描写の書き方の返信
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描写の書き方(元記事)
最近、二次創作を始めたものですが、作品の中にこれいいなって思いついた場面を落とし込もうとすると繋ぎの描写が薄くなってしまうのが悩みです。これに似た感じで、セリフとセリフの間に描写を挟もうとすると台本のように1行で終わってしまうことも多く、例えるなら弁当箱の中に好きなおかずしか入っておらず、カップやバランの仕切りが一切入ってないみたいな感じです(分かりにくくてごめんなさい)
なので、
・場面やセリフの繋ぎ方
・描写が上手くなる方法
などがあればご教授いただけますと幸いです。
描写の書き方の返信
投稿者 手塚満 投稿日時: : 0
サタンさんが見抜いてくださったおかげで、地の文と理解しました。自分も以前は同じような混同していた気がします。
御作なしで原因を推測しますので、いろいろ外れるし、説明も長くなりますが、ご容赦ください。
1.文章に向いたシーンを作れているか
何の二次創作なのかでいろいろ原因がわかれそうです。例えば、アニメ作品の文章二次創作だとします。もう古いですがアニメ版「フルメタル・パニック? ふもっふ」を例にしてみます。原作は文章作品(ラノベ)で作者は賀東招二さん。
深夜アニメの通例でサービス回とも呼ばれる温泉回があります。アニメ版ではアニメであることを活かした演出が為されていました。女湯描写で「見えそうで見えない」工夫が凝らしてあるんです。
例えば、ヒロインが柵越しに外を見るが柵でぎりぎり隠す。さらに柵の外の雑草でも隠す。ヒロインが動くと見えそうになりますが、雑草にてんとう虫が止まることによって雑草が動いて、ヒロインの動きに追随する。さらにヒロインが動くとてんとう虫が飛び立って雑草が動いて、またもや隠す。
全年齢向きだから隠す必要があるわけですが、試写を見た原作の賀東招二さんが神業だと感嘆したと聞いています。しかしそもそも文章では全く使えない技法ですね。文章ならモロに書いても全年齢向きです。「ヒロインが温泉から出て、柵越しに外を眺めた」でしかないですから。全裸なのは分かってる。だけどエロくはない。
2.文章は絵を見せられないが心情はダイレクトに書ける
上記は極端な例ですが、書いてみてもパッとしないときには、シーンが文章向きではない可能性があります。上記シーンであれば、「女湯を覗く/聞き耳立てる男湯の面々」の反応を描くことが必要になるわけですね(アニメ版にも入っているが、主たる描写にはされていない)。あるいは、入浴中のヒロインと主人公がハプニングで遭遇するなど、イベントではっきり示すこともよく行われます(いわゆるラッキースケベ等)。
いずれにしても、文章では絵は見せられない。ヒロインの露わな姿を描写するのは不利で、それを見てしまった主人公の動揺を描くのが有利。すると読者は、そういう動揺、興奮をするときの自分の経験や実感から、シーンを想像できるようになります。
つまり文章が得意とするのは絵ではなくて、キャラの心情です。あるいは論理的な仕組み。絵的に冴えたものを思いつけたとしても、それが文章に適するかどうか、よく考える必要があります。文章には不向きと判断すれば、絵面的には劣っても、シーンを変更する必要に迫られることもしばしばです。
3.描写対象全体を見せようとしていないか
やはり絵的なことに関係するのですが、全体を正しく描写しようとして、描写がぼやけてしまうこともあります。よく見るのが例えば「ヒロインは『白を基調』としたワンピを着ている」みたいのです。もしヒロインのイラストを示されると、「白を基調」で正しいことが分かる。が、「白を基調」という言葉だけからヒロインの衣服を想像しようとしても、いろいろありすぎてイメージが曖昧になります。
4.言葉で見せるなら1つのアイテムに絞る
文章による具体的な絵面描写でよく聞くコツは「1つだけ具体的、詳細に描く」です。カフカの「変身」では主人公が巨大な毒虫になってしまうのですが、ほぼ虫の脚の気持ち悪さの描写に終始します。それで毒虫全体がイメージできてしまいます。正確に申せば、分かった気がするんです。
あるポイントが具体的に分かると、他も同じくらい具体的に想像できるからです。やはり正確に申せば、具体的に想像できた気がするとなります。たいてい、分かった気になっても、絵に描こうとすると詰まることが多いですから。しかしそれでいいんです。分かった気がしさえすれば面白く感じ、読み進める気が起きます。
ですので、例えばヒロインの美しさを語るとして、チャームポイントを1つだけ語る。例えば「澄んで深い瞳なのにキラキラ」とかですね。それに加えて、ヒロインを見る主人公の内心の感動を描く。「いつになく心臓がどきどきする」とかですね。後は読者の想像に任せます。
5.台詞と地の文を別物と考えていないか
台詞と台詞の間の地の文でもお悩みとのことですが、これももしかしてですが、台詞はキャラの発するもの、地の文はキャラの様子を語るもの、みたいな役割分担に終始してないでしょうか。あるいは、そういうものだと思ってしまっているとか。
まず、台詞か地の文か以前に、「読者にどんな情報を出せば、シーンが分かってもらえるか」が大事です。例えば「このシーンでは思い切って告白した主人公に対し、内心では好意があるヒロインが照れて、いったん振ってしまう」だとします。単純にやると、こんな感じになるかもしれません。
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太郎は花子に言った。
「好きだ」
花子は答えた。
「嫌い」
――――――――――――
第三者が太郎と花子を眺めていたら、そんなことしか起こらないでしょう。しかし、これではいけませんね。では、太郎と花子に台詞でもう少し気持ちを言わせたらいいのか。
――――――――――――
太郎は花子に言った。
「あの、えーっとな、突然なんだが、好きだ」
花子は答えた。
「えっ、で、でも、あのね、嫌い」
――――――――――――
これもいけませんね。地の文のせいでしょうか。なにせ台詞の間に挟まってぶった切り、テンポを乱してる感じです。
――――――――――――
「花子、えーっとな、突然なんだが、好きだ」
「えっ、で、でも私、太郎は嫌い」
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台詞に名前を入れると、地の文の必要性が消えます。太郎と花子ということが既に読者に充分分かっている場合(冒頭ではなく、シーンも2人きりなどの場合)、口調だけでいいこともあります。
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「俺、えーっとな、突然なんだが、お前が好きだ」
「えっ、で、でも私、あなたのこと嫌いよ」
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6.地の文は会話文を活かすためにある
地の文は会話文の間にさしはさまなければならないものではありません。できれば地の文を削ったほうが、普通はテンポがよくなりますし、分かりやすくもできます。大事なのはシーンを理解するに必要な情報であって、会話文+地の文みたいなフォーマットではないからです。
しかし、上記ではキャラの雰囲気が充分伝わるとは言えません。そうなると地の文の出番となります。
――――――――――――
「花子、えーっとな」
太郎はうつむいておずおず喋り出し、突然顔を上げた。
「突然なんだが、好きだ」
花子は一瞬目を見開いた。
「えっ、で、でも私――」
ぽっと頬を赤らめたが、プイっと横を向いた。
「……嫌い」
――――――――――――
動作や見た目の変化でやってみましたが、一人称ですと、主人公の内面を語ることもできるでしょう。
――――――――――――
「花子、えーっとな」
俺は花子の顔が見られずに話しかけた。こんなことではダメだ、思い切って花子の目を見る。
「突然なんだが、好きだ」
よし、花子もこっち見つめて目を丸くしてる。
「えっ、で、でも私――」
さらに頬を赤らめる花子に期待した。が、
「……嫌い」
プイっと横を向きやがった。どっちなんだよ。
――――――――――――
7.会話文で地の文の役目を担うこともできる
地の文を一部、会話文に移すことも可能です。
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「花子、えーっとな」
「なによ、うつむいて」
「突然なんだが、好きだ」
「うわっ急に顔近づけないで、って、え? でも、私――」
頬を赤らめる花子に期待した。が、
「……嫌い」
プイっと横を向きやがった。どっちなんだよ。
――――――――――――
練れてなくて済みません。ともかく、ここまでやるとしたら大事なシーンの場合でしょう。例えば、浮気者の主人公がパーティであっちこっちの女性に声をかけるとしたら、こんな描写は読者に嫌がられます。同じことを延々繰り返すことになりますから。
8.地の文で会話を想像させることもできる
「好き」→「嫌い」の短い会話を繰り返しても駄目です。そういう場合は、飽きそう部分をカットしたりします。例えば「女性グループに向かって行った主人公」の後、「顔に赤い手形いっぱいつけて帰ってきた主人公」みたいなシーンを想定して、文章を工夫することになります。
(映像表現の例ですが、黒沢映画の「用心棒」ですと、馬に乗って森に走りこんだ武者→馬だけ森から駆け出て来る→武者が走って追いかけて来る、みたいに間を飛ばして、途中を想像させるテクを使ってます。)
9.会話についてまとめ
会話シーンについて、上記をまとめますと、
・描写は会話文、地の文、どちらにも入れられる。
・地の文はできるだけ省く。
・そのうえで、雰囲気を出す演出の地の文は工夫する。
・全て、読者に飽きさせずにシーン情報を伝えるため。
という感じになります。
10.お悩みの文章を見せれば、具体的なアドバイスも得られるはず
さらに大事なことを申すなら、「実際に書いてみた描写を見てもらってアドバイスを受ける」のが有効です。ここは書ける人ではなく書きたい人が集まり、互いに助け合うサイトです。この掲示板も、そのためにあります。不出来と思っても、途中まででも、書いてみたものを見せてアドバイスを求めてみてはどうでしょうか。