小説の書き方講座。設定はシンプルな方が良い!要点は「いかに人間ドラマを盛り上げられるか?」

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設定はシンプルに!

アニメ化されたヒット作『六花の勇者』(2011/8 刊行)のストーリーを紹介します。

「魔神が復活するたびに6人の勇者が現れて、これを倒してきたが、今回、現れた勇者は7人だった!1人は魔神側が送り込んだ敵である。疑心暗鬼に陥った勇者たちはお互いに殺し合いをはじめる」という物語です。

根幹にある設定は、魔神を倒すために6人の勇者が集うというオーソドックスな英雄譚です。

誰が本当の敵であるのか知るために、勇者たちが智謀の限りをつくすミステリー要素が濃い作品ですが、根底にある設定がシンプルであるため、話がわかりやすくなっています。

累計発行部数780万部突破のヒット作『盾の勇者の成り上がり』(2013/11 刊行)では、異世界に4人の勇者が召喚されます。

主人公の岩谷尚文は、盾の勇者として呼ばれましたが、攻撃力を持たない最弱の勇者であったため軽んじられ、他の勇者に罠にはめられて財産を奪われたあげく、犯罪者にされてしまいます。

主人公は生き抜くため、パーティーの攻撃役として奴隷少女ラフタリアを買い、2人で旅を始めます。

この物語も、六花の勇者と同じく、根幹にある設定は非常にシンプルです。
「盾の勇者だから攻撃力を持たない。だから、あなどられる」
という理解しやすく、共感しやすい設定になっています。

両者に共通していのは、「設定はシンプルでかつ、人間ドラマを盛り上げられるような仕組み(対立や協力が起きやすい)」になっているところです。

六花の勇者では、人間と魔物のハーフの少女が勇者の一人として登場し、彼女が最初にニセ勇者だと疑われます。しかし、主人公が彼女をかばったことから、主人公が今度は偽物だと疑われるというように、根幹の設定が、対立と協力を生み出すために機能しています。

逆に初心者の小説は、オリジナリティを出そうとするために、人間ドラマに無関係な設定を盛り込みすぎる傾向があります。

設定を盛り込みすぎると、専門用語が増えて、それを説明しなくてはならなくなり、複雑で理解しがたい話になります。
こうなると読者に嫌がられます。

設定が複雑になるのは、例に上げた作品のようにシンプルな部分で勝負できないためです。

シリーズ累計発行部数は130万部以上の人気作『薬屋のひとりごと』(2014/8 刊行)は、古代中国風の帝国の後宮を舞台にした小説です。

宮廷の女狩りにあって後宮に入ったヒロインが、薬の知識を使って難事件を解決していきます。

この物語がすごいのは、ラノベにも関わらず、魔法や魔物などの超常的な要素が一切入っていないことです。

薬や毒物の知識も、現代人なら苦もなくわかるようなアレルギー体質や燃やす物によって炎の色が変わるなど、ごくごく簡単なものです。

複雑な設定や難しい知識を使わなくても大ヒットは可能。むしろ、その方がストーリーが理解しやすくなって良いのです。

創作とは要素を盛っていくのではなく、不要な要素を削っていく作業です。

設定が複雑になりすぎたり、序盤からキャラが多く登場しすぎると、小説の内容が理解しにくくなります。

ヒットしている作品は、設定がシンプルでわかりやすいものが多いです。

累計発行部数1100万部突破の大ヒット作『フルメタル・パニック』の作者、賀東招二さんは書籍『物語工学論 入門篇』(2009/8 刊行)の新城カズマさんとの対談において以下のように述べています。

賀東招二「奇抜な方向で見せようとする人って、たいてい、筋の通っている骨組みのところで勝負できないからそういうことをやっちゃっているのかもしれません」

引用:書籍『物語工学論 入門篇 キャラクターをつくる』新城 カズマ/著

ストーリーとはキャラクターの行動そのものです。

奇抜なことをする必要はなく、基本となる設定を使って「いかにキャラクター同士の人間ドラマを盛り上げられるか?」が重要です。

設定はなるべくシンプルに。
かつ人間ドラマを盛り上げられるような(対立や協力が起きやすい)ものにできると最高です。

作者は設定が書きたい。
読者は設定は読みたくない。
というジレンマがあります。
設定はエピソードの進行に合わせて、必要最小限に説明するのがコツです。

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