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物語の考察のさせ方についての返信

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物語の考察のさせ方について(元記事)

こんにちは㎜というものです。
面白い作品は読者に考察させる内容が含まれていることが多いですよね。
読者にはただ一つの答えではなく、様々な答えを考えさせ、議論させるものが私個人的には面白い作品であると考えています。
そこで、考察について4つの質問があります。
①作品によって異なると思いますが、どういった内容が読者にとって考察し甲斐のあるものになるのでしょうか?
②どういった点(例えば、登場人物の言動、舞台の背景等)に考察させる要因を入れたらいいのでしょうか?
③読者に考察させるので、作者側であらかじめ答えを用意しておいたほうがいいのでしょうか?ただ、私としては答えを用意して作品を書き、考察させるとなると、その答えに導かせる作品になってしまい、読者の考察の答えが1つだけになりそうで不安です。
④そもそも、今の読者に考察させるような作品を好むひとはいるのでしょうか?
みなさん回答お願いします。

物語の考察のさせ方についての返信

投稿者 手塚満 投稿日時: : 2

既出の良回答と被る部分も少なくないのですが、ご質問を拝読して思ったことを説明してみます。

まず「考察のさせ方」「読者に考察させる」という言い方が、細かいことで揚げ足を取るようで申し訳ありませんが、エンタメ作者のスタンスから外れているように思います。作者が(情報の非対称性を使って)読者を使役したり、試したりしてはいけないのです。楽しめる作品だと思ったら、学校のテストみたいだった、になってしまいますから。

推理物ですと、読者との知恵比べみたいな面、楽しさがあります。だけど、考えさせる要素を入れてあるのか。違いますよね。密室だったりして殺人がいかにも不可能そうだけど、実際に被害者が倒れている。自殺でないことが明らかになり、ではどうやって、となります。

ですが、考えさせているわけではありません。不思議で面白そうだから、自然と「どうなってるんだ?」と思うわけです。さらに言えば、読者が考えることは必然でもない。探偵の鮮やかな謎解きの見事さだけを堪能してもいい。しかしその後、探偵の推理と論証が合理的か、事実誤認がないか考えたりすることもあります。探偵の手並みが鮮やかであれば、ですが。

考えさせる、考察させる書籍の代表が教科書、参考書、問題集です。これらは面白いでしょうか? 知識が増える、理解できるものが増える楽しさはあります。ですが、教科書、問題集自体が面白い書籍と思う人は(その分野の上級者を除き)いないんじゃないかと思います。

ですので、考察させる要素があるから面白くなるわけではありません。特にエンタメではそうです。面白いという興味が湧いたら、知りたいという好奇心が湧き、もっと理解しようと考察したくなるわけです。逆はありません。分からない、知らないものなんて、世の中に無数にあります。でも、知らない、分からないからといって、いちいち調べようとしたりはしません。調べる、考える動機として興味は必須です。

フィクションならなおさらです。あるフィクションについて知ったり理解したからといって、そのフィクション以外では役に立ちません。人気作であれば、ファン同士で交流するときに役立ちますが、それも元をただせばその作品が面白いからですよね。

考察させる要素があるから面白いはずだ、なんてのは、冒頭の長い設定語りと同根の間違いです。面白がるのは作者だけです。面白いかどうかが先です。面白ければ、作者が特に意図して謎を入れてなくても、読者は勝手に考察します。繰り返すようですが、面白いものは深く知りたくなるから。作中のアイテムだって、読者が勝手に設定を付与したりもします。

例えば、最初のガンダムでも制作者が考えていなかったことを、ファンが後付けで設定し、体系化までしました。有名なのが「ミノフスキー物理学」です。作中に出てきたのは「ミノフスキー粒子」なる架空の粒子で、単にレーダーが使えない設定にするためのものです(おそらくモビルスーツの近接戦闘を描きたいから)。

ガンダム初作はありていにいえば、科学・SF考証・設定は甘かったようです。そのため矛盾する、あるいは無理がある描写が出て来てしまったことも再三あったようで、冨野監督ですら悩まされたらしい。

普通は作品の欠点になりますよね。駄目出しされる要素です。だけど(プロ作家・イラストレーター含む)多数のファンは「どうすれば、作中描写が合理的とできるか」に挑戦し始めたわけです。その成果の1つが「ミノフスキー物理学」です(作中では理論名だけは設定されていた模様)。ミノフスキー粒子はこういう性質で、だからあの描写ではこう作用して、とかやり始め、ついには完遂してしまった。

あまりにも出来が良かったので、ガンダムシリーズで採用するまでになりました。他にモビルスーツ姿勢制御技術としてAMBACなんてのも同様に出たりして、同様に公式化されています。もう隅々までファンが考察していたわけです。ひとえに面白かったから。面白いものは、できるだけ正しいものであって欲しいから。好きになったら、あら捜しより補完するほうが楽しいから。受け手が好きな作品の創作に参加できた気がするから。

「考察させる要素」って、そういうもんなんです。面白いからなんとしてでも理路整然とした理屈、体形で理解したくなる。作者ですら考えもしなかったことまで考察して補完するようになる。大事なことなので繰り返しますと、興味が先、知識欲が後です。興味→好奇心→考察、なのであり、逆コースはありません。読者にテスト問題を与えるがごとき態度で作品書いたら、途中で見捨てられるでしょう。

ご質問各項目についても考えてみます。

> ①作品によって異なると思いますが、どういった内容が読者にとって考察し甲斐のあるものになるのでしょうか?

上記で説明した通り、面白いものです。

> ②どういった点(例えば、登場人物の言動、舞台の背景等)に考察させる要因を入れたらいいのでしょうか?

(超上級者でない限り)入れてはなりません。どうせ全てを描き尽くすことはできないのです。考えたくなる要素は勝手に、必然的に発生します。特に文章作品はそうです。言葉は、例えば絵に比べて圧倒的に情報量が少ない。精一杯、精密、正確に描写したところで不完全なんです。描けば描けるのに、わざと削って分からないようにしようなんて気を起こしたら、描写不足に陥ります。下手に見えるだけです。

> ③読者に考察させるので、作者側であらかじめ答えを用意しておいたほうがいいのでしょうか?ただ、私としては答えを用意して作品を書き、考察させるとなると、その答えに導かせる作品になってしまい、読者の考察の答えが1つだけになりそうで不安です。

「答え」ってなんだろう、ということになります。作者としては、普通は「正解」と思うものです。ですが「正解」の実態は、作者がたまたま選択したものに過ぎません。例えば、作者は「このシーンで主人公は黙っているが、内心では怒っている」と思って書いたとします。読者が語義などを誤らずそのシーンを読んで「主人公は悲しんでいそうだ」と思ったとします。

作者と読者、どちらが正しいともいえません。作者が「このシーンはこういうつもりで書いてあるんだ」と後で説明したとしても、読者の判断が間違っていることにはなりません。何が書いてあるかだけが問題で、書いてない作者の心づもりなんて判断材料ではないからです。

後のシーンで主人公に「あのとき、実は怒ってたんだ」と言わせても同様です。作者が選択したに過ぎません。読者は「悲しんでいるように見えたけど、実は怒っていたのか」とイメージを修正して読み進めますが、該当するシーンの判断が間違っていたと思うわけではありません。その時点では怒っていると判断できる情報がなかった、主人公が怒りを(読者にも)隠していた、作者が話の都合で伏せた、などと思うだけです。

ただし、どうせ読者の判断は確定できないし、正解も存在しないんだからといって、作者が想定しなくていいということではありません。細部に至るまで考えておくのは必須です。でないと、描写や台詞が一貫してきません。矛盾も生じやすくなってしまいます。そうまでしても、(上述した言葉の情報量の少なさなどにより)書かれたものには種々の解釈が生じがちだということです。

> ④そもそも、今の読者に考察させるような作品を好むひとはいるのでしょうか?

昔から少ないと思います。読者は作者から試されたと思ったら、不愉快になってしまいます。繰り返しになりますが、面白いから考察するんであり、考察させる、言い換えれば、考えることを強いたら面白くなるわけではありません。

カテゴリー : 設定(世界観) スレッド: 物語の考察のさせ方について

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