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効率と主人公交替の返信

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効率と主人公交替(元記事)

ここに質問(なのか?)を投稿するのは久しぶりです。
〇年目でようやくツキが来ました。昔ガチホモ書きたいとか譫言書いた者です。
で、その頃私は女主人公で書いていたのですが、実は彼女が拾われるスタートとは別に、その相方が主人公を務めるもう一つのタイプの冒頭もこっそり書いていました。
 女主人公で書くとどうしても恨みがましくなって先に進めないという問題点もありますし。
 深夜テンションゆえにまあ、下書きとしても変なのですが、これをどう上手くリメイクすればいいのかアドバイスがほしいです。

効率と主人公交替の返信

スレ主 伊藤真琴 投稿日時: : 0

2021.4.12 現在の文章力で描いた程々以上にクズキャラ二人の冒頭だけどどう考えても論理立って受けるとは思わない。
 何というか、魅力ねーなと思ってしまいました。小学校ぐらいの時間を彼らに捧げたんだけどね。

「おい棚開いてるぞ、今のうちに胃薬でも作っとけよ」
 丞灯薬房の奥廊下に投げ出された黒い特徴的な鞄は、襖一枚の引き戸を止めていた。それ一つに男は辟易していた。何の真似だと怒鳴りつけたこともある。
 従業員控室のような場所なので客が入ってくるような場所ではない。彼女が誰かが来れば即座に居住まいを正すことを知っている分には、勝手に自分の部屋のようにごろついても構わない。
「寝てんのか……ついてねぇ」
 最初は適当でも卓の上に在るだけだったが、最後には持ち主に靴下越しに蹴られ、置き所が良かったのか黒板消しを上に挟む要領で足元に掛かっている。引っ掻けばゴリゴリ音がしそうで頑丈なメッシュ素材、さぞ重い教科書や資料集が20冊は入りそうな容量。然れば横長の、企業戦士の背負うロケットのように不格好なデザイン。
「…………」
 枯葉のような麻の作業着を着ている青年は、無視しきれず取っ手を持ち上げて奥に引っ張り込んだ。持ち主は古典的なイタズラで誰かが引っかかってくれるのを期待していたと言ってはいたが、大体彼女が天に唾しただけの事である。彼が知っているだけでも三回は躓いている。
「おい」
 胸骨圧迫の体で頭蓋の耳に鞄を押し付けると、持ち主から咳き込む声が発せられた。
「いだだだだ、すぐ行きます」
 彼女は背を丸め、それに劣らず黒い制服団子を枕に入院着で頭痛を訴えた。しかし胃に強く触れる。頭が痛いと言い腹を抑えたり、足が痛いと言い手を抑えるのは仮病ではなく、「原因を言いたくない」という隠れた合図だ。自分の事は一番己が知るからと、薬房の主、寫宏に頭を下げて許可をもぎ取ったと男は聞いている。
 行動力は目標さえなければ霧散するが、時々端材をかき集めるような事は全力でやっている。
 鞄の中の資料は卓に出しっぱなし、開きっぱなし、時々飯のカスがついていたりと到底碌なものではなかった。
「ちゃんと起きるから、何か読んで待っててよ」
「早くしてくれよ。一応二人とも非番だけどな」
 やけに静かだった。男は頭の中で一ヶ月前にある事を思い出した。カランとした音。簪の閂。落ちた髪の毛。多分本当の急な腹痛。無駄に増えた独り言。いい年して何かの手術を怖がっているのだろうか。それならば気丈なふりをするのが道理だというのに。理屈は大体分かっているだけに一度腹を据えて早急に解決せねばまた面倒が増えると経験が告げていた。すいた体の上に背筋を壊すギチギチとした何かが圧し掛かる。結局、自分も少し寝るか紙を捲ってから声をかける事にした。
「んお、ふざけんな! けど絵だけはすげえんだよなぁこの本」
 男が手に取ったのは、最新式の生物の資料集だ。異国語を追えずともフルカラー写真が鮮やかで、植物の絵がたくさん載っている。午後の非番を居眠りに費やそうとしたら先に背を向けて寝ている者がいた。しかし堪えて数葉捲っても女は肘さえつかない。
「起きろ、酒向!」
 ついに背中をすぱっと叩き上げた。
「ふぁ~い」
 普段は鍵がかかっている薬棚だが、男は夜勤の為、女も一応目付け役として一枚ずつ鍵を持っている。
「薬剤選びで症状がわかるというのも困りものだね」
「手伝わにゃあどうしようもないだろう。そんなら余分にがめといて、ちゃんと代金を払うんだな。ほとぼりが冷めたら薬棚にでも返しとけ」
「薬効が切れないうちに普通にお茶に加工しても大丈夫な品種が大半でしょうに」
「だからあちこちで問題が起こるんだ」
 女は頭の中でどうやって助けよう、本当に彼のためになるのだろうかと延々と言質を巡らせる。そのためにもう一度同じ状況の再演は結果的に意味がないと知りつつ、次にあの状況が来たればこそ助けるべきという雲をつかむような事を考えていた。結果として自分の為という悪に魘されていたのである。
「あのさ、私の本当の症状は言えないし、かなりの割合で思い込みが原因なんだけど一つ聞いていい?」
「人の気を引くために何やってんだよ。俺たちの仲じゃねえか。また飲むのか?」
 普段、互いに意図せず廊下の端を歩いている分、正直言って理解も共感もさらさらできないが、上手く使われてやる気ではいる。それが証拠に少しは気楽に話せて、少しずつ馬鹿な症状みたいなのは改善されてきたが、今日のぶり返しは本当に何かの範疇を超えている。
「そうじゃなくって。今日は本当に胃が痛いし何回もお茶持って来てもらって悪いと思ってるんだけど、風諒君、脾臓の摘出とか何かにかこつけて無茶な事されてない? だってあの時私、深夜に帰って来たんだけど、あなたの声と膝がおかしかった。べつに笑おうというわけじゃないし、このまま日本に帰ればあなたの事は忘れる。だから話してよ」
 だれが言うか! なんで喋って2度も重荷を思い出さにゃならんのだ
 正直言って5歳児のたわごとのようだ。抑えが効かないのだろうか。
 何か病んでいるとはいえ、ひどく思い込みの強い女だった。薬学の勉強を教えてもらう事だってあったが、あっちこっちと幻聴に悩まされてそうな痛い奴。取り乱している時は母国語でさえあやふやだが、熱に浮かされてさえなければおそらく問題ない。
「本当に心配なら、俺をこれ以上困らせるな。お前の事は知らん」
「だって……まあ悪かったとは思ってますよ。寫宏さん、別に好きでそういうご趣味ならばともかく、人を縛って痛めつけて言う事聞かせようとか、普通に最低です。次やったら縄を歯で齧ってでも助けますから なんて事普通に聞いたら苦境好きの変態の妄想ですよ。怯えてたんです」
「あー、愚痴は後々。俺だって寝たいんだ」
 しっしと男は手を振った。大体の事情は知っているとはいえ、彼女は今まで碌な愚痴り方をしたことが無い。
「了解」
 女は物わかりの良い態度で外を見ていた。寒いのに日射病がよく起こる地域なだけはあった。
――――さてと。元々置いてくという約束だったし、コイツの貯金は俺が無断の前借で使いこんじまったし、明日ぐらいは聞いてやるかな。
 何より、実家に置いてきた家族に少しでも金を残さないと、あとがつかえて余計苦労する。一人だけ学校に行かせられるかもしれないから悪く思うなよって話だ。

 一年と半年ぐらい前の事だった。鞄を背負いながら居眠り歩きをしていたのを最後に、この先の事はあまり覚えていなかった。
 高校の事も。幼稚園から、小学校からずっと同じ学年だった誰かの性格はおろか名前まで時々あやふやになる。
 想像さえ本当はすべきでなかった。人が切りさいなまれる事に口角が上がる究極の下衆として人生を全うしたくはなかった。
 未来のクライアント、未来の大学生の自分、そして形の分からない「未来の思い描いた仕事」の正体が全く分からなかった。
 この世界に本当に必要な仕事は沢山あるが、それ以上の本質とは何だろうか。己は人との鎹に何を求めているのだろうか。それが知りたかった。
 ぼうっと泣きながらシャーペンを握る自分を思い出す。てめえぶっ殺すぞと叫びながら勉強とか絶対嫌だ。仮に努力が実りスーパーエリートになったところで、この性格悪い爆弾はいつか爆発し、企業様に大損害を出し、ひいては――――――
 あるいは、てめえ一遍死んでみやがれと学費を出してくれたり、不味いながらもお弁当を毎日作ってくれた母さんをぶっ刺すだけの行動力は兼ね備えているつもりだった。
 頼みの綱だった大好きな作品もある日、ゴミに出された。横山光輝の中国史シリーズの大半と、某美少女三国志のアンソロで、自分の好みを度外視して好きになった何かが戸棚の奥にあるだけで心強かった。
 思い込みを捨てる気はさらさらなかった。それぐらいならと酒向は勉強も、読書もある日を境に声だけのものになった。
「上手くいったら血筋のおかげ、失敗したら私の責任」
 サムスン榜眼? 45までガチニートのトップクラス市役所員? 故障で1年のブランクをモノとせず高校入学1週間で上位2%に上り詰めた数学の鬼?
 細かい事情は言えないが、なろう主人公のような親戚が多すぎて大半の事に驚かない自信があった。
 全力を出すのも怖い。失敗も怖い。負ける側の気持ちも知りたい。負けたくない。自分は実際に負け続けている。私だけのせいでないとはいえ蔑まれている。自分の倫で幸せな未来を作りたい。矛盾した思いが交通事故を引き起こしこの丞灯薬房に呼び寄せたのだろうと勝手に考えていたが、天国でも地獄でもラノベ的異世界でもない外国に適当にぽんといる事が我慢ならなかった。最初の1か月は誰もいない時にこっそり適当な和歌を詠んだり漢詩を作ったりするぐらいしか楽しくなかった。
――――益なくば 翼よろしと ほむられど 生きて雲居に 足をかけえず

 タイプが違い過ぎるし不摂生の挙動不審。本当は声もかけたくなかったのかもしれない。と当たり前の空間を再確認するかのようにどこか思い込みへと突っ走る。
 とまあ、丞灯薬房はこんな行動指針の定まらぬ面倒な客を招いてしまったのである。しかしこの街中のしがない一角へ連れて来た親切な少女がいると聞き、彼女に恩返ししてから日本に帰りたいと位は何となく思っていた。
 だけど本を調べても、モンゴルなど亜漢地域関連の知識を総動員しても、大使館に行っても、飛行機のパスポート発行や乗船券を優先的に取りやすくするために仮住民票を取得しても、全部水泡に帰した。どこなのかわからない海を彷徨うより、結局の所、安定した居候生活を選んだのである。
 しかし、酒向は志望大学をまだ諦めていなかった。溶けていく時間、お金、知識をかき集めて書生の肩書を使ってへばりついているが、仕事だけはきちんとこなしている。
 
 互いの事は屁とも思うどころか使い切り悪人コンビだとしか思っていない。どちらかが悪さすればブレーキをかけるか寫宏に怒鳴られるかの二択という模範から大きく外れた連中ではあるが、時々ふとしたときだけ飲みに行く。それだけ。
 
「あー! 私のへそくり足りない!」
「そんなに大事なら、こんなすぐ見える場所に隠すな」
「言われなくても返してくれるのはいいとしても、盗むとかバカじゃないの?! 普通に見損なうわ」
「何だと?!」
「使わない借家に家賃を払ってまでする事?」
 と言って平手を打つ日もあった。安月給ではないが、互いに色々切羽詰まっている。
 このさびれた街中の一画に出て、二人揃って頭を冷やす事にした。

カテゴリー : ストーリー スレッド: 効率と主人公交替

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