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王道ヒーロー物における葛藤・成長について (No: 1)
スレ主 まままん 投稿日時:
自分はOVAゲッターロボに感化されて単純明快で爽快なヒーロー系作品を作りたいと思っています。
しかし、ゲッターのような王道ヒーロー系からはどうも小説で重視されている「キャラクターの過去・葛藤・成長」というものがあまり見えてきません。
例えば、チェンゲや新ゲッターの流竜馬からは彼が抱えている過去・目標がよくわからない他、心身ともに始めから成熟しているので成長要素も見いだせません(もしかしたら自分の目が節穴なだけかもしれませんが)。
自分としては流竜馬のような葛藤や成長などを挟むより小気味よくドワオと暴れてくれるヒーローを作りたいのですが、それだとどうしてもキャラ造形のセオリー上薄っぺらなキャラに思えてしまうのです。
どうすれば深みと単純さを両立させたヒーローキャラを作り、読者を楽しませることができるのでしょうか?
よろしくお願いします。
カテゴリー: キャラクター
この質問に返信する!王道ヒーロー物における葛藤・成長についての返信 (No: 2)
投稿日時:
相談内容を読む限りでは、「過去や葛藤や成長」=「深み」と受け取れます。
かなり大雑把な言い方ですが、「深み」というのは深けりゃいいんですよ。
「過去」というのはそのキャラクターの目的意識や現在に至る経緯ないしそのキャラクターの行動原理などを深く掘り下げた、という場合使ったりする表現ですね。
「成長」は、成長するということは「成長前の状態がある」というのが前提。これだけでは深みは出ませんが、その成長過程、成長の仕方でキャラクターの内面に深く切り込んでいく、という表現ですね。
それで「葛藤」は、あとで補足を入れますが、心の中の心理的葛藤を意味する場合、そのキャラクターの内面を深く掘り下げている、と言えます。
で、繰り返しますが、「深み」ってのはぶっちゃけ深く切り込んでいく事、またそれによって表現されるモノを指すので、別に「過去・葛藤・成長」にこだわった話ではありません。
これら「過去・葛藤・成長」を扱うことで小気味よさが無くなると感じているのであれば、別の所から切り込んでいけば良い話です。
さて、ここで「葛藤」の補足ですが、これは文字通りの「葛藤」であれば心の中の鬩ぎ合い、と受け取れますが、創作的には「conflict」の和訳なので、講座などで見かける場合はおおよそ「衝突」を意味します。心の中の争いに限定されません。
要するに、「主人公とライバルの争い」というのも創作的に言えば「葛藤」です。「主人公と友人の喧嘩」というのも葛藤です。
そこに「衝突」があればドラマが生まれるので、その過程を指して「葛藤」と書かれています。
主人公がウンウンと悩んでる姿のみが葛藤というわけではありません。
ーーが、ドラマを考えると結果的に主人公が苦悩するシーンというのは出てきたりする。
それで「主人公とライバルの争い」において、これは単に戦ってるだけでなくその争いの意味するところを考えると、このシーンだけでも深く切り込んでいけそうではありませんか?
例えば「正しさを主張する主人公と、正しいだけでは何も成さないと主張するライバル」の争いなんかは王道ですよね。
これは「主人公とライバルの戦い」ではなく「何が正しいのか」を主旨にした戦闘になるので、戦い自体の勝敗はあんま展開に関係なく(基本的には勝利したほうが正しさの証明という表現になる)主旨に対して答えを出せれば問題ありません。
やってることはただの戦闘だけど、その内容は「正しさの証明」というちょっと深いことを語っています。
これは、テーマに対して深く切り込んでいってるわけですね。
こうした考えを応用すると、例えば「ブルマ派の主人公とスパッツ派のライバルが何か熱い戦いをしている」というシーンが書けたりします。
やってることは熱いんだけど、その内容は実に下らない。このギャップが笑えたりして、こうした表現はコメディではたまにみかけます。
まあ、この例はコメディなんでちょっと違うと思うでしょうが、テーマに対して、というかそのシーンの主旨に対して深く切り込んでいくと、深みは出てきます。
「過去・葛藤・成長」を扱って、そこから深く切り込んでいくのは扱いやすいために広く使われているとは思いますが、それだけが武器ではないというか、本質は「深く切り込む」という事。
「過去・葛藤(心理的葛藤)・成長」は3つともキャラクターに対し切り込んでいくテクニックなので、テーマに対し、展開に対し、設定に対し、何でもいいので切り込んでいけば深みは出せることでしょう。
小気味よさと両立させるなら、コメディの例のようにシーンの主旨に対して切り込んでいくのが良いかと思います。
「過去・葛藤」については「伝われば良い」程度にあまり深く切り込まず、「成長」は成長過程で「深みを出す話題」をやってるから深みが出るんで、そこに「主旨に対して切り込む」などを当てれば良いでしょう。
ただ、まあ、身も蓋もないことを言えば、テンポよくして暗くなる話題にしなけりゃ小気味よさとの両立は出来るんじゃないかなと思います。
王道ヒーロー物における葛藤・成長についての返信の返信 (No: 4)
投稿日時:
あっ!なんだ!物語用語の「葛藤」って単にconflict(=衝突)の訳語だったんですね!
ならばゲッターロボは敵と血みどろの戦いをして生き残るというテーマそのものが「葛藤」に値するわけですね。
今まで葛藤を文字通りウンウン悩むという意味で捉えていたのでこっちまでウンウン悩んでいましたが、これでまた一つ腑に落ちた感じがしました。ありがとうございました。
王道ヒーロー物における葛藤・成長についての返信 (No: 3)
投稿日時:
オミクロンです。まず辛辣なことを言わせていただきますが、「単純さ」と「深さ」の両立は至難です。というかぶっちゃけ矛盾してます。「深さ」を言いかえるのなら「思慮深さ」に該当すると思いますので。詳しく説明したいと思います。
私の所感では、単純キャラの強みは「既に精神が完成している」ことにあります。だからどんなことでもブレないし、見ている側も安心できます。
逆に葛藤や成長といった要素を組み込んだキャラの場合、「精神構造が変化していく」ことが物語の華となります。
お分かりいただけるでしょうか? 「既に完成しているのに変化していく」んです。最高の硬さと最高の柔軟性は両立しえないんです。仮に成立するとすれば、そのどちらかが偽りでしかありえません。
なので「キャラが薄っぺらくなるから」といった薄っぺらい理由で、矛盾する「深さ」を付与すると大失敗すると思います。
やるのならキャラクター設計や、物語をしっかり構成したうえで計算に計算を重ねてやるものです。
この成功事例がありますので、そちらを紹介します。私の愛読書である「HELLSING」の「アーカード」です。
彼は不死身の吸血鬼で、最強で、無敵です。やりたい放題します。(命令の範囲内なら)人間を殺すのが大好きですし、人間に殺されるのも大好きです。ですが同時に、人間でいられなかった自身に対する失望もしています。有名な場面を引用すると、
「俺のような化け物は、人間でいることにいられなかった弱い化け物は、人間に倒されなければならないんだ」
「やめろ人間!! 化け物にはなるな。私のような」
と宿敵相手に懇願しています。
なので彼のやりたい放題っぷりは、黙っていると鬱るから狂人の仮面を被っている。という「演技」です。その深奥には不死の苦しみがこの上なく刻まれています。それを作中のとあるキャラが解説しています。これも引用しようと思います。
「あの男は幾年月を超えてきたのだろう。幾千幾万もの人々の絶望を喰らってきたのだろう。
だがもはや彼には何もない。城も領地も領民も、思い人の心も彼自身の心も。闘争から闘争へ。何もかも真っ平になるまで、歩き歩き歩き続ける幽鬼。
私にはね、インテグラ。あの吸血鬼が、あの恐ろしい夜の世界を統べる不死身の化け物が、ひどく哀れな哀れな弱々しく泣き伏せる童に見える」
これを踏まえると、葛藤を前提として単純さを「演じる」のならば十分に可能な範囲だと思います。参考になれば幸いです。
長文になりましたが、最後にもう一度だけ要点を伝えたいと思います。
キャラが薄いからという理由で葛藤を後付けしたキャラに成功例はないと思います。それならばまだ、単純さに突き抜けた方がいいです。もし葛藤をも描きたいのなら、物語とキャラクターを緻密に設計してください。
以上です。長文失礼しました。
王道ヒーロー物における葛藤・成長についての返信の返信 (No: 6)
投稿日時:
なるほど。単純キャラ=既に完成している、というのは新しい発見でした。付け焼き刃は設定のほうがかえってボロが出るというわけですね。
サタン氏の仰られた「葛藤はconflictの訳語」というのもまた参考になりました。
思い切って突き抜けた作品ができるように努力してまいります。おふた方ともにありがとうございました。
王道ヒーロー物における葛藤・成長についての返信 (No: 5)
投稿日時:
成長という言葉を素直に受け止められた感じですね。
別に弱いキャラが強くなること、分別が付くことばかりが成長ではありません。栄光を得た者が何かを失なって補完すること、即ち変化もまた成長に含んでいます。そして、自身の成長だけでもなく、周囲を変化させることもまた物語の成長であり深みというものです。
恐らく薄く感じるのは強固な信念の不足、あるいはそうではない部分の人間味を想像できていないこと。ストーリー的に浅く思うのは周囲への影響や変化を押えるに至っていないためでしょうね。
古典的な手法としては、映画グラディエーターのように喪失した名誉と尊厳を取り戻す方法。子供や弟子の教育に苦心する面を出す方法。漫画花の慶次のように周囲に影響を与え変化させていく方法などがあります。
王道ヒーロー物における葛藤・成長についての返信 (No: 7)
投稿日時:
>自分としては流竜馬のような葛藤や成長などを挟むより小気味よくドワオと暴れてくれるヒーローを作りたいのですが、それだとどうしてもキャラ造形のセオリー上薄っぺらなキャラに思えてしまうのです。
>しかし、ゲッターのような王道ヒーロー系からはどうも小説で重視されている「キャラクターの過去・葛藤・成長」というものがあまり見えてきません。
にもかかわらず、ゆんゆんさんはゲッターロボに魅力を感じたのでしょう? じゃあ、どこに魅力を感じたのかということを自問してみるとよいのでは。
一般論としては、アニメはアクション・シーンの迫力やスピード感、BGMなどがかなり強力な武器になると思います。そういう部分では小説は勝負になりません。一方で、
>「キャラクターの過去・葛藤・成長」
は小説で表現しやすい部分なので重視されるのかもしれませんね。
ただ、この掲示板の他のスレでも書いたのですが、ストーリーを面白くする要素は他にもあります。端的に言えば、謎・葛藤・どんでん返しだと考えています。
このうち、葛藤だけゆんゆんさんのあげられたものとダブっていますが、たぶん少し意味が違います。すでにサタンさんからも指摘がありますが、私からも少し。
conflict=葛藤の本来の意味は、創作用語にかぎらず相容れない物事が衝突すること。競合と訳す場合もあります。心理学ではそういうことが心の中で起こる状態を特に指しますが、悩み=葛藤ではありません。心の中の矛盾が原因で結果的に悩むのです。その矛盾の方を葛藤と言います。
そして、この言葉は心の中の矛盾だけではなく、人や集団などが利害や思想の対立から争うことも意味します。
重要なポイントは、何となく争うのではなく何か相容れない要素があるから衝突してしまうという部分です。
で、特に書きたい話がヒーローものならば。
メインストーリーはあくまで戦闘パートを本筋にした方がいいのは論を俟たないでしょう。そして正義と悪の戦いというのが王道になるかと思うのですが、それを書くにしても悪には悪なりの譲れない信念があるとした方が物語として面白くなるのではないでしょうか?
あるいは、親友や兄弟など主人公にとって大切な人と戦わなくてはならなくなるという状況。この場合は「愛情」と「戦わなくてはならない何らかの理由」が衝突するわけで、そこに葛藤が生じます。
>どうすれば深みと単純さを両立させたヒーローキャラを作り、読者を楽しませることができるのでしょうか?
上に書いたうちの前者は敵の側に複雑さを持たせる方法。後者は単純な主人公に単純なだけでは乗り切れない状況を与える方法ということになるかと思います。