ライトノベル作法研究所
  1. トップ
  2. 創作Q&A
  3. 作家デビュー
  4. 現役下読みによるラノベ新人賞Q&A公開日:2013/10/15

現役下読みによるラノベ新人賞Q&Aその3

田中さんの質問2013/10/12

 こんにちは。折角の機会ですので、質問をさせていただきます。
 主人公の属性について質問をしたいと思います。

 昨今のラノベでは、「平凡な主人公が事件に巻き込まれて~」とか、「平凡だけど実は~で」とか。そういうのが定型化していると私は感じています。
 有名作品で例を上げるなら、「涼宮ハルヒシリーズ」のキョンや「僕は友達が少ない」の小鷹、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」の京介など。いわゆる「やれやれ系主人公」や「巻き込まれ系主人公」が大半を占めていると感じています。これは外発的動機によるものであって、こんな人物がヒロインにモテまくる世界を受け入れるのに抵抗してしまうのです。
 私自身はそういった主人公が嫌いで、逆に自分から物語に首を突っ込むような主人公が好きです。

 例えば、「物語シリーズ」の安良々木暦や「とあるシリーズ」の上条さん、一方通行(アクセラレータ)、浜面仕上が大好きです。
 他にも、主人公が普通ではない作品が好きな傾向があるようで、「やはり俺の青春ラブコメは間違っている」の比企谷八幡、「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」のみーくんが良いと感じています。

 さて、前置きが長くなったのですがここからが本題です。
 こういった私の好みのせいか、創作する作品の主人公は全て普通ではない属性を持ってしまいます。(性格に難があったり、倫理観や価値観が人とは違ったり、女の子でも殴ったり、など)
 そんな物語はやはり自己満足でしかないのでしょうか? 
 読む側からしてみれば、もっと共感のできる主人公が良いのでしょうか?
 また、受賞を狙うのなら普通の主人公を描いた方が良いのでしょうか?
 ジジさん自身はどう感じるのか。下読みをしている方の意見をお聞きしてみたいです。
 よろしくお願いします。

ジジさんの回答2013/10/12

 ほかの方への返信で述べたのですが、主人公とは対象読者となる年代の男子もしくは女子が共感、憧れ、嫉妬できるようなキャラであることが重要です。
 読者にプラス感情を抱かせる必要はなく、マイナス感情を抱かせるような主人公でもアリなのです。

 好きなキャラからして、「物事に真っ正面からでなく、斜めから関わるタイプ」かなと思いますが、この系統の主人公は今やスタンダードの1タイプです。ですので特に問題はないかと。

 受賞を狙うもっとも確実な手段を「おもしろい作品を書く」以外で言うならひとつしかありません。
 「ほかの誰も書かない・書けないものを書く」です。
 これはジャンルだろうがキャラだろうがネタだろうが(世界観でオリジナリティを出すのは非常に難しいのでここには挙げません)なんでもいい。

 現時点で、田中さんが提示された主人公像はまだこの「誰とも違う」領域に達していないものと思われますので、逆にもっと純化させてとんでもない主人公を作ってみるとよいかなと思います。

E.mewさんの質問2013/10/12

1・入賞などして出版が決まった作品がタイトルを変えられてしまう事がある。
 このタイトル変更に関して作者は口を出せるのか?

2・タイトル変更の理由は?
 タイトルがいかがわしいものであったなど公にするのに不適切であったためか?
 それとも単に出版社側の気まぐれ、遊びもあるのか?

3・タイトル変更の際は作者本人が新たなタイトルを考案することになるのか? 
 または出版社側が勝手に決めるものか?

4・通常大賞の応募要項には「受賞作品の著作権は出版社側に帰属する」と書かれているが、この著作権というのは作者に対してはどのように影響するものか?
 これというのは作者側が無断に出版したり商業展開することを防ぐのみであるか?
 1番で言ったようなタイトル変更、もしくは改稿要請に対して作者が何ら権利を持たなくなる可能性はあるか?

5・出版社側に作家を軽視する風潮は見られるか?
 例えばタイトル無断変更などあれば。

ジジさんの回答2013/10/12

 これは出版社の社員でない私があれこれ言っていい問題ではないですし、賞への応募関連でもない質問ですので、ざっくりと。

 タイトル変更は、多くの場合編集者が決めます。それはその編集者が考える、勝つための戦術です。

 著作権に関しては、実際賞を取れば契約書で確認できますのでそちらをご参照ください。

はみはみさんの質問2013/10/12

 選考では落としたけど、実際に出版されたら人気出るだろうなと思った作品はありますか?

 例えば徹底的に主人公を持ち上げて、他のキャラを貶めることに特化した展開とかありますよね?
 物語の構成としては陳腐な印象がありますが、アニメ化してない人気作って結構こういうのが多い気がします。
 こういう場合はどうですか?

ジジさんの回答2013/10/12

> 選考では落としたけど、実際に出版されたら人気出るだろうなと思った作品はありますか?

 ありません。
 下読みが上げる作品は自分が「おもしろい」と信じたものですので(とはいえ選考は他作品との比較で進められるものなので、自分の中で100パーセント信じ切れない作品も上げる場合がありますが)。
 それは逆に、自分がおもしろいと感じた作品を落とすのは絶対にありえないということです。

 完成度以外の条件で落とすとすれば、一次審査なら明らかなカテゴリーエラー(たとえば少女向けレーベルにおっさんばかりのガチガチの架空戦記を応募してきた等)の作品。二次以降なら対象読者層にかすらないほど題材・テーマがズレている作品。どちらかです。

 提示していただいたような思いを抱く人間がいるとすれば、下読みではなく賞を決める編集者になるかと。

ジジさんの回答2013/10/12

●これだけは確認しておきたい応募作のポイント
 自分が書いた作品をチェックする際のポイントは次の5点に絞るとよいかと思います。

・「この応募作の売りはなんなのか?」が、読む側にもっとも印象づけが成される序盤でしっかり押し出せているかどうか?
・設定の説明が長くないか(おおむね原稿用紙10枚以上が説明文になっていないか)?
・あたりまえのように造語を使っていないか?
・あらすじがきちんとあらすじになっているか?
・誤字脱字がないか?

かーくんの質問2013/10/13

 はじめまして。よろしくお願いします。
 少女向けレーベルの質問なのですが、女性受けする女性主人公に共通点する型、パターン、要素などありますでしょうか?
 女性に受ける女性キャラクターを作るのは非常に難しいと聞き及んでおりますし、実際にその通りだと思います。なにかヒントがありましたら、お聞きしたいです。

 また、少女向けレーベルは、非常に保守的なジャンルで、出版されるのは昔から変わらないパターンの物語ばかりだと聞いたのですが、これは本当でしょうか?
 私も少女向けレーベルのラノベはいくつか読んでいるのですが、ヒロインが姫、巫女、嫁の異世界物ばかりがあるようなイメージがあります。

ジジさんの回答2013/10/13

> 女性受けする女性主人公に共通点する型、パターン、要素などありますでしょうか?

 既存の作品について語るのは枠外になりますので応募作から感じる傾向を。

 おしとやかよりも元気で、不得意な科目を友人やヒーローにサポートしてもらうような“隙”のある女の子が多いです。

 これは男子よりも女子のほうが、主人公像に「共感」を求めるからだと考えます。一般向けレーベルで求められる主人公像に共通するものがありますね。よく言われることですが、女子のほうが同い年の男子よりも精神年齢が高いからこその共通点ではないかと。

 その女子の早熟性は、現実感を重視するという一種の保守性につながるのかもしれません。実際、少女・女性向けレーベルの応募作の主人公は姫・巫女・嫁が非常に多いです。
 私の立場では結果論でしか語れませんのであいまいになってしまうのですが、女性読者が求めるロマンスという要素において、幼少期からなじみの深い姫や巫女、そして嫁という存在は共感しやすい依り代なのではないかと。

 また、姫=王子や民から求められる、巫女=神や世界から求められる、嫁=男性から求められる、という「誰かに必要とされる充実感」が、これらの身分を王道にしていることもあるのかもしれません。

 歯切れの悪い、ダラダラした話で申し訳ありません。
 いちおうの結論としては、読者に求められるからこそ王道パターンが生み出され、王道だからこそ多くの応募者や作家がそれを題材に選び、作品が多いからこそ良作もまた多くなる。というサイクルなのでは、という感じです。

ジジさんの回答2013/10/13

 これは男性読者と女性読者との比較になりますが。

 男性・男子は女性よりも想像力・妄想力に富んでいます。男にとって物語の主人公とは「自分」であり、ゆえに欲望がダイレクトに反映されます。性格や性質はともかく「主人公=自分(読者)がなりたい姿」であるとも言えるわけです。

 対して女性は現実的で大人な分、想像力や妄想力も、その人の常識や良識に左右される傾向があるなぁと、女性向きの応募作を読んでいると感じるわけです。「主人公=自分(読者)がありたい姿」、つまり女性読者は自身が主人公になりたいと言うより、主人公が置かれたシチュエーションに自分の身を置き換えて楽しむという感じです。
 姫・巫女・嫁は女性が幼少期からアニメやお話で「ヒロイン」として親しむ存在ですから、先に述べたように共感しやすい部分があると。

 ですので、女性向けの主人公像を考えるときは、その主人公自身の設定ということではなく、その主人公に読者が共感できるシチュエーションがなんなのかを考えるとよいかもしれません。

キュアベリーさんの質問2013/10/14

 始めまして。複数ありますが、できればでいいのでお願いします。

1、ずばりお聞きしますが、作家としての『武器』とはどのようなものとお考えでしょうか?
ラノベ、一般のどちらのジャンルでも武器というのは共通しているのでしょうか?

2、下読みをやっているとうんざりすることも沢山あるかと思います。
 あくまで文章(小説の内容ではなく、それを構成する文章)で、これは無い、やめて欲しい、というものがありましたら教えていただけませんか?
 前のレスで、女性向けは難解なものが多い、雰囲気を出そうとしすぎる、とおっしゃっていたので急に気になりました。

ジジさんの回答2013/10/13

 作家の武器は「これ!」と絞れるようなものではないので難しいのですが、

 少なくとも賞に応募する段階では「他人より濃いもの」が作れることかなと思います。

 たむたむさんへのレスで、ラノベは「想像しやすいもの」、一般は「共感しやすいもの」がおもしろい作品、というようなことを書いたのですが、それを踏まえた上で、いかに主人公の心情にこだわり、濃厚に描写できるか? いかに緻密に設定を作り込み、且つそれを説明文にせず作品を彩れるか? などがポイントだと思います。
 そして、キャラの心情と設定、ふたつの要素で言えば、一般なら前者、ラノベなら後者が評価されやすいかもしれません。

 一般向けの読者対象は基本的に大人です。もしくは、「普通の中高生」です。普通の人は本でもある意味で常識……自分が主人公とすりかわっても成立するであろう物語を求めます(ある意味で物語に壮大な夢を求めない。ハーレクインという常識をぶっちぎったロマンス至上主義メディアが長らく特別視されてきた理由はこのあたりにあります)。
 そのため、主人公がいかに読者と変わらない「人間」であるかが重要で、それを見せるためにより深いところまで主人公の心理を晒すことが必要になります。

 ラノベ業界は読者人口が限られた中に毎月100冊以上が投入される戦場です。
 作家に限らず、人間はインプットされた情報をアウトプットに変換することしかできませんから、同じ時代、同じ国で同じ文化に触れている人間がアウトプットしてくるものは、当然類似したものが多めになりがちです。

 その中でいかに差別化を図れるかといえば、「同じ素体をいかに他人と違う方向から見て描けるか?」になるかと。

 たとえば榊一郎氏の『ストレイト・ジャケット』という作品がありますが、「魔法を使うと人間は人間の形を保てず溶けて、異形の悪魔になる」という設定でした。そしてそのために「鋼鉄の鎧で人を鋳型にはめることで、溶けるのを防ごうとする」わけです。魔法というありふれたネタに対する認識を打ち砕かれました。

> あくまで文章(小説の内容ではなく、それを構成する文章)で、これは無い、やめて欲しい、というものがありましたら教えていただけませんか?

 独自性を出そうとしすぎて日本語の文法を歪めた文章、ネット用語や造語満載の文章が二大巨頭でしょうか。

 地の文章に抽象的比喩が多すぎてわけがわからん、というのは女性向けに多いですね。また、難解語が多くて普通に読めん、というのも。抽象表現や難解語は、書いた側には高い「書いてやった感」が得られるものですが、ようするに自己満足です。
 自分にしか理解できない文章をひねり出してくる時点で、エンターテイメント性はないわけですので、評価対象からも外れることになります。

 これも長くなりましたが、不明点等ありましたらまたご質問ください。

携帯版サイト・QRコード

QRコード

 創作Q&Aは小説を書く上での質問・悩みをみんなで考え、研究する場です。
 質問をされたい方は、創作相談用掲示板よりお願いします。

質問に対する回答・意見を送る

『現役下読みによるラノベ新人賞Q&A』に対する意見を募集します! 
投稿されたい方はこちらのメールフォームよりどうぞ。

カスタム検索