いつもお世話になっております。
現在はヴィクトリア朝風な架空国家を舞台とした、長編小説の執筆を進めております、やとうと申します。
こちらの皆様に様々なご指導を頂きながら現在、第一話にあたる章のプロットが完成した後に、ト書きのようなものから段々小説へと書き直しを進めています。
しかし今度は描写力の無さから、その作業がうまくいかず悩んでいます。
色々な作品を読み、書かれている方々のアドバイスをいただければと思いお邪魔しました。
現在自分の書いたモノを読み返すと、起伏が無く平坦といいますか、
映画にたとえると、視点の遠近が無く淡々と同じ角度で見せてしまう、といえばいいのでしょうか…
うまく言葉にできているか自信が無いのですが、
「見せたいシーン」とそうではないところとの境がわかり辛く、
この台詞、動きが重要、というのが伝わりにくそうで、全体的に起伏が少なくさら~っと流れてしまっているような内容となっています。
描写の行数を増やせば良いのか、改行で短文にするだけでも違うのか…などなど考えますが、どうにもしっくり来ないので書くスピードも落ちてきてしまっています。
プロット→ト書き→書き加え というところまではそこそこできたのですが、
その先の肝心な本文、小説としての描写の段階になり、経験や知識の無さで試行錯誤してもうまく進まずという状況になりました。
大切な台詞、動き、伏線などを目立たせる、
そこまでに至る過程で「溜める」や視点の「引き」をどのように表現するか、
また、参考になる良い作品など、皆様の執筆のご経験やお考えをいただければ幸いです。
お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
実際に読んでみないと「見せたいシーン」とそうでないものの境目の区別が付くかどうか分からないのですが、
【①(シーンの書き出し)→A(見せたいシーン)→②(シーンの終わり)】
という形があるけれど、①②とAの部分が区別が付きにくいのでは?――という認識でよろしいでしょうか。
まず単純に考えられるのが、
『①と②の部分に筆を尽くしすぎている』
『Aの部分が、シーンを構成させるための要素として小さすぎる』
という例ですかね。
一つ目は、無駄な描写や情報を書きすぎているというパターンです。
上手い書き手は、特に①の部分にキャラクターの些細な特徴や仕草(愛煙家なら喫煙、食いしん坊なら常になにかを食べているetc)やキャラ同士の関係(軽い口喧嘩やイチャラブetc)、シーンの舞台である場所の特徴(Aに控えるアクションシーンのための状況説明)などを導入します。それでいて本題であるAの部分にしっかりと筆を尽くしているわけです。これがどうして上手い書き方なのかというと、この書き手にとってAはもちろん①も②も『必要なシーン』だから。上手いシーンというものは無駄がないものなんです。
ですので、見せなくてもいい(必要ではない)シーンがあれば省いたほうがいい。いっそのこと、①を飛ばしてAの部分から書き出すくらいの勢いで書いたほうが分かりやすいです。もちろん「Aの部分も必要なシーンである」という前提があればの話ですが。
これが違うなら二つ目の例ですね。
いくら重要であっても、「動き」や「台詞」もシーンを構成する一つの要素に過ぎません。見せたい動きや言わせたい台詞があっても、それ一つだけでは淡泊なものに終わってしまいます。それだけをシーンのAに据えても、①と②の部分に食われてしまい、重要かどうか区別しにくいシーンになってしまうんです。
ただ「第一話にあたる章のプロット」とのことなので、中盤以降のクライマックスに比べれば平坦に見えてしまうのは必然的なことです。もしかすると序盤のシーンとしては問題ないものだったり、あるいは「見せたいシーンであっても不要なシーン」である場合もあります。後者の場合は遠慮なくカットしましょう。
>>大切な台詞、動き、伏線などを目立たせる、そこまでに至る過程で「溜める」や視点の「引き」をどのように表現するか
大切な――と言われると中盤以降のクライマックスのシーンを想像してしまうのですが、この場合は『必要な』という解釈でもよろしいでしょうか。クライマックスを指すのであれば、序盤の時点でそれを表現するにはスケールが足りない気がします。
大切な要素を目立たせたいのであれば、第一話を含む序盤の部分は、それらを目立たせるために必要な「溜め」の部分です。逆に『大切ではないけど必要』であるのなら、大げさな溜めも引きも無理して書くことはありません。むしろ物語の構造上、序盤におけるそれらのシーンは大げさな「溜め」も「引き」もありません。できるだけ読者に知ってほしい情報だけを提示、描写して中盤に入ります。
それでも序盤のシーンに起伏を作りたいのであれば、アクションシーンを導入して平坦さをなくすという手法があります。これは読者へ強引に緊迫感を持たせて目を離さなくさせる常套手段です。
あるいは単に「目立たせたい」だけなら、序盤以降もこまめに動きや台詞を繰り返させる、伏線なら読者が一目見ただけでも分かるように提示させる――などの工夫をするべきかと。重要なのは『シーンそのもの』を目立たせるのではなく『シーンの中にある要素』を目立たせることです。
以前、他の回答で書いたことですが、自分はシーンを書く際に『取引』を考えています。
どのシーンにも、そこに出てくるキャラクターはそれぞれ違う目的を持っていて、それを果たすために各々は行動を起こします。この行動が取引であり「シーンの中の動き」で起伏です。この取引が終わると同時にシーンもスパッと終わります。この時、場面や場所ごと変えて次のシーンに移ることもあれば、物語を進めるための出来事を導入させて次のシーンに移ることもあります。
【プロット→ト書き→書き加え】という書き方は、ストーリーやシーンの外側(キャラやシーンの動き)を考えるには最適なのですが、肝心の『中身=シーンの内側』をあまり考えずに進んでしまいがちになります。
内側というのはキャラの心情の動きだったり、そのシーンにおけるキャラの目的、そのシーンに登場するまでにあった(しかし実際には描かれない)キャラの動きなどです。自分も最近気付いたことなのですが、シーンの中身の構想が疎かになると外側の動きも描きづらくなるんです。そうなるとシーンの進め方であったり起伏の付け方がハッキリしづらくなります。
ですので自分は外側からシーンを考えて描くのではなく、まず内側を考えてシーンの中心核を重ねるようにト書きを加えて肉付けをするように心がけています。シーン毎の心情の動き、取引の動き……これらを考えるようになってからは起伏のないシーンは書かなくなったと感じています。