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Neutronさんのコラム
人体に関する知識 こんにちは、Neutronです。 怒濤の蘊蓄に思わず圧倒されてしまいました(笑) (参照 『銃に関する知識』 薬物に関する知識 ) こうやって、各々が得意な分野の知識を持ち寄って披露し合えば、 お互い凄く勉強になるのではないでしょうか? お二方には全然及びませんが、ちょっと知っていることを書きたいと思います。 軽めな項目を多めの方向で。 ■その1:金粉塗って皮膚呼吸を止めると死ぬ? 「金粉を塗って長時間放置していたら皮膚呼吸ができなくなって死んだ」 という都市伝説があります。有名な話なのでご存じの方も多いかと思われますが、これは嘘です。 人間は、皮膚からはほとんど酸素を取り込んでいません。 一部不感蒸散を行う程度です。従って、金粉を塗ろうがペンキを塗ろうが人は窒息しません。 (なお、この都市伝説の由来は007のワンシーンです) ただし、全身に金粉などを塗ると発汗・蒸発が阻害されます。 これが原因で体温が下げられず、環境によっては熱中症により死に至る可能性はあります。 人間は、代謝や震えなどにより産熱を、発汗などにより廃熱を行っています。 環境などの要因によりこれらが正常に行えなくなると、低体温や熱中症を引き起こします。 ■その2:どうして体温計は42度までしかないの? これは有名な話なので知っている方も多いかと思います。 42度になったら死ぬからです。 人間の体はタンパク質でできていますが、温度が上がると変性して固まります。 一旦変性したタンパク質は元に戻らないので、これが死ぬ原因になります。 そして、その温度が42度というわけです。 ■その3:空気注射で人は死ぬの? 死にますが、少量では死にません。 量ははっきりとは分かっていませんが、致死量は少なくとも20〜30ccと考えられています。 ただし、説によっては100ccでも問題ないというものもあるそうです。 死ぬ理由には「空気塞栓」「血栓の生成」「心臓のロック」があります。 また、脳の血管は非常に細いため、少量の空気でも脳血管を詰まらせると、 深刻なダメージを引き起こす事があります。 なお、血液中の空気はいずれ血液に溶け込みます。 ■その4:白血病って不治の病なの? 物語のギミックとしてよく用いられる白血病。 一口に言っても大きく四種類に分けられ、急性/慢性、骨髄性/リンパ性があります。 このうちで最も難病と考えられているのは慢性骨髄性白血病で、 適切な治療を行わなければ数ヶ月〜数年で急性転化し、その後数ヶ月程度で死亡します。 白血病に共通する根本的な治療法は造血幹細胞移植であり、 ドナーが見つかれば完治が望めます。 ただし造血幹細胞移植は患者の体力を急激に消耗するため、 健康状態によっては実施できない場合もあります。 また、グリベックという新薬が開発され、白血病に対する効果が期待されています。 ■その5:じゃあ脳腫瘍は? 脳腫瘍=不治の病とは一概には言えません。 脳腫瘍にも色々な種類があり、完治が見込める場合も多くあります。 腫瘍切除や、リニアックやガンマナイフなどによる放射線治療、 あるいは化学療法で改善が見込めます。 ただし、一番悪性とされるグリオブラストーマはほぼ不治の病と考えてよく、 平均余命は1年半です。 また、アストロサイトーマやオリゴデンドログリオーマも極めて難治性です。 ■その6:じゃあ、不治の病にはどんなのがあるの? 例えばプリオン病があります。 大きく3つのグループに分けられ、クロイツフェルト-ヤコブ病、致死性家族制不眠、 ゲルストマン-シュトロイスラー-シャインカー病となります。 異常タンパクが原因で脳細胞が徐々に破壊され、平均して2年以内に死亡します。 現代医学(2006年現在)では、治癒率は完全に0%です。 ■その7:テロメアは寿命を決める? よく不老不死の題材にテロメアが用いられますが、 テロメアが回復できれば人間は不老不死になるのでしょうか? 答えはNoだと考えられています。 他に細胞の損傷要因としてストレスや外部刺激(放射線など)があり、 これらによっても老化が進みます。 テロメアとはDNA末端にあるTTAGGGという塩基の繰り返しであり、 機構上の問題により人間はDNAの末端を複製することができません。 これによってテロメアは細胞分裂と共に短くなっていきます。 ただ、テロメアが短くなると細胞が老化するという説は、現在では強く支持されています。 原因ははっきりとは分かっていません。 このテロメアを修復する酵素にテロメアーゼというものがありますが、 ガン細胞では高確率でテロメアーゼ活性が陽性になります。 ■その8:機能を失った臓器は移植によって治るの? 基本的に、移植を行っても完全な健康体にはなりません。 体内に"自分ではない"と認識されるものが存在すると、免疫機能がこれを攻撃します。 当然、移植臓器は他人のものなので、免疫機能は攻撃しようとします。 それを避けるために、HLA(組織適合抗原)ができるだけ一致する人をドナーとして選択します。 HLAには6種類あり、基本的には6種類全てが一致する人をドナーとしますが、 場合によって4〜5種類一致の場合でも移植に踏み切ることもあります。 HLAが全て一致したら拒絶反応が起きないのか、というとそんな単純な話でもなく、 拒絶するときは拒絶します。 また、時間経過と共に生着率は低下し、移植臓器が機能しない状態になることもあります。 例えば生体腎移植では、1年生存率は95%以上ですが、15年生存率は75%と低下します。 他に、移植後は免疫抑制剤投与を続けなければならず、 これによって免疫機能が低下し、病気に対する抵抗力が弱まります。 ■その9:じゃあ、どうして角膜は簡単に移植できるの? 角膜には血管が通っていません。 免疫担当細胞は基本的に血液を媒介にして行動するので、 角膜には拒絶反応が起こりにくくなります。 ただし、全く起きないわけではありません。 HLAと拒絶反応の因果関係も、角膜では明確に示されてはいません。 角膜の拒絶反応といっても、角膜がはがれ落ちるというようなものではなく、 目やにや白濁といったものです。 ■その10:腎臓と肝臓は生きてる人から移植できるの? 腎臓は2個あるので、生きている人から1個移植することも可能です。 ただし、残された方の腎臓が正常に機能することが前提です。 肝臓は再生能力が強いため、1/4程度残っていれば元通りに再生します。 しかし再生能力が高いからといって、無限に再生できるわけではなく、 一度再生を行った肝臓は再生しにくくなります。 生体移植においては、2親等以内の家族あるいは夫婦であることが必要条件です。 ■その11:脳移植って拒絶反応起こらないんでしょ? 脳には血液脳関門というものがあり、脳への異物侵入を拒みます。 ここで免疫細胞も遮られ、脳には免疫機能が働かないために拒絶反応が起こらない、 という話がありますが、どうやらそうでもないようです。 ヘルパーT細胞やサプレッサーT細胞は移植神経組織に侵入してくるようです。 この辺りは研究中であり、はっきりとしたことは分かっていません。 ■むすび 医療に関するテーマは、あらゆる物語で利用されます。 医学は確実に進歩しているので、つい最近までは不治の病だったものが、 完治するようになったりしています。 病気を扱うときは気をつけないと、時代遅れの物語になりかねません。 物語の転機となる要素なので、慎重に扱いたいものです。 おまけ ◆首に視神経って走ってるの? 走ってるわけありません。 グラップラー刃牙で紐切り鎬が首に指突っ込んで視神経を切っていましたが、 問答無用で間違いです。 視神経は眼球から視交差を通って、そのまま後頭葉に行きます。 大体、あんなところに視神経通ってたら簡単に失明します。 |
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