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桜も狂い咲きしそうな小春日和の週末、俺は引越しをした。
新居はリノベーション(新築同様の中古)物件の、東南角部屋2LDK。全財産を吐き出し、気の遠くなるような長期ローンを組んだ。 俺は、人生を変えたかった。 「――さて、ひとまず休憩するか」 軍手を放り投げ、足の踏み場も無いリビングを抜けてキッチンへ。昨夜のうちに設置しておいた冷蔵庫から、程良く冷えた缶ビールと小袋を一つ取り出し、俺はベランダに出た。 購入の決め手は、この景色だった。 眼下に広がるのは、穏やかな小川のせせらぎと桜並木。春には川面が薄紅色の花びらに埋め尽くされ、儚くも美しい絨毯に早変わりするだろう。 こうして桜を想えば、自ずと浮かんでくるのはあの瞳。 涙を湛えて艶めく彼女の瞳が、縋るように俺を見上げて―― これ以上考えちゃいけない。 俺はギュッと目を閉じ、無理にビールを煽った。苦味が俺を現実に引き戻す。 「しかし、残り二十五年か……長いな」 念のため日付をメモしておこうと、携帯のカレンダー画面を開いた俺は、思わず息を飲んだ。 『今日の予定:結婚式』 そうだ、俺はあえてこの日に引越しをぶつけた。唇を尖らせる彼女に「他の日は空いてなくてさ。終わり次第駆けつけるよ」なんて言い訳をして。 俺は彼女に、嘘をついてばかりだった。 おめでとうも、お幸せにも、アイツをよろしくも、何もかも。 ◆ 最初の嘘は、忘れもしない今年の夏―― 駅ビルの屋上は、お世辞にも涼しいとは言えなかった。だからこそ、キンと冷えたビールが引き立つ。霜をまとったガラスのジョッキが運ばれてくると、俺たちは歓声を上げてそれを打ち鳴らした。 「ぷはぁー、最高っ! で、何があったの? ビール苦手なくせに、ビアガーデン行こうだなんて」 ジョッキの半分を一気に飲み干した彼女が、白ヒゲを拭いながら問いかけてくる。俺はこの場所にして正解だと思った。彼女が一番幸せそうに笑う場所で、伝えたかった。 実はさ、と勿体ぶりつつ鞄から取り出したのは、完成予想図が描かれたパンフレット。 「マンション買うことにしたんだ」 「ええっ!」 俺はクスッと笑った。大きく見開かれたその瞳が、宇宙に浮かぶ惑星みたいに真ん丸で、可愛くて。彼女はひとしきり唸った後、神妙な面持ちで囁いた。 「ちなみに、おいくらで?」 「……いきなり直球だな」 「だって気になるんだもん。うちらの年で家買う人なんて他に居ないよ?」 「新築よりは全然安いよ。田舎だしさ」 「えー、良い場所じゃん! 新宿まで一直線! 設備だって……うわー」 感嘆の息をつくと、彼女はにっこり笑って「おめでと! 今日は私のオゴリね」と胸を叩いた。俺は苦笑しつつ頷く。女の子に奢られるのは初めての経験だ。 知り合って早一年、彼女は可憐なルックスを裏切る奔放さで、何度も俺を驚かせてきた。価値観を壊されるたびに、強烈に惹かれた。なのに臆病な俺は、友達以上恋人未満のポジションに甘んじたままで……。 俺は勇気を出して提案してみるつもりだった。この部屋に、二人で暮らす未来を。 「あのさ、サクラ」 「ん、なぁに?」 「この部屋、ベランダが広くてさ……」 彼女の真剣な眼差しが俺を捉える。その瞳があまりにも綺麗で……俺は動揺し、伝えるべき言葉を見失った。 重い沈黙を破ったのは、俺の声じゃなく携帯だった。 あの時、彼女は確かに俺の言葉を待っていた。 なぜ素直に「君に桜を見せたくて」と言えなかったんだろう? なぜ逃げるように電話を取ってしまったんだろう? 『よー、久しぶりっ。珍しく仕事早めに終わったんだ。ビールでも飲みに行かねぇ?』 アイツの地声は大きくて、俺の古い携帯から漏れ出した。途端に鋭さを増す、彼女の視線。 きっと「また今度な」の返答で及第点。「今デート中」なんて言えば、彼女は花開くように微笑んでくれたはず。 なのに……変わらぬ旧友の声に、俺はすっかり気が緩んでしまった。しばし雑談を交わした後、俺は慌てて告げた。 「悪い、今“友達”と一緒でさ」 すると彼女は、やけに低い声で「ここに呼んだら?」と呟いた。 その後、ビール好きの二人が意気投合するのを横目に、俺はただ苦いだけの液体を舐めていた。 ◆ あの夏の日と似た、生温い風が頬を撫でる。俺は空になった缶を床に置き、ぼんやりと桜を見つめた。 華やかな花弁を持たず、少し寂しげに佇む冬の桜。俺の目には、それでも充分美しく映る。 彼女もこの桜と同じだ。例えどんな姿でも……。 「好きだよ、サクラ。一生、君だけが」 俺はどうしても、君を取り戻したかった。 だから最後の嘘で、君を呼び出した。花嫁になる日を、指折り数えて待つ君を……。 ふっと自嘲し、俺は上着のポケットをまさぐった。指先を掠めるビニールの感触。 取りだした小袋の中には、二つの球が入っている。どんな星々をも霞ませる、俺だけの小さな惑星。俺はそれを、煌めく太陽の光にかざした。 「桜が咲いたら、また見せてあげるよ」 それまでは冷凍庫の中で、おやすみ―― |
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作者コメント
この作品には簡単な謎(?)があります。解きたい方は、先に感想を見ないようご注意ください。 ※感想の下から5個目に、作者ネタバレ情報を書きました。一読で「意味ワカンネー!」と思ってしまった方、どうぞご活用くださいませ。orz ■作品紹介 今月の電撃LLお題作品です。発案したキッカケは、ワムの『ラストクリスマス』という名曲の内容を知り、軽くショックを受けまして。(ヘタレな根暗男子が負け犬の遠吠えをする歌……という解釈をw) 内容的にちょっとウツなので、暗い話を好まない方はスルー推奨です。 では、ご意見ご感想などお待ちしております。 ※念のため補足を少し。 今作品ですが、電撃LLよりお題をお借りし、少し大人向けの作品を……と練習のつもりで取り組みました。 なので、今のところ応募する予定はありませんし、今回はこのまま掲載いただけると嬉しいです。 ■アンケート(任意です) 1・『俺』と『僕』どっちが合いそうですか?(『僕』の方がナイーブっぽいのですが、無難な『俺』を採用中) 2・何か伏線に気付かれましたか?(深読み歓迎です。カンタンorワカラン! と言ってくださってもOK) 3・オチについてどう思いますか?(ウツオチ、フツーオチ、ハッピーオチの三案で迷いました) ■作者紹介(AQUA) ※剣屋一刀さんのテンプレを拝借 執筆歴:10ヶ月(学生時代からのブランクを経て、2009.4〜執筆再開、こちら利用は2009.5〜) 読書歴:幼少期からのマンガ読み。活字は海外文庫中心。最近はオンノベばかり。 作風:メインはラブコメ。たまにシリアス、たまにギリエロ、たまに乙女系。王道・ベタ好き。 目標:単に文章力アップをと思っていましたが、4月には一周年記念で公募に挑戦する予定。 一言:たぶんかなりのラ研さんヘビーユーザです。いつもアドバイスありがとうございます。これからも皆さんと切磋琢磨しつつ、良い作品が作れるように頑張りたいと思います。(……と、真面目な人っぽく書きましたが、本当はふざけた人間です。言わずともご存じかもですがorz) |
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玖乃さんの意見
どうも。玖乃です。 10回読みました。 怖い、これ怖いよ……ガクブル え、だって袋の中身は……のおおお どう考えてもLLネタじゃないとおもいますw では、アンケートに答えます。 1・俺、でいいと思います。このほうが負け犬感がよく表れていて。 2・え、映画「マイノリティ・リポート」で闇医者から渡された小袋(ジップロック)に入ったあれを片方側溝に落っことすシーンがあって……ごにょごにょ。 3・この落ちは秀逸ですが、一読ではさっぱりでした、とも報告しておきますね。 では、簡潔に終わります。 ぶるぶる。 中行くんの意見 真夜中に失礼します。 拝読したので感想を書きます。 初読 ……奥手な男の心理、それを待つ女性の心理、そのちょっとしたすれ違い、非常に繊細で秀逸でした。 何回も頑張って読んだ後 ……どうか深読みであってくれ アンケート 1・ふつーオチ、ハッピーオチなら『僕』 うつオチなら『俺』派です 2・桜を見せてあげたかったんですね 3・オチについてどう思いますか? 僕は初読ではただいい話に感じ、すごく良かった印象から「二つの球」などが引っかかった点数で40−10=30をつけようと思いました。 で、オチを深読みしてからは、普通の30点です。 ただ普通に読んでたのしむと言うよりは、オチがあると聞かされて解く、推理小説やパズルゲームのような感触でした。 個人の意見ですが、普通オチで『僕』で疑問なく書いて欲しいです。 では素敵な作品ありがとうございました。 AQUAさんの返信(作者レス) ■読んでいただいた皆様へ(ネタバレ) いつも通り分かりにくい話を読んでいただいて、どうもありがとうございます。 なんか、思ったよりご負担をかけてしまいそうなので、ここらで簡単にネタバレを。 (以下、未読の方は見ないようにご注意を……) 今回の話は、サスペンス? ホラー? というジャンルでした。 主人公は、好きな女子を友達に奪われて、諦めきれず殺してしまいました。 ※1/24 20:00 燕小太郎さま・殿智さまのご指摘により追記 基本は一読のラスト『二つの球・惑星』に引っかかってもらい、「あれ?」と思って読み直したら意味が分かった(ゾクッ)、的な感じ読んでくれたら満足でした。 その他解説については、細かく深読みされるのが好きな方向けです。 また、お題の『サクラサク』は、主人公の頭に狂気の桜が咲いてしまったこと(=狂い咲き)、副題『嘘の代償』は、人の道を踏み外したこと(=人生変わった)を意味してます。 <冒頭> 桜を見ながら思い出しているのは、彼女の死に際の姿です。 涙うるうるで「やめて、助けて」と懇願されていた感じですね。 人として当たり前の罪悪感を、ビール飲んでごまかしてます。 好きな子殺せちゃう狂ったキャラなので、時効(25年)についてクールに計算してたり。 (ローン返し終わる期間と、ちょっとしたミスリードを) ちなみに、うちのケータイは20年後までしかカレンダーが表示されませんでした。 殺人の時効チェックしたい人には不便です。(←?) 殺害トリックや逃げおおせるかなどは棚の上にあげてしまったのですが、マイホームにリノベーション物件を選ぶあたり、なかなかに計算高いタイプという印象を。 ビールと一緒に冷蔵庫から取り出した小袋が、最後に出てきます。 <中盤> なんてことないラブでしたが、彼女の瞳をあえて強調し、『惑星』と表現してあります。 奔放な子設定なので、もし警察が事件として事情聴取に来ても、「マリッジブルーだったのかも」的なことを答えりゃいいや、なんて計算もあったり。 <ラスト> 「どんな姿でも好き」で、死体でも好きですと。 「呼び出して」、その後殺ってしまって、パーツ小分けして冷凍庫へ。 ヤバイ品が入っているので、事前に冷蔵庫だけは自力でセッティングしてありました。 (本文には書けませんでしたが、新品の高性能製品を購入したらしいです。あと、入りきらないパーツは……カニバったかもしれません) 冒頭で「桜が狂い咲き」という言葉も、主人公の頭が狂ってるあたりとちょっとかけてあります。 最後は『惑星(目ん玉)』だけをかかげたところで、桜が見えるわけがない……でも狂ってるので主人公は満足です。 ……以上、ツマンナイ解説で失礼しました。orz ※1/24 17:00 だだのすけさまのご指摘により追記。 「なぜ狂人の癖に、冒頭では罪悪感を滲ませているのか?」というご意見について少し解説を。 これは「なぜ本来苦手なビールを、(好きな子を喜ばせるためじゃなく)一人で飲んでるのか?」という疑問に通じます。 ビール=主人公に狂人スイッチが入る、トラウマ風アイテムにしたかったのです。 あの屈辱……目の前でイチャつきやがって!(プチッ)、みたいな。 なので、冒頭で主人公が「苦味で現実に戻る」という「現実」は、「狂気の世界」の方を意味してます。 しかし、普段は穏やかなのに酒が入ると豹変する人といえば、連想するのはドメスティックバイオレンス。 以前それをテーマにした掌編を書かせていただき、皆さまにオエーという思いをさせてしまったのですが、ああいう人が生まれる理由を常に考えているせいでこういう細かいネタ配置となりました。orz 鳴海川さんの意見 何だかAQUAさんとは話が合いそうだなーと思いつつ、ラ研を散歩していたらまたもやAQUAさんの作品を見つけた鳴海川です。こんにちは。 「サクラサク 〜嘘の代償〜」を拝読させていただいたので、「シャイニング☆ドラゴン」に引き続き感想を。 ktkr! こういうものは自分もたまに書きたくなります。実を言うと、青春ミステリで一作書いたものがあるのですが、あまりの駄作さにお蔵入り……。こういう複数の色を持てる人っていいなー、と切に思います。自分は一色(一ジャンル)しか書けませんから。 閑話休題。 オチで「ああ、なるほど!」と思いました。作者レスで「伏線?」と気になっていたのですが、なぁるほどなるほど。そういう意味でしたか。 さて、ではアンケートの方を答えさせていただきますね。 1・……自分は「俺」派ですね。 2・……オチで気付きました。しかし、解説を読むまではアレ以外の部分は何処かに捨ててきたものだと思いました。そっちの方が楽に隠せますし、警察が来ても気付かれにくいと思うので。 3・……GJ! ちなみに自分としては、敢えて「BAD END」を持ち出してみますw オチは他の方も仰られている通り、王道でありながらそれを全く意識させないお見事なものでした。完全に一本取られました。 面白い作品を有難う御座いました。次回作も期待しています。 文学少年 十級(温井コタツ)さんの意見 ドモー、ハジメマシテ文学少年 十級と申すものです。 紙をモシャモシャさせつつ早速感想ー。 そう、「嘘の代償」はカレーといったところだろう。主人公の狂気が織り成す辛さ。人間関係の味の深さ。そして、綺麗な文章に支えられた、誰もが美しいと思える外見美。 後味が辛過ぎて、人を選ぶと思うけど、素晴らしい作品だと思います。 主人公は彼女が好きで、しかし怖くてその思いを伝えられない。彼女も多分主人公が好きだったんでしょう。 やきもきする彼女。しかし主人公はなかなか踏み切ってくれない。 多分、それに堪りかねて、彼女は主人公の友達に鞍替えしてしまったのでしょう(なんか言い方悪いですな)。 そこで、主人公は狂気に陥った。 こんな感じでしょーか。最後に、 こういう愛も良いんだろうか とかまったく見当違いであろうことを考えてみたり。 それではノシ 追記・ハイ、というわけで正体は温井でしたー! これからもたまにこのHNで感想書いていきたいと思いますんで、よろしくお願いします! ハイさんの意見 どうも、ハイです。 昨晩拝読し、一読して.....普通の話? と思ったのですが、他の方の感想を読んでいて真実に気づいてしまい、 うわーこれ感想どうするべー、と色々混乱しつつ眠りにつきました。 二つの球体は最初ビー玉かと思ってました。だって、惑星とか書いてあったので、昔ビー玉の中の模様に銀河を見た(気がする)私はビー玉を思い浮かべてしまい、なんでここにビー玉が? と混乱したのでした。 ......眠いときに読むものじゃありませんね。いや本当に。 で、色々と余計な要素が評価の邪魔をする可能性が高かったので、評価なしとしました。一読時は十点、オチの意味を知った時点で三十点ということで。 ちなみに謎を解かせてくれる話は大好きです! でも、このサイトの仕組み的に他の方の感想がある状況ではそれは向かないなーと。......あの時感想を読ん でしまったことを激しく後悔しています。 この話の難点をあげるなら、何が謎になっているのかぐらいの指針は与えるべきかもしれません。二つの球体? 彼女はどうなったの? 最後に呼び出して? これらをつなげば話は見えてくるんですけど、人によってはそれを上手くまとめれない可能性もあるかなーと。 わからない人には謎解きと言うより、ただの不親切な話になってしまいそうです。もう少し、読み手の思考にレールを作ってあげるような書き方をすれば(なんか難しいこと言ってますネ、私)良かったんだろうな、と思いました。 まあ、謎解きたい人にはちょっと不親切ぐらいがちょうど良いんですけど。 あ、この話を公募に出すなら、ぼかさない親切設計の方がいいと思います。 私的には僕、の方ですかねー。何となく狂気キャラは”僕”のイメージがあります。 では私からは以上ということでー。 ただのすけさんの意見 拝読させていただきました。 作品を読む度感じさせられますが、本作品も、登場人物たちの息遣いを感じるような見事な表現力と巧みな構成で形づくられた良作でした。文章についてはもう、私などの指摘できる水準にははありませんね……。 個人的に、AQUAさんという書き手を多角的視点・観点から研究・分析してみたいような気すらしてきました(ストー○ ーじゃないですよ)。 文字数が2000字ジャストなのも好印象。 私は筋金入りと言っても過言ではない理系人間なもので(高校・大学も理系)、こういう所に変に気持ちよさを感じてしまうのです。 しかし、そんな御作にも若干の違和感を覚える部分がありました。個人的感想ですので取捨選択でお願い致します。 時系列では、現在 → 過去(回想) → 現在、の構成ですが、最初の現在では愛する人の殺害の記憶を苦にする姿が見られ、そのことに罪悪感を感じているように見えますが、最後の現在では目玉を酒のツマミにしたりして完全に狂気に走ってます。そんなサイコパス然とした狂人が罪悪感を感じると言うのはちょっと妙な気がします。一貫性が無いといいますか。 恋人を殺害した回想シーンで、逆に嬉しそうに笑みを浮かべるくらいが丁度いいのではないでしょうか。狂った主人公にとっては、愛する人を手中にした幸福の瞬間なわけですし(何やら恐ろしいことを書いてるな、俺……)。 そしてオチですが、意外に驚きがありませんでした。巧いなとは思いました。 理由を少し考えてみたのですが、恐らく先に挙げた、前半と最後のオチでの主人公像の違和感の方が、気味の悪いオチより強かったためだと思います。違和感のほうに驚きが行ってしまったみたいです。 AQUAさんの作品は、完成度が高いが故にちょっとした違和感などが気になってしまって辛めの感想になってしまうことがあります。お気を悪くされたら申し訳ありません。作品世界に引き込まれると、通常より過敏になってしまうのです。 ・「僕」「俺」選択 → 俺のほうが断然イイと思います。 ・伏線 → 特にコレと言ってはありません。 ・オチ → 特に驚きはありませんでした。理由は前述の通りです。 次回作も期待しております。それでは失礼致します。 御鶴さんの意見 御鶴と申します。「サクラサク 〜嘘の代償〜」を読ませていただいたので感想を書かせていただきます。 ■文章 うまいですね。伏線の貼り方や出し方など、結構数を書いてきた方の熟練さがうかがえました。 こういう文章は参考にしたいですね。 ■内容 自分が気付いた伏線は、『今日の予定結婚式』ですでにその思い人が殺されたということ。 冷蔵庫のなかにバラバラになったその人がいること。 こんなところだと思います。 25年に何故気付かなかったのか……orz 一人殺しても死刑になるとは限らないから、20年くらいが妥当だと自分で思ってしまっていました。 これは素直にローンだと騙されました。 内容はすごく上手かったです。 情報開示がいいタイミングで、読んでいて普通にスル―してしまいそうなくらい、巧に絡めてくるんですよね……ここはあっぱれでした。 しいて言うならば、前半で落ちが読めてしまうということでしょうか。目玉までさすがに行き着きはしませんでしたが、殺されることは分かってしまったので。 んーでもこればっかりは、どうしようもなさそうなorz 落ちについては、ハッピーではないと言っておきますw 普通、かなあと。 ■総評 レベルが高い、あと量産力がすごいですね……こうバンバンと良作が飛び出るAQUAさんの脳を解剖しちゃいたいくらいry 今一つの飛びぬけ(自分が言えたことではないですが……)がなかったのは、ちょっと掌編ではあれかもです。 引き込む力、完成度は非常に高いのですが、やはり何かにかぶってしまう感じは否めません。 殺してしまったのをミスリードで隠す、というのは結構遍くやりかただと思うので。 これは面白かったです、AQUAさんの感性に嫉妬してしまいそうですw 以上となります。 乱文失礼いたしました。 志岐透さんの意見 こんにちは。勉強の合間に感想書き書き、志岐透です。 作品、拝読させていただきした。一読ではさっぱりでしたので、念入りに何度も何度も。そして作者コメでの答え合わせを経て、以下感想でございます。 ではまず文章についてのことをばいくつか……と思ったんですが、わざわざ指摘して、いちゃもんをつけるような描写は見つかりませんでした。 初見で「涙を堪えて艶めく彼女の〜」の「艶めく」を「なまめく」と読んでしまい「あれ?送り仮名の「め」要らなくね?」と思ったのですが、辞書を引いてみると、ちゃんと「つやめく」という読みがあてられていたんですね……危うく見当外れも甚だしい指摘をするところでしたがこんな話はどうでもいいですねすいません。つまり要約すると、文章とても良かったですということでひとつ。 ではここから話の内容についてを。……というかこの作品に関していえば、完全にここからがメインなんですが。 まずさっきもちらりと言いましたが、一読した直後の感想は「……ん?」と、どこか違和感を覚えた程度でした。そこで初めて「ああ、これは普通の掌編を読む感覚で読んではいけないのか」と気付き、そして二週目からは描写のひとつひとつを丁寧に読みとく風に読んでいきました。それを何度か続けて解答を導き出して、AQUAさんのコメントで自己採点です。……たぶん正解。 話を完全に把握してからもう一度始めから読んでみると、その巧みな伏線の張られかたに脱帽の連続でした。 「縋るように」「25年」「宇宙に浮かぶ惑星」など……初見では絶対に気付かれようのない、それでいて立派に伏線として十二分に働いているというのが、非常に上手だな、と。 一回読み終わったあとにオチを考えさせられるという、若干難解な話ですけれど、正解を理解したときの驚きは大きかったです。例えるならば、ご存じかどうかは存じ上げませんが「なつみSTEP」のような。 ただひとつ首を捻った箇所が、とても根本的なところなんですが、「オチが解っても、それが本当に正しいのかどうかが、若干判断しづらい」という点でしょうか。この投稿室では、AQUAさんの作者コメントで採点ができたから良いのですが……いや、これはただ単に僕の読解力が弱いだけの問題かもしれませんね……。 電撃リトルリーグの選者さんたちならきっと難なく解読してしまうでしょうから、実は大した問題ではないのかもしれません。……ですが、とりあえず素人の一感想としてここに記しておきます。 以上で、志岐の感想を終わります。ありがとうございました。 次回作も頑張ってください! 燕小太郎さんの意見 燕小太郎と申します。読ませていただいたので、コメントを述べたいと思います。自分の感じたことを率直に述べたいと思いますので、他の方の感想や作者レスは読んでおりません。そのため、もし同じことを聞いていたり、見当外れの感想がありましたら申し訳ありません。 うーん、こういう話は私には書けないですねえ。ホラーと見せかけたコメディやラブコメならともかく、猟奇的なスプラッタみたいなのは、ちょっと腰が引けます。 すごく上手いと思います。ただ、面白いかというとまた少し違いますかね。個人的にハッピーエンドが好きでホラーやスプラッタが苦手なもので、ちょっと評価には私情が挟まっていると思います。 では、アンケート(任意)から答えていきますか。 一人称は『俺』で合っていると思います。『僕』だとちょっと自己主張が弱いような気がしますので、今回の主人公くんであれば『俺』が適任でしょう。個人的にはカタカナの『ボク』や、話し方をもう少し丁寧にして『私』にするともっと猟奇的になるかも、なんて思いましたが。 一読目は、伏線にはほとんど気付きませんでした。オチがわかって読み直せば、美しいものを形容するときに『狂う』って言葉を使うのは妙だし、二十五年は殺人事件の時効年数、『縋るように』って言葉もどこか違和感がありました。さらには『大きく見開かれたその瞳が、宇宙に浮かぶ惑星みたいに真ん丸で、可愛くて』あたりも後の伏線になっているのでしょうか。読めば読むほど増えていきそうです。 オチは、個人的にはハッピーエンドが好きなので、正直ちょっと「……うわっ」とは思いました。フツーオチ、ハッピーオチがどのような形だったのかわかりませんが、物語としては上手いと思いますよ。好き嫌いを抜きにして考えれば、高レベルのオチだと思います。 アンケートとは別の感想としては、嘘の数をハッキリさせた方が良かったかなと感じました。『嘘をついてばかりだった』よりも、『彼女にはたった○ 回だけ、嘘をついてしまったな』の方が引き立つかな、と。 タイトルも『代償』の部分がよくわかりませんでした。上に合わせて、『○ 個の嘘』の方がわかりやすいのではないでしょうか。もちろん私が作者様の意図を読み解けていないだけなのかもしれませんが。 文章も上手く、雰囲気がしっかり伝わってきます。ただ内容が内容だけに、『スゲエ面白い!』とは思えない……かなあ。 ちなみに、よく音楽を聞きながら読むのですが、今回聞いていた歌がHYさんの『366日』という曲。『恐いくらい 覚えているの あなたの匂いや しぐさや全てを』という歌詞が妙に今作とマッチしている気がして、余計に恐くなりました。 この感想を投稿した後、作者様ネタバレ情報というものを読ませていただきます。もしここにある内容を質問していたら、申し訳ありません。 拙い感想ですが、少しでも参考になる部分があれば幸いです。次回作も期待していますので、それでは、また。 殿智さんの意見 こんにちは、殿智と申します。 作品拝読しましたので、感想を。 ええと、とりあえず……桜、咲いてない…… テーマからそれているわけじゃないかもしれないですけれど、なんというか、その、斬新な解釈ですね。 彼女の名前以外にも桜と関連したエピソードが欲しかった気がします。 さて本題です。 私はこの作品を読んで、いまだに作者様がなにを伝えようとしたのか、どういう意図をもってこの作品を書いたのかが理解出来ないのです。 正直言って一読目で、ラストの部分を見て、一発で真相を当てるのはかなり困難なのではないでしょうか。ただ“切ない話”、“綺麗な話”という印象で流されてしまってもおかしくない気がしました。 実際私は謎が気になったからではなく、「なにか読み飛ばしてしまったのか?」と不安に思って再読しました。 こうして再読させる力というのも作者様の腕があってのものなのでしょうが、この作品で謎解きの要素を含ませる必要があったのか、というのはかなり疑問です。前半のどこか爽やかな描写は十分ミスリードとして機能していると思います。それを利用してきっちり落として欲しかったな、と。 完璧な回答を書くのはやり過ぎですが、せめて『二つの球』が何かというのくらいは書いた方が良いと思います。 では作者様がそうした謎解きではなく、純愛ゆえの狂気というものを第一のテーマとしていたのであれば? それこそ描写不足であるような気がします。 せめて他の人物の視点を入れることで主人公の狂気を引き立たせるとか、そういった工夫が欲しかったです。現状では読者の想像に任せる部分が多すぎて、どうにもスッキリしません。 と、ここまで書いて、作者様のレスや他の方の感想に目を通して見ます。 ううん……ネタバレで読んだことはほとんどわかりませんでしたね。 私がわかったのは『二つの球』と犯人は主人公ということくらいです。深読みするまではできませんでした。 「言われてみれば」くらいには思いますが「なるほど」とは……むしろ強引に感じる部分のほうが多かったです。 もう少し違和感を覚える動作や表現があったならわかりますが、主人公があまりにも“普通”過ぎたので。それこそが作者様の据えたテーマだったのかもしれませんが。 なんにしても、作品だけで説得力を感じさせて欲しかったです。 他の方々は軒並み高い評価をしていらっしゃるので、私の意見が見当はずれなものである可能性は多分にあります。私には合わなかったというだけのことかもしれません。ですが、あえて正直な感想を書かせて頂きました。 未熟者の意見ですので取捨選択なさってください。 それでは、乱文にて失礼しました。 kinoさんの意見 某大佐の台詞が頭の中で響き渡りました。 kinoです。感想でも。 伏線の張り方、主人公の猟奇的発想、狂気に満ちたオチ。 乙一を思い出しました。 大好きなんです、こういうの。 素晴らしいとしか言いようがないですね。 褒める所を書き連ねたら多分朝日が私の目玉を潰すのでしょう。 なので、自分の意見だけを連ねさせていただきます。 ええ、無論役には立たないです。 アンケートの回答 1・について 私だったら、多分一人称を『私』にして、叙述トリックにします。 自分実は男で、サクラは女の子なんよ、みたいな。 二重に読者を騙してやれたら面白いのかな、と。 2・について この部屋に、二人で暮らす未来を。 叶えちゃった訳ですね。 3・について この時点のオチが鬱オチなのか普通オチなのか分かりませんでした…。 私は鬱オチがいいと思いますが、AQUAさんが書くモノならどれも良い物になったと思います。 気になった点 ・今年の夏に出会った人と、その年の秋に結婚ってちょっと早い…のかな? 主人公に一年間たっぷりと焦らされまくったサクラが、たまたま息のあった友人に反動でその分惹かれてくというやつでしょうか? 大人の世界は分かりません…。 ・目玉を惑星と称した所が少々唐突だったかな、と思いました。 この目玉を眺めるシーンが、夜中の星空の下だったら良かったと思います。 それならビアガーデンの夜の雰囲気と重なっていたのではないのでしょうか。 しかし私の読解力が足りてないのが理由ってのもあります。 こんぐらいですか…。 それにしてもこの作品、明らかに審査員に喧嘩売ってますね。 明らかに春を連想するワードで、晩秋のマンション。 評価してもらう側なのに、逆に謎解きで読者に挑戦させる。 何より桜、咲いてないじゃ…。 ん…? 書いてて気付きましたが、このサクラサク…。 もしかして、サクラ裂く? え?気付いてなかったの私だけ? ななななさんの意見 拝読しましたので、感想を書かせていただきます。 【シナリオ・展開】 恋破れたけど相手の幸せは願っているよずっと好きだよ……みたいなほのぼのかと思ったらいやんなオチですね。 >だから最後の嘘で、君を呼び出した。 の辺りで嫌な予感がしてついつい視線が下に移行して、 >それまでは冷凍庫の中で、おやすみ―― という文面を見て「ひいい」となって、改めて順番どおりに読んだら、 >取りだした小袋の中には、二つの球が入っている。 眼球! 心臓がなんかドキドキしてるんですが、これはまさか……恋? なわけあるかーい。びっくりしました! すごいびっくりしましたよ! 【人物】 俺。最後の一歩を踏み出せない優柔不断野郎の割に、変なところで思いきりがいい。もう絶対に手の届かないところに行ってしまったからこその決断だったんでしょうか? その辺りの狂気をちらっと見せるといやんな感じが増すかもしれません。って、読み返してみると瞳への言及が過剰だったり会社員同士の関係っぽいのに「縋るように俺を見上げて」と変な表現があったり、伏線はあるんですね。 彼女。主人公を憎からず思っているようなのに、後からやってきたアイツになびいてしまう人。 【世界観・設定】 >桜も狂い咲きしそうな小春日和の週末 >最初の嘘は、忘れもしない今年の夏―― 会って半年くらいで結婚してる! 早! ほぼプロポーズに近いことを言われかけたのに(結局言わなかった主人公が悪いんですが)、会って半年の男のほうに行ったー! 彼女への同情が一瞬で消し飛ぶ新事実でした。うわー、うわー。 逆にアイツはどんだけいい奴なんだという話ですね。半年て……。 【文体】 文句なく上手いです。 >知り合って早一年、彼女は可憐なルックスを裏切る奔放さで、何度も俺を驚かせてきた。価値観を壊されるたびに、強烈に惹かれた。なのに臆病な俺は、友達以上恋人未満のポジションに甘んじたままで……。 特にここ。 彼女の容姿、性格、それに対する主人公の尊敬と好意、態度まで的確に表現しています。素晴らしいと思います。 以上が私の感想テンプレでした。 以下作者様へのアンケート回答になります。 1・『俺』がいいと思います。 何でそう思うのかは自分でもわかりません。たぶん俺で書かれているものを読んだからでしょう。というわけなので、あんまり参考になりません。すみません。 2・気付きませんでした。 もしや……と思いましたが完全なる当て勘で、ビアガーデンの場面でさっぱり忘れていました。 3・掌編なので衝撃的なオチということで、これが最良かなと思います。普通は私が想像したような話で、ハッピーは結婚することになるのでしょうか? どちらもオチとしてのインパクトはこれには敵わないと思います。 以上です。 良い転結の例示として勝手に参考にさせていただきます。 Ririn★さんの意見 こんにちは! 一読したときは最後のオチに何も思わなかったのですが、みなさんの感想を読んで考えてみると、なるほど、主人公の狂気を感じました。 以下ネタばれ含む。 ■アンケート 1・「俺」の方がよいと思います。むしろ「私」でも可。 2・すみませんが、一読しただけでは全然気がつきませんでしたorz お気楽に読みすぎました。 3・分かりにくかったです。ただもう一度読むとその面白さが分かるので、もう少し露骨でもいいかなと思いました。 AQUAさんの作風らしいちょっと、いや、大変生々しいストーリーが面白いと思います。そして、これが2000文字に収まっていると思うと、表現力の高さに気がつかされました。詳細まで勉強させていただきます。 ところでワムのラストクリスマスの意味ってそうなんですね。今度調べてみます。 個人的には負け犬でもいいじゃないかとは思いますが、この作品を見る限り負け犬じゃダメなんですね。恋愛の恐ろしさというか、負けるぐらいなら!という悪い方向への踏ん切りが現実的に感じられるのは怖いことだと思います。 短い感想ではありますが、この辺で。 次回作もお待ちしております。 Mickさんの意見 ほにゃにゃちわー。Mickです。 普通にしんみり悲しい感じのオチだと思っていたんでびっくりです。 構成力、魅せ方が上手いと思いました。 ○アンケートの回答です。 1・主人公の外見に関する描写が無いので、引越しやらビール飲んだりするのに違和感が『僕』と比べて少ない『俺』が良いと思います。 2・ >こうして桜を想えば、自ずと浮かんでくるのはあの瞳。 涙を湛えて艶めく彼女の瞳が、縋るように俺を見上げて―― 堪ですが、このあとに惑星くり抜いちゃってたりしますか? 3・予想を大きく裏切られる展開は好きなので、このオチが良いと思います。 ただ、この状況からハッピーオチに持っていけるのなら、是非読んでみたいです。 それでは。 |
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