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文章から音楽を連想させるには (No: 1)
スレ主 かかか 投稿日時:
絵画を連想させる文章が書きたい場合、男が立っていて、鳩が顔を隠している、という風に、絵に描かれた状況を書けば、やりようによってはその状況が「前衛絵画を見ているように感じ」させることができると思います。
しかしながら、音楽はどうでしょうか。
テーマソングを文体と対応させればそれを弄ることで音楽らしさは出せるかもしれませんが、そこから音楽を連想するかというと違う気がします。
例えばドビュッシーの音楽を表現したいとして、不協和音をどう表現するのか、スケールはどうか、というようなことは、どのように表現すれば良いでしょうか。
三島由紀夫は肉体の動きは文章で表せないというようなことを言っていましたが、現に官能小説のようなものがあるので、結局のところ「書けないもの」と言われているものも語彙からの連想で補えるのではないかと思わないでもありません。
カテゴリー: 文章・描写
この質問に返信する!文章から音楽を連想させるにはの返信 (No: 2)
投稿日時:
以下は、小林秀雄『モオツァルト』の一説。
「確かに、モオツァルトのかなしさは疾走する。涙は追いつけない。涙の裡に玩弄するには美しすぎる。空の青さや海の匂いの様に、万葉の歌人が、その使用法をよく知っていた「かなし」という言葉のようにかなしい」
「かなしさは疾走する」という言葉が、クラシック・ファンにはわりと有名です(実は元ネタがあるらしい)。
例えばこんな感じでどうですか?
文章から音楽を連想させるにはの返信の返信 (No: 3)
投稿日時:
ありがとうございます。音楽を聴くことで得た感情を書くのも手ですね。それからファンの間で共有されているキーワードを使うのも。
補足 (No: 4)
投稿日時:
「不協和音」を文章で表現するというのは難しいと思います。センスの鋭い書き手ならできないことはないかもしれませんが、あまりそういうことに拘ると小説ではなく詩になってしまいます。
繊細な感覚描写にこりすぎると、小説本来の物語としての面白さをぼやけさせてしまうんじゃないかと考えていまして。
「かなしさは疾走する」はモーツァルトのト短調の音色が聴こえるような錯覚を引き起こすものではありません。ですが、モーツァルトの短調系の曲を聴いたことがあれば「そう、まさにそんな感じ」と同意する人は多いんじゃないかと。
補足の返信 (No: 7)
投稿日時:
ありがとうございます。面白ければ詞でも自分は構わないと思っていて、要するに使う時だけ使うと言った感じ(それでも全体との調和が必要とは思う)です。
個人的には何らかの速度のようなものが使えたらと思うんですが、難しいですね。
文章から音楽を連想させるにはの返信 (No: 5)
投稿日時:
漫画の例になってしまって申し訳ありませんが、赤石路代「P.A.(プライベート・アクトレス)」では、主人公にとっては辛かったPAの仕事をこなしたラストにショパンの音楽を聴きながら「ショパンは哀しい気分の時に聞いてはいけない。できれは愛する人がそばにいる状態で。それでも無理ならせめて明るい陽だまりの下で」と締めくくっています。
この作品は漫画ですが、感性や表現は小説でも使えるのではないか、むしろ小説のほうが向いているのではないかというものが多いので、ひとつの参考例になるかもと思い挙げてみました。
文章から音楽を連想させるにはの返信の返信 (No: 8)
投稿日時:
貴重な情報ありがとうございます。聴いた人の感想も使えますね。
文章から音楽を連想させるにはの返信 (No: 6)
投稿日時:
自然言語による記述で、ある特定の音楽体験の印象形成ができるか、ですよね。
考えるに、以下の方法で可能だと思います。
1.表現したい音楽から、その音楽を成立させている主要概念を抜き出す
2.その後、それぞれの概念要素を読者が印象形成できるレペルで解説しながら提示する
少し簡略化して、その音楽を聞いた時の自分の音楽体験を言語化するだけでもそれなりには伝わる気もします。
前提として、音楽の構造についての自分の理解を下記に記載します。
音楽の実体は、振動の配列。その配列を物理的根拠(弦の長さの数比、Hzの大きさ)や
機能的根拠(音の与える印象)でグルーピングしたのが音階。複数の音をグルーピングしたものがコード。さらに、それらをある特定のコンセプトでまとめたものが楽曲。
上記内容から考えて、自然言語での表現単位はコードよりも抽象的となるのが普通だと思います。(例えば、小説でコード進行を記載したりはしない。それなら楽譜でいい)
コードを記載しないということは、音を記載するわけではないということ。
つまり、小説表現として記載できるのは、その音楽を聞いた時の印象や、ハード面での構成、演奏者の特徴などになると思います。
そういった内容を組み合わせて描写し、読者に音楽を説明できればよいのではないでしょうか。
ちなみ、ある特定の語彙が、特定の具体的な状況を連想させることは期待しないほうがいいと思います。語彙と意味の紐付けは、読者の脳内にある語彙データベースの構造に依存するので。だいたい合ってるものくらいは連想してくれるかもしれませんが、詳細までは一意に連想してはくれないと思います。
文章から音楽を連想させるにはの返信の返信 (No: 9)
投稿日時:
語彙からの連想は使わない方がいいのですね。ありがとうございます。
ハード面での構成というのがいまいちピンと来ません。楽器に合った楽譜の使い方ということでしょうか。
文章から音楽を連想させるにはの返信 (No: 10)
投稿日時:
村上春樹が好きなので、ふつーに曲名だけ書いてもらって読者が勝手にしらべたり検索かけるのが好き派。
既存ではない音楽とかも、あえてグチャグチャ能書き垂れられるより、曲名と軽い逸話だけ教えられて。「どんな音なんだろう?」って妄想したいっす。
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文字で描く【一人の美人】は
作中でこそ「一人」なのに、読者の人数だけ別の「美しさ」で存在しているのが好き。
ドラマやマンガ、あとは挿絵があると方向性が無理矢理に統合されて同じ人物しかイメージ出来なくなるから、挿絵なしの小説って一番贅沢だと思うの。
文章から音楽を連想させるにはの返信 (No: 11)
投稿日時:
音楽そのものを言葉でどう表現するかは、プロ作家でも苦労しているようです。まるで聞こえるように言葉で表現できるとしても、実際に聞くのに及ぶべくもないわけですから、当たり前かもしれません。
ネット記事ですが、音楽を上手く表現しているとして、引用して紹介しているものがあったりします。例えば以下。
・音楽が聴こえてくる小説たち。その一
https://shimirubon.jp/columns/1679382
・音楽が聴こえてくる小説たち。その2(上記の記事の続き)
https://shimirubon.jp/columns/1680429
記事執筆者個人の選ではありますが、確かに工夫があり、優れた表現になっているように思います。ですが、個人的には退屈な文章でもあります。既に申したように、音楽は実際に聞いてナンボのモンですから。いちいち説明されたってなあという感じです。
ラノベはキャラ小説だとよく言われているようです。個人的にも、確かにそうだと思います。登場人物を通して見える時代や世界に感動するのではなく、逆にその時代・世界の中でキャラがどうするかで感動するものが多いんじゃないかと思います。
キャラ重視で音楽をどうするか、という問題に絞ったほうがよさそうです。ということは、音楽を聞いた視点キャラ(一人称主人公、三人称視点キャラだけでなく、三人称の地の文語り手も含む)がどう感じるか、思うかが大事になってきます。
これには既に読者が視点キャラに感情移入できていることが必要です。冒頭ではなかなか難しい。冒頭で音楽シーンを入れるとしたら、作中のキャラではなく、読者本人がどう感じるかを考えての音楽シーンが必要でしょう。
しかし、そもそも音楽を言葉で表現するのは難しいという話なのでした。主人公に感情移入するとしても、どういう音楽を聞いたらどう思うか、感じるかにも感情移入ができるか。となると、堂々巡りです。
となると、読者本人がどう感じるかを重視すべきということになります。それなら、まず第一に作者本人の経験に基づくべきとなります。内面まで見える、感じられるのは自分だけですから。親しい友人が音楽を聴いて興奮し、詳しく感想を言ってくれたとしても、自分の中にあるものから、友人の気持ちを類推しているわけですので。
人が音楽を聴くといっても、その内面だけでも、いろんなケース、状況があります。自分を例に取りまして、私が音楽を聴く場合、大別すると2通りのケースがあります。
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1.音楽そのものを聴いている
スレ主さんがお挙げの曲はクラシックのようですね。クラシックですと、私も音だけが目的で聴いています。特に聴き入りときは目を閉じることもあります。
ある種の感情は掻き立てられるわけなんですけれども、言い表しがたい感じです。これは当たり前かもしれません。イラストなんかですと、R18指定とか、グロ警告があったりします。音楽でR18やグロをやれるか。無理だと思います。音楽は明瞭、具体的に何かを表すのは無理でしょう。
つまり、感情は掻き立てるんだけど、具体性を欠いているわけですね。例えばホルスト「惑星」の「火星、戦争(戦い)をもたらす者」ですと、圧倒的に迫るものがありますが、何が迫って来るかは分からない、あるいは、そのときのイメージ次第です。
(前に、遊びに来た近所の3歳児に「火星」を聞かせたら、怖がって泣き出したことがあります。「火星」は本能的な何かに触れるものがあるのかもしれません。)
「火星」を聴いている描写を工夫するとして、例えば技法的には正しい「弦を弓で引くことで得られる力強い響きが」と書いたとして、迫力が上手く読者に伝わるとは思えません。むしろリスナーの感覚を主体に、身体感覚であれば「まるでロードローラに押しつぶされるような」とか、視覚的ならば「足並みをそろえ、地響きを立てて押し寄せる大軍勢」などのほうが、まだ伝わる気がします。
2.音楽が記憶のトリガーになる
私はAKB48系列は聴かないんですけれども、ファンは多いですね。ファンがAKB48の歌だけを聴いているとしても、脳内イメージとしてはAKB48のパフォーマンスや、メンバーのことを思い浮かべているケースがほとんどじゃないかと思います。
過去の経験の追体験であり、蓄積された快いイメージに浸っているわけです。つまり、楽曲がパフォーマンスやルックス、好きな気持ちを掻き立てるツールになっているということですね(そのため、知らない人、関心がない人には響きにくい)。
これを言葉で表現するとしたら、歌手や演奏者のパフォーマンス的な視覚表現が主体になると思います。冒頭で示しましたリンク先での表現引用でも、熱の入った演奏者の様子を描写したものがあります。1の場合とは違い、歌手・演奏者が読者に見えたら、音はほぼ自動的についてきます。
となりますと小説中で、現実には存在しないしない歌手・演奏者・バンドが見えて、聴こえるようにするためには、歌手・演奏者・バンドが具体的にイメージできるよう、事前に描写しておく段取りが必要になります(簡単に済ますには、作中世界観次第ですが、例えば「まるでAKB○○のような」でも可)。
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上記以外もあるんですが割愛しまして。いずれにしても、音楽そのものの客観表現を追求しても、少なくともラノベではメリットが少ないということです。音楽を表すに、言葉は音に勝てません。だから、音楽を聴いているキャラを描写すべきということです。
これは、例えばキャラの見た目描写にも通底するものです。ヒロインの美しさを表現しようと、長い髪の艶とか、透き通るような肌とか、輝く瞳とか、言葉を連ねても特徴でしかありません。そのヒロインを見る視点主人公の情動(や他のキャラの反応)を描いて、はじめてヒロインの美が読者に認識可能になります。
我々は言葉という記号しか使えず、五感や情動は読者が記号を解釈して再現するということを、常に意識しておく必要があるように思います。