報告とお礼　ＰＡＲＴⅡの返信の返信

聞かれてもないお節介だけど、
＞ただ、余りこだわり過ぎると尺が足りなくなる恐れや、くどくなったりもするので、どの程度にするか難しいと思っています。

例えば「勇者が魔王を倒す話」があるとして、この話を面白くしようとすると、慣れてない人は「魔王は実は先代の勇者で」とか「魔法のシステムは科学的見地から解釈したもので」とか、設定を掘り下げたり盛り付けたりする。
こうすると当然のこと書くことが増えるので文量が増えてしまう。
そのうえ、正直これだけだと「面白く」はならないし、斬新で独創的なアイディアだったとしても物語に利用できてないので評価されにくい。良くて アイディアは面白いんだけど…… で終わっちゃう。

独創性や面白味は、「勇者が魔王を倒す話」のコレに直接手を加える。
例えば「セクハラが特技のエロ勇者が絶世の美女である魔王を倒す話」とか。話がガラッと変わったでしょ。
ページ規定がある場合、面白さは盛り付けるんじゃなくて作る。
「勇者が魔王を倒す話」は「勇者」と「魔王」で対比するモノがあるから、この対比をどう上手く面白くするかが最初のハードル。
そういった場所を作るんであって、設定を作ったりキャラを作ったりって事とはちょっと違う。

そんで、この対比はある程度の型があって、個人的には「ギャップ」「逆転」「ズラし」の３つが王道であり鉄板だと思ってる。
「ギャップ」は文字通り落差を作ることで、上の例だと「勇者」はエロ小僧なので、落差を考えると「魔王」は身持ちが固い品行方正な女性キャラがいいね。勇者なのに下品で魔王なのに品行方正っていうここでもギャップが作れるし。となるとそんな魔王を慕いつつもからかって楽しむビッチな部下とかいたら面白いね。ビッチな部下と勇者が出会ったら敵対関係も忘れて下品なとこで馬が合い、意味不明な友情が生まれそう。
「逆転」は、王道パターンの一部を入れ替える方法。
上の例だと「魔王が勇者を倒す話」とか。魔王の立場から勇者をいかに追い詰めるかを書く。これはシンプルだけど凄く強力で、従来の王道（つまり読者にとって読み慣れてる物語）でありながらまったく新しいものを作れる可能性がある。実際、「勇者が魔王を倒す話」と「魔王が勇者を倒す話」はイメージするだけでも別物でしょ。
この他にも、「異世界に転移した」という状況を「異世界から転移してきた」と逆パターンで考えたりとか。
「このパターンよく見るよなありきたりだよな」って思う展開は「じゃあ逆は」と考えてみるとプロットに逆らわず新しいものになりやすい。
「ズラし」は、上２つ以上に話が変わっちゃうからかなり難度が高いと思うけど、アイディアを出す段階では結構使える。
例えば「勇者が魔王を倒す話」だと、「魔王軍に苦しめられる村の娘が勇者に助けられる話」とか。
これのどこをズラしてこうなったのかというと、「勇者が魔王を倒す話」は勇者視点の話だけど、これを助けられた「村の娘」視点にしてしまう。つまり視点をズラした。
こうすると物語が完全に別物になって、主役の勇者が脇役になっちゃうレベル。
でも、これだと「村を助けた話」で終わっちゃって「魔王を倒す」とこまで書けないから、「助けた村娘は超メンヘラで勇者のストーカーになる」とすると、これはこれで面白いよね。魔王城に突入したら村娘どうするんだろう。ゴブリンの皮を剥いで生皮をかぶってストーキングして勇者のピンチに助けに入ったりすんのかな。
昔「ズラし」でよくあったのは、戦隊ヒーローの日常場面をテーマに書いたり戦闘員Aの視点から悪の組織の中身を書いたり、そういうテーマのズラしがよくあった。
王道の物語から何かしらを少しズラすと、物語の見え方がガラッと変わるので、斬新なアイディアが生まれやすい。

ちなみに、これらはテクニックじゃなく考え方の話だから、理解できれば割りと応用は簡単にできる。
つまり、「面白味とは」「斬新さが」と言ってる人は、そもそも考える場所に間違いがあって、設定じゃなく物語を面白く斬新にする。設定の独創性は物語が面白ければ自然と後からついてくる。
繰り返し、これは考え方の話だから、面白味や独創性を考えたところで本編の文量は大きく変化しない。
例えば、「勇者が魔王を倒す話」から前述したようにギャップや逆転やズラしでどんな話が出来るのかと言うと、
逆転して魔王を主人公にし、異世界転移の逆で異世界から魔王が日本に来るとしよう。
ギャップを考えて、日本に来たことで魔王なのに貧弱になってしまって、なんとか元の世界へ戻ろうと奔走する。
そのためにも生活費が必要で、主人公の魔王はバーガーショップで日々働いて汗水垂らすのだった。と魔王なのにフリーターのような生活を中心に演出をズラして、その中で追ってきた勇者と戦ったりして問題を解決していく。
とまあ、たとえが長くなったけど、これは今アニメ２期やってる「はたらく魔王さま」の概要ですね。
はたらく魔王さまは第17回電撃小説大賞銀賞作品で、結構長く続いた作品です。
まあ、作者がこんな風に考えて作ったわけはないと思うけど、受賞作が持ってる「面白味」や「独創性」と同じレベルのものを導き出せる考え方ですよ、という話でした。

とはいえ、知ってて出来れば苦労はないわけで、理解すれば応用は簡単だと書いたけど、それは面白味や独創性のある作品が書けるというだけの話で、それは新人賞においてはようやく本戦に残れたという程度の話だから、そっから先は「どう面白いのか」とか「昨今のターゲット層を理解できてるか」とか「審査員次第による運」とか、正直そっからがしんどい。