なろう小説とは男性版シンデレラ・ストーリー!なろう小説の本質

●なろう小説の基本テンプレ

現実世界では、負け組の主人公が事故によって異世界に転生し、チート能力を手に入れて無双し、ハーレムを築いて、みんなから称賛されるというもの。

なろう小説の目的とは読者の承認欲求満たすことです。
そのために、余計な要素を削ぎ落として作られています。

主人公は、負け組、弱い存在、虐げられる存在です。
ここで読者の共感を得ます。
人は誰しも、弱い立場に置かれたり、虐げられたりした経験があるものです。
そこで、この主人公の気持ちがわかるかなぁ、と主人公に共感してもらいます。

主人公は、チート能力を手に入れて最強になり、ハーレムを築いて称賛されます。
小説は主人公になりきって物語を楽しむ物です。主人公イコール自分となっていた読者は、承認欲求が満たされ、大きな快感を得ます。

やり方はいろいろありますが、これがなろう系ラノベの基本テンプレです。

実は、昔からこれがラノベの基本テンプレでしたが、なろう小説はこれをさらに極端化しています。

●2003年に刊行された大ヒット作『とある魔術の禁書目録』の基本構成

超能力者を育成する学園都市で、主人公は何の能力も持たない無能力者と認定されている。
(負け組、弱い存在、虐げられる存在)

しかし、学園都市でナンバー3の実力を持つ美少女は、主人公に歯が立たず、主人公の本当の強さを知っている。

主人公は、どんな魔法も超能力も打ち消すという能力を生かして、魔術師たちから追われるヒロインを助け出し、彼女に感謝される。
(実は最強。承認欲求を満たす)

しかし、主人公の能力は学園都市の物差しでは相変わらず無能力者扱いなので、待遇は最低のまま。
にも関わらず、主人公は最強の能力を持ったヒロインたちから感謝され、ハーレム状態になっていく。
(共感を維持したまま、承認欲求を満たす)

構造そのものは、実はラノベ黎明期から、あまり変わっていないことがわかります。

●なろう小説とは、男性版シンデレラストーリーである!

なろう小説の原型は童話シンデレラに見ることができます。

シンデレラの構造

継母や姉たちから虐められる、心優しい女の子。
(負け組、弱い存在、虐げられる存在)

彼女を哀れに思った魔法使いが、魔法でお姫様に変身させてくれる。城の舞踏会に参加し、一躍大スターに。
(チート能力で無双)

彼女に一目惚れした王子様が求愛してきてハッピーエンド
(ハーレムを築いてみんなから称賛される)

なろう小説は、これを男性版にアレンジしたものであると言えます。

女性にとっての普遍的な価値は「美しさ」と「優れた男性と結ばれること」。
男性にとっての普遍的な価値は「強さ」と「社会的成功」「ハーレムを築くこと」。
これらが手に入らないと女性として、男性として負け組であるという価値観を我々は本能的に持っています。

シンデレラもなろう小説も、これらが手に入らない不遇な状況に置かれた主人公がチート能力を手に入れて、人生を逆転させるという構造です。

●少年ジャンプとの違い。「努力」「夢」「大人への生まれ変わり」

実は、なろう小説とは対極にあると思われている、漫画少年ジャンプの基本構造にもシンデレラストーリーが入っています。

『僕のヒーローアカデミア』(少年ジャンプ2014年32号より連載開始)の構造

誰しもが特殊な超能力を持って生まれるのが当たり前の世界で、主人公は何の能力も持たない無個性な存在として生まれた。
(負け組、弱い存在、虐げられる存在)

しかし、人々を助ける最強のヒーローであるオールマイトに憧れ、彼のようになりたいと、不遇な立場に有りながら努力を続けてきた。

主人公は、オールマイトから、自分を犠牲にしても他人を助ける高潔な精神とひたむきな努力を評価され、オールマイトの後継者に選ばれる。そして、最強の能力を継承する。
(チート能力で無双)

オールマイトの最強の能力を使いこなすにはそれにふさわしい器にならなくてはならない。主人公は、自分の夢を実現するために、さらに努力し、無謀な挑戦を繰り返していく。

なろう小説との最大の違いは、主人公が叶えたい明確な「夢」を持っており、それに向けてひたむきに「努力」していくことです。
また、主人公の目標となる師匠的な大人が登場し、主人公を導いてくれます。

ワンピースなら、シャンクス。
ナルトなら、カカシ先生
食戟のソーマなら、実の父親。

少年ジャンプのテーマとは「少年の大人への生まれ変わり」です。
少年は夢を実現するためにひたむきに努力し、仲間たちの友情に支えられながら、勝利するという、「努力」「友情」「勝利」の法則が、貫かれています。

これは理想的な人間像を描いたものであり、少年だけでなく大人や女性でも共感できるため、幅広い層に受け入れられています。

なろう小説は、少年ジャンプから、「夢」「努力」「大人への生まれ変わり」といった、読者の承認欲求を満たすために都合が悪い、不必要な要素を削ぎ落としたものです。