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現代日本での長編の書き方の返信の返信

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現代日本での長編の書き方の返信(元記事)

短編の間に投稿されていた『ある大学生の生態』を拝読してきました。他に掌編の間の作品はいくつか拝見していましたが、『ある大学生の生態』は格段によかったです。コツさえつかめば現代日本の日常系は、如月さんにむしろ向いているかもしれません。

あの作品、良かった点はかなりはっきりしています。

1)卵のエピソードがよく効いている。

2)東地洋久というキャラが面白い。

学食でいつも生卵を1個だけ注文する奇妙な学生というアイデア。何でもないようですが、これだけでけっこう読者の興味を引きます。私も引きつけられたし、好意的な感想をつけていらっしゃった人たちもおそらく同じだと思います。

よく「最初に死体をころがせ」と言いますが、つかみというのは何もそんな大袈裟なことをしなくてもよいという好例になっていました。
人間って、腑に落ちないことがあると先が気になるものなんですよ。別にそう大したことでなくても、「取り合えずその行動にどんな理由があるのか分かるまでは読んでみよう」という気になるんですね。テレビ番組なんかでよく見かける「ん?」と思わせておいて「この続きはお知らせの後で」という、あれです。

2についてはキャラそのものもいいのですが、1と絡めた視点のとり方が上手くいっている気がしました。相沢と東地洋久の関係がワトソンとホームズっぽいんですね。物語の最重要人物がエキセントリックな場合、常識人の目を通して描くというのは昔からよくある手法ですが、読者にとって安定して分かりやすいのが強みかなと。
また東地のようなキャラはクセのあるある性格が暴走して何か問題を起こすこともありそうですが、ワトソン型の相棒がいると引き止めたりフォローしたりといった役割も期待できそうな気がします。

でですね。
良かったのは、そういったいくつかの要素がストーリーの流れに無理なくマッチしていたことです。卵に始まる興味が東地というキャラへの興味につながり、いいタイミングで沖野という教員から視点を変えたコメントが入ったり、小さな事件が起こりそれがまた東地の性格の一端を示すエピソードにもなっていたり。
つまり一貫して「東地洋久って何者?」という興味を軸にしてストーリーが展開していて、ラストもその展開を受けてまずまずのところに着地していました。掌編の間のいくつかの作品にはそういう過不足のないストーリー感覚がほとんど見られなかったのですが、どこが違うのかご自身でつかんでいらっしゃるでしょうか?

少なくとも短編については、ストーリーの基本は『ある大学生の生態』で十分だと私的には思います。
シナリオには法則性があるという見解がよく言われ、私はわりとその意見に賛成です。で、それが何の法則性なのかと考えると、ストーリーをどう動かせば読者が興味をもつのかという法則。それにつきると思っています。

で。
ご質問は、長編のプロットの作り方ですね?

卵への興味だけで長編がもたないのはもちろんでしょうが、そこは17枚の作品でも万引き事件を足して後半を形にしたのと基本的には同じ考え方でいいのかなと。あの事件が単に取ってつけたような感じではなく、前半に伏線もあったし、卵への興味を上手く引き継いで東地の性格を描くエピソードにもなっていたのが成功要因なのだろうと思えます。ダンボールをかぶる奇行っぽさや、やや常軌を逸した正義感などです。
如月さんが意識したのかどうか分かりませんが、あの作品は東地洋久というキャラのユニークさを印象付けるのが軸になっていて、後半のストーリーを盛り上げるために配置したパーツもその軸からはずれていなかったように思います。長編の場合でもそのやり方をもう少し大きな規模で守って行けばよいだけではないでしょうか?

やや常軌を逸した正義感と書きましたが、そういう性格は他人と衝突したり誤解されたりする要因にもなりそうな予感があり、危うさを感じさせます。そういうことから大きな事件に巻き込まれるという展開も考えられそうですし、東地がそういう性格になった根源にある過去の体験とかを考えてみる手もあります。

それともう一つ、ちょっと別の角度から。
現代日本の日常をベースにした小説を書きたいとのことですが、一般寄りのエンタメ小説で行くのかラノベで行くのかは考えておいた方がいいように思います。
『ある大学生の生態』は、展開も文章も落ち着いていて好感のもてるものでしたが、ラノベだったらもう少しはっちゃけた方がいいかもしれません。
冒頭でひとしきり牛丼とか学食の雰囲気とかを描いているのも、一般ならああいう導入もありますが、少しまだろっこしいと思う読者もいるかもしれません。いっそ、

>「相沢さん、またあの子来たよ」

これを1行目にしてしまう手もあります。(一般でも短編ならこういう書き出しはよく見かけます)

あの短編にかぎっての印象ですと、ライト文芸と呼ばれる作品群など、ラノベと一般の中間地帯を狙うあたりがいいかもしれないと思ったりしました。

米澤穂信さんの作品はお好きでしょうか? ラノベ寄りの小説も多い作家ですが、一般のいわゆる「奇妙な味」と呼ばれるタイプの連作短編ミステリ『儚い羊たちの祝宴』はお薦めです。既読だったらすみません。未読なら参考になるかもしれません。

現代日本での長編の書き方の返信の返信

スレ主 鬼の王の墓標 投稿日時: : 0

あまくさ様、いつもお世話になっております。

>>他に掌編の間の作品はいくつか拝見していましたが、『ある大学生の生態』は格段によかったです。
>>コツさえつかめば現代日本の日常系は、如月さんにむしろ向いているかもしれません。

過分な賛辞をありがとうございます。一応あれは私の中では苦手科目という扱いです。

>>学食でいつも生卵を1個だけ注文する奇妙な学生というアイデア。何でもないようですが、これだけでけっこう読者の興味を引きます。
>>よく「最初に死体をころがせ」と言いますが、つかみというのは何もそんな大袈裟なことをしなくてもよいという好例になっていました。

死体を転がせはよく聞きます。ミステリの基本みたいですね。

>>相沢と東地洋久の関係がワトソンとホームズっぽいんですね。

これに関してですが、実は狙って書きました。相沢は実は主人公ではなく、洋久が真の主人公というイメージで書いています。
この構図の金字塔がシャーロックホームズですからね。実際に読んだ訳ではないのですが、シャーロックホームズの形式は参考にさせて頂きました。

>>つまり一貫して「東地洋久って何者?」という興味を軸にしてストーリーが展開していて、ラストもその展開を受けてまずまずのところに着地していました。
>>掌編の間のいくつかの作品にはそういう過不足のないストーリー感覚がほとんど見られなかったのですが、どこが違うのかご自身でつかんでいらっしゃるでしょうか?

そうですね。あれは自分でも奇跡みたいな作品だと思います。
掌編の作品が失敗している原因は……自己分析だとこうなりますかね

第一作 無理のありすぎるデウスエクスマキナ
第二作 このメンツの中ではマシだけど物語らしい要素が薄い
第三作 尺が余りにも足りない。あの設定なら最低でも30枚分は書くべきだった
第四作 強引な夢落ち

こんな感じでしょうか……箇条書きにするとダメなところが分かりやすく強調されますね。
やっぱり無理矢理短くしようとするのが無茶でしたかな……それを考えたら『ある大学生の生態』は完全に無駄のない尺配分ですね。

>>あの作品は東地洋久というキャラのユニークさを印象付けるのが軸になっていて、後半のストーリーを盛り上げるために配置したパーツもその軸からはずれていなかったように思います。

これだけ書かれると、もしかして今まで苦手科目だと思っていた分野が得意科目な気がしてきました。むしろ今まで書いてきたファンタジーの方が苦手科目だったのかもしれないという気までしてきます(汗)

とりあえず、当面は奇跡を二度起こすことを目標としたいと思います。
感想ありがとうございました。

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