技名ってリアルじゃないので、ここに引っかかる人は結構多いような気がします。
でもリアルではなく、物語ないしエンタメ的に考えると、これはようはプロレスなどの「実況」なんですよ。
プロレス観戦が趣味じゃない人にはわからんかもしれんけど、プロレスは実況がないと面白さ半減で、ぶっちゃけ単に男同士が泥臭く戦ってるだけですから、戦いの状況や人物の心情描写なりを実況して盛り上げることでより面白くさせている。
その実況で盛り上がる最たる要素はやはり「技名」で、「ここで渾身のナントカスペシャルだー!」なんて熱い実況があると映像がないラジオで聞いてても熱くなる。
極端に言うと、それを小説に下ろしたものがラノベや漫画によくある戦闘描写で、「技名」で、戦闘なわけです。
なので、「技名を書いたほうが良いか」という問い自体には、絶対に書いたほうが良いし書かないことで得られるメリットはほぼないと思う。
となると問題はその「技名」の書き方、表現の仕方、じゃないかな。
オーソドックスなものは登場人物が自分のセリフで言うタイプ。
状況によるので万能じゃないが、モブやサブキャラが戦闘を実況しモブ・サブに技名を言わせる、解説役を立てるタイプ。部活系スポーツ系に多い。
やや変則だけど設定によっては秀逸な、戦闘中は言わないが戦闘が一段落した小休止のタイミングで自分で説明するタイプ。
セリフで言うこと自体あまり好ましくないと考える場合にあるのは地の文で書きセリフには書かないタイプ。
これも変則で滅多に見ないというかほぼ見かけないが、地の文ではあるものの、地の文に混ぜるのではなく技名だけ独立して書いていくってタイプ。
見たことがある、自分でやったことがある、思いつく限りでのパターンではこんな感じじゃなかろうか。
ただ、これらも結局は設定などと絡めるとどれもが秀逸なものになるので、作者次第だと思う。
例えば 自分で技名を言う というオーソドックスなタイプも「技名を言わなければならない」という設定が上手く物語と噛み合っていると、陳腐さは無いと思う。
例えば何か超常的なモノを使役してるタイプのお話の場合は、このオーソドックスタイプが噛み合う。
具体的には、もうかなり古いかもしれんけど漫画ブリーチの斬魄刀なんてのは「呼んで、刀を起こす」という行程があるので、「技名を言う」という事が設定的に意味のあることになっている。
Fateシリーズなんかも、FGOあたりになるとゴチャゴチャかもしれんが、「英雄の逸話が必殺技に昇華している」という設定なので、その英雄が持つ武器や逸話を叫ぶことが力を呼び起こすに必要な行程となっている。
個人的に、やっぱ凄いよな、と思ったのは漫画ハンターハンターで、変則と書いたけど 戦闘中は言わないが小休止したときに自分で解説する ってタイプ。
戦闘中は自分の手の内をバラすような事はしないし技名も言わないんだけど、それを逆手に取って「なんで俺が自分の能力を説明したかわかるか? 説明することが能力の発動条件だからだ」と、これ要するに「状況説明」とか「実況」っていう、ある意味戦闘の外にある要素を戦闘の中に取り込んだってことで、ほんとに凄い。
「実況」すら戦闘展開の道具にしてる。
こういう、リアルに考えると「戦闘中に技名を叫ぶのってどうなんだろう? 普通しねえよな?」っていう作者の疑問に、作者が頭ひねって答えを出す、というのも頑張ってみると良いと思うよ。
あとついでに。
技名じゃないけど、登場時の口上ですっごい頭に残ってるのが「住めば都のコスモス荘」っていうラノベで、
「悪を倒せと正義の使徒かな、マジで言ってるこの心。たまたま手にした無敵の体、お金のためにも頑張ります。株式会社オタンコナス製造超特殊汎用パワードスーツ・ドッコイダー、契約通りにただいま参上!」
この口上を毎回言うんだけど、同じテンポだけど毎回内容は変わって、毎回最後まで読んじゃう。
これも、テンションが上がる洗脳BGMが聞こえてる設定で、普通の青年がいきなり人が変わったように昭和の正義ヒーローになる、という「切り替えスイッチ」としての役割を持ってる口上なのよ。
さすがに作者がどう考えて何を思って書いてたのかはわからないけど、これもある意味「昭和の変身ヒーローの前口上は何の意味があるんだろう?」という疑問に答えた一つの回答でもあるわけだね。
技名を書く・書かないの話だけでは終わらなくて、書くなら「何故書くのか」をもうちょい考えたほうがいいと思う。