>冒頭では設定をくどくど書かない。
>回想シーンは物語の進行を遅らせるから多用しない。
>原則であり鉄則だということを
これは端的に言うと、「無駄を省け」ってこと。
特に冒頭は、読者は何も知らない状態なので興味のないことを延々と聞かされても興味ないことに興味はわかない。
だから、無駄を省いてさっさと「その物語に興味を引き立てるような事」を始めろ、ということ。
つまり、その「興味」が回想や設定にある場合は何も問題ないし設定から入る事は何の無駄ではない。
例として「設定に興味がある場合」を挙げると、シリーズものや人気作家でそもそも読書前から読者が作品に対して興味を持っている場合などは設定から入ることはよくある。
またはアニメやゲームなど、放送・発売前から情報が出てて前評判がある、制作会社やスタッフに対し信頼がある場合なんかもよくある。
なので、これらに憧れて物書きを始めた初心者は「よくやる」パターンではあると思う。
ゲームなんかは特にですね。今作はどういう設定なんだろうと、プレイする前から興味があったりするでしょ。
で。
これは言い換えると、「設定や回想をやる前に、読者の興味を引き立てておけ」ってこと。
回想を多用することや設定を解説すること自体は別に悪いことではない。
けれど、それをする前に読者の興味を獲得してなければ、それは読む価値がないシーンになりがちなので、「事前に興味を与えておく」という下準備が出来ない初心者や中級者はやるべきではないと思う。
ぶっちゃけ初心者は、特に回想とかは自分の気分がノッてるままに書いちゃうから、たぶん覚えがあると思うけど主人公の自分語りみたいなのになりがち。
設定や回想に近いもので言うと、一人称での主人公の独白とかもコレと同じ。興味という下準備が出来てないから、作者が酔ってるだけのような印象になったりしてる。
じゃあ、どうしたら興味の下準備が出来るのかというと、まあそれぞれだけども。
>会話形式であればOKですか?
会話形式も一つの手だけど、それもやはり同じことで「その会話(話題)に読者が興味なければ読まれない」ので、説明を会話に乗せただけでは弱いと思う。
これはあくまで一例だけども、私がよくやるパターンでは、「まず失敗させる」というのがあります。
例えば昨今よくある異世界もので言うと、「魔法が使えることが楽しくて主人公は使いまくって気絶してしまった」というシーンを書く。
そして「そんなに魔法を使えば魔力がなくなって気を失うのは当たり前だ!」と注意される。
こうすると、「魔法には魔力が必要で、使いすぎると魔力欠乏症となって気を失ってしまう」と説明するよりずっと読者の興味を維持できるし、あるいは「魔法を使いすぎると気絶するからね!」と説明を会話に乗せるよりも印象に残る。
説明したい事で「失敗させる」ことで、それを改善するために主人公は動く・周囲の助けがある展開に出来るので「説明したいこと」が物語(そのシーンの話題)の中心となり、読者の興味を獲得できる、というわけです。
私がよくやるのはこの「失敗させる」ですが、ようは「説明したいこと」で何かすりゃいいので、「ピンチになったときに聖剣が力を発揮して九死に一生を得た」とかでも、「聖剣は凄いんだよ」ってことが伝わりますよね。
文章で説明するんじゃなくて、物語で説明するんですよ、ってことがわかれば一歩レベルアップできると思います。
読者は、設定に興味を持ってるのではなく物語に興味を持って読んでいるので。設定は物語に乗せないと。
なので、例えばピンチを切り抜けたことで「聖剣は凄いんだよ」ってことが伝われば、そこで「聖剣に対して読者の興味を獲得できた」と言えるので、ここで「その聖剣は先代勇者が~~」って説明が入っても問題なく読んでくれると思います。
キャラ設定の説明のほうがわかりやすいかな。
「このヒロインはクールで異性に興味ない素振りをしているけど、実は異性に慣れてないだけで内心はいつもドキドキしている」
とか、そんな説明文ばかりを書いても「設定集か」ってことで、
キャラ設定の説明は「ヒロインがクールに見えるシーン」「異性に興味ない素振りをしているシーン」「でも実は動揺してるだけだったのを主人公は目撃してしまった」とか、物語にしなきゃいけない。
「ヒロインはクールだ」と文章で説明するのではなく、「ヒロインがクールに見えるシーン」を組み立てなければ、それは物語で説明したとは言えない。
そして、こういう下準備が出来てるからこそ「実はヒロインにはこんな過去があってーー」という回想に対して興味を獲得できる。
こういうキャラに関して言うと、例えばキャラが敵勢力に対して強い憎悪を持っていて、そんな暴力的なシーンが説明なく展開されて、ふと「ーーあれは五年前のことだ」と回想に入る、なんて場面は王道だろうし見たことあるんじゃないかな。
こういう王道展開も、ここまで読んでりゃその構造がわかるよね。
「説明なく憎悪を展開する」という下準備があるから、「回想」に読者の興味が向いてるって形。
だから、最初に結論を書いてるけど、「読者の興味を獲得する」という下準備が出来てないから、設定を物語に乗せられてないから、初心者が書くこれら冒頭シーンや回想は、非情だけど無駄扱いになって「やるべきではない」と言わざるを得ないと思う。
そんで一個省いて回答したけども、残りの
>全編に主人公を登場させるつもりで物語を書く。
これは、言ってしまえば当然のことなんだけど、「その物語は何の話か」ってことを意識できてない人に対して、よく言うことになる言葉だと思う。
「主人公の物語」でしょ。
なら、主人公出さないでどーするよ。って話。
物語の展開的に「ここはヒロイン視点・ライバル視点にしたい」ってことがよくあると思うけど、「その物語が何の話なのか」ってのを意識できてないためにこれは起こる。
だから、例えば「主人公の物語だけど、このエピソードはライバルを中心に書きたい」という場合なら主人公がでなくても何も問題ない。
主人公を中心にライバルを描くのであれば、主人公視点で書きつつライバル視点を置くような形になっても、問題ない。
あるいは、「この物語は事件の解決をする話」で、その語り部として主人公がいるって形だと、「事件」が話の中心であって「主人公の活躍」が中心ではないので、事件を中心に視点が変わったり主人公が出てこない場面が多くあったりする。
これは、正確には主人公って言いにくいけど、群像劇なんかが顕著ですね。
群像劇は「キャラ」ではなく「出来事」を話の中心に置くことが多いので。
少し難しいことを書いたと思うけど、「何の(誰の)物語なのか」ってことを意識すれば、それが主人公であるなら主人公を出すのは当然だということがわかると思う。
ポイントは「それが主人公であるなら」ってとこで、多くのラノベは主人公の活躍が中心にあるから全編に出すことは推奨される。
けど、これも「全編に主人公を登場させる」が絶対的に正しいわけではない。物語の中心、「何の物語なのか」が主人公ではない場合も往々にしてあるので。
キャラの立て方とかストーリーのバランスとかって話じゃなくて、ただただ読者の興味(書きたい設定や回想に対する興味)を獲得できてないだけで、それに下準備が必要なんだって事に気がついてないだけではないかと思う。
ある人物が猟奇殺人犯だったとして、その殺人鬼がバーンと出てきただけでは面白くないでしょ。
じゃあ、その殺人鬼は主人公の幼馴染で普段は物静かで優しくて、主人公のことが好きすぎて近寄る女どもを影で殺してました、とかだと怖いじゃん。
これって「殺人鬼」に対して「それがどうあったら面白いか」って思考なわけだけど、たぶんこれくらいなら普通にわかると思う。
でもこれと同じ話で、「書きたい設定」に対して「それがどうあったら面白いか」を考えればいいだけなのよ。
どうなったら「書きたい設定・回想」が面白く見えるか。
非情なことを言えば、「これを説明しなきゃならない」と考えてるうちは上手く書けないと想う。
「この説明をどう面白く書くか」と考えなきゃ。
それが興味を獲得する下準備になる。
サタン様
長文のご回答ありがとうございました。返信が遅くなりまして申し訳ございません。
「失敗させる」という具体的なノウハウまで教えてくださってありがとうございました。
プロとアマチュアの違いって、「説明の導入をいかに面白く書けるか」「いかに無駄を省けるか」ということに尽きるんですね。
>非情なことを言えば、「これを説明しなきゃならない」と考えてるうちは上手く書けないと想う。
「この説明をどう面白く書くか」と考えなきゃ。
非情なことではなく、寧ろそれが現実だと私は思います。裏を返せば、このポイントを意識していけば質が高まるということですからね。それにいつ気付くか、ですね。