それは単にラストシーンの処理として考えるのではなく、序盤~中盤の流れを一度見直した方がいいと思いますよ。そもそも主人公は、なぜその悪役と戦っているのでしょうか?
……と言うのはですね。
単純に悪役を殺したくないというだけなら、改心して和解させる、死なない程度に痛めつけて逃がす、投獄するなどの方法が考えられます。
また、主人公が手を下して殺すのがまずいなら、自害や部下の裏切りで殺される、トドメは刺さないのだけれど火山の火口にでも落ちていくなど、いろいろ有ることは有ります。
でも、そういう結末ではスッキリしない、という感覚がスレ主様の心の中にあるわけですよね?
だったら、「どうしたらスッキリするのか?」の前に、「なぜスッキリしないのか?」を点検してみる方がいいです。
その場合に注意してほしいのは、
1)悪役の悪辣さや危険性の度合い。
2)主人公の目的意識。(なぜ、その悪役を倒そうとしたのか?)
この2点です。
1については、悪役を殺さずに逃がした場合、さらに悪事を重ねて人々に危害を及ぼす可能性は無いのか? ということです。
または、悪役の残虐性そのものに読者が強い嫌悪感を抱き、「こんなやつ殺してほしい」という感情を抱いている場合。(逆にポケモンのロケット団のようなほのぼのとした悪役だったら、むしろ殺してしまう方がマズイですよね?)
2については。
分かりやすくシンプルに分類すると、
3)「社会に災厄をもたらす悪から人々の命を守るため」型。つまり正義や平和の回復が目的になります。
4)仇討ち型。両親や恋人などの命を奪った敵を、復讐のために倒そうとするタイプ。
3の場合、ただ主人公が優しいとか人殺しを好まないとうだけの理由で悪役を助けるのが許されることなのか? という疑問が生じます。
4の場合は、そもそも敵を殺して恨みを晴らすことが主人公の目的じゃなかったの? ということになります。
以上のようなことがあるので、最初に戻りますが、
それは単にラストシーンの処理として考えるのではなく、序盤~中盤の流れを一度見直した方がいいと思いますよ。そもそも主人公は、なぜその悪役と戦っているのでしょうか?
という提案になります。
最後に悪役を殺す方がストーリーの一貫性が保てるのなら、そうする勇気も持った方がいいのではないかと。
それが、まず一つあります。
* * *
ところがですね。
ここで、主人公の本来の性格付けというもう一つの問題と衝突してしまうケースは、あることはあるんですね。
平和を守るため、あるいは恋人の仇を討つため。
そういう背景があっても、最後の最後にはこの主人公なら人殺しは避けるだろう。そういう主人公のキャラ設定が強固で、読者もそれを支持すると思われる場合ですね。
まあ、ぶっちゃけ。
初期設定において、「悪との戦いの迫力」と「主人公をイイ子にしすぎている」といういいとこ取りに走りすぎたのではないかと思わないでもないのですが。
一応、一般論として、そういう場合の解決策をいくつか挙げておきますね。
3と4について、もう一度考えてみてください。
3については、悪役を殺さないでも、さらなる悪を行う可能性を排除すればいい、ということになります。
これも序盤~中盤の設定や伏線とからみます。
悪を行うにもそれなりの過去や背景があったということにしておけば、ラストで改心させる可能性が出てきますよね。
悪役の改心という方法の問題点は、いかにも安易でご都合主義的になりやすいということ。伏線でそこに説得力を持たせることができるなら、そういう展開もありです。
または、投獄するという結末でもおかしくない世界観なら、必ずしも殺す必要はありません。
あるいは、悪役の能力設定。これを使えない状態に追い込めば、社会や人々を被害から守るという目的は達せられるわけです。
次。
4について。
そもそも仇討ちのために狙っていたのなら、殺さないのはおかしくないかという問題。
これは、ずばり「寸止め」型ですかね。
クライマックスの主人公と悪役の激闘。悪役は優勢なときは憎々しく勝ち誇りますが、最後には劣勢に追い込まれ、アワアワ命乞いしたりします。そこに主人公は武器を振り下ろしますが、寸止め。
「お前を殺しても天国のあいつは喜ばないからな」的な決め台詞がセオリーかと(笑
……(笑)と付けたのは、やっぱりちょっとご都合主義だよなという感じはするから。しかし、主人公をメチャクチャカッコよく演出して押し切ってしまうという手です。
意外と名作とされる作品でも、こういうラストは散見するような気がします。
* * *
悪役を殺してしまう場合についても少し。
主人公は殺しをするような性格ではないということと両立させればいいわけですよね?
簡単なのは、主人公が手を下さないという形。
前半でちょっと触れましたが、火山の上ででも戦っていて、劣勢になった敵が火口に落ちていくという手。
この方法は、実は生きていて続編に再登場させることもできるのでお得です(惨死したはずの悪役がサイボーグ化して再登場して「ナチスの科学力は~ッ! 世界一~ッ!」と叫ぶというのがありましたが、ご存じですか? 笑)
他に、プライドの高い悪役で「負けを認めるくらいなら、この命自ら絶ってやるわ!」的に自爆するとか。
最後に、ラストバトルの緊迫度についても考えてみてほしいです。
もし、悪役側が勝った場合は、主人公の方が殺されるのではないかということです。そういうギリギリの戦いの場合、主人公側も手加減する余裕は無いでしょうから、敵にトドメを刺す決着でも必ずしも印象は悪くなりませんよ。
ラストバトルを生きるか死ぬかのフェアトレードとして描くのも、クライマックスの壮絶さと緊迫感が際立ちますから悪くはないと思うのですが。