TFAさん一押し!(男性)
「あなたが、時任零路?」
突然、学校の階段で女の子から名前を呼ばれ、僕は思わず立ち止まった。
時任零路は、僕が三流木出版からデビューしたとき、一度使ったきりのPNだ。
今はもう封印している。まっっっっったく、売れなかったんだ。
ところが、久しぶりに編集部に顔を出すと、そこにいたのはあの階段の女の子三流木萌花だった。
「担当命令よ!萌えでエッチなラブコメを書きなさい!」
えええっ!?…も、“萌え”?文学、目指してるんだけどくぁwせdrftgyふじこ。
アグレッシブにラブってコメる“ラ界”の風雲児・ミツルギファイヤー文庫創刊。
「萌え」について無知な高校生作家の時任零路こと孝一が、思い切り萌えでエッチなラブコメを書くことに。
「萌え」に疎い孝一に対して萌花が、あの手この手で奮起させようとする。
この作品は完成した原稿が、どういうプロセスで製本され、店頭に並ぶのか、かなり詳細に書かれているのが特徴である。校正やイラストについても簡略ながら触れられ、いわば楽屋裏がわかるわけで、ドタバタ調にくるまれてはいるが、作家を目指す人には参考になるかも。
また、各章の扉ページには作者が考えた架空のラノベ作品が紹介され、ギャグ性を加味している。
ちなみにここで紹介された架空ラノベのどれが実際に作者の手で書かれて、刊行されているのか、探して見るのも一興である。
お気に入りのキャラはいますか? どんなところが好きですか?
何といっても萌花の健気さ。
「萌え」に疎い孝一の為に下着を選んだり、コスプレをしたり、こんな担当が実際にいてくれたら、作家諸氏も大歓迎であろう。
他に、別の世界へトリップしているイラスト担当の輪廻姫こと井中トメ子。
「萌え」を目の仇にし、孝一を注意人物として監視する武術の達人で風紀委員の風見鶏響。
大手出版社の社長令嬢でSM趣味を持ち、かつそれを知られたことをきっかけに孝一に強い関心を寄せる二刀華撫など、一癖も二癖もある女性キャラが孝一を取り巻いている。
この作品の欠点、残念なところはどこですか?
楽屋裏のネタが多いのは良いとして肝心の「萌え」の小説(作品内)が今ひとつであること。
二兎を追う者は~ということかも知れないが。
また主人公の時任孝一の心理描写が少ないこと。
最後が不完全燃焼であること。
ただこれらは別に欠点という程でもない。
願わくば、いつか続編(小説の売れ行きや萌花との関係等)を書いてくれればと思う。