がずれていますが、メリークリスマス&ハッピーニューイヤー。 2009年冬祭り「王道冬将軍」にて掲載された作品 以下、祭りのルール。 【テーマ】 『王道』の物語であること。 【お題】 下記お題6つのうちから2つのみを選び、文中に使用すること。(2つ限定) 『夢』、『雪』、『ボーイミーツガール』、『幼女』、『さがす(漢字変換可)』、『魔王』 |
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●感想
ハイドさんの意見 "友達はサンタクロース"題名を見た時初めて思ったのは友達が本物のサンタやるのか?です。 作品を見ていると友人の扱いに笑っていました。でも、だんだんシリアスな展開になって佐伯と東雲は父親がいないという事実、その後の二人の歩む道は違うけど佐伯が東雲に友達、サンタという大切なものを教える。そして最後に東雲から涙が……本当にメリークリスマスです。 Ririn★さんの意見 こんにちは! 面白かったです! 人を信じる心というテーマ。このテーマは普遍的なものでありますが、実際に実行するのは難しい。相手を信じなければ自分も信じてもらえないというのが常でありますが、情報が少ない中で信じるに値する人かどうかを判断するのが難しいと思うからです。 みたいな理屈をこねてなかなか人が信じられない私ですが、この作品を読んで無条件で人を信じ、そして自分の努力が徒労に終わる確率が大きくても頑張ってみるというような心にさせてくれました。 短い中でよくまとまっていて、そして、面白かったです。 殿智さんの意見 執筆お疲れ様です。作品拝読しましたので感想を。 起承転結、ギャグ・シリアスなどのバランスがよかった思います。 設定としては目新しくはないのですが、とことん直球なストーリーで、かつ最後まで読ませる力のある文章でした。 ギャグも単発の面白さというより連発の力押しという印象で、ついつい笑わされてしまう印象でした。 強いて言うなら、やはりもう少し個性のある展開や設定が見たかったです。全体的に少しベタ過ぎたかな、と。 お題もそのまま正直に使っていますが、なにかひと工夫あるとより良かったです。 今企画の趣旨を考えればこのくらいがちょうどいいのかもしれませんが…… 真正面から王道に挑んで、かつ綺麗な形で終わらせ、テーマを伝えきった良い作品でした。 ミチルさんの意見 冬祭りお疲れ様です。面白い作品でした。佐伯の飄々とした性格に野口のまともさがあいまって、いい漫才(?)になっていたのがツボです。そして東雲が加わり、物語は更にいい方向に動いたと思います。心に傷を負いながら人を信じる事がどれだけ大変か……。こればかりはどんなに優秀な人でも自分だけではどうしようもありませんからね。東雲にとっても佐伯の存在は大きかったと思います。 大切な事が身にしみた時の描写は、特別な言葉がなかったにも関わらず、揺り動かされるものがありました。さりげない日常からのメリークリスマス……当たり前の生活がどんなに幸せなことかを改めて実感できました。 ストーリーとキャラは申し分ないと思います。しかし、やや場面の選び方が甘かったように思います。図書館で様々な本をしまうシーンですが、ここで星の王子様を出すべきだったかと。佐伯の人生に大きな影響を与えた本です。もっと大切に扱われてもよかったと思います。(佐伯が一冊の本を見て手を止めた、など伏線がほしかったかと)後半で出てきたときには唐突に感じられました。 それからただのギャグシーン(後半につながらない、御作ではなくても構わない場面)が多かったと思います。顕著なのはブロッコリーでした。笑えたのですが、それ以上の感慨はありません。(僕の読解力不足でしたらすみません) いろいろ申し上げましたが、全体的にレベルは高かったと思います。これからも執筆を頑張ってください。僕からは以上です。 ミチルさんの意見 不覚にも最後で泣いてしまった。(俺は、涙もろいのか?) とても良い作品だと思いました。東雲夕夜は、個人的に、とても好きなキャラクターかもしれません。 「シリアスあり、ユーモアあり、落ちで泣かす」これは、なかなかできないことだと思いますが、それをこの作品は実現してしまっていました。素晴らしい。 おお、褒めてばっかりだ。強いて悪い点を上げるならば、何故10歳なのに、「星の王子様」を買ってきたのか?という点です。私の場合、ゲームだった覚えが……。 raphaelさんの意見 不覚にも最後で泣いてしまった。(俺は、涙もろいのか?) とても良い作品だと思いました。東雲夕夜は、個人的に、とても好きなキャラクターかもしれません。 「シリアスあり、ユーモアあり、落ちで泣かす」これは、なかなかできないことだと思いますが、それをこの作品は実現してしまっていました。素晴らしい。 おお、褒めてばっかりだ。強いて悪い点を上げるならば、何故10歳なのに、「星の王子様」を買ってきたのか?という点です。私の場合、ゲームだった覚えが……。 兵藤晴佳さんの意見 こんにちは。兵藤です。拝読いたしました。 冬の風物詩を巧みに使って、爽やかな恋愛ファンタジーにまとめています。最後の種明かしも、説明臭くなりそうなところを、必要に迫られた告白という形でクリアしていました。 惜しむらくは、その心の傷が伏線として示される(この技術をフォアシャドーイングといいます)のが足りなかったことでしょうか。父親がいないことでしか生じない寂しさが、作品前半のどこかで描かれていればと思います。 うさんの意見 拝読させていただきました。 「ブロッコリー噴いた」の出だしでいきなり惹きつけられました。 そしていろいろと笑わせていただきました。特に「はは、わろす」とか。 話はどこにでもあるような普通の話だと思いますが、それを書くのはとても難しいですよね。 それをこんなに綺麗に書いてしまう作者様に感服致しました。 東雲さんのキャラは、いいですね。とってもイイです(笑)。 ドーラのようなおばさんも、ボケ担当そのまま!のような主人公も良かったです。 最後のオチでも感動させられました。 ギャグで掴みシリアスで締めるかと思いきや明るく終わらせる… 素晴らしいです。 これからも執筆頑張ってください。 アリスさんの意見 こんばんは、アリスと申します。 泣いてしまったという感想を見て、これは私も絶対読まねば! と思い、読み始めた結果……私も泣いてしまいました。うぅ、オンライン小説で泣いたのは初めてです。まぁ、泣いた部分は佐伯の父親が『鞄が十メートル以上も吹っ飛ぶような衝撃だったのに、息子のプレゼントだけはきちんと胸に抱えていた』というところなのですが。うぅ、ファーザー最高……(泣 ★ぐすっ、では読んでいて気になった箇所から指摘したいと思います。 >「ふーんだお前もう今日から親友じゃねータダの友達だー」 ・ぶっ、絶交するんじゃなくてタダの友達に戻るんですねw それを突っ込まないで本気で慌てちゃう野口も野口ですよ。いや、面白い。 >東雲夕夜(しののめ ゆうや)――こんな流れで紹介するとすごい人気者のようだが、別にそんなことはない。 ・いや、特に凄い人気者のようには思えなかったのですが……; 逆に野口の言い方からして、厄介な人物のように思えましたし。 >「貴様が……東雲夕夜か」 こくり、と女生徒は頷く。 ・貴様って……; ファンタジーの世界でもあるまいし、違和感が……; 東雲さんもこくりと頷くだけでいいんかい、と突っ込みたくなりました。 >「もう少し頭を使って」 容赦のない一撃。わーいお母さん、同級生にバカって言われたよー。 ・いいえ、バカとは言ってませんけどー?(笑)でもまぁ、私も笑ってしまったのですけどね; >「……やれやれ。素直じゃないな」 「ええ!? なんで帰らないの……」 ・この時の東雲さんの口調に違和感が。驚くのはいいとして、『はぁ? ここまで言われて何で帰らないのよ』くらい冷たくあしらった方がいいかと。 ★全体的に、凄い、と言ってしまえる印象でした。 まず、文章。とても読みやすかったです。佐伯の性格を上手く表現していましたね。コミカルな時とシリアスな時とのメリハリもついており、物語に入りやすかったです。いよいよ東雲の過去が明らかに! という時も、雰囲気がガラッと変わって(不自然になることなく)読んでいる私までハラハラしてしまいました。 少し気になったのが冒頭。佐伯と野口が何処にいるか分からなかったので、野口が『彼女の所には行けないよなぁ』と言っても、え? 今どんな状況なの? と疑問になってしまいました。そこへ更に図書委員の仕事があるからと来るので、ちょっとしたカオスに陥りました; まぁ、その後で放課後になっていることから、学校にいたのかなぁと薄っすら予想は出来るのですが……。 それと、初めて佐伯が東雲に出会うシーン。下の名前が夕夜ということもあり、私は彼女のことを男性だと勘違いしていました。ここは予め、野口に説明させておいた方が親切だったのではないかと。 後、東雲の過去について。彼女は家庭のせいで家族も友達も嫌いだと言っていますが、家族は当然だとしても友達までつくりたがらなくなるものでしょうか。逆に家庭がこんな状態だったら、友達か恋人などに相談したくなるものではないでしょうか。そこは気になりました。 そしてラスト。佐伯が自分の家庭の一部を打ち明けますが、うーん、後ちょっと物足りない! 確かに泣きましたが、実はそれはほんの4〜5粒です。あれだけでも不自然ではないですし、十分感動は出来ると思うのですが……何故か号泣には達しないのです。恐らく、佐伯のその過去が唐突に出てくるから。驚きと感動が一緒にやってきてしまうので、結果少ししか泣けないのです。なので、中盤で佐伯が父親のことを想うシーンなんかがほしかったなぁ、と思いました。例えば、東雲にサンタが嫌いと言われた時とか。そういえば、自分も嫌いだったよな……で、あの時の父親のことを思い出す。東雲にサンタの素晴らしさを伝えたいと思うようになる、など。まぁ、今回の短編でそれを入れるのは無理だと承知しています、はい。なので、もし改稿などされるのであれば、是非とも佐伯の過去を想う気持ちを書いてほしいな、と思いました。 登場人物も魅力的な人が多いですね。 まず、佐伯。もう、この人にはずっと笑わされっぱなしでした(笑)最初のブロッコリーを親友にぶっかけるところが既に……ただ者じゃないな、と悟りました。地文でかろやかに突っ込みを入れる時も、声を上げて笑ってしまいました。涙出ましたよ、マジで。感動の涙だけでなく、笑い泣きまでさせられましたよ。 そして、東雲。佐伯スルーは華麗でした(笑)ただ、一つ疑問が。この子、何故父親が母親にプレゼントした眼鏡をかけていたのでしょうか? というか、母親の眼鏡をどうやって入手したのかも気になります。彼女の家庭が家庭ですからね。親のことも恨んでいるでしょうし、なのにどうして眼鏡を……それとも、母親は浮気された身だから恨んでいるわけじゃない、とか……? 眼鏡が壊れた時の反応も反応でしたから、やっぱり母親のことは恨んでいないのかな。 何にしろ、素晴らしい作品に出会ってしまいました。『泣いた』という感想を見つけていなければ、私はこの作品を読もうともしていなかったでしょう。それが物凄く恐ろしい。ラ研でベタ褒めするのはどうかと思ったのですが、どうにかなっても良いやと思えるくらい、この作品には心を動かされました。笑いあり涙ありの作品は大好きなので、この作品に出会えて本当に良かったです。 私からは以上です。あくまで私見なのでむちゃくちゃなことも言っているかと思いますが、そこはお許し下さい; では、失礼します。 馬やんさんの意見 こんにちは。馬やんと申します。 お祭りバンザーイということで感想を残します。 自分の点数の付け方は(文章に難を感じなければ)基本0点です。 あとは面白く感じたかどうかで加点していきます。稀に読後の気分のみでマイナスをぶち込むこともあります。 あと、世辞は言えぬ体質ですのでご了承ください。 ●●● こっちがブロッコリー噴いたw 掴みはバッチリでしたね。もう冒頭からぐいぐい引っ張られました。 なんだこれ上手すぎる……orz 大筋だけを見ると「そこらへんに転がってそうな話」なのですが、なんかもう……それをこんなふうに描けるっていうのは作者さんは相当筆力が高いと思います。 いやー笑いました泣きました。 伏線がとても細やかでさりげない上に、回収の仕方が絶妙なんですよね…… 星の王子さまとか絶妙すぎました。 主人公・佐伯がやけに偉そうでナンダコイツw それでもって星の王子様とかいうキャラかよwww って思ってましたが、両方とも最後できちんと回収されました。 ほんのさりげないジョークにもきちんと意味はあった。 主人公の糞生意気な(そしておもしろすぎる)一人称にもきちんと理由はありました。ものすごいですね。 こういう組み立ての素晴らしい作品は本当に痺れます。 少年少女ものは私自身あまり好みではないのですが、構成の上手さは文句なしでした。 というか佐伯、口は生意気だけどめっちゃいい奴じゃないですか(涙) 個人的にはもう、文句のつけようがありません。優勝候補として推させていただきます。 ごちそうさまでしたm(_ _)m 庵(いおり) さんの意見 作者様、こんばんは。携帯電話から失礼します。 某所である方がお勧め作品に挙げていらっしゃったので、興味を引かれ拝読することにしました。 読了しましたので、感想など述べさせて頂きたいと思います。 それでは以下、拙い感想ですがお付き合い下さい。 まずはタイトル。 これ、「恋人はサンタクロース」のもじりですよね? 既存作品からの流用は使い方を誤ると失笑を買ってしまうものですが、読み終わってから改めて見ると内容にピッタリなタイトルでした。 作者様のオシャレなタイトルセンスがキラリと光ります。 続いて文章。 これでもか! というぐらいに上手い一人称。読みやすいだけでなく、慣用句を上手く使ったり、「XB○X」といった言葉遊びをするなど、遊び心満載なところは個人的に好みです。 おそらく作者様は、文章の上手さを褒められるのが当たり前の域にいらっしゃる方なのでしょう。 登場人物。 細やかな人物造型には好感が持てました。 メインとなる佐伯君(←実在の人物を区分けするために君付け)と東雲さん、いずれもバックボーンがしっかりと書き込まれ、二人がどんな人生を歩んできたのかがよくわかります。そして、なぜ今のような性格になったのかも。こういった細やかな気配りのおかげで、この二人には人間としての厚みを感じました。 一番のお気に入りは、やはり主人公の佐伯君。コミカルでありながら、実は誠実という愛すべき人物でした。彼が東雲さんのために頑張っている姿を見て、応援したくなってしまったほどです(笑) 内容。 ブロッコリー噴いた、掴みはこれでバッチリですね。出だしが順調ですし、台詞回しもいいので一気に引き込まれました。で、テンポのいい展開のおかげで最後まですらすらと。外出中にもかかわらず、これは絶対に感想を投稿しなくてはと思わされるほど面白かったです。 星の王子様という伏線がさりげなく挿入されたところもよかったですし、佐伯君が電話を掛けながら走っているところでは、クライマックスに向けてテンションが上がっていくのを感じました。 友達というテーマもしっかりと設定されており、終始一貫していたように思います。随分と高い構成力をお持ちですね、素晴らしいです。 一つ気になったのは、佐伯君の過去(父親が他界している)に関する伏線はどこにあったのだろう、という点。 ただここは、本作が読みやすいあまり、私が読み落としてしまった可能性もありますけれど。 ……ところで。 読みやすい一人称に、場面を短く切る癖。そして青春真っ盛りの内容。この作風を得意とする方には心当たりがあるのですが……。もし違っていたら恥ずかしいので、明言は避けておきます。 いずれにせよ、相当な実力をお持ちの作者様だと思います。 先が読める、ありきたり、どこかで見たような感じ……しかしそれがいい! 期待を裏切らないお見事な王道作品だと思います。というわけで、この評価とさせて頂きました。 さて。 先が読める、ありきたり、といった評価が無粋に思えるほどの良作でした。今後も良作を生み出していって下さい。 ではでは、長くなりましたがそろそろこのあたりで。 今後もお互いに頑張って、よりよい作品を創っていきましょう! 以上、拙い感想でした。 けさみさんの意見 ギャグとシリアスが上手く織り交ぜてあり、話のテンポも良く、非常に読みやすい作品でした。 欲を言えば、主人公の父親不在発言は唐突過ぎました。それを匂わせるような描写が前半で欲しかったです。 玖乃さんの意見 不意に開いた感想新着が分かれ道だったよ。 世の中ブラックサンタばかりだ。ブッシュドノエルの代わりにブラックサンダーをくれるらしいです。玖乃です。もう寝るつもりだったのに読んでしまいました(泣 ブロッコリーで始まって、イブを駆け抜けて、切れ味よくスパッと成敗されてしまいました。泣きの感動と言うよりなんていうか心が温まる感じですごく面白かったです! 主人公の家庭事情の暴露が多少唐突だったこと以外はもう何も言うことはなかったです。ほんとはきっと騙されてる部分があるに違いないけれど、それを感じさせることなく駆け抜けてグイグイ読まされてしまったので完敗です! 野口はどうなったのでしょう、野口の彼女は(冗談です 物語や文章や主人公の設定などから、作者さまが分かるような気もしなくはないですが・・・まあ誰であっても面白い作品をありがとうございました、という気持ちに変わりはありませんです。 拙い感想ですがこのへんで。 三月 椋さんの意見 読ませて頂きました。 むちゃくちゃ面白かったです。これほどギャグとシリアスの配分が絶妙な作品はそう無いのではないかと思います。 何より、主人公が良い。最近のラノベは往々にしてヒロインばかりが目立ちがちな傾向にありますが、今作は主人公のキャラが非常に立っていました。お調子者で、ややウザくて、でも真っ直ぐで熱い。ホント、まさに彼が主人公でなければ有り得なかった物語だと思えました。 いやもう、とにかく主人公のウザさがハンパじゃないですね。良い意味で(笑 彼の破天荒な勢いそのままに軽快にストーリーが展開されており、コメディに重要であろうテンポは完璧だったと思います。凄まじく気まずい別れ方した相手に「オッス」なんて電話口で語りかける、その彼のセンスが最高でした。 反面、そのせいで友人の野口が思いきり食われていたようですが。 気になる点があったとすれば……。 ところどころ、夕夜のキャラがふらつく場面がありました。序盤での「えぇ!?」とか、そんなうろたえ方するキャラには到底見えなかったので、こっちが驚きました。「あう」という口癖もあんまり合ってないような気がします。口癖やギャップはキャラを立たせるお手軽な手法だと思いますが、使い方一つでキャラの魅力を損ねかねないのではないかと。 もう一つ。 颯太は時計絡みで、お爺さんから東雲家の過去を聞いたようです。しかも相当ハードな。 こんなデリケートで重い過去話を、ハッキリ言って赤の他人である颯太に言うものでしょうか? 七万円という値段の件で相当颯太は気に入られたようですが、それにしても理由としてはまだ弱いような気がします。颯太が詮索したようでもないですし(まあそんなことする男には到底見えませんが)、ここがどうも違和感なのは自分だけでしょうか……。 とまぁ、こういったポイントを差し引いても傑作であると思います。ここまで主人公が魅力的に見えた物語は久々です。良いものを読ませて頂いて、本当にありがとうございました。 永遠さんの意見 こんにちは。 拝読いたしました。 読み終えてのひとこと。 冒頭がGood! まずは執筆、お疲れ様でした。 それで、ですね…… >「食いたいんだもん」 「……黙って」 「だもん。だもんだもん」 佐伯うぜぇ!って思いましたw かなり直球勝負で来ていますね。 >「しののめぇ! 今日も屋上前かああ? はは、待てよこいつぅ!」 ここまでくると、こいつ凄いなって思い始めました……(ぇ >「ふん。板チョコに『ゆうやちゃん、ハッピーバースデー』と書いたのはこの俺だぞ。ちょっと気を利かせてMS明朝体で書いてみた」 MS明朝体w 一読、よかったと思います。 クリスマスはもう終わってしまいましたが、ちょっとしたクリスマスプレゼントでしたね。 前述の佐伯は言うまでもなく、東雲に関してもその背景などが無理なく語られており、 ラストは駆け込み告白という形で説明的になりそうなところをなんとか繋げていたように思います。 あとは、佐伯の家族背景でしょうか。 これがラスト付近で唐突なカミングアウトと受け取られないためにも、序盤などで伏線を交えながらストーリーを展開させるとよかったのかなと思います。 冗さんの意見 読ませていただきました。 ちょこっと泣きましたよ。 気になった点はいくつかあるのですが、それを踏まえても十分にすぐれた作品で、楽しませていただきました。 その気になった点を細かく突っつきます。 まず、眼鏡です。これは度の入ってないファッション用の眼鏡でしょうか。近眼などの矯正用であれば、母親の眼鏡をそのまま使うのは無理がありますよね。レンズのみ入れ替えることもできますが、こういった高価なフレームの場合、それもかなり高くつきます。すると、母親が協力して娘のために度を変えることに。ちょっと不自然ですね。また、度のない眼鏡をあえてかけているのだとすれば、壊れた後に予備を使用するのはおかしいですよね。 次に、伏線の扱いです。いくつか指摘が上がっていますが、もっと早くに伏線が張られていれば唐突感は抑えられると思います。図書室のシーンか、せめてラーメン屋までに、「佐伯の父の死」「星の王子さま」などのはっきりした伏線があれば、印象が違ってくるのではないでしょうか。 もうひとつ、眼鏡屋のおじいさんによる説明はやはり不自然で、ご都合主義的な感じがいたしました。行動的で人を食った主人公ですから、ここはなにか卑怯な知恵を使って聞きださせるなどしても良かったのではと思います。主人公が東雲の過去を知っていることも、もうすこし匂わせても良かったと思います。唐突に語られる感じがしました。 そういうところが気になりながらも、さいごは泣いちゃったので、それだけキャラクターに説得力があったのですね。 のり たまごさんの意見 こんばんは。読ませていただきました。 ケーキなんざ予約せんでも買えるわぃ! ええ、買えませんでしたがww ショートケーキを前に寂しいクリスマスを送った僕に対するあてつけですなーw いや、面白かったです。ギャグパートとシリアスパートの配分がよくて、軽いテンポでサクサク読めました。惜しむらくは「眼鏡」だと思いました。東雲の辛い思い出の一端を眼鏡は担っていますから、その眼鏡を今でも使うには何か強いエピソードが欲しかったなと。また、それだからこそラストのひっくり返しが生きてくるような気がしました。東雲も本当は友情やサンタが信じたかったはずですから。 聖夜には何が起こっても不思議はない。ついでに東雲のおとんやオカン、ドーラおばさん、ちょい役の野口、みんなまとめてハッピーになれたら尚よかったですな。佐伯のオカンもねww 枚数が足りませんな、はい。 とりあえず、親父殺すなよな、と思ってしまいましたね。交通事故にあってぼろぼろになった「星の王子さま」もなかなかに味があるのではないでしょうか。満身創痍の親父に病室でもらうのも。佐伯の毒舌も冴えわたりそうだ。 ではでは。良い作品をありがとうございました。 みすたンさんの意見 ども、みすたンです。 ●ともかく言い回しにセンスが感じられますよねぇ。「ブロッコリー噴いた。」って冒頭の一文目からこれはかなり面白かったと思うんです。あとはブルジョワ携帯と平民携帯ってのも面白いと思いましたし(ちなみに僕が高校生の頃はほとんどブルジョワ携帯でしたねぇ……)、MS明朝体とかこの言い回しはなかなか見つけられないと思うんですよ。 あと、一々ぐっと来たのが、各シーンの終わり方。「友達がいない? 俺だって野口以外にいないっての。」とか「やっぱり俺、弁償するわ。」とか「サンタのことで、ちょっと言いたいことあるんだよ。」とか。余韻を残すでもなく、単純にかっこいい。これは本当に一つ一つが素晴らしかったの一言に尽きます。 東雲のツンツン振りもいいんですが、それだけで進めるなら平凡。しかし、丁寧な言葉遣いで拒絶させた辺りが作者さんのセンスのよさというか、そういうものを感じさせてくれましたね。これもよかった。 ただ、ちょっとだけ流れが、あれ?と思うところがあったりなかったり。一番は冒頭で彼女ができた野口のことを恨んでる流れだと思ったら、いきなり野口の恋を応援する流れになったところでしょうか。「こんな流れで紹介するとすごい人気者のようだが、別にそんなことはない。」とかも、人気者って印象はなかったので、うん?と首を傾げました。 ●お題の「雪」は確かに雰囲気的には出ていたんですが、後半にしか見えなかったのがちょっと残念かな?とも。「さがす」の方も友達を探すっていう言い回しは違和感が。でも「サンタも、友達の探し方も、」とサンタと並べて置かれてること考えると作るでは置き換えられないし、ありなのかなぁ。むぅ。 ●王道とはヒロインのために走ること。なんて素晴らしい悟りなんだ! 文句なしで王道ポイントプラス1です>< ●「クリスマスに、好きな人に何かを贈れば、それはみんなサンタになる。」サンタについての話なんかありふれてますが、この言葉は、その中でも一番ぐっと来る言葉だったかもしれません。何がというわけではないのですが、なんかこれは納得できましたね。 そんな感じで、ではでは! 運び手さんの意見 運び手と申します。作品を拝読しましたので、感想を書かせて頂きます。 上手いです。 ストーリーがよく練られているとか、文章がしっかりしているというだけでなく構成がプロはだしだと思いました。 >「ほ、ほお。……まったく。見て分かることでしか物事を判断しないとはけしからん連中だ。星の王子さまでも読めと言っておけ」 大切なことは、目に見えないのだ。 星の王子さまの有名な一節、この場では単に同級生のことを揶揄するために使われただけですが、物語最後にはとても大切な役割を担います。 >爺さんは俺から視線を外し、煙草に火をつけた。懐かしい。俺の父と同じ銘柄だ。 読者はこのセンテンスを読んだ時に「あれっ。ひょっとしたら?」と思います。そういえば颯太は母親に迷惑がかかるのを極度に嫌っていたような――とそれまでの内容を思い返し、この後に語られるであろう事実に対して用意することができます。このような周到かつ自然に挿入された文があるからこそ、いざその事実が明かされた時にも素直に納得できるだけの説得力がでていると思います。 他にも、颯太の小学校時代のこましゃくれたセリフなどをはじめ、後から気がつく作者様の構成力の素晴らしさは随所に見られ、その度に感心しきりです。 それでいて『MS明朝体』や『XB○X360』などのわかりやすいギャグを散りばめ、重くなりがちなストーリーをライトなものへと仕立てることも忘れていません。 はっきり言ってけなすところがありません。 敢えて一定レベル以上の上級者への注文として言うのならば、王道という制約の中で既存の王道ではない物を書いて欲しかった、というぐらいでしょうか。 文句なしの秀作だと思います。 以上となります。失礼致しました。 AQUAさんの意見 冬企画参加お疲れ様です! 作品拝読しました。 ギリギリなので簡単に雑感を……スミマセン。 冒頭から、良かったです。 ブロッコリーというチョイスのセンスが秀逸です。 カリフラワーじゃダメなんです、ブロッコリーなんですよね! ……と、関係無いところで引っかからずにサクッと感想を。 文章は、どっぷり一人称でしたね。 かなり苦手とするタイプなのですが、全体がライトだったのでサクサク読めました。 ところどころのギャグと、ヒロインとの掛け合いも面白かったです。 ヒロインは、もっとクールビューティのドS系キャラであってほしかったですが……ちょっと天然系混じってますよね? この二面性、作者さまの好みなのだろうか。 さてストーリーですが、じーんとくる良いお話でした。 ただ、枚数がちょっと足りなかったのかなぁという感じです。 また個人的には、泣かせるタイプの話にはポイントがあると思ってます。 傷ついたヒロインの話は直接(無理矢理?)聞き出すべし、ヒロイン逆切れで泣かせるべし、主人公の過去は後日他人から語らせるべし……。(ブロッコリー吹かれた親友、途中から空気化してましたね。モッタイネー!) このポイントが全て逆を行ってしまったのが、惜しかった……あくまで個人的好みの問題ですが。 では、良作をありがとうございました! しかし、佐伯人気恐るべしw 以上、一読者目線のフィーリング重視な感想ですので、どうぞ取捨選択をお願いいたします。 では、少しでもご参考になれば幸いです。 いちおさんの意見 拝読させて頂きました。いちおと申します。 拙いながら感想を。取捨選択をお願い致します。 総じて上手い、と思いました。 文章は、人を引き込むのに十分足る実力をお持ちの方だなあと羨ましくなります。 ところどころクスリと笑わせるユーモアをはらませつつ、情景描写・心理描写共に過不足のない適度な加減で、全く問題ない……どころか魅力を感じつつ読み進めることが出来ました。ああ、羨ましい。 物語は……じんとしますね。良い話だー。 決して押し付けがましさを感じることなく、先が気になる要素もしっかり組み込まれていて、それが最終的に読み手の心に響くような形で纏められていたと思います。 何度か噴き出させて頂きましたが、そういう笑い要素も好感度高いですね。 笑えただけでなくじんと来たと言うのが、読後の好感度を非常に押し上げてくれました。 結が、恋愛で終わるのではなく、タイトル通り「友達」で終わったのも、残念に思いつつすっきりとした後味です。 主人公、終始軽い調子を貫きながらも、人間らしい優しさと懐の広さを感じる……オトコマエですねw かなり好印象。 東雲も、好感度高いヒロインでした。テンプレな印象のない、どこか寂しく可愛い女の子です。 野口……個人的にはもう少し活躍が欲しかったと言うのが惜しいところでしょうか。主人公の一途な友情(?)に対して、彼も同じくらいの友情を抱いているはずなのは想像出来ますが、もうちょっと読み手に伝えて欲しかったと言うのは欲張りかもしれませんね; 本当に、良いものを読ませて頂きました。 もっと早くに読めば良かった……時間ギリギリで感想を書いているのが悔やまれますorz お役に立てない感想で申し訳ない……。 企画参加、お疲れ様でした! シンズーさんの意見 とても面白い作品でした。特にコメディ部分が素晴らしかったです。 中でも夕夜を昼食のときに毎日追い回すシーンがツボでした。 お弁当まで作ってきちゃうとか……。 元ネタがよくわからないところも少しありましたが、また次のギャグがすぐに襲ってくるので特に気にはなりませんでした。 冒頭の『ブロッコリー噴いた』も非常に惹きつけられる冒頭で良かったと思います。 登場人物もそれぞれ魅力的だったと思います。 夕夜が度々使う「あう」が結構キュンときました。 あとは主人公の妙なところで労力を惜しまないところとか大好きです。 でも、釣った魚には餌をやらなそうなタイプだとか思ってみたり。 後半、過去について話すシーンも適度な長さだったのでだれることなく、テンポも非常に良かったと思います。 とにかく面白かったです。まるで実にならない感想で申し訳ないのですが……。 一箇所だけ理屈先行の駄作者として気になる点を挙げさせていただきます。 超個人的なエゴと理屈をこねるだけなので、もし気に障ったら可哀想なものを見る目で即忘れてやってください……。 「七万円の眼鏡を壊しちゃった☆」 と『☆』は文字というより絵なのではないかと思うので、文章で勝負する身としては絵は使わないほうが良いのではとか思ったり思わなかったり。 作者様なら☆を使わなくても文章で面白くできたのではないかと思うだけに少し惜しい気持ちでした。 とは言っても、そのままでも全然面白かったですし、意味がわからないとかではないので全く問題ないとは思うのですが。 最近の作品は某ドクロちゃん等、そういった部分にも非常に寛容ですが、実際どうなんでしょうね……。 とにかく面白い作品で、読んでよかったです。 没頭して呼んでしまいました。企画中に読むことができなかったことが、とにかく悔やまれます。 楽しい作品をどうもありがとうございました。 既に集計は終わってしまいましたが、もし期間中につけるとしたらということで……。 誰かのために走ること、正しく王道です! それでは失礼します。 |
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