ライトノベル作法研究所
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  4. 新人賞下読みが質問に答えます公開日:2014/11/14

ラノベ新人賞下読みが作家志望の質問に答えます

 ジジさんのQ&A 2014年09月29日

 おつかれさまです。ジジと申します。
 今回で5度めのお邪魔となり、推して参ってから約1年が経ちました。ご質問、ご相談をお寄せくださった皆様、ありがとうございます。需要があるうちはがんばっていきたいと思っております。

〈ジジについて〉
 職業は文筆関係、その業務の一つとして下読みをしています。
 読んでいるジャンルは男子向け、女子向けのライトノベルや恋愛物、ジャンル問わずのヤングアダルト(一般向けエンタテイメント)となります。ここ1年ほどは、紙媒体だけでなく、スマホ系の小説も業務内になっております。

 各賞に応募していらしゃる方、そして創作を趣味とされている方、なにかご質問、ご確認したいこと等ありましたらお気軽にお書き込みください。職域をはみ出さない範疇でお返事させていただきます。

●答え●

匿名気ボンヌさんの質問2014/09/29

 難しい漢字ばかりの作品はそれだけでアウト?
 どうでしょうか? 程度によるとしか言えませんかね……。

ジジさんの回答2014/09/29

 おつかれさまです。

 難解語は、どうしてもそれを使わなければ物語や文章が成立しないという理由がない限り、一切使わないことをお勧めします。

 なぜならライトノベル――特に新人賞で求められる文章は「読みやすい文章」であり、難解語を多用することは「約束事が理解できていない」と見なされ、かならず大きな減点をつけられるからです。中高生が普通に読めない字は避けるべきです。

やまさんの質問2014/09/29

 スレ立てありがとうございます。他人に「コピー能力が高いが、同時に依存気質も強く抱えている」と言われます。やまと申します。
 では、私事ながら質問をさせて下さい。

 私は、ライトノベル・映像・玩具・ゲームなどを問わず、既存作品の二代目的な……。他作品のコピーに、自分なりの味を加えた作品を創ろうとする事が多いのですが。
「ああ、これはこの作品の影響を強く受けているな」と感じられる作品は、大賞ではどの程度の割合で受け入れられているものなのでしょうか?
 また、どこまで行った実績を御確認されていらっしゃいますか?
 自分の創作動機が「好きなものが途中で展開を終えてしまった。なら、自分で作ればいいじゃないか」だったりする事が非常に多いもので。

 また、そうした動機に関係するのですが。
 思い出美化光線が強すぎるのか、既存の商品と同じ要素を作品内に取り入れたい時、それそのものは商標になっていないにしても、取り込みたい既存作品の要素の名前を使おうと考えてしまいます。
 自分でも別名称を考えはするのですが、実が伴わないせいか、どうにもしっくりくる感じのネーミングが捻り出せず、ずっと自分で考えた別名称に小賢しいという思いを抱いてしまいます。
 そうした場合、応募作品の段階では、名称の流用はどの程度許されるのでしょうか。
 仮に受賞するような事があれば、後でダメ出しをされるだろうし、原稿の段階では命名を投げて文章を書いてしまえなどと考える事もあるのですが、それは危険でしょうか。
 よろしければ、ご回答下さい。

ジジさんの回答2014/09/29

> 「ああ、これはこの作品の影響を強く受けているな」と感じられる作品は、大賞ではどの程度の割合で受け入れられているものなのでしょうか?

 基本的に、よほど作品がおもしろくない限りは一次で落ちます。
 1年前、西尾維新インスパイアについてお話させていただいたのですが、インスパイアが賞を取ることはありませんし、評価されることもまずありません。
 どの出版社も、「2号」は不必要だからです。

> そうした場合、応募作品の段階では、名称の流用はどの程度許されるのでしょうか。

 賞に限って言えば、「一切許されない」と思ってかかるべきです。パロディは程度問題ではあるのですが、他人が考えたネタの流用をその応募者の実力と見なすことはできないからです。
 ですので、名称の流用はデビューが目標ならば、絶対に避けてください。

たなかさんの質問2014/09/29

 こんばんは。
 再びスレ立てをしてくれてありがとうございます。今回も勉強させていただきます。
 では、質問を。

1.設定にオリジナリティがあっても、キャラとストーリーが王道だったらダメ?

 以前、作品の感想で「設定は面白いけど、キャラとストーリーは王道で退屈だった」と言われたことがあります。私としてはキャラもストーリーも、力を抜いたつもりはなかったのですが……どこかで見たような展開、とのことです。
 キャラもストーリーも既存の作品で出尽くしているからオリジナリティなんか出せない! というのは作り手の都合でしかなく、やはり読者は全てにおいてオリジナリティを求めているものなのでしょうか?

2.物語に成長は必ずしも必要なもの?

 とある下読みさんの記事を見つけました。「ラノベ新人賞下読みの苦言」
 その中の一文を抜き出します。

「この彼も自分なりの面白さを計る物差しを持っていません。彼にとって作品の良し悪しとは、創作指南書だったかハリウッド脚本術だったかの教えであるところのエンタメ作品のセオリーに則っているかどうかなのです。
 主人公の成長、変化がないからダメ。冒頭で盛り上がらないからダメ。構成の黄金パターンは決まっているのだからはみ出ているのはダメ。
 偉い人の言ったことを盲信するにもほどがあります。」

 ……とのこと。なんでも、下読みの質が低下していて、その中の酷い一例をあげた文章なのですが、それは私の質問と関係ないので割愛いたします。
 私の質問は、「成長は必ずしも必要なものではない?」ということです。この下読みさんは引用した文章に書いてある通り、成長がないからダメというわけではないと言っております。
 例えば、最近流行りの主人公最強ものは、主人公が初めから完璧であるために成長の余地なんてないような気がします。
 物語における成長は必ずしも必要なものか、ジジさんの考えをお聞かせください。

3.なろう系小説と一般ラノベの違いについて

 スマホ系の小説も業務内とのことなので、なろう系統の作品もお読みになるのでしょうか? 最近かなり流行ってますよね。
 一定以上の人気が最初からあるため、新人賞受賞作品よりも売れるとのことで、色々なレーベルが力を入れているように感じます。新人賞に投稿している者としては複雑な心境なのですが……それはさておき。
 実際、こういうスマホ系の小説と一般ラノベとの違いとは何なのでしょうか? 申し訳ないのですが、たかが素人の作品がプロの作品より売れているという現状に納得しがたいものがあります。実際に何冊か読んだのですが、明らかにプロの作品の方が面白いように感じてしまったので……設定、キャラクター、ストーリー、どれもプロの作品の方がしっかりしています。
 だというのに売上が違うというのは、どんな違いがあってのことでしょうか?

4.作品の面白さを判断する基準は何ですか?

 人によって面白さは違います。感性の違いによって、面白さは変わってきます。
 ある人が作品Aを面白いと評価しても、別の人は面白くないと評価する可能性だってあります。
 なので、私は作品を評価するときに、面白さは関係ないのではないかと考えているのですが……これは間違っているのでしょうか。
 人間なのだから、好き嫌いはあります。しかし下読みをしている以上、好きなジャンルも嫌いなジャンルも公平に評価する必要があると思います。そういうとき、作品のどこを見て評価しているのでしょうか?
 嫌いなジャンルの作品だから面白くないと感じた。だから落選させる……というのは、ないと思いますが。
 どうなのでしょうか。お答えいただけると嬉しいです。

ジジさんの回答2014/09/29

> 以前、作品の感想で「設定は面白いけど、キャラとストーリーは王道で退屈だった」と言われたことがあります。私としてはキャラもストーリーも、力を抜いたつもりはなかったのですが……どこかで見たような展開、とのことです。

 このような感想が出る理由の多くは、「キャラがテンプレで、ストーリーに起伏がない」ことになるかと思われます。
 テンプレのキャラの行動はまさにテンプレで、キャラ独自の心情を生み出すことができません。そうすると、読者がもっとも読みたい心情ドラマが成立しませんので、読者はそのキャラを好きになれず、物語を投げ出すことになってしまいます。
 また、ストーリーに関しては、ドラマの山と谷がない、各シーンが流れていくだけの展開になっていることが考えられます。そのネタが既存作に似ているとすれば、感想はどこかで見たようなつまらない作品、となってしまうでしょう。

 王道でも奇抜作でも、まずは物語をきちんと起こす、読者にキャラを好きになってもらうための心情ドラマと、主人公とヒロインが近づくエピソード展開を盛り込む、物語をきちんと畳む。この3点が正しくできていないと、いわゆる「つまらない作品」になってしまいます。

 ですので、感想についてはオリジナリティとは別の部分から出てきたものと考え、作品をもう一度見直してみてください。

また、

> 私の質問は、「成長は必ずしも必要なものではない?」ということです。

 成長する必要はありませんが、それを貫くためにはかならず「成長しない理由」が必要になります。最初の状態から紆余曲折あって、結果的に成長しない……という展開が必要ということです。

> 一定以上の人気が最初からあるため、新人賞受賞作品よりも売れるとのことで、色々なレーベルが力を入れているように感じます。

 夏スレで述べましたが、新人賞において出版社が得られる財産というものは「受賞作」1本きりですので。「小説家になろう」の書き手は一定の人気があるというのもありますが、作品ストックがあるので1発で終わらない(ある程度の)保証がある、というのも大きいです。

> だというのに売上が違うというのは、どんな違いがあってのことでしょうか?

 今、このメディアが新興で注目度が高いから、となるかと思います。ネット小説は紙媒体に比べてとにかく質のピンキリの幅が広いので、その中のピンの人達も注目度が高いということですね。

> 4.作品の面白さを判断する基準は何ですか?

 設定にオリジナリティがあって興味深く、キャラが魅力的で、ストーリーが起伏に富んでおり、冗長でなく蛇足もなく正しく物語が始まって終わっているものをおもしろいと判断します。
 ここに個人の嗜好はありませんが、下読みには尖った部分のある作品を推してくる人もいるようですので、私個人の基準としては。と付け加えさせていただきます。

みきさんの質問2014/09/29

 またお世話になります、みきです。

 やまさんへの回答を読み増して質問させていただきます。
 先ほど他作品のインスパイア、と仰っておられましたが、どのあたりで気付かれるものなのでしょうか?

 例えば、設定が何となく似てるレベルであるのか、化け物+契約+ツンデレ+召喚=ゼロ使っぽい。という過程を経てインスパイアと感じられるのですか?
 やはり想像範囲に限りのある昨今では一から考えたストーリーが似てしまうこともあると思います。私もこの間、女神を基にしたらた作品と似ていて泣きました。
 そこで、その辺りの線引きなど詳しく教えてください。お願いいたします。

ジジさんの回答2014/09/29

> 先ほど他作品のインスパイア、と仰っておられましたが、どのあたりで気付かれるものなのでしょうか?

 設定がインスパイアならあらすじを見た時点でわかります。
 キャラのインスパイアはセリフをいくつか見ればわかります。
 ストーリーのインスパイアは設定と同時にわかってしまうことが多いですね。
 つまり、インスパイアは「設定を見ればほとんどの場合は一見してわかる」ということです。

 とはいえ、これだけの既存作があるラノベ世界ですので、自分がまったく知らない作品のインスパイアがあることもあります。
 その場合でも、かならず他の下読みや編集者が気づきます。

 ただ。

> やはり想像範囲に限りのある昨今では一から考えたストーリーが似てしまうこともあると思います。私もこの間、女神を基にしたらた作品と似ていて泣きました。

 この場合、あまり気にせず書いてしまうのがよいかと思います。
 「結果的に似た部分がある」というのは「似たものを書いた」のとはまったく違いますので。

サイラスです。さんの質問2014/09/29

 どうも、サイラスです。

①古本屋や図書館の活用について
 他の作品や作家さんの研究をする際、新作や人気作家の作品を買おうとすると、かなり値が張ることがあります。
 そこで、よくBOOKOFF等の古本屋で買う、図書館で借りるということがありました。
 ただ、古本屋や図書館に置いてある旬が過ぎている作品が多く、これって、どうなの?と思うことがあります。

 そこで、質問なんですが、ラノベの研究資料を集める際に、図書館や古本屋を使わざる得ない場合、どういったことに気を付ければいいのですか?我々、社会人なら、やる気がないと言われても仕方ないのですが、高校生等、金銭的に余裕がないこれらは、有難いと思えますが、いかがでしょうか?

②プロの作家さんの読書事情。
 これは、個人的な興味の側面で聞きます。
 きっかけは、交流スレで、個々の利用者さんの最近読んだ本を挙げてもらったところ、最近、ラノベを読まなくなったという方が、ちらほらいました。
 そこで、気になったのは、プロの方って、普段、どんな本を読むのか、他の作家のラノベって、読むのかということです。
 恐らく、作ることに精一杯という方が多い様なイメージがあるのですが、どうなんでしょうか?
 また、ジジさんが、最近読んだラノベと、その他の本があるなら、教えてくださいお願いします。

ジジさんの回答2014/09/29

> ①古本屋や図書館の活用について

 基本的には「去年~今年に1巻が発売された作品を探す」のがよいかと思います。
 次に、「自分が書いている/書きたいジャンルの作品を探す」。これは古いものと新しいもの、どちらも資料になりますので有用かと思います。

> ②プロの作家さんの読書事情。

 私のまわりで言えば、人気作や話題作、お勧めされた作品、知人の新刊を、本数を絞って読む人が多いですね。これはもうラノベが娯楽ではなく資料であり、仕事そのものだからです。
 あとは娯楽兼資料として、映画を見たり他ジャンルの本を読んだり音楽を聴いたり、とにかくインプットに努めます。
 ただ、私は作家の知り合いが多くありませんので、そういう人もいるくらいの話ですが。

>  また、ジジさんが、最近読んだラノベと、その他の本があるなら、教えてくださいお願いします。

 それこそ仕事なので、数はそれなりに読んでいるのですが、新人賞作では望月唯一氏の『サービス&バトラー(講談社ラノベ文庫)』がおもしろかったですね。既存作では、エドワード・スミス氏の『マーシアン・ウォースクール(電撃文庫)』が好みでした。
 最近読んだものではありませんが、十文字青氏の『灰と幻想のグリムガル(オーバーラップ文庫)』 は資料になると思います。ネタの作り方、物語構成、キャラの立て方、ストーリーの起伏の付け方、すべてがすばらしく、参考になります。

 ラノベ以外ですと、今年(2014年)のC★ノベルスの特別賞作2本はよかったですね。お勧めです。

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