第4研究室 創作に関するQ&A 37P | トップへ戻る |
原中三十四さんからの質問  
 連続バトルシーンの差別化を図るには?

 現在、執筆中の長編小説について相談があり書き込みいたします。
 ジャンルは時代物、仮想の藩を舞台に道場へ通う青年剣士の恋愛と葛藤を描いた物語です。
 藩政をとりしきる二つの派閥の抗争に主人公が巻き込まれ、
 彼自身もまた組する派閥の密偵となり敵対する稲葉派の企てる銀山盗掘の陰謀をあばく、
 という流れです。

 作品の基幹は道場での稽古から辻の決闘、
 討ち入りや逆襲劇と殺陣(アクション)のオンパレードになる事が、
 書いている私の危惧になっています。
 殺陣シーンが多いため、内容的に代わり映え無いシーンが続いているのではないか、
 アクションシーンに頼りきるのは小説としては邪道ではないか、そういった悩みがあります。

 そこでみなさんにご相談です。
 アクション主体の作品に、どのようなメリハリを付ければいいのか、
 恋愛はどのように絡ませると効果的なのか、ご意見いただければ幸いです。

 バトル(殺陣)中心の作品です。
 似たようなバトルの連続では飽きがかならず来るだろうというのは判っているので、
 前段は物語に即して道場での立合い稽古で、
 物語が動く中段は辻の闇討ちや多対多の乱戦模様、
 後段ではライバルとの対決といった具合に多少の差別化を計ってみました。
 あるいは想いをよせる相手も道場主の娘なので、剣で語り合わせたりしてみたのですが…。

 具体性に欠ける抽象的質問内容ですみません(汗)
 皆様よろしくおねがいします。


●答え●

 時代物の剣戟アクションといったら、まず宮本武蔵を連想します。
 宮本武蔵は、いままでにたくさんの作家さんの手によって描かれてきて、
 すでに手垢のついた題材ですが、ストーリーの内容を知っていても、
 不思議と引き込まれるものがありますね。
 
 武蔵のおもしろさは、彼がだんだんと成長して最強の剣豪へ近づいていくところ、
 勝負自体ではなく勝負に挑むまでの盛り上がりに秘密があると考えています。

 
 例えば、吉岡伝七郎や、佐々木小次郎との決闘なんて、何度も斬り合うことなく、
 ほとんど一瞬で勝負が決してしまいます。
 あれ? もう終わったの? という呆気なさ。
 でも、そういった勝負には、凄まじい緊張感があります。
 佐々木小次郎との勝負に至るまでには、何度も彼と接触して因縁を漂わせ、
 この二人はどちらが強いのか? いつ戦うのか? という心情を布石として湧き起こらせて います。
 さらに、巌流島の戦いに挑む際には、お互いの恋人に必ず勝って帰る! と誓っています。
 こいった布石を積み上げておくと、戦闘シーンの緊張感に格段の差が出てきますね。

 また、武蔵は最初から完成された強さを持っていたのではなく、
 強敵との戦いを通して、徐々に強くなり、その戦闘スタイルも変化しています。
 持って生まれた獣同然の腕力と体力に頼った戦い方から、
 二刀流剣術に開眼するところなんて、しびれますね。
 天下無双になるという夢を命がけで追う姿もカッコイイと思います。
 こういった主人公が成長するという要素を入れると、
 アクションシーンがより緊迫感に満ちたものになるのではないでしょうか?

 また、ダラダラと剣を撃ち合って、長丁場の戦いになると、
 途中で緊張感が無くなって、だれることが多いです


 特に剣の勝負というのは、素手での格闘と違って、刀が相手に触れた時点で、
 かなりの重傷になりますから、そのリアリティと緊張感を出すためにも、
 無意味に引っ張るべきではありません。
 
 特に小説というジャンルは、漫画と違って、『絵』という動きの見える媒介がないため、
 アクションをおもしろく描くのには不向きです。

 アクションそのものではなく、そこに至るまでのドラマや、
 登場人物の心の動きなどに主眼を置いた方が良いでしょう。



蒼乃幽月さんからの意見
 今晩は、書いてるとどうしても戦闘が増えてきてしまう蒼乃幽月です。

 メリハリといえば、途中に毛色の違うキャラクタの戦闘を挿むなどが手軽でいいのですけど、
 この場合ちょっと難しそうですね。
 なら、描写の仕方や焦点を変えるなどはどうでしょうか?
 ようするに単調になって飽きられるのがまずいわけですから、例えば闇討ちなら主人公の心情を、
 乱戦ではテンポのよい戦闘描写を中心にするなどして、変化をつけることはできると思います。
 戦闘の種類の差別化は十分にされてらっしゃるようなので、
 それほど大きな問題はない気はいたしますが。
 あああと、戦闘において何らかの枷(心理的、肉体的、経済的。まあなんでもいいです)
 がある状況というのも変化をつけるには役立ちますよ。常識かもしれませんが。

 内容の詳細がわからないので、ひどく的外れなことを言っているかもしれませんが……
 お役に立てましたでしょうか?


mayaさんからの意見
 こんにちは、お久しぶりです。mayaです。
 もっとも、わたしはあまりアクションシーンを書かないので、
 経験的なことを書くことができませぬ(汗)。
 だから、はぐれメタルのつぶやき程度に受け止めてください(笑)。

 ところで、アクションシーンばかりの作品といえば、
 真っ先に思い出すのが安井健太郎さんの『ラグナロク』(角川スニーカー文庫)、
 あるいは最近なら、桜坂洋さんの『All you need is kill』(集英社SD文庫)がありますね。

 いずれの作品も、アクションを横軸に、主人公の成長と、
 戦う意義というサスペンス的な要素を縦軸に持ってきた作品でした。

 ですから、結局のところ、各シーンごとに主人公の成長やその内面の葛藤を描くことで、
 メリハリや変化をつけられると思います。


 また、恋愛については相手のキャラクターが道場の娘というだけではわかりにくく、
 コメントがしづらいデス(笑)。
 『All you need is kill』ではネタバレになるために多くは書けませんが(汗)、
 主人公が誰かと関わっていくこと(=恋愛)で作品が一気に転調する仕掛けになっていました。
 ですから、原中さんも「戦い」と「恋愛」という一見相反する要素を作品の主軸に持ってきて、
 キャラクターの中でそれらをしっかり昇華させると一本筋の通ったプロットになるかと思います。
 つまり、なぜ戦うのか、そしてその戦いの中でなぜ恋をするのか、
 ということに説得力を持たせるわけですね。

 結局、こちらも抽象的にしかお答えできませんでしたが、参考になりましたでしょうか。


kouさんからの意見
 こんばんは、kouです。
 
 原中さんの作品で、一番のポイントは主人公の葛藤だと思います。
 葛藤がしっかり描かれていれば、アクション主体だとしても面白い作品になると思います。
 アクションシーンにしても、主人公の心の動きを原中さんがしっかりと理解していれば、
 おのずとメリハリが出てくるでしょう。
 というか、多分この作品は主人公の心のあり方をアクションによって表現するのかな、
 と想像しました。
 迷いがあれば剣先が鈍り弱くなる。思いが強ければ振りぬく力も増して強くなる。

 主人公の心情がきちんと描かれていれば、読者も物語に感情移入しやすくなり、
 アクションシーンでのハラハラ感が一層のものになります。
 また、心情が違うのだから、アクションにおいても違いが出てくると思います。

 恋愛の絡ませ方ですが、これはもう色々あります。
 二人の関係が具体的に書かれていないのでうまくは言えませんが、
 主人公が自分自身について考えるたびに、彼女への思いも描いていく、
 というのが一番オーソドックスな絡ませ方じゃないでしょうか。
 自分自身の悩みなら、案外あっさりと結論を出してしまう人もいますが、
 他人のことを絡ませると途端に問題が複雑になり、答えもなかなか出し辛くなります。
 つまり葛藤が深まるわけです。

 葛藤の深さはこの物語の面白さに直結すると思います。
 ただあまりに陰々滅々としていると、読むのが辛くなると思いますので、
 そうならないためにアクションシーンで解消してください。

 未熟な意見かもしれませんが、お役に立つようでしたら幸いです。
 では、失礼します。


めたさんからの意見
 あくまで私的な意見ですが。
 自分はアクションシーンは五手六手くらいで(乱戦は別にせよ)終わらせてしまいます。
 大抵その前後にキャラの心情描写をいれて、
 その一戦が何を引き起こしたか(あるいは何を終わらせたか)を書きます。

 アクションで魅せるのではなく、その一戦に持っていくまでを面白く書けば、
 たとえアクションが悪くても引き立てられると思います。

 
 ――とここまで書いて、戦闘シーンが連続しているんでしたね。忘れてました。
 「ウィザーズ・ブレイン」ご存知かと思います。こいつはアクションシーンが燃えます。
 AとBが戦うとき、お互いに相手の手を知っているので、どう倒すか、どう切り抜けるか。
 互いの一手一手が将棋のようです。
 主人公にはもちろん得意技ないしは戦いのスタイルがあると思いますが、
 このように将棋の詰めのようにお互いの一手一手を考えて殺陣を作れば、
 面白いものが出来るかもしれません。
 ……もっとも、自分のような面倒くさがりはそういうのは苦手なので、
 一手一手の派手さで勝負しますが。


草薙紗夜さんからの意見
 小説では漫画のように視覚的な差別化が出来ません。
 剣術アクション作品は執筆経験のない私ですが、
 例えば「見切る」「胴を打ち込む」「突きを繰り出す」「半身になり躱す」
 という代表的な表現の羅列が並べられるだけでは、その文章の先を読みたいとは感じません。
 それが木刀であれ、真剣であれ、闇討ちであれ、乱戦であれ……です。

 文によってはその差ははっきりとしたものになり、良いものになるでしょうが、
 作者によっては「やや弱い」と思われる可能性もあります。
 ですから、やはり「戦いを通じての主人公の心境の変化」などによって、
 差別化を図るのが一番だと思います。
 作品のテーマ・概要がわからないので、的外れな意見を言っているかもしれません。
 その場合は申し訳ございません。
 以上、未熟者からの意見でした。


ヒゲ戦士さんからの意見
 私がバトルシーンを書いたときに注意したのは、
(バトルばっかりの作品ではないけど)

 バトルは「キャラ同士の個性を表現する手段」と割り切ることです。

 ただ剣をうちつけてどうこうでは意味が無い。
 冷静な人物なら相手の一手先を読んで敵の攻撃を受け流し、
 熱血なら多少の傷は無視して、鍔迫り合いでも力押しで勝たせ、
 卑怯な性格なら、姑息な技を多用して、そのいやらしさをネチネチと、
 モラリストなら、邪魔な人質をちらつかせるとか、あえて不利な状況を設定し引き立て、
 親しみを持たせたいときは、わざと技を失敗させます。
 
 長所だけでなく短所も豊富に見せるわけですね。
 
 優柔不断で頭が真っ白になったり、バカスカ攻撃当てても全然効いていなかったり
 敵の罠にことごとく引っかかり、勝ったはいいが味方も全滅、とか。

 私の主人公は冷静だったので戦況の解説をしてもらいました。
 自分より強い相手にあたると、敵の戦法をわかっていながら、
 回避できずにハマるしかない悲しい運命です。

 映画やゲームのように、無個性な敵をバッタバッタとなぎ倒しても確実に面白みはないです。
 お互いの個性と個性のぶつかりあい、駆け引きが重要です。


 逆に、同じ相手と同じような戦いをすることになるなら、
 そこはカットです。もう書くこと無いです。
 繰り返すときは成長したり、逆に弱くなったり、何かしらの状況変化を起こします。
 最初は手を抜かれてこてんぱんに追い払われていた相手が
 次に戦ったときには真剣に殺気を放ってきたとか。
 前は殺したいほど憎かったのに、惚れちゃって一撃に力が入らないとか。

 私のときは、まず主人公に不利な状況の1vs1で
 猪突猛進の強い敵に力押しでガンガン追い詰められた後、
 仲間が駆けつけて各自の長所を出し合って主人公をサポートし、
 主人公に有利な状況をお膳立てして、主人公の得意技で追い詰める、という表現をしました。

 または(集団戦ですが)最初は少ない戦力を工夫して使って
 なんとか主人公有利で戦闘を進めていたのに、
 誰かの裏切りで戦況をひっくり返されてボロボロになったところで、
 恋人が飛び込んで主人公を救い出す、みたいな。(そして恋人は死ぬ、と)
 戦闘自体の結末は切りました。必要ないと思ったので。
 ストーリー展開に必要な描写が終わったら、そこで終わりです。
(後で、仲間が「なんとか逃げ切れた」と教えてくれますが)

 勝たせるときは不利から、負けさせるときは有利から、
 というのが動きがあっていい感じでした。
 同じパターンをあまり繰り返すとそれも問題でしょうけど。

 キャラの個性、心の動きがアクションと連動しているなら、
 バトル中心の展開は読者を引っ張りやすいと思います。


 ときどき挟まれるインターバルで、
 ちょっと一息、程度が逆に引き立つでしょうし。


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