負けてばっかりの作品って面白くなりますか?の返信
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負けてばっかりの作品って面白くなりますか?(元記事)
よく「勝ってばっかりの俺TUEEEEEE系はつまらないことが多い」とよく聞きますが、逆に負けてばっかりのストーリーの作品って面白くなりますか?
例えば、マブラヴオルタナティブでは人類が危機的状況にあり敗走し続けていて、主人公たちはその中で希望を探そうとしますがほとんどいい結果にはなりません。
私は負け続ける事で世界の絶望感を演出したいですが、果たして面白くなりますでしょうか?
負けてばっかりの作品って面白くなりますか?の返信
投稿者 あざらし 投稿日時: : 0
負けてばっかりの作品は結構あります。
多くはありませんが、傑作が多いのも特徴だと思いますよ。
例にあげていらっしゃるマブラヴオルタもそうですが、パッと思いついたあたりで【山田風太郎著:妖異金瓶梅】【横溝正史著:悪魔が来りて笛を吹く】【スチュアート ウッズ著:警察署長】アニメでも【メガゾーン23】がありますね。
ですので、
>負けてばっかりの作品って面白くなりますか?
ご質問に対して私はYESとしか応えられません。
ただ『負けてばっかり』と『負けるだけ』は明確に異なります。
整理しながら書きますが、そもそも『負ける』のは、ざっくばらんには主人公です。
物語の基本的な構造ですが、主人公というのは物語世界と読者を結ぶ、最大の接点となる存在です。
その主人公が負けるというのは、これは読者を(悪い意味で)裏切りかねない大事です。つまり読者を裏切りながらも満足させるという高いハードルを易々と超え、かつ読後感を良いものへと昇華させる必要に迫られます。
冒頭にあげた作品群でなら【横溝正史著:悪魔が来りて笛を吹く】がドンピシャですね。
《《ネタバレ注意》》
主人公である金田一耕助は犯人の特定には成功していますが、実は事件を早期解決、それもほとんど物語冒頭で解決できた可能性に辿り着きます。
これは読者にとっても同様で、それだけのヒントが記されています。(とはいえ行動が必要なので主人公が行わない限り読者も立証できません)しかも主人公にとっては曲のタイトル、読者に限っては小説のタイトルそのものがヒント。
つまり探偵である主人公にとっては矜持の破壊であり明確な敗北。読者にとってはトリックの見事さに「やられた!」という一種カタルシスに繋がります。
金田一耕助シリーズそのものがメタ的には負け続けなんですが、この作品は他と明確に異なります。
《《ネタバレ終了》》
さて、本題のマブラヴ オルタネイティヴ。
この作品以降、本作の影響が散見される作品は数知れず、発売から時を経て未だに絶えない、という名作中の名作ですが、私個人として負け続ける物語とは異なると解釈しています。
ぶっちゃけ巧妙かつ見事な『俺TUEE』タイプの物語だと思いますよ。
物語の構造から見えてくるものがあると思いますので、アレイさんにはおさらいになっちゃいますが細かく書きます。
その前に、派生パターンが多い作品でもありますので祖語を無くすために元作品を明確にしておきます。
マブラヴ(EXTRA編)→マブラヴ(UNLIMITED編)→マブラヴ オルタネイティヴ
ノベルゲームとしての二本をベースにした、ごく普通のプレイ順で抱いた解釈です。
コンシューマー版は未プレイ。コミカライズは残念な出来。オルタネイティヴ トータル・イクリプスは考慮してません。
まずノベルゲーですので一人称です。
物語世界と読者の橋渡しである主人公を通して知る情報が全てですよね。言い方を変えれば主人公が知り得ない情報は、読者もまた知ることが出来ません。
ではオルタで主人公が得る情報はというと、価値観といった人心の部分は冥夜ちゃん、国際情勢や人類の戦況、そしてなによりも重要な物語の狂言回しとしての立ち位置である副司令の夕呼ちゃん。
それ以外のキャラクターの使い方も見事ですが、物語全編に関わる根っこの部分としてはこの二名に集約されます。
では肝心の主人公の勝利条件。
《《以下は盛大なネタバレ》》
動機であり行動指針。これは物語を通して時々によって変化させてますよね。
マブラヴEXTRA編 → ラブコメ(巻き込まれる)
マブラヴUNLIMITED編 → 生存(運命に翻弄される)
オルタネイティヴ → 人類の勝利(未来を知る唯一の人間が未来を変える)
本題のオルタを砕くと、最終目標は『オルタネイティヴVの阻止』と『オルタネイティヴIVの完遂』ですが、残り期間の2ヶ月という制約で成し遂げないといけない事があります。
大きな動機と、乗り越えるべき障害、時々の動機という複数の行動指針、これらをメインとサブとして絡み合わせて造られています。
(総合戦闘技術評価演習)→(衛士任官)→(XM3開発)
ここまで所謂「俺TUEE」状態。それも半端ありません。
(理論の回収)→(沙霧の反乱)→(将軍護衛)
障害が大きいので苦労はありますが、主人公は負けてません。
(新OS評価演習)
俺TUEE状態。
で、演習中に出てきた例のアレでどん底に叩き落とされます。
元の世界に戻り、まりもちゃんの例のアレやら、純夏ちゃんの記憶消去やら、で主人公(読者)は「これでもか!」とばかりに、どん底に突き落とし痛めつけられます。
とまぁ本作に影響を受けたと語られる【進撃の巨人】の著者、諫山創氏が『作品に殺されるかと思った』と話す所以だろう部分が続きますよね。
ここは主人公としては”負け”と言って良いでしょう。
でもですね、ここで注目なんですが『オルタネイティヴIVの完遂』という最終的に護るべきこと、主人公にとってもメインの動機には全く影響が無い。
それどころか00ユニットの完成という大局的な目標は成し遂げられています。
と、あとは割愛しますが以降も『メインの動機とサブの動機』この噛み合わせを巧妙に利用することで(読者が抱く)感情としては負け、大局的には負けていない、着実に良い未来を引き寄せているという構造を見事に造り出しています。
>私は負け続ける事で世界の絶望感を演出したいですが、果たして面白くなりますでしょうか?
負け続ける”だけ”に、しないようにご注意して欲しく思います。
敗走でも遁走でも、その先にあるのは状況の改善です。それをしっかりと読者の心に縫い付ければ肥だめに飛び込んで逃げおおせても一縷の希望だと思うのです。
希望をつくる、言い換えれば状況よりも、地に足のついたキャラクターをしっかりと造ることが重要になってくるはずです。
絶望に関しては、読者の心の動きをコントロールして欲しく思います。
メトロノームの振り子ですね。
小さな喜びと、大きな悲しみがあると全体として陰鬱なイメージになります。
小きな悲しみと、大きさな喜びがあると全体として明朗なイメージなります。
どちらも絶望にはなりません。
そうではなく、大きな喜びのあとに、大きな悲しみ。
メトロノームを大きく左右に振るギャップが絶望に繋がるイメージになります。
ここらはマブラヴシリーズを手がけた会社âgeが抜群に上手です。もちっと絞れば吉宗鋼紀氏(作品によって名前を使い分けされます)がシナリオにおいて重要なポジションにある作品。
たぶんプレイ済みでしょうが【君が望む永遠】は、この振り子を最大限利用しています。開始からオープニング映像で、どん底に叩き落とされる絶望感を味わわせてくれます。
他にも色々とありますが、絶望感にスポットをあてて数点お勧めを書いて締めくくります。
ラノベ作家でもある丸戸史明氏がメインシナリオを担当している【WHITE ALBUM2】
ちょい変化球を狙うならば田中ロミオ氏シナリオの【ユメミルクスリ】(ただし未解決のエラーが多い問題作です)
作家名は唐辺葉介氏、シナリオライター名は瀬戸口廉也氏の【CARNIVAL】は、陰鬱感強めの絶望でありながら、妙にカラッとした陽気さがあります。
メディア展開不可能なほどR18ですが、キャラクターの闇に対しての絶望がすごい【ゴア・スクリーミング・ショウ】は傑出の部類です。そういうシーンが存在しないと成り立たない物語ですが、それを早送りしてプレイするだけの価値があります。
ではでは執筆頑張って下さい。
応援いたします。
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