冒頭は小説の最重要部分です。
小説の冒頭、Web小説なら約8話(2万文字くらい)くらいまでに、読者を引きつけることができないと、残念ながら、それ以上読んでもらえません。
以下は、冒頭のエピソードで、これは押えておいた方が良いという6つのポイントです。(すべてを入れる必要はありません)
- 主人公の目的。やりたい事を提示
- ラブコメ要素があるなら、ヒロインは早めに登場させる
- 弱い者を助ける。SAVE THE CATの法則
- 主人公が天才、または最強であることを示す(ラノベの場合。読者の承認欲求を満たす)
- 主人公が仲間や家族から愛されている(ラノベの場合)
- 最初の挫折(マイナスからスタート)。その後のストーリーは勝利と成長を積み重ねる
冒頭で世界観の設定をたくさん説明したりするのは、読者に嫌がれるのでやってはいません。読者は説明を嫌うので、必要最小限に。
また、主人公はなるべく早めに登場させてください。
ダンまち。プロローグの構造
最初に紹介した6つのポイントに沿って、シリーズ累計1200万部発行の大ヒット作『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』(2013/1 刊行)のプロローグと第一章の構造を分析します
- 主人公のベルは、ダンジョンでモンスターに襲われて逃げ回る(最初の挫折)(p4)
- 【剣姫】アインズ・ヴァレンシュタインに助けられて、彼女のことが好きになる。(ヒロインの登場)(p7)
ダンまち。第一章の構造
- アインズに認められるために強くなることを目指す(主人公の目的を提示)(p20)
- ベルのことが大好きで徹底的に応援してくれる家族(妹、母)のような存在、女神ヘスティアの登場(仲間や家族から愛されている)(ヒロインの登場)(p26)
- ベルがユニークスキル【憧憬一途】を持っていることが判明。(主人公が天才であることを示す)(p44)
これで第一章が終了しています。
(ページはp4からが小説本文です)
「弱い者を助ける」以外のポイントはすべて押えていることがわかります。
『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』の序章分析
250万部突破の大ヒット作『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』(2014年7月刊行)の序章、11ページを分析します。(p5からが小説本文です)
序章タイトル 無職(ニート)な僕が魔術の非常勤講師になったワケ
- 主人公のグレンは、外見年齢20歳くらいの美女セリカの貴族屋敷に、1年ほど働かずに居候しており、彼女に「働いたら負けだ!」と言って、魔術でぶっ飛ばされる。
(仲間や家族から愛されている)(最初の挫折・マイナスからスタート)(p5) - セリカは魔術学院の上級講師である立場から、グレンに臨時講師の仕事を斡旋しようとする。
グレンの能力ならできること、グレンの力はセリカを凌駕しかねないことが匂わされる。(主人公が天才、または最強であることを示す)(p9) - グレンは魔術が大嫌いだから、魔術学院の臨時講師などやりたくないと断って、セリカに「養ってください!」と土下座するが、魔術でぶっ飛ばされて、強制的に再就職させられることになる。(主人公の目的を提示)(p14)
これで序章が終了しています。計11ページ。第一章(p17)から、物語に大きく関わるヒロイン2人が登場します。
計17ページ以内で、主要キャラクターがすべて揃います。
『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』は、主人公グレンが「働きたくない! 養ってください!」と保護者である美女セリカに、自分のダメな欲求をストレートにぶつけるところから始まります。
これは現代人が誰でも思っている欲求であり、主人公に大きく共感することができます。
序章(プロローグ)で主人公に大きな共感ポイントを作っています。
セリカは、グレンの母親のような存在で、彼を叱りながらも一年間も居候させてあげており、仕事まで紹介してくれるほどグレンを愛しています。
セリカの役割は『ダンまち』の女神ヘスティアと同じ、挫折した主人公を応援してくれる家族、母親です。でも母親とすると、読者にとってはうれしくないので、外見は若い女性になっています。
セリカはグレンを魔術講師に導く『物語の案内人』でもあります。
『暗黒騎士の俺ですが最強の聖騎士(パラディン)をめざします』プロローグの構造分析
『暗黒騎士の俺ですが最強の聖騎士(パラディン)をめざします』(2018/4 刊行 GA文庫)のプロローグの構造分析。p3からが小説の本文です。
- 主人公の自己紹介。暗黒騎士であり、暗黒騎士の地位を向上させたいと考えている。(p3)
- 魔物に襲われている馬車を助ける(弱い者を助ける)(p6)
- 馬車に載っていたのは神聖アステリア王国の王女でり、非常に感謝される(ヒロイン登場)(p11)
- 最強を目指すため、王国での暗黒騎士の扱いを変えるため、王女に後見人になってらい、神聖職業訓練校に入学して、王宮聖騎士になることを目指す(主人公の目的の提示)(p17)
- 暗黒ジョブのエリート一家の両親に王宮聖騎士になる夢を語って応援してもらう。兄が大好きな妹は、同じ学校に通えなくて怒る(仲間や家族から愛されている)(p19)
これでプロローグが終わります。
その後、主人公は、王女と共に学校に入学し、彼が王国最強の暗黒騎士であることが判明します。しかし、王宮聖騎士になるために見習い騎士からやり直すことになります。
(主人公が天才、または最強であることを示す)(p33)
これによって、最強でありながら、どんどん成長していくというプラスの快感を得ることができる構造になっています。
余談ですが、ラブコメ要素を入れる場合のきっかけは、古来から、主人公がヒロインを助けるというやり方が王道です。恋愛関係に持っていきやすくなります。(『ダンまち』はこれを逆転させて意外性を出している)
アニメ化された大ヒット作『賢者の孫』(2015/7 刊行)でも使われています。
また、主人公に好感を持ってもらうためのテクニック「弱い者を助ける。SAVE THE CATの法則」は、主人公が暗黒騎士や魔物など、悪役っぽい属性であった場合に、より効果を発揮します(主人公が良い人であることが一発でわかる)。
ラノベの冒頭はテンプレが基本!
ラノベ読者とは「過去3年くらいほどの前例しか覚えていない、超前例主義の国家公務員」のような人たちだと思ってくだい。
例えば、大手小説投稿サイト「小説家になろう」に集まってくる読者は、なろうから書籍化されて人気になった小説と、同じような物語を求めています。
最近読んでおもしろかった物語と同じような、自分の好みに合う物語以外は探していません。
なので、小説の最初の1万ページくらいは、現在のランキング上位作品と似たような内容にして、読者の興味を引いてください。
あなたの小説は読んでもらうためには、まず読者の興味を引く話をする必要があります。
冒頭はテンプレが基本です!
テンプレとは、人気作に共通する設定、要素、展開のことです。
(例えば、冒頭で主人公が異世界に転生するなど)
テンプレから入って読者の興味を引いてから、徐々にあなたがやりたい方向に物語を持っていきましょう!
テンプレを制する者はラノベを制す。と覚えておいてください。