主人公の正当性、正当化について私が今考えている物語と合わせてご質問したいです。
主人公は性同一性障害気味の男の娘。彼は男の子であるせいで差別や偏見、性的外傷を受け性格が歪んでしまっています。そのうちに「好意を持ってもらえる」女性という生き物に対して嫉妬するようになり、次第に恨みになっていきます。
この物語の序盤から中盤にかけて段階的に感情の変化を重ねますが、結果的に問題は解決しません。そして、ついに耐えきれなくなった主人公は、物語の終盤で人々の前に「加害者」として現れます。
この一連のプロットの中で、どうにかして主人公を正当化できる内容を入れたいです。
言うなれば進撃の巨人のエレン・イェーガーのような、理由付けをして正当化をしたいです。といっても読者に「主人公が100%正しい」と思わせるのではなく、あくまで共感してもらう程度でいいです。
どのようにすれば、正当化して共感を誘えるでしょうか?
矛盾を描く。これに尽きます。つまり、葛藤の中で人間像を浮き彫りにするわけですね。
葛藤には、次のものが挙げられます。
1、対・自分
女性への憎しみ・嫉妬を押しとどめる自分との闘争。
主人公は、理性のタガをひとつひとつ弾き飛ばしていきます。
2、対・他者
自分より愛される女性たちとの闘争。
より美しく、より魅力的になろうとしますが、本物には敵いません。
「私とあなたたちと、何が違うの?」
どうにもならない肉体的・遺伝子的なものの違いに、恨みはどんどん募っていきます。
3、対・社会
社会的な理解は進んでいますが、主人公にはそれが偽善として映ります。
「あなたたちなんかに何が分かるの?」
性同一性障害を受け入れようとする「理解者」を、主人公は次々に拒んでいきます。
4、対・世界
ジェンダー(性別)についてより深く考え、受容性を深めようとする進歩的な動き。
女性への憎悪を捨てきれない主人公は、それが集団的な自己満足にしか見えません。
時代や世界から取り残された主人公の怨念は、さらに深くなります。
5、対・真理
自らの性を受け入れられないとはどういうことか。
同じ障害を持つ様々な人々が自分の答えを見つけ出していくのに対して、主人公はどんな答えにも納得できません。
孤立した主人公は、自分が自分であるために、自分以外のものを全て傷つけようと考えるようになります。
主人公に、どこまでも「自分」を追求させましょう。たとえ悪への転落しか道がないとしても、自分が何者で、なぜ存在するのか知ろうとする真摯さは、その運命を悲劇的なものにすることでしょう。