ラノベと漫画の主人公の違い。漫画は理想的な英雄を描く。 ラノベは理想的な自分を描く。

この記事は約6分で読めます。

・漫画は理想的な英雄(主人公)を描き。
・ラノベは理想的な自分(主人公)を描く。

ラノベ読者は、主人公になりきって物語を楽しみます。
そこで描かれるのは、読者の体験したい理想的な自分の物語です。

ラノベ主人公とは「陰キャラのままリア充になった人間」。
精神は、いくらモテて、勝利を積み重ねても陰キャラです。
漫画主人公は、陽キャラのリア充です。

スポンサーリンク

漫画主人公は読者にとって理想的な英雄

理想的な英雄

漫画は、例えば『ジョジョの奇妙な冒険』(1986年12月連載開始)の主人公、空条承太郎は、母親を助けるために自分よりはるかに強い悪の化身DIOとの戦いに挑みます。
また、自分の娘を助けるために身を犠牲にし、仮死状態になってしまいます。

ここで描かれるのは「自分を犠牲にしても仲間を助ける主人公」。理想的な英雄の姿です。

漫画の王様ジャンプの主人公は、時代が変わっても、9割以上がこの理想の英雄タイプです。
『約束のネバーランド』(2016年8月連載開始)の主人公エマは、自分が育った孤児院が、実は人を食べる鬼が経営している人間農園だったことを知り、脱出しようとします。

自分と親友を含めた3人なら脱出は可能ですが、仲間を全員助けようと無茶な理想を立てて苦悩し、自分の命をかけます。

やりたいことや夢が明確であり、仲間のために自分の身を犠牲しても困難に立ち向かうのが漫画主人公です。

ラノベ主人公は読者にとって理想的な自分

ラノベ主人公

例えば、大ヒット作『転生したらスライムだった件』(2014年5月刊行)の主人公リムルは、ゴブリンの村を救って、彼らの支配者になりますが、これはリムルにとっては、なんのリスクもない簡単なことです。

ここで描かれるのは「自分を犠牲にしないで他人を助けて大きく賞賛される主人公」。
読者にとって「体験したい理想的な自分」の姿です。

リムルも仲間のために行動しますが、ジャンプ主人公のエマや空条承太郎ほど熱くはありません。
リムルの目的は「自分の国を豊かに大きくする」ですが、「仲間の命を助けたい」というエマほど、明確でもなければ、切実でもありません。

リムルは自分を犠牲にしない範囲で、なんとなくやりたいことをやって賞賛されます。

漫画主人公とラノベ主人公の相違点。比較

漫画代表・空条承太郎
・熱い
・自己犠牲
・あまり他者から賞賛されない
・理想的な男性
・目的が明確

ラノベ代表・リムル様
・どこか冷めている
・自分を犠牲にしない範囲で、やりたいことをやる
・ほぼすべての他者から崇拝、賞賛される
・読者にとって理想的な自分
・切実にやりたいことはない

漫画主人公とラノベ主人公の共通点。

ラノベと漫画には共通点もあります。
どちらでもマズイのは、主人公が負けるなどのマイナス状態に陥ることです。
読者の心理状態もマイナスになるので人気に悪影響が出ます。

「ジョジョの奇妙な冒険」作者、荒木飛呂彦さんによると、漫画はどの回も勝って終わるプラスで締めくくるのがベストだそうです。

大手小説投稿サイト「小説家になろう」の運営も認めている話ですが、なろうでウケる小説の特徴の1つはストレスフリー。主人公が挫折をしないことです。
「主人公=読者」なので、主人公が負けたり、恋に破れたりすると読者は不快感を感じてしまいます。

マイナスの状態に陥るのは、漫画、ラノベともに危険ということです。

ラノベのキャラクターは主人公をヨイショし、読者の承認欲求を満たすために存在している

例えば、ラノベ主人公に対してヒロインがツン(嫌うような態度)をすると、読者はストレスを感じるので、もうツンデレはやってはいけないと言われます。

ラノベとは読者の承認欲求を満たすモノです。
ツンは、読者の自尊心を逆に傷つけるので、リスクが高いのです

ラノベで絶対やってはいけない3つのタブー!
やるとマズイ順に 1・読者の心を傷つけてはならない(承認欲求)2・キャラクターがブレてはならない(キャラクター性)3・難しい言葉や表現を使ってはならない(読みやすさ) 読者の承認欲求を満たす、キャラクター性重視の読みやすい小説がライトノベル...

しかし、『ダンまち』(2013年1月刊行)のヒロイン・ヘスティアのように、最初にデレてからツンするなら自尊心へのダメージが回避できるので、現代でウケるのは「ツンデレ」ではなく「デレツン」です。

また、ヒロインAがヒロインBに対してツンデレをするなら、読者にストレスを与えないので、キャラ立ちに有効です。

ただし、なろうの場合、主人公よりヒロインが目立つと「主人公=読者」なので読者は不快に感じます。
ヒロインはあくまで主人公を目立たせ、賞賛するためのギミックなので、分をわきまえなければなりません。

すべての要素が「読者にとって理想的な自分」を体験させるために機能しているのがラノベです。

漫画のキャラは主人公を食ってしまっても良い

漫画の場合は、主人公よりサブキャラが人気が出ることがあります。

『ヒロアカ』(少年ジャンプ2014年から連載開始)第三回人気投票では、ライバルキャラの爆豪が主人公の緑谷を抜いて一位になっています。
漫画主人公は「読者にとって理想的な英雄」なので、匹敵するライバルがいてもOKですし、ラノベほど徹底的にヨイショしなくても良いのです。

逆にラノベの場合は、主人公に匹敵するライバルや主人公を上回る力を持った敵がいると、読者は不快に感じるので、そのようなキャラが登場したら、速攻で主人公に敗れるか、主人公の方が格上であることを示さなければなりません。

『転スラ』では、主人公リムルを上回る力を持った魔王ミリムは、リムルに懐柔されマブダチになります。リムル様の方がスゴイ!

まとめ。漫画とラノベの共通点。相違点

[su_box title=”漫画とラノベの共通点” style=”soft” box_color=”#ff3627″]常に主人公が勝ち続け、読者の心理状態をプラスにする[/su_box]

[su_box title=”漫画とラノベの相違点” style=”soft” box_color=”#ff3627″]●ラノベのキャラは、主人公を目立たせ賞賛させるためのギミック。主人公より目立ってはいけない。

●漫画のキャラは、物語を盛り上げるためのギミック。主人公より魅力的でもOK。[/su_box]

もちろんラノベでも、理想的な英雄タイプの主人公がいます。
累計発行部数3,000万部以上の最も売れたラノベである「とあるシリーズ」の主人公、上条当麻や、リゼロのナツキ・スバルなどがそうです。

「自分の身を犠牲にしても仲間を助けます」

ただし、自己犠牲は読者にストレスを与えるので扱いが難しいと言えます

漫画でも、漫画版『転生したらスライムだった件』は、ジャンプの漫画よりも売れてしまったりと「理想的な自分主人公」が、漫画の世界でも人気となっています。

・漫画は理想的な英雄(主人公)を描き。
・ラノベは理想的な自分(主人公)を描く。

この法則は、8割くらい正解で、2割くらいは例外があるものだと思ってください。
ただし、ラノベで「漫画的な理想的な英雄」主人公を描くと、爆死するリスクがかなり高くなります。

ラノベ主人公は、ONE PIECEのルフィのように「俺は海賊王になる!」などと自分の夢を宣言したりはしないものです。

基本は受け身であり、やや能動的くらいの主人公がラノベでは最もウケます。

タイトルとURLをコピーしました