ライトノベル作法研究所
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  4. 下読みがラノベ新人賞の疑問に答えます公開日:2014/01/06

下読みがラノベ新人賞の疑問に答えます。その8

にゃんまるさんの意見2014/01/11

 長い比喩(きちんとした名前があったらすみません)について、意見をおきかせください。
 例えば、

 お使いを頼むかのように言った。
「○○を殺してきて」
 と。

 明日は晴れるかな、なんて、世間話の調子で言った。
「私、実は木なんだよね」

 例がいまいちですが、この長い比喩(台詞の前の文)の多用はどういう印象を受けますか?

 わたしは、この手法が反応・動作の使い回しのような気がするし、声の調子と台詞自体の温度とのギャップを狙いすぎている意図が見え見えのような気もして、気に入らないので、使いません。
 が。一般的に見てそうでもないようなら、読者には伝わりやすいし、あまたある単語の中から的確なものを見つけ出すよりは簡単な表現方法だと思っているので、うかがいました。

 改めて。
 長い比喩を見て、どう思いますか?
 幼稚な粗い文章なのか、それともきちんとした表現方法で、ありなのか。
 意見をお願いします。

ジジさんの回答2014/01/10

 おつかれさまです。

> この長い比喩(台詞の前の文)の多用はどういう印象を受けますか?

 長文でも短文でも、その他どんな表現でもそうですが、多用しすぎれば陳腐になります。
 しかし、この比喩というものは、作者が意図通りに読者の心を動かして状況を想像してもらうための、いわゆる「描写」をするためには不可欠なものかと思います。
 よって「表現方法のひとつでアリ」かと。

 話がズレてしまいますが、「描写」と「説明」のプラス面マイナス面を、あえて私的解釈で言い切ってみるとすれば以下のようになります。

 説明文はおもしろくないですが、端的に物事を伝える分、読者に内容を不足なく理解させることができ、さらにスピード感やリアリティなどの重厚感が出せます。
 描写文は読者の心情に訴えかけ、想像や感動の幅を広げますが、文章が伝えるべき意味を薄めたり曲げてしまったりするため、冗長になりがちな面も持ちます。

 選考において「文章がうまい」と言われる人は描写がうまい人ですし、説明がうまい人は「読みやすい」と言われます。重心をどう取るかはひとつの肝になるかと思われます。

 説明と描写については所説もろもろ論争多々ありますが、これはあくまでも私の解釈ということで。

あまくささんの質問2014/01/10

 はじめまして。あまくさと申します。
 よろしければ、目を通してご意見を頂きたい作品があります(約170枚)。以下は粗筋です。

『迷いの王女と虎物語』
 幼い王女ルシアと従兄のカイロスは大の仲良し。二人は森で人間の言葉を話す不思議な雌鹿を助ける。ルシアは、狩の好きなカイロスが生き物を慈しむ心も持っていることを知り意外に思う。
 ルシアが城に戻った後、カイロスは森の深くで魔女アウラディアに連れ去られる。

 成長したルシアはランドルフという若者と出会う。ルシアは彼がカイロスなのではないかと考える。しかし二人が密会していることは父王の知るところとなり、ランドルフは牢につながれる。王と、ルシアの家庭教師のファイラジールは、ランドルフと別れるように迫る。

 独房で再会したルシアとランドルフに、ファイラジールは《虎と美女の審判》の伝説を話す。《虎と美女の審判》とは、囚人に虎か美女のひそむ二つの扉を選択させる古代の裁きだと言う。かつてこの審判が行われたことが二度あり、一度目は王女アウラディアが、二度目には王女ゼルフィナが係わっていた。そしてゼルフィナは鹿に姿を変えられたという。
 ファイラジールは、ルシアとランドルフに《虎と美女の審判》を受けることを提案する。審判には、囚人が3度、命の危険を乗りこえれば、望む相手と結ばれることが許されるというしきたりがあったからだ。ランドルフは審判を受けることを了承する。

 ファイラジールはルシアに、どちらの扉に虎が入れられるのか教る代わりに、言いなりになるように要求する。彼はルシアに邪な愛情を抱いていたのだ。ルシアはその提案を受け入れる。

 ルシアは審判に使われる虎の檻をおとずれ、虎がエサとして与えられた兎を食べなかったことを聞かされる。

 ルシアはランドルフに虎の扉を教え、2度の審判は無事に終わる。
 第3の審判を前にして、ファイラジールはルシアをランドルフの宿舎に連れて行く。そこでルシアはランドルフには他に婚約者がいたことを知らされる。ランドルフは、ルシアの想いがあまりに一途で強いので真実を打ち明けられなかったと告白する。もしルシアが真実を知れば、怒りにふれて処罰されるかもしれないと恐れたと言う。ルシアは愕然とし、「私が虎だったのか」と思う。

 第3の審判の日。
 ルシアの前に、魔女アウラディアと雌鹿ゼルフィナが現れる。二人の王女はかつて、道ならぬ恋に迷い《虎と美女の審判》によって身を滅ぼした物語を持つことをルシアは知る。
 ルシアはランドルフが本当の婚約者と結ばれるようにはからう。魔女アウラディアは虎を解き放ち、ランドルフを襲わせようとする。しかし虎は、ランドルフに興味を示さず、ルシアと見つめあう。ルシアはカイロスと虎が弱い立場にある生き物をけして殺さなかったことを思い出す。この虎こそがカイロスであることに気づく。
 魔女アウラディアがルシアたちに襲いかかる。鹿の力添えで虎は人間カイロスの姿にもどる。ルシアは、カイロス、ゼルフィナとともに、魔女アウラディアに立ち向かう。

ジジさんの回答2014/01/11

 おつかれさまです。
 現在170枚の原稿を読める時間が取れない状況です。すみません。
 ですのでまず、あらすじを見ての疑問点を。

●物語の構成として非常にオーソドックスなものであると感じるが、作者独自のテーマはどこにあるのか?
●読者対象層の性別・年齢層はどこに置いているのか?
●「生き物を慈しむ心も持っていること」が意外な理由が世界観として存在しているか? そして、作品のキーワードになりうるものになっているか?
● 年頃の姫君が出自の知れない青年と密会できる理由・方法は設定されているか?
●そもそもランドルフはルシアと結婚したいのか? 過去に将来を誓い合うに足るエピソードが用意されているか?

 以上お返事いただけましたらまたコメントさせていただきます。

あまくささんの質問2014/01/11

 返信いただき、有難うございます。
 あつかましいお願いをしたのはこちらの方なので、お気になさらないでください。
 では、お答え致します。

>●物語の構成として非常にオーソドックスなものであると感じるが、作者独自のテーマはどこにあるのか?

 ご存知かと思いますが、『虎と美女の審判』というモチーフは、19世紀の作家F・R・ストックトンの『女か虎か?』という短編に由来します。ただしこのモチーフは基本設定を共有して独自の結末を考案するということが広く認知されているのと、拙作の場合は元ネタからのアレンジの幅がかなり大きいと思うので、一応私のオリジナルと言えるかと考えています。

 テーマというか、一番の狙いだった点は。
 一にも二にも主人公ルシアが、行方不明になった幼い恋の対象を探し求め、見つけ出すという物語だと考えています。
 特に留意した点は、ルシア自身が迷ったり苦しんだりしながら最後に彼女なりに辿り着いた「答え」として、カイロスを発見するという形をはずさないこと。そのための伏線の張り方が、最も苦労したところでした。

>●読者対象層の性別・年齢層はどこに置いているのか?

 年齢は、10代が中心。
 性別ですが。私の場合、読者対象層としての性別のつかみ方が、今一つよく判っていないところがあります。私は男性ですが、なぜか女性を主人公にした方が書きやすいです。最近は男性主人公にも馴れてきて書けるようになりましたが、この作品の場合は目一杯自分の得意な書き方でやってみました。対象としては女性読者を念頭においた方がいいような気もしますが、正直よく判らないのです。そのへんで何かアドバイスを頂けたらと思います。

>●「生き物を慈しむ心も持っていること」が意外な理由が世界観として存在しているか? そして、作品のキーワードになりうるものになっているか?

 これは世界観と言うより、ストーリー上の仕掛けでした。上記の伏線で苦労したというのが、ここです。
 「生き物を慈しむ心を持っていること」が、カイロスの人間性を印象付けるためと読者に思わせておいて、本当の狙いはラスト近くの「ルシアの発見」につなげる伏線として機能させることでした。

>● 年頃の姫君が出自の知れない青年と密会できる理由・方法は設定されているか?

 多少やっつけぎみですが、一応前後のいきさつは設定してあります。

>●そもそもランドルフはルシアと結婚したいのか? 過去に将来を誓い合うに足るエピソードが用意されているか?

 ランドルフには将来を誓い合った婚約者が別にいます。したがって、ルシアとの結婚は望んでいません。ルシアが彼に愛されていると思い込んだのは、彼女の独り善がりと暴走です。
 ルシアの行いはすべて善意ゆえなのですが、ランドルフにすれば王女に愛をそそがれて拒絶すれば処罰されるかもしれないと恐れた。そういう設定です。
 この誤解によって、迷路のようなストーリーにルシアが引き込まれていってしまうという感じです。
 ちなみにストーリーのラストでは、ルシアとカイロス、ランドルフと婚約者(ソフィーリアという名前で、本筋との関係が薄いので粗筋から省きましたが、ストーリーの重要な部分に少し絡んではいます)の二組の婚礼支度で締めくくっています。田舎で質素に行われるであろうランドルフたちの婚礼を、ルシアがちょっと羨ましがったりします。

ジジさんの回答2014/01/10

 端的に感想を述べれば、「ラノベとしては難しい」ですね。

 いちばん気になるのは、やはり読者対象層でしょうか。
 「成人女性向け」の印象を受けました。あえてこの作品の対象になる賞を限定するなら、成人女性向けファンタジーが主流のCノベルス大賞になるでしょう。
 このままだとラノベの賞ではカテエラとまでは言われなくても、かなり通りにくくなるのは確実です。

 ラノベの賞に送るなら、視点はやはりランドルフに置くべきでしょう。
 ランドルフにはなにより、

>  ランドルフには将来を誓い合った婚約者が別にいます。したがって、ルシアとの結婚は望んでいません。ルシアが彼に愛されていると思い込んだのは、彼女の独り善がりと暴走です。
>  ルシアの行いはすべて善意ゆえなのですが、ランドルフにすれば王女に愛をそそがれて拒絶すれば処罰されるかもしれないと恐れた。そういう設定です。

 というドラマとして展開が容易な設定があるわけなので、彼に視点を預けても問題ないかと思います。
 ついでに言えば、呪いでもなんでもいいので説得力がある(と見せかけられる)設定を置き、ランドルフを“少年”にするか、冒頭の主要キャラの年齢を下げ、本編で十代の少年少女にするかしたほうが無難かと。

 また、これはキャラ設定全般に感じることですが、鹿というキャラはもう少し使いでがあるかと思いますし、特に悪役であるファイラジールの設定にはオーソドックスのレッテルを剥がせるだけのひとひねりが欲しいところです。

 さらに賞を狙うなら、見せ場である「裁判」は要熟考です。
 長いほうのあらすじを読んでも、ルールや設定に「このポイントがいい! 推せる!」と言い切れる山が感じられません。あらすじで伝えきれるだけの、アクションなりしかけなりをまとめるべきかと思います。

 マイナス要素を挙げるのは実に気が引けるのですが、筋を見ても「筋としてはきちんと成立しているが、ワクワクは感じられない」、「キャラが弱い」、「オーソドックスから抜け出せていない」という印象はぬぐえませんでした。

 これは私の経験則ですが、上に上がる作品とは、淡々と書き綴っただけのあらすじでも奇妙なほど目を惹くものです。
 プラス方向でもマイナス方向でも、ドラマとキャラをもっと激しく磨き込み、ひと目で見て取れる独自性をどこに置くのかを考えてみてください。

 疑問点、不明点、新たな質問等ありましたらまたお訊きください。

あまくささんの質問2014/01/11

 どうも有難うございます。たいへん参考になりました。

 この作品そのものを公募用に使うつもりは今のところありませんが、仮に狙うとしたら女性向けになるのかなと思っていました。
 本作とは別にこのサイトに投稿した長編があってそれも女性が主人公なのですが、その作品については男性主人公に変更して公募用に仕上げる準備をしています。
 主要キャラの年齢ですが、ルシアが17才(冒頭で9才、本編はその8年後ですから)、カイロスとランドルフが18才になりますが、これですと高すぎるでしょうか?

>上に上がる作品とは、淡々と書き綴っただけのあらすじでも奇妙なほど目を惹くものです。

 それは判る気がします。書き手は1行コピーで作品の魅力を伝えられなければダメだという説もありますからね。
 最初この作品のあらすじを書いてみたとき、3500文字もの長さになってしまったこと自体、どこか問題点があるのかもしれないと思いました。そこまで詳しく説明しないとセールスポイントが伝えられないというのはダメなのかもしれないと思ったから、短く書き直してみたのですが。この自作をあらすじに還元してみるという作業自体、けっこう勉強になる部分がありました。

>ドラマとキャラをもっと激しく磨き込み、ひと目で見て取れる独自性をどこに置くのかを考えてみてください。

 ひと目で見て取れる、という何かが必要なのですね。公募用(またはKindleダイレクト・パブリッシングなどの別の方向も去年から試作を始めているのですが)に考えているいくつかの作品について、それを心がけてみます。

 それでは。有難うございました。

ジジさんの回答2014/01/11

 おつかれさまです。
 ちょうどいいタイミングで本日最終チェックに来ることができました。

>  本作とは別にこのサイトに投稿した長編があってそれも女性が主人公なのですが、その作品については男性主人公に変更して公募用に仕上げる準備をしています。

 本当は女性主人公のまま行きましょう! と言いたいところなのですが、やはりラノベで受賞を狙うためにはオススメしづらいのが苦しいところです。

>  主要キャラの年齢ですが、ルシアが17才(冒頭で9才、本編はその8年後ですから)、カイロスとランドルフが18才になりますが、これですと高すぎるでしょうか?

 これは私の勘違いです。イメージで勝手に20代だと思っていました。ただ、あらすじを見るとキャラの思考に少年少女では出せない男女のドロドロ感(悪い意味ではないですが)が感じられてならないので、余裕を持ってちょい下げるのがいいかと思います。
 あと、最初のシーンに幼女が出てくるのは現在の傾向として正しいと思いますし、ヒロイン9歳(少女)→ヒロイン17歳(少女)よりも幼女→少女のほうがキャラに「成長感」が出てより強く「昔と今」を演出できますので。

>  最初この作品のあらすじを書いてみたとき、3500文字もの長さになってしまったこと自体、どこか問題点があるのかもしれないと思いました。

 これは多くの場合、「物語の軸が定め切れていない(読者に伝えたいものの的が絞れていない)」ことが原因になります。

 まずは「命を賭けて己の愛を貫く王子の話!」など、簡単に作品を表現できるテーマを決めてください。そしてそのまわりに各主要キャラが演じるべきドラマを置いて、それらがどのように軸へ干渉し、ドラマを膨らませるのかを考えてみてください。

 軸の太さは物語の魅力そのものです。
 軸が太ければ太いほど、そのまわりにちりばめられたドラマも一層伸びやかに展開します。

あまくささんの質問2014/01/12

 最終チェック後ということで、見ていただけるかどうか判りませんが。

>本当は女性主人公のまま行きましょう! と言いたいところなのですが、やはりラノベで受賞を狙うためにはオススメしづらいのが苦しいところです。

 無責任にリスクの高い方向を勧められないでしょうからね。
 でも。

>本当は女性主人公のまま行きましょう!

 それが真意ですか? ちらっと、女性主人公でやってみようかと思ってしまいました。

>軸の太さは物語の魅力そのものです。
>軸が太ければ太いほど、そのまわりにちりばめられたドラマも一層伸びやかに展開します。

 それが「ひと目で見て取れる独自性」なのでしょうね。
 どうも有難うございました。寒い日が続きますが、ご自愛ください。

ジジさんの回答2014/01/12

 おはようございます。
 見ていただけるかわかりませんが、恒例のしつこいレスです。

> >本当は女性主人公のまま行きましょう!
>
>  それが真意ですか? ちらっと、女性主人公でやってみようかと思ってしまいました。

 見せていただいた作品を見るに、どう考えても自然な流れはヒロイン視点ですので。

 ただ、このヒロインを主人公にした場合、テーマは「少女のドロドロと煮えたぎる執念・執着の恋愛劇」になる(というか、せざるをえない)かと思いますので、ラノベの線は捨てる必要がありますね。前のレスに書いたCノベ大賞一択です。

 Cノベに送るとすれば、王女が地位と名誉と知能と女の武器を駆使し、裁判にかけられる愛しい人を救う(しかも報われない)という悲喜劇に仕立て上げるのがよいでしょう。
 成人女性は綺麗なものも好みますが、綺麗なものの裏側で煮えたぎる汚さにこそ共感するものですから。

> >軸の太さは物語の魅力そのものです。
> >軸が太ければ太いほど、そのまわりにちりばめられたドラマも一層伸びやかに展開します。
>
>  それが「ひと目で見て取れる独自性」なのでしょうね。

 オリジナリティは斬新さだけのものではありません。
 作者がここを見せたいと押し出したものが、読む側に「こんなあたりまえの素材をこんな角度から見せてきたか」と感じさせる「意外性」です。

 それでは。

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