どこでもドアの裏側問題・解決編/ドラえもんに対するツッコミ

●どこでもドアの裏側問題・疑問編

ダン・シーネンさんの書き込み。

ドラえもんのどこでもドアを現実の物理学から似たものを探すと、ワームホールなるものがあります。虫食い穴ということで、離れた空間の2点間を事実上の距離ゼロで結ぶものです。どこでもドアがワームホールであるとして、どのようになるか考えてみます。

ワームホールを1次元で考えてみます。空間が閉じている場合が考えやすそうなので、輪ゴムのようなものとしてみます。数字の「0」の形だとしておきましょう。ワームホールがある状態だと、「0」の2点間がつながり「8」のようになります。1次元の8の字では、ワームホールの裏側はもともとは離れていた位置でしかなく、回り込んで裏側を見ることができません。

そこで2次元にして考えてみます。やはり、何らかの形で閉じている空間(曲面)が考えやすいので、円筒だとしてみます。円筒面ですね(円筒内部は含まない、そこは宇宙の外)。ちょっと工作だと考えて、紙を丸めて円筒を作ったとしてみます。円筒にちょっと切れ目を入れます。ちょうど反対側にも切れ目を入れます。そしてセロテープなどで切れ目同士をつないでしまいます。

これで切れ目からは反対側へ行ける、一種の近道になります。これが円筒2次元のワームホール(みたいなもの)です。2次元に対して切れ目とは1次元ですから、3次元空間のどこでもドアが平面を介して離れた3次元空間へとつながっている状況と同じです。

さて、円筒の切れ目のワームホールに「裏側」はあるのか。ないですね。ワームホールの周りをぐるっと回っても、離れた位置につながっているだけです。

3次元空間の離れた位置をつなぐ2次元平面のワームホールになっても、事情は同じです。どこから見ても離れた位置につながってしまう。離れた位置が覗けるワームホールの裏側に回ってみると、やはり離れた位置が見えます(ただし反対側の風景)。

どこでもドアがワームホールだとすると、どこでもドアの裏側に回れば、やはり行き先が見えていることになります。ただし、見える風景はどこでもドアの表側から見える方向と逆方向です。

なーんだ、どっち側も行先につながってるんだ、と浅はかにも思ったら、この推測は設定により見事に打ち砕かれましたorz。ウィキペディアのどこでもドアの項目を読んだら(先に読んでおけ!)、以下のように書いてあります。

ドアを開けたとき、裏側はどうなってるかというと、目的地の場所は見えず、向こう側が見える[13]。
13. ^ 「ドラミちゃん ミニドラSOS!!!」

裏側からは普通のドアと同じで、どこでもドアの置かれている場所が見えるだと……? 実際の作品に描写されている以上、仕方ありませんね。裏側からは普通のドアと全く同じ。つまり、表側だけが離れた位置につながるようです。

●接近して置かれたどこでもドア問題

ドアを開けると扉が、という問題は(もうどうしようもないので)置いておきます。通りぬけフープでもいいし、どこでもドアを引き戸に改造してもいいし。道具は使い勝手が悪ければ改良するもの!

どこでもドアに向かって、「手前10センチ!」と叫んだとします。すると、どこでもドアの出口は、どこでもドアの入り口と自分の間に出現します。出口が入り口の前に立ちはだかっています。仕方ないので、どこでもドアで元の場所に帰るのと同じ要領で、ドアを引いて開けます。

すると、引いて開けたドアの10センチ向こうには、どこでもドアの入り口があり、そのドアは引いて開けられていて、開けているのは他ならぬ自分自身です。鏡みたいなもんですね(実は鏡像というややこしい問題が発生するけど、どうしようもないので割愛)。自分がドアに向かって進むと、目の前に見えている自分自身もこちら進んでくる。「どけよ!」と言うと同時に、目の前の自分も「どけよ!」と言う。

もしこれが距離ゼロであれば、まさに鏡も同然です。入ろうとする自分に向って、向こう側から自分自身も入ってくる。避ける方法はなく、自分自身に邪魔されて決してドアを通れません。

これは逆方向にしたから、自分自身がこちらに向かって来るわけですが、じゃあ同じ方向にしておけばどうか。入れるんじゃないだろうか。距離ゼロの場合で考えると、ドアを開けたら……開けたら、同じ場所の向こう側が見えます。駄目じゃん、普通のドアじゃないか!

●どこでもドアの裏側・解決編

いや待てよ、だとすると。どこでもドアを単純なワームホールと考えたから、設定とは異なり、裏側も目的地につながっているとなってしまったのでした。じゃあワームホールを二つ使えばどうか。

まず一つは目的地につながっているワームホールです。これの裏側も同じ目的地につながっているのでした。そこで、裏側にはもう一つのワームホールを張り付けます。距離ゼロで同じ場所の反対側に通すワームホールです。

こうしておくと、自分がいる側からは離れた位置につながり、裏側に回ると同じ場所のただのドアという、設定通りのものになります。ドアは二つのワームホールですから、それぞれに扉をつけて連動するようにしておけば、行先も元の場所も、開いた扉がちゃんと見えます。

どこでもドアがこういうものだとして、なんでそんな面倒臭い工夫をしてあるんだろう。もしかすると、ドアに隠れて見えない反対側の何かがうっかりドアを通ってしまった場合のことを考慮しているんだろうか。そんな些細な事故も防ぐようにしてあるのか。

だとすると、どこでもドアはかなりの安全基準を考えて設計・製作されたものなのかもしません。行先を言いさえすれば、どこにでもつながる割に、のび太でも使えるくせに、深刻な事故報告が事実上ないのも、なんだかうなづける道具です。

●どこでもドア通過問題(グロ注意)

これで表側からは行きたい場所へ、裏側からは元の場所につながるどこでもドアになります。のび太が行先を告げて扉を開け、どこでもドアを通り抜けようとします。通り抜けてしまえば、目的地です。

ところで、通り抜ける途中はどうなっているんでしょうか? のび太が腕だけを差し入れてみると考えてみます。当然、手先は目的地にあります。肩はまだ元の場所にあります。腕の途中のどこかが、目的地と元の場所の境界になるはずです。

この状態で、元の場所でどこでもドアの裏側から見てみることにします。裏側からは、ドアの向こうは同じ場所なのでした。どこでもドアに腕を差し入れたのび太も、まだ同じ場所にいます。しかし、腕のどこかからは目的地にあり、見えません。

ということは、どこでもドアのところでのび太の腕の断面が見えているはずです。のび太が進んで、目的地に行くとき、のび太の人体内部が全部見えていくことになります。CTやMRIと同じような、しかも色も形もそのものずばりの人体内部です。

ちょっとショッキングな光景です。どこでもドアを誰かが通るとき、裏側には回らないほうがいいでしょう。

しかし。医療でCTやMRIって、人体内部を精密に見られるもので、検査、診断には絶大な威力を発揮します。機械の仕組み上、カラーではないし、誤差もいろいろあります(MRIのほうが鮮明だが、位置の誤差が大きいのでCTと併用したりする)。どこでもドアが人体内部を見せてしまうものなら、CTやMRIの代りに使えばどうか。

患者を寝かせた移動寝台。その先にはどこでもドアがあります。ドアのすぐ向こうには医師やカメラ技師がいます。どこでもドア技師が「5メートル先へ」と言い、扉を開けます。

患者を乗せた寝台は静々とどこでもドアを潜り抜けて行きます。患者の断面が見えてきます。医師は「ふーむ、問題はなさそうだな。あ、ここにポリープが! あっちには」などと正常や異常所見を次々と判定して行きます。体全部が通り抜けたら診察完了です。
(注:手術も可能だと思うけど、そうなると良からぬ者が内部から人体を破壊する、某暗殺拳みたいなことも可能になり、極めて危険なので、たぶん安全対策がしてあるはず。)

なお、このとき5メートル先には、どこでもドアをくぐり抜けた部分の患者の姿が現われます。まるで、昔に流行った人体切断マジックショーがごときです。どこでもドアのある世界では、その手のマジックは誰も感心しなくなっているのかもしれません。

どこでもドアの移動元、移動先の謎