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架空戦記を書きたいのですが (No: 1)

スレ主 甘粕 投稿日時:

銀河英雄伝説、ファイアーエムブレムなど架空戦記が好きで、今回初めて架空戦記ものを書いてみようと思い立ち(頭の中に主人公だけ構想が浮かんでいます)

疑問が生まれました。
登場させるメインの陣営の適切な人数や
中東をメインにする場合、参考にしやすいのはどこか などです。

知恵をお貸しいただけると幸いです。
私自身能がなく、架空戦記をそもそも描く事が出来るのかという個人的な心配もあるのですが

カテゴリー: 設定(世界観)

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架空戦記を書きたいのですがの返信 (No: 2)

投稿者 サタン : 2 No: 1の返信

投稿日時:

一番簡単な方法は、架空戦記の戦記は作ろうとしないのが最も楽です。

たぶん、私を含め多くの人がやるだろう・やっただろう作業工程は「まずどんな話を書きたいのか想定して設定や戦争理由を作って、その状況に合った資料を探して戦争シーンを組み立て、政治や外交を……」という感じじゃないかなと思います。
これは至極真っ当な手段で間違っていないのですが、これを素人がやると100%資料でつまずきます。
これが出来るのは、もともと歴史に詳しくて「こんな話が作りたい」と思った瞬間に「アレとコレの資料を当たってみよう」とアタリが付けられる人だけだと思う。
あるいは最初から「中国の○○時代みたいなのを」とイメージがしっかりしてる人。
ようは当たるべき資料が最初から明確な人。

じゃあ素人はどうすればいいのかっていうと、まあ完全な持論というか「そのとき自分が思ったこと」という程度の話ですが、
この行程は逆をやったほうがいい。
つまり、「歴史関係の書物を読んで、面白そうな時代や名将が輝く戦争にアタリをつけて、そこから妄想を膨らませ、何を書くのか決める・書くものを擦り合わせる」としたほうがいい。
そしたら、そもそも資料を探す必要がない。
最初に手元にあるものから広げていくだけなので。

そうすると、
>中東をメインにする場合、参考にしやすいのはどこか などです。
中東をメインにしたいなら中東の歴史戦史が参考になるでしょ、と思うけど、中東っぽいだけの架空戦記なので、実際の参考元がどこだろうと中東っぽく組み立てりゃいいわけで、自分が最も興味のある歴史や馴染み深い歴史が良いだろうと思います。
例えば中東だとアサシンが有名ですかね。語源にもなってるし。アサシンが政治や戦争に深く関わってくるとなると、日本で言うと伊賀甲賀の忍者が有名ですか。
すると武田織田あたりの戦国時代後期は、割と「忍者」を「アサシン」に変えるだけでそれっぽくなるんじゃないですかね?
もちろん風土文化も違うから、そういうのも擦り合わせるけども。
戦争の理由や経緯なんてのは古今東西似てるから、それを例え剣と魔法の世界に適用しても違和感なく応用できる。
織田信長の鉄砲三段撃ちとか、失われた古代魔術を発掘し独創的な方法で戦争に応用した、とかにすりゃいいわけだしさ。
長篠の戦いは「武田最強の騎馬兵がまったく通用しなかった・騎馬の時代が終わった」って事を象徴する戦闘だから、例えばこの案で組み立てると「騎士剣士の時代が終わり、それまで後方支援のみだった魔術が戦争を左右する時代になった」という場面が作れるわけで。
参考にしようと思えば、このように日本の戦史から異世界の架空戦記をでっち上げることもできます。
なので、あまり資料にはこだわらず、面白いと思う戦争をピックアップしてみると良いと思う。
それを自分の作品に応用させる発想の柔軟さってのも大事かなと。

まあ、あえて「参考にしやすい戦争」って事で言うと、長篠の戦いみたいに「何かを象徴する戦争」というのはとても応用しやすい。象徴するもののワードを入れ替えるだけなので。
例えば、モンゴル帝国が西洋に攻め込んだときは、ヨーロッパは重装兵なんだけどモンゴルは軽装兵が主体だった。
白人はそんなモンゴル兵を見て「貧乏人やな、鎧も買えんらしいで!」と笑ったんだけど、知っての通り機動力で勝るモンゴル兵に蹂躙さる結果になった。
この頃の戦いは「身を守る鎧って概念が崩壊した」とも言えるよね。
これを応用すると、太古の魔道具を手に入れた人間一人が無双しはじめて、鎧も何も意味がない文字通りの一騎当千の猛者が現れた。おかげで「戦争は数という概念が崩壊した」というような感じ。
歴史上のモンゴル兵の動き・活躍を一騎当千の無双に置き換えりゃいいだけ。

近年は動画サイトなどで有名な歴史戦史を紹介してる動画が多くあるので、そこで解説を聞きながら「こういうことを象徴してる戦争だな」と自分で答えを出してしまえば、まあ割となんでも応用できるようになる。

あ、いや。この「応用」はやりすぎればゼロから作ってるのとほぼ変わらないのだけど、そこまで行く必要はなくて、
書き慣れていないのなら最初に書いた通りこのように「作る」必要はなく、
面白そうな戦争をまんま使うくらいの感覚で、名称を置き換えたりそれっぽくアレンジする程度で、作ろうとしない事が一番楽で確実だと思います。

架空戦記を書きたいのですがの返信 (No: 3)

スレ主 甘粕 : 2 No: 1の返信

投稿日時:

わかりやすくありがとうございます!
ちょっとなにかアレンジできそうなものを探すか、あるいは戦記というよりファンタジーでどこか視点を固定したものにしようかとおもいます

参考資料の紹介 (No: 4)

投稿者 ドラコン : 0 No: 1の返信

投稿日時:

 ドラコンです。サタンさんが「アサシン」について言及されましたので、参考資料の紹介だけでも、と思い、コメントさせていただきます。

『暗殺者教国 イスラム異端派の歴史』(岩村忍、ちくま学芸文庫)

 買っただけで、まだ読めていませんが、マルコ・ポーロの『東方見聞録』に「山の老人」として登場する(愛宕松男訳注、平凡社ライブラリー版の1巻)、暗殺を政治手段にした「ニザリ・イスマイリ教国」を取り上げた本です。鈴木則夫氏(政治哲学・国際関係論)の解説によると、「本書が少なくともイスマーイール派について日本語で読める数少ない文献の一つ」とのことです。

 なお、入手の可否については保証しかねますので、新品が入手できぬようでしたら、楽天やAmazonで古本を探されるか、図書館を当たられてはいかがでしょうか。

参考資料の紹介の返信 (No: 7)

スレ主 甘粕 : 1 No: 4の返信

投稿日時:

情報提供ありがとうございました。
図書館で探してみますね

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架空戦記を書きたいのですがの返信の返信の返信 (No: 8)

投稿者 あまくさ : 0 No: 6の返信

投稿日時:

そうなんですね。

質問させていただいたのは、甘粕さんが何をやりたいのかつかめなかったから。なのでもう少しいいですか?

架空戦記というのは史実の一部を改変するタイプでないとすれば、国・文化・社会制度をまるごと作ってしまうような方向に向かいやすいのかなと思いました。
しかし、「興亡史」ではないと。

普通の異世界ファンタジーでも戦乱の背景が描かれることはよくありますよね。そういう世界観の中でキャラクターの活躍に焦点をあて、それを疑似歴史小説みたいな演出で描く感じですか?

それと、よければ世界観に中東風を選んだ意図も教えていただければと。

架空戦記を書きたいのですがの返信の返信の返信の返信 (No: 9)

スレ主 甘粕 : 0 No: 8の返信

投稿日時:

疑似歴史小説ですね。
中東というか、ゾロアスター教の世界観が非常に描きやすいのと
文化や衣装など好きな要素、こだわりみたいなものでしょうか
それが選んだ理由です。

独自の国や文化、制度を作るのも好きです。

言葉足らずになってしまって、お手数おかけいたします

架空戦記を書きたいのですがの返信の返信の返信の返信の返信 (No: 11)

投稿者 あまくさ : 0 No: 9の返信

投稿日時:

ゾロアスターですか?!

なんだかゾクゾクしますね。すみません、そのへん現状の私の知識の範囲外なのでただちに適切な意見は述べられそうもありません。

咄嗟の思いつきとしては、そのへんなら参考になりそうなのはアレクサンドロスの東方遠征とかでしょうか?
それと創作物では、これも咄嗟な思いつきですが、ロバート・E・ハワードの「コナン・サーガ」はどうかなと。たしか、あの小説の古い日本語訳が「魔導士」という造語の最初ですよ。

架空戦記を書きたいのですがの返信の返信の返信の返信の返信の返信 (No: 12)

スレ主 甘粕 : 0 No: 11の返信

投稿日時:

ゾロアスター教の教典を持っていますので、手元に資料があり書きやすいというのがあります。
おすすめの本もありがとうございます!

横やり失礼します。中近東の文化関係資料の追加です。 (No: 14)

投稿者 ドラコン : 0 No: 9の返信

投稿日時:

 ドラコンです。横やり失礼します。
 
 ゾロアスター教については名前を知っている程度ですが、中近東方面の文化に関心があります。ですので、中近東がイスラム化して以降の資料で、イランの資料はありませんが、ご参考までに手元の参考資料をご紹介します。
 
 なお、以前別のスレッドに紹介したものと重複が多いことをご了承ください。また、入手の可否は保証しかねますので、新品が手に入らぬようでしたら、楽天・Amazonで古本を探されるか、図書館を当たられてはいかがでしょうか。
 
 『女ノマド、一人砂漠を生きる』(集英社新書ノンフィクション、常見藤代)
 エジプトの砂漠で、一人で暮らす遊牧民のおばあさんのところにホームステイ(といっても野宿)したルポ。砂漠での暮らしが具体的によく分かる。
 
 『サハラ砂漠 塩の道をゆく』(集英社新書ヴィジュアル版、片平孝)
 西アフリカ・マリの塩を運ぶキャラバンに同行取材したルポ。オールカラーで、キャラバンについて、具体的にイメージができる。
 
 『イスラム建築がおもしろい』(彰国社、深見奈緒子編)
 イスラム建築の入門書。モスク、宮殿、庭園、住宅、バザール(市場)について、基礎的な点を、写真・図解を多用し、分かりやすく解説している。また、おすすめ参考文献の紹介もある。ただ、カラーページが少ないのが玉にキズ(色のイメージがしにくい)。
 
 『増補 モスクが語るイスラム史――建築と政治権力』(ちくま学芸文庫、羽田正)
 買っただけで未読。ファンタジー世界であれば、宗教施設は押さえておいたほうが良いのでは? 軽くページをめくってみたところ、カラー写真は表紙だけだが、図版・写真は豊富。
  
 『浴場から見たイスラーム文化』(山川出版社、杉田英明)
 公衆浴場が一般的なのは、現在では日本とイスラム圏ぐらいとのこと。日本で公衆浴場が重要な社交場であったのと同様、イスラム圏でもハマム(公衆浴場)が重要な社交場であることがよく分かる。浴場の構造、入浴の仕方、浴場の運営について一通り書いてある。ただ、82ページとかなり薄い本であること、カラー図版が表紙だけなのが残念。
 
 『カラー版 メッカ 聖地の素顔』(岩波新書、野町和嘉)
 非イスラム教徒立ち入り厳禁のメッカを取材するため、イスラム教に改宗した日本人カメラマンの本。イスラム教徒にとってのメッカ巡礼や、モスクの神秘性について、オールカラーでよく分かる。
 
 『おいしい中東 オリエントグルメ旅』『イスタンブルで朝食を オリエントグルメ旅』(サラーム海上、双葉文庫)
 トルコ、レバノン、イスラエル、エジプト、イエメン、モロッコの料理エッセイ。日本で作ることを前提にしたレシピ付きで、各国の食習慣が詳しく分かる。ただ、カラー写真は市場の模様中心なので、料理の外見がイメージしにくいのが残念。繰り返し述べているが、作中の文化を明確化するのには、「食」が手っ取り早い一手段。
 
 『食はイスタンブルにあり 君府名物考』(鈴木董、講談社学術文庫)
 まだ未購入。出版社のサイトを見ると、オスマン帝国の、宮廷料理から庶民の料理まで網羅した本のようである。
 https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000344717
 
 料理に関しては、中近東各国編のガイドブックを買ってくるのも、一案ですね。
 
 追伸 前に紹介した『暗殺者教国』は、第2刷が2017年と比較的近年なので、確証はありませんが、図書館を当たられなくても、入手が可能かもしれません。

横やり失礼します。中近東の文化関係資料の追加です。の返信 (No: 16)

スレ主 甘粕 : 0 No: 14の返信

投稿日時:

一応、文化を取り入れた試作的な作品が
こちらになります。

https://novelup.plus/story/374903199

一度図書館で見て、必要に応じて購入を検討したいと思います。

横やり失礼します。中近東の文化関係資料の追加です。の返信の返信 (No: 20)

投稿者 ドラコン : 0 No: 16の返信

投稿日時:

 ドラコンです。軽く流し読み程度ですが、リンク先の第一部と豆知識を拝読しました。

・料理について
 もし違っていたら申し訳ないのですが、ナンとチャパティ、ポロウ(ピラフ)とビリヤニとを、混同されているようにも感じました。いかがでしょうか(いずれも混同しやすいのですが)。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%B3
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%91%E3%83%86%E3%82%A3

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%A9%E3%83%95
 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%AA%E3%83%A4%E3%83%8B
 
 ビリヤニとナンといった主食以外の料理は、ケバブぐらいしか出ていなかった印象があります。他の料理や菓子類もお調べになっても良いかと存じます。ペルシャ料理が分からなければ、世界三大料理の一つのトルコ料理を参考にされるのも一案です。
 
 またビリヤニも、ペルシャに軸足を置かれるのであれば、特別にこだわりがなければ「ポロウ(ピラフ)」にされてはいかがでしょうか。あくまでも私の印象です。ビリヤニはイランにもあるようですが、「インド料理」のイメージが強いです。
 
・ハマムについて
 せっかくハマムを出されたのに、「大浴場」としか書いていないのは、もったいないですね。日本でいう三助がいて、あかすりやマッサージのサービスも行われていますので、もう少し、入浴の仕方に踏み込まれても良かったかな、と存じます。

 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%A0

 なお、ゾロアスター教については、一通り知識がおありのように拝察しております。

横やり失礼します。中近東の文化関係資料の追加です。の返信の返信の返信 (No: 21)

スレ主 甘粕 : 0 No: 20の返信

投稿日時:

お読みいただきありがとうございます。

そうですね、次回作ではピラフも入れてみようと思います。
ナンやチャパティはそれぞれ登場していてハマムに関してもあかすりなどしているシーンをいれています。

トルコ料理について改めて調べますね
ありがとうございます

ゾロアスター教に関しては教典「アヴェスター」を所持しています

架空戦記を書きたいのですがの返信 (No: 10)

投稿者 手塚満 : 0 No: 1の返信

投稿日時:

ご質問内容にちょっと戸惑う点がありまして、「架空戦記」の意味です。通例は、現実の過去の歴史、あるいは現実からの未来想定でで「もしこうなっていたら」というものではないかと思います。

もしそういうタイプの話を書こうとされているなら、自分は何もできません。が、例として「銀河英雄伝説」を挙げていらっしゃる(「ファイアーエムブレム」はよく知らないものの、同じ趣向らしい)。「銀河英雄伝説」ですと、上記の「架空戦記」に単純には当てはまらないようです。

一応、地球から人類が発祥して宇宙に広がったという背景程度はありますが、現実の歴史とは無縁と言っていいくらいの世界観です。タイプは、架空戦記の雰囲気を持つ、大河小説的なスペースオペラと言ったらいいでしょうか。

もし「銀河英雄伝説」のようなタイプをお考えでしたら、その銀英伝はどのように作られているかについて、多少の私見を申し上げられるかもしれません。舞台は雄大で、多彩な群像劇的な話ですが、見方によっては割とシンプルに作られていますから。

以上、予めお伺いしてみる次第です。

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架空戦記を書きたいのですがの返信の返信 (No: 13)

スレ主 甘粕 : 0 No: 10の返信

投稿日時:

どちらかといえば、ファイアーエムブレム的なものを自分の手で書きたいに近いですね。
参考に銀河英雄伝説がどのようにつくられているか教えてください。
(一応、旧作とノイエ版も視聴していますが、構造的なものは把握していませんので)

架空戦記を書きたいのですがの返信の返信の返信 (No: 17)

投稿者 手塚満 : 0 No: 13の返信

投稿日時:

了解しました。では参考程度ということで。繰り返しになりますが、私見です。一視聴者/読者の感想であって、作者が語る作劇意図を見聞きしたとかいったものではありません。

1.銀河英雄伝説はたった2人の私闘

「銀河英雄伝説」はタイトル通り、英雄の話ですが、銀河帝国のラインハルト・フォン・ローエングラムと、自由惑星同盟のヤン・ウェンリーの「私闘」(死闘、ではない)と思われます。2名を簡潔にまとめると以下のようになります。

・ラインハルト:姉と(姉を慕う)親友を助けようとあがいていたら、大ごとになってしまった人物。
・ヤン:好きなことだけして、のん気に暮らそうとジタバタしていたら、大ごとに巻き込まれてしまった人物。

両者とも、やったこと、やっていることはデカいんですが、動機は極めて小さいものです。だから私闘と表現しました。行きずりの喧嘩と言い換えてもいいかもしれません。

2.ラインハルトの動機は個人的

ラインハルトは堕落した専制君主に姉を奪われましたが、ラインハルト1人の思慕だけから事を起こしたようではありません。唯一信じられる親友のジークフリード・キルヒアイスに託すという願いも持っている。状況はタガの緩んだ大帝国で、皇帝は既に権威だけのお飾りとなり、実権は大貴族(かつ地方軍閥)にあるという、政体循環論でいえば寡頭政に相当。

皇帝から姉を奪い返そうとすれば、皇帝を倒すしかない。そのためにはまず昇進しなければならない。姉の件で皇帝から厚遇され、もともと才能あるだけに戦功を立て、としているうちに、周りに人材が集まる。

が、自分が起こした勢いに飲み込まれて、素志と異なる方向に引きずられ、キルヒアイスを失うわけですね。姉を託すべき親友という、初志の要を失い、破壊したはずの専制君主に自らなっていく。のですが、さすがに作者が哀れんだのか、病死という最期が与えられてますね。

ラインハルト1人ですと、帝国内の権力争いという、いわゆる「コップの中の嵐」になってしまいます。

3.ヤン・ウェンリーの動機はショボい

そこでヤン・ウェンリーも舞台に登場してきます。舞台は堕落した衆愚政ですが、ヤンはあまり気にする様子はない。歴史学者志望で、暮らしが成り立つ程度に働いて、好きなことだけできれば満足という、自分個人の望みしか持ってない。

それにはいったん軍人となって退役し、恩給で暮らせばいいと思い立ったものの、天才レベルの才能がある。ヤン本人は軍功を立てて退役と思っても、長期の戦争中であり、周囲が手放さない。

ずるずると引き込まれ続けるうちに、今度は軍功をねたんだ同僚、力量を恐れた上層部から疎まれるようになる。ヤンと交戦経験があるラインハルトからは最も脅威の高い敵と見做される。それでも、ヤンはのらりくらりとかわし続けるような態度で何となく乗り切るわけですね。若者らしい理想を思い込めるラインハルトと好対照な、老練な人物という感じでしょう。

このヤンは、漏れ聞くところによるとラインハルトの当て馬だったようです。だから、敵将としては有能だけれど、私生活はだらしなく描いた。のですが、意外に人気が出てしまったらしい。

4.主人公2人に必要な舞台

この2人の人物像がおおむね固まったら、キャラと同じく好対照で、話のスケールに応じた舞台があれば物語は始められます。ラインハルトには寡頭政の大帝国、ヤンには衆愚政の大国ですね。その2つの勢力が戦争していれば、話は進められます。各々の勢力内での権力闘争と、2勢力間での戦争ですね。

戦争のほうを少し説明しますと、おおむね古今の有名な戦争に題材をとっているようです。過去の実際の戦争に則るため、宇宙でありながら平面的な軍の運用に徹しています。まるで陸戦や海戦のようです。

5.大規模戦闘の作成手法1:過去の事例に倣う

本編開始の派手な大戦闘として「アスターテ会戦」があります。兵力で優る自由同盟軍が軍を三つに分けて帝国へ侵攻するも、ラインハルトの各個撃破に遭って、自由同盟軍2つがあれよあれよという間に瓦解、残る1つをヤンが率いて、かろうじて撤退に持ち込む。

その最後のヤンの戦術以外は、おそらくナポレオンの「カスティリオーネの戦い(1796年)」(「ガルダ湖畔の戦い」とも)をなぞっています。その戦いを簡潔に説明してみます。

マントヴァ城に籠るオーストリア軍1万に対し、ナポレオン軍3万が包囲攻撃中であったが、勢いを盛り返したオーストリア軍5万が来援するに至り、ナポレオンは苦境に陥った。オーストリア軍は当時の軍事常識「機動戦略」に則り、軍を三つに分かち、右翼2万、中央2万5千、左翼5千で三方から進行した。

当時は三方から優勢な敵軍が迫れば、負けと判断して撤退するのが常だった。が、ナポレオンは「戦術的勝利なくして戦略的勝利なし」として、反撃を決意。自軍3万を1つの軍団にまとめ、最重要の攻撃兵器:大砲を地中に埋め(敵に奪われないため)、全速力で敵右翼に襲い掛かる。

兵数の優る敵の思わぬ急襲を受けたオーストリア右翼2万はたちまち潰走状態に陥るも、ナポレオンは深追いせずに軍を反転。続いて右翼の危機を察知して背後に迫りつつあった敵中央軍2万5千と激突、これも戦勝の勢いに乗るナポレオン軍が快勝。残る敵左軍5千は為す術なく撤退するしかなかった。この戦いでナポレオンは名馬5頭を乗り潰したと言われる。

「アスターテ会戦」と最後以外はよく似ています。相違は最後にヤンが指揮を任され、奇妙な戦法でラインハルトに停戦・撤退を強いたところですね。これも単なる思い付きではなさそうです。

6.大規模戦闘の作成手法2:用兵理論に習う

ヤンの反撃は、「長く伸びた敵軍の後尾から襲い掛かり、敵軍先頭からの攻撃に耐える」というものです。これは「ランチェスターの法則」に則るものです。

ランチェスターの法則は、よく知られるのは兵力2乗則です。彼我の兵力をそれぞれ2乗してから引き算し、ルートを取れば残存兵力が分かるというものですね。敵3万、味方2万がどちらかが全滅するまで戦うとすると、√(3^2-2^2)=√(9-4)=√5≒2.2万。単純な引き算だと敵1万残るはずですが、実際には敵は2.2万残る、つまり味方2万が全滅しても、敵の損害は8千しかない。

しかしもし、敵が軍を1万ずつに分かち、味方は2万で順番に襲い掛かるとどうなるか。√(2^2-1^2-1^2-1^2)=√(4-1-1-1)=√1=1万。敵総計3万を全滅させても、味方は半数の1万も残ることになります。「カスティリオーネの戦い」や「アスターテ会戦」序盤がそうなっているわけです。

しかし2乗則ではなく1乗則(単純な兵数の引き算)になる場合もあって、隘路などの1次元的な接敵になる場合です。ヤンがアスターテで最後に用いたものですね。2乗でなく1乗の戦形を強いられ、勝っても損害が大きくなると見たラインハルトは退いた。

7.つまみ食いでOK

「銀河英雄伝説」の大規模戦闘はだいたいこんな感じで、過去の実際の戦いを模しつつ、戦術理論を部分的に適用したり、兵法の要領をアレンジを行っているようです。選ばれたものは、進めたいストーリーに都合がいいものでしょう。つまり「つまみ食い」。

こういう組み立ては、網羅的に知っている必要はなさそうです。知っている範囲、調べて簡単に分かる範囲でつまみ食いし、ストーリー・ドラマ展開に沿うよう、つまみ食いすればいいわけです。

8.後は状況で主人公を追い詰めるだけ

後は、主人公2人(ラインハルト、ヤン)それぞれが、自国で困る立場に追いやられるよう、主人公2人が嫌うキャラが、嫌う方法で追い詰めればいいわけです。銀英伝では原則として、主人公2人に対立するのは性格の悪い愚か者に描かれ、味方するのは性格の良い賢そうな者にあからさまに描かれています。

カッコいい人物(特に主人公2人)は善性の信念あるために、悪逆非道なんでもありの悪党に追い詰められる作劇は割とシンプルです。カッコいい人物ができないことを強いればいいのですから。人物像さえはっきりすれば、書きやすいでしょうし、読んでいても分かりやすい。

そうして主人公2人が行き詰るたびに、大規模戦闘を上記の手法で起こして、戦闘は痛み分けにしておいて、余波で邪魔だった人物を除くなどすれば、話を進めて行けます。

9.もちろん簡単ではないが不可能でもない

以上は、いかにも簡単そうに説明してはいますが、もちろん、実際に書くとなると大変なのは承知です。銀英伝クラスの小説を書けと言われて、はいやります、なんて返事できるものではありません。ただ、我々にも不可能ではないのも確かだろうと思います。なぜなら、一応は説明可能な物語構造、ドラマ作成手法があるわけですから。

架空戦記を書きたいのですがの返信の返信の返信の返信 (No: 18)

投稿者 手塚満 : 0 No: 17の返信

投稿日時:

ナポレオンの用兵について書き忘れました。

ナポレオンの得意とする戦術は、まず敵中央(通常、最も分厚い布陣)に大砲隊の集中砲火を浴びせ、動揺したところを騎兵の機動力で中央突破するものだったそうです。

部隊運用では「砲声に赴く」原則を各部将に徹底しており、ナポレオン本隊の砲撃があると、全軍がそこへ殺到するという戦力集中の技法を用いていたとのこと。

これがあったために連戦連勝だったわけですが、いずれもナポレオンが指揮してこそ威力を発揮するものでした。言い換えれば、ナポレオンのいないところではナポレオン軍はさほど強くない。

ナポレオン得意の集中砲火、各個撃破等も敵国は覚えだすし、ナポレオン軍団の分断も図るようになる。そうなるとナポレオンは次第に勝てなくなっていったようです。

架空戦記を書きたいのですがの返信の返信の返信の返信 (No: 19)

スレ主 甘粕 : 0 No: 17の返信

投稿日時:

ちょっと数学的な所は学習障害もあってわからなかったのですが、
なんとなく軍がどの様な動きをしたのかわかりました。
細かく解説いただいてありがとうございます!
参考にいろいろとあたってみようと思います

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タイトル:架空戦記を書きたいのですが 投稿者: 甘粕

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知恵をお貸しいただけると幸いです。
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