小説家に最も必要なのは「面白さのためならば恥ずかしさを捨てることができる、ある種の鈍感さ」ラノベ作家、餅月望さんに創作に関する18の質問

(AMGとのタイアップ記事です)

Q0:自己紹介をお願いいたします。

餅月望と申します。ライトノベルや児童書などを書いたりしております。

よろしくお願いいたします。

カトリングガール~虫好きな女子って変ですか?~ (光文社キャラ文庫)(2018/11/20発売)

カトリングガール

©著作:餅月 望、イラスト:neyagi/光文社キャラ文庫

Q1: 初めて小説に出会ったのはいつですか?

小学生の時だと思います。偕成社の岡田淳さんの「二分間の冒険」とか、ものすごく印象に残っていますね。

Q2: 初めて小説を書かれたのはいつですか? それはどのような作品でしたか?

これも小学生の時でした。国語の授業で小説を書いてみようというのがありまして。当時、ミステリに興味を持っていた私は、たまたまトリックの作り方みたいな本を読んでいて。その中に出てくるトリックをそのまんま使ってなんちゃって短編ミステリを書きました(笑)

Q3: 実力を高めるために役立ったトレーニング方法はありますか?その方法をどこで知りましたか?

ものすごく身もふたもないことを言ってしまうと、私は長編をたくさん書いて実力を上げました。だから、それ以上のトレーニングはないと考えています。

つまり、「一から長編を書き上げること」こそが一番実力を高める方法だったと思います。いくら長く書けても途中ではだめです。

きちんと起承転結をつけて、最後の一行まで書き上げること。それを見直し推敲すること。

一本の作品を作る工程を何度も体験することによって、頭の使い方を学ぶ、それが私がした唯一のトレーニングだと思います。

でも、長編を一本書き上げること自体が結構ハードルが高いので、それをトレーニングとして成立させる、つまり長編を何本も書き上げるために、最も役に立った技術は、プロット(物語の設計図)を作ることでした。

プロットを事前に書くようになってから、私は長編小説を書き上げることができるようになりました。そして、プロットの作り方や、その改善の仕方はアミューズメントメディア総合学院(AMG)で習いましたね。

Q4: 作品の書き方で(例:クライマックスを先に書くなど)、自分なりの書き方がありますか?

長編小説限定ですが、シーンを先に考えてから書き出すようにしています。一シーンにだいたいどのぐらいの文章量を割くのかを想定して、完成枚数から逆算してシーン数を割り出すみたいな。プロットもそうなのですが、全体像が見えている方が私は書きやすいです。

Q5: アミューズメントメディア総合学院(AMG)小説・シナリオ学科の講師もされているそうですが、良い文章を書く上でもっとも重要なこととは何でしょうか?

サボらないこと、手を抜かないことではないかと思います。

私の中で最も評価が低い文章というのは、定型文のような描写をしていながら、その描写が適切でないときです。

例えば「雪のように白い肌」というのは、結構使い古された表現だと思います。美しい表現だからこそ頻発するし、私もよく使いますが、雪がない世界観のファンタジー世界でこれを使うのはいかがでしょうか?

使い古された定型文を思考停止気味に当てはめてしまい、自分なりの表現をする努力を怠ってしまうと、そこには成長がないのではないかと思います。

Q6: スランプになった、もしくは作家になることを諦めようと思ったことはありますか?

そんなにないかな、と。まぁ、実際には今回出るのが三年ぶりの新作ということなので、スランプだったのかもしれませんが、その間もいろいろ書いてはいたので。

Q7: アマチュア時代に参考になった本はありますか? また、どなたか師匠や先生に教えてもらったりしましたか?

ぶっちゃけハウツー本は最後まで読めた試しがないアマチュア時代でした(笑)

だから、先生たちが優しく噛み砕いて教えてくれるアミューズメントメディア総合学院(AMG)に通いましたし、学校で配られたプリントやら、授業の板書やらが、実は一番参考になっているのですが……。

それでもあえて挙げるとすると、「ハリウッド脚本術 プロになるためのワークショップ101」(フィルムアート社)でしょうか。プロットの考え方や劇的欲求など、基本的な概念がまとめて書かれていると思います。

ちなみに、私は学校に入る前に途中まで読みました(笑)

学校に入って、授業でやってから、なるほど、これはそういうことか! と復習がてら読みましたね。ハウツー本から勉強できる適性があれば、この本は役に立つのではないかと思います。

Q8: 尊敬している作家さんはいますか?

好きな作家さん、愛読している作家さんはたくさんいるのですが、尊敬している人というと、やはり長谷敏司先生でしょうか。AMG時代に大変にお世話になっているのでお人柄的にはもちろんなのですが、純粋に作品として、圧倒的だと思います。

同じ文章量を書いているのに、文章の厚みが違うというのでしょうか。感情を揺さぶってくるパワーがものすごくて、あのような文章には純粋に憧れを抱いてしまいます。

Q9: アマチュア時代にどのような方法で実力を高めていきましたか?

ともかく書きまくってました。授業の課題をきちんと出すことはもちろんなのですが、それだけではなく、プロットを作り、それをシーンにし、小説として書き上げて投稿。評価シートをにらみつつ次作を作るという流れを繰り返しました。

AMGには二年間通いましたが、一年時にMF文庫さんに長編を三本、地方の文学賞に中編を一本、課題やら学園祭用の文集やら批評会やらで短編複数本を書きあげました。どれも芳しくなかったですが……。

二年次にもやっぱり三本MF文庫さんに。二年次の6月に出したものが二次選考、その次のものが一次選考通過したことを考えると、真面目に長編を三本書き上げればだんだんとコツがわかってくるんじゃないかな、という実感です。私の場合は少し遅いかもしれませんが。

それで、最後、卒業間際に書き上げたものがデビュー作でしたから、学校にいる間に七本、長編を書きあげました。

ただ雑に書くのではなく、一連の工程を律儀に丁寧にこなしていく……。そういう流れの中で実力がついてきたのだと思います。

Q10: 小説家になるためには、どんな能力が一番必要だと思われますか?

いくつかあるように思いますが、皆さんが指摘しなさそうなものとして(もしかしたら、すでに指摘されているかもしれませんが……)≪面白さのためならば恥ずかしさを捨てることができる、ある種の鈍感さ≫が大事なんじゃないかと思います。

自分が面白いと感じるなら臆面もなく、徹底的にやりきることが個性や作風を作るのだと思います。

逆に言うと、羞恥心に妨げられて、いろいろな部分を抑えて勝てるほど、既存作、現役プロ作家の壁は低くはないと思います。

例えば「小学星のプリンセス」という小説を書いたとしてです。それを八十歳を過ぎた祖母に臆面もなく差し出したりとか。それを読んだ従妹に「ちょっぴり心配になった……」と言われてもなお、次の小説のヒロインを堂々とロリヒロインにできるような……。

それでもなおこれが面白いんだと胸を張れるような……そういう鈍感さがどうしても必要になってくるように思います。

……まぁ、今度の新作は別にロリヒロインじゃないんですが。

Q11: アミューズメントメディア総合学院(AMG)小説・シナリオ学科を卒業されたということですが、学校で学ぶことの最大のメリットは何ですか?

人脈だと思います。

業界の人と直接知り合って、いろいろ話せるというのは大きなメリットの一つです。

ただ、それだけではなく、例えば、複数人でよいアイデアを出していく訓練であったり、話し合いを効率的にするやり方であったり、コミュニケーション能力の向上が大きなメリットだったと思います。

よく言われる話なのですが、作家といっても一人で好き勝手に書いているわけではなく、編集さんとやり取りする必要があります。ネタ出しなんかも、複数人でやったほうが良いものが出せますから。

それはハウツー本では手に入らない、学校(AMG)のメリットといえると思いますね。

Q12: 一日にどれくらい執筆に時間をかけておられますか?

日によりますし、執筆のどの段階にあるかによっても変わります。

原稿の段階であれば、三時間以上書いている時もあると思いますが(もしかすると、まじめにやってるのは二時間ぐらいかもしれませんが……サバを読んで)、プロットとかの場合には、ある程度、だらだらしつつ考えをまとめたほうが効率が良い時もありますので。

Q13: どのような方法でプロットを作られていますか?

ハリウッド式の三幕構成と起承転結の合わせ技といった感じの作り方です。これも学校で教わったやり方ですね。はじめに、その物語はどのように読者さんを楽しませる物語なのか、短い文章で書きだして、そこから三幕、ないし起承転結に落とし込むとか、そんな感じでしょうか。

Q14: 作品を書く上で何か大事にしている、または心に留めていることはありますか?

その作品の譲れないポイントを設定すること、その物語の面白さは何かを考えることです。

例えば、編集さんから指摘を受けるということはよくあることだと思います。それはあまり気分が良いものではないのですが、それを全部否定することはできないし、作品の質を向上させていく上でもきちんと向き合うべきことだと思います。

だけど、じゃあその指摘を無批判にすべて受け入れて、言うとおりにすべきか? というとそんなこともないと思います。それでは自分の作品ではなくなってしまう。

だから、自分の作品は何が変えることができることで、何を変えてしまうと、その作品でなくなってしまうのか? ということをきちんと認識し、編集さんが問題にしていることを解決するためには、どのような形に解決することができるのか?

そう考えることが大切ではないかと。

柔軟さと頑なさ(ある種のこだわり)とのバランスをとることが求められるのではないかと考えております。

Q15: 「売れるものを書くべきか」、「書きたいものを書くべきか」、答え辛い質問ではありますが 、もし良ければご意見を聞かせていただけませんか?

やっぱり本というのは商品なので、売れるかどうかというのは常に意識する必要はあると思いますが……。ただ、売れるものを書こうと思って、きちんと思い通りのものが書けるというのも才能だと思うのです。

その才能がない人は売れるものを書こうと思っても書けないんじゃないかな、と。中途半端なことになってしまうのであれば、我が道を突っ走るというのも一つの方法だと思います。

要は、向き不向きじゃないかと思います。

Q16: プロになれた理由を、ご自分ではどうお考えですか?

「早い段階で最初の一本目を書き上げることができたから」だと思っています。

小説を書きたいと願っていながら、書き上げられない方というのが、かなり多いと聞いたことがあります。私はその危機感があったので、最初の一本はともかく振り返らずに書き切りました。

「長編小説を一本書き上げる」

という体験をした人だけが、「面白い長編小説を一本書き上げる」ということを考える段階に上がれるのだと考えています。

もちろん、世の中には、生涯最初の一本目からものすごい小説を書き上げる天才がいるのだと思いますが、私の場合はトライアンドエラーの繰り返しだったので。

Q17: プロになって一番嬉しかったことは何ですか?

やっぱり、挿絵がついた時ですね。編集さんから送られてきた挿絵は毎回、PC画面の壁紙にして、にやにやしています。(笑)

Q18: 最後に、小説家を目指して頑張っている方達にアドバイスをいただけますか?

ともかく一本書き上げること。その一本で達成できたことと達成できなかったことを考えて、次の一本では、新たに達成すべき目的を設定して書いていく。

そのコツコツとした積み上げが、実力アップには必要なんじゃないかと思います。