ライトノベル作法研究所
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  4. ラノベ新人賞の疑問に現役下読みが回答公開日:2014/04/01

ラノベ新人賞の疑問に現役下読みが回答。その5

羽生さんの質問2014/03/27

 回答ありがとうございます。
 ディストピアを思ったときに気付きました。自分の創作原点にある誰かを感動させる。それを描きにくいことに。
 とはいっても、この世にある全てのジャンルを書きたい欲求も原点にあるんですけどね。

ジジさんの回答2014/03/27

 感動とは喜びを始めとしたプラス方向だけのものではありません。
 マイナス方向の、ドロドロと真っ黒な負の感動もアリなのです。

 たとえば復讐劇があったとして、主人公が法も情もぶっちぎって復讐を遂げた後に自殺するとします。まったくプラス方向の感動要素はありませんが、薄暗いマイナス方向の感動とカタルシスは得られますよね。

 感動は、強烈な目的意識を持った主人公が万難を排してそれを成し遂げることで生まれるものです。
 目的意識が強烈なら強烈なほど、成し遂げた後の感動も強い。

 マイナス方向の感動をどう表現するかを考えてみてください。

あまくささんの質問2014/03/27

 だいぶ以前に永井豪さんの『デビルマン』のノベライズを読んだことがあります。その中で、渡米していた主人公の両親が事態のなりゆきを心配しているという件りがあったんですね。
 なぜそれが印象に残ったのかと言うと、原作マンガでは1巻の冒頭に主人公の「両親が仕事でアメリカに行ってしまい」というセリフがあったのみで、以降はまったく家族が登場しませんでした(知り合いの家庭にやっかいになっていた)。考えてみれば、あれほどの大事件が進行しているのにお互いに心配しあったり連絡をとりあったりしないのは不自然ですよね? なので、さすがに小説家らしい配慮だなと思ったんです。

 とは言え、あの原作マンガは稀有な名作だと思うし、上のようなことを理由に非難する批評を聞いたこともありません。小説だったらけっこう大きな粗と看做されそうなポイントだと思うのですが、マンガなら通ってしまうというのはなぜなのだろう? という疑問がまず一つ。

 この疑問そのものについては、対象年齢の違い、メディアの性質の違いなど色々説明はできるでしょうし、私なりの考えもないことはありませんが、長くなるので省略します。

 で、質問です。
 仮に上のような不備のある作品――不要な情報なので意図的に省いたのではなく、作者の頭の中から抜け落ちてしまっていると思われるような作品が公募投稿作として送られてきた場合(デビルマンの原作を読むと、永井豪さんの頭からは完全に抜け落ちてしまっていたとしか思えない感じがします)、一般小説の審査では大きな原点ポイントとされるのでしょうか?
 また、ラノベの賞の場合はどうなのでしょうか?

ジジさんの回答2014/03/27

 原作というと、月刊マガジン版で合っていますでしょうか?
 後の漫画ゴラク版でたしか、世界は関東周辺とニューヨークしかないというような設定が出てきましたので、作者は作者なりにつじつま合わせしようとは思ったのでしょうね。

>なので、さすがに小説家らしい配慮だなと思ったんです。

 これは私も完全に同意です。
 編集者の側から要請があった可能性もありますが。

>  仮に上のような不備のある作品――不要な情報なので意図的に省いたのではなく、作者の頭の中から抜け落ちてしまっていると思われるような作品が公募投稿作として送られてきた場合(デビルマンの原作を読むと、永井豪さんの頭からは完全に抜け落ちてしまっていたとしか思えない感じがします)、一般小説の審査では大きな原点ポイントとされるのでしょうか?
>  また、ラノベの賞の場合はどうなのでしょうか?

 一般ラノベ問わず、構成に大きくマイナスがつきますね。
 ただしネタがデビルマン級にいいなら、ラノベの賞では問題にならない可能性は高いですね。設定抜けは後から足せばすむ話ですので。
 一般ならその設定抜けが本編の完成度にどれくらい影響しているかをチェックされ、かなり厳しいマイナス評価とツッコミを入れられます。

 ラノベと一般のもっとも大きな違いは「応募段階で問われる完成度」です。当然ラノベのほうが完成度を問わないわけですが、これは応募者が全体的に若く、編集部が「伸びしろ」を重視するからですね。

 最近は応募者の年齢も上がってきていますが、この伸びしろ重視主義はまだ変わっていません。

青大将さんの質問2014/03/27

 初めまして。青大将と申す者です。
 ライトノベル含め小説を読んでいる時に、ジジ様もくすりと笑う事があると思います。
 下読みさん(を始めとした、読者の方々)が読んでいて、一番気持ちのよい「笑い」とはどんな種類の笑いなのでしょうか。会話文の小気味良い掛け合いから生まれる笑いや、パロディーが生む笑いなど、色々な種類があると思います。
 抽象的になってしまいましたが、ジジ様のご意見を伺いたいです。

ジジさんの回答2014/03/27

 普通に読者として読むときは、おもしろそうなキャラがおもしろいことを手段問わずしてくれれば普通に笑います。

 下読みとして気持ちよく笑えるのは「パロディじゃない笑い」ですね。
 パロディはいろいろと問題を生み出す可能性がありますし、なにしろ「応募者が考えたネタ」ではないので正しい評価ができない部分があるのです。

 もちろん笑いの方法論はなんでもいいのですが、「うまいな」と思うのは地の文で「“間”というリズム」をとれている会話文です(わかりにくくてすみません)。

 「おもしろい言葉のかけあい+地の文によるアクション・リアクションの説明と(文章の長短などで作る)間」による笑いは評価されやすい構造かと思われます。

 ……非常に焦点の定まらないお返事になってしまいました。
 不明点等あればお気軽に再質問をお願いいたします。

干し芋さんの質問2014/03/27

 一次通過させる作品というのは、下読みさんがおもしろいと思ったものですか?仮にそうなら、下読みAさんでは通ったものが、下読みBさんだと通らなかったという事態は、ありえるということですよね。すみません、下読みのシステムがよくわからないので……。

 また、ジジさん自身はどういう風に選考しているのでしょうか。あくまで出版社の利益が最大化(?おもしろい)すると思われる作品をあげるのか、それとも自分の感性でもっておもしろいと思う作品をあげるのか、はたまた両方を兼ねそなえている作品をあげるのか。どうなんでしょうか。やはり上層部から、選考の規準が告げられて、それに則ってシステマティックに決めているのでしょうか。

ジジさんの回答2014/03/27

> 一次通過させる作品というのは、下読みさんがおもしろいと思ったものですか?

 そうです。
 箱(その下読みに割り当てられた数十~百程度の応募作。編集部からダンボール箱で届くので「箱」と呼びます。他には「山」という言いかたもあります)に詰め込まれた担当分の応募作を全部読み、その中で相対評価しておもしろかった作品を上げます。

 一次から上げる数というのは大体の場合担当分の1割なので、たとえば100本その下読みが担当していれば90本は一次審査で落ちることになります。

> 仮にそうなら、下読みAさんでは通ったものが、下読みBさんだと通らなかったという事態は、ありえるということですよね。

 ありえます。というか、そこそこの確率で起こりえます。
 これは下読みの感性が原因なこともあるのですが、その箱のレベルが偶然高かったり、レーベルごとの基準がちがったりという理由が多いですね。

> また、ジジさん自身はどういう風に選考しているのでしょうか。

 私は出版者の都合はあまり考えず、おもしろいものを上げるのを第一義としていたのですが、最近はちょっと気にしなければならない事情が出てきました(理由については『2014年3月ラノベ新人賞の傾向』をご参照ください)。

 選考方法ですが、第一に「設定(ネタ)がいい」、第二に「キャラがいい」というところをまず見ます。
 「感性=好み」や「基準=システム」ではなく、応募作のプラス面とマイナス面を洗い出しつつ「総合的におもしろいが勝るか否か」を相対評価し、上げる感じです。

αzさんの質問2014/03/27

 こんにちは、αzと申します。
 すみません、いくつか質問させていただきます。
 業界そのものより個人的な質問が多いです。

1、個人的な話で申し訳無いのですが、下読みさん自身、『巧いなぁ』と思ったものはありますか?

 キャラクター、設定、ストーリーなど様々なものがあると思いますが、出来ればこれら全部答えてくださると嬉しいです。

2、よく大会の受賞理由等でのびしろがあったので、と言う話を聞きます。この場合のびしろとは何を指すのでしょうか?

3、やはりオリジナルへの感心は高いですか?寄をてらう、とオリジナルの違いは何でしょうか。

4、文章について苦心しているのですが、やはり文章が綺麗だな、と思う方はいらっしゃいますか?

5、私ま個人的に濃密に作品を書き進めていますが、実際、濃密な作品を目にする事は多いですか?
 また、どう思われますか?

ジジさんの回答2014/03/27

> 1、個人的な話で申し訳無いのですが、下読みさん自身、『巧いなぁ』と思ったものはありますか?

 あります。
 この場合のうまさとは「設定とキャラの関係性がうまく描写できている」、「文章/物語運び(構成)がうまい」の二種類ですね。

 ただ、「おもしろい」と「うまい」は両立しないことが多々ありますので、後者の場合は上げるには至らないことも多いです。ラノベの正義は「おもしろさ」ですので。

> 2、よく大会の受賞理由等でのびしろがあったので、と言う話を聞きます。この場合のびしろとは何を指すのでしょうか?

 有り体に言えば、文章も構成もお粗末だけれども設定(ネタ)やキャラがすごくいい! というのがいわゆる「伸びしろです。後付けで伸ばせる技術ではなく、その人間ならではの感性が買われるわけです。

> 3、やはりオリジナルへの感心は高いですか?寄をてらう、とオリジナルの違いは何でしょうか。

 奇をてらう=ありがちな設定をよくわからない屁理屈や奇抜なだけのキャラでやらかしてしまう。
 オリジナリティ=他人と同じ素材を、角度を変えて調理できている。

 オリジナリティを見せられなければ評価はされないと考えていただければまちがいありません。

> 4、文章について苦心しているのですが、やはり文章が綺麗だな、と思う方はいらっしゃいますか?

 います。
 ただそれは1で述べたように「おもしろい」とは別の問題なので、綺麗な文章を目ざすよりもおもしろい設定を考えることを優先するべきです。

> 5、私ま個人的に濃密に作品を書き進めていますが、実際、濃密な作品を目にする事は多いですか?
>  また、どう思われますか?

 濃密がなにを指すかによって変わってきますが、ダークな雰囲気を押し出したシリアスで救いのない話ということでしたら、その雰囲気をどこで破壊し(転じさせ)、どのようなエンディングに到達させるのか。それが描けているなら高い期待を抱きます。

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