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物語開始後の説明パートについて(元記事)
※この書き込みには嘔吐描写を含む小説の抜粋があります。ご留意くださいますようお願いします。
ご無沙汰しています、若宮澪です。今回は物語の冒頭について相談したく思い、スレッドを立ち上げる次第です。
さて長々書くのもあれなので本題に入るのですが、以下のような描写(a)で物語が始まる場合、次にどのような説明が来てほしいのでしょうか? あまり「どんな説明が来てほしいか」ということを意識して書いたことがなかったので、ご教授いただけると幸いです。
ちなみに私は描写(b)のように続けてしまったのですが、多分よくないんだろうなあ、と。惰性で文章を書きがち、という悪癖があるので直していきたいです。
またコメントする際には恐れ入りますが、そうお考えになった理由を出来うる限り事細かに説明していただけると幸いです。「こうするべきだよ〜」と言っていただけるのは嬉しいのですが、私としてはその理由の方をより知りたく思っております。
ここからは、問題となる描写です。内面描写が明らかに濃すぎるのは分かっているので、そこを指摘していただく場合は、できればオブラートに包んでお願いします。(性癖丸出しの習作として書いていたものをそのまま転載しちゃっているので……)
(a)物語冒頭
今となっては見かけることも稀になった旅客用の列車に揺られながら、私はその手紙を読んでいた。夕暮れ時を告げるかのような朱色の陽光が、その手紙の透明な白色を紅く染める。
『拝啓、私のもと婚約者様へ』
その文言を、果たして私は幾度見たのだろうか? けれども見るたびごとに心の奥底が薔薇の棘に突き刺される。痛みも苦しみも、決して癒えはしない。
『このような形であなたに手紙を送らなければならないこと、心から謝罪させていただきます。何せ私の袖の涙を乾かす間もなかったものでして。もしも事前にお伝えいただければ、ことわりを通したうえでお諌めの手紙を送りましたのに。』
彼女は、冷静に手紙を書いたつもりだったのだろうか?
この手紙の書き出しを読むたびに、そう思う。辛うじて令嬢の手紙の体裁を保ってこそいるが、行間から怒りと哀しみとを感じる。
─それも、仕方ないことだ。
直接頬を張りに飛んできてもおかしくない、とすら考えていただけに、当時は拍子抜けした。いや、安心したというべきだろうか?
そして、安堵したと気づいた瞬間にこれでもかというほど気分が悪くなった。
「うっ……」
思い返すだけで、胃の中を全部ぶち撒けたい気持ちになる。自分勝手で独り善がりで、それでいて情けなくて甘えてばかりの私自身が、本当にどうしようもなく気持ち悪い。
胃の中がぎりぎりと痛む、まるで薔薇の棘をそこらかしこに刺されたかのよう。胸も詰まって苦しい、何かどす黒いものが体をのみ込もうとしているかのように。
熱い、痛い、辛い、苦しい。
何度、いったい何度これを繰り返しているのだろう。どす黒い何かが体を焼き払うかのような熱さに変わって、胸や胃を焼き払って、溶かして、灰を食らい尽くして。身体の中にある血管も、細胞も、それに意識も、ありとあらゆるものが不調を訴えてくる。
落ち着いて深呼吸、すうと息を吸おうとして肺が詰まる。ゲホゲホと咳込み、それにつられて胃の中が出てきそうになる。胃酸が気管まで上がってきて、そこを溶かす。熱くて痛くて、耐えられそうにもない。
もう一度深呼吸を……だめだ息がちゃんと吸えない、浅い呼吸が体に堪える。節々が痛くて仕方ない、どうやっても無理だ……っ!
急いで車両の中のトイレに駆け込む、周りの奇異の視線を一瞬だけ感じたが、それどころではない。口元を押さえながら、慣れない体を動かしてドアをこじ開ける。
便器の蓋を上げて、ドアを閉めて、そして耐えていたソレを吐き出した。口の中に酸味と痛みと、気持ち悪い感覚とが広がって、そしてそれらが消えていく。けれども体中に広がった黒い何かは、決して出ていきはしない。頭の中がぐちゃぐちゃになって、何もかもがめちゃくちゃで。
つん、と鼻を突く匂いが鼻腔の中に広がる。その感覚に誘われて、喉の奥に手を突っ込む。喉に爪が当たって痛い、喉の中に異物が入り込む感覚がどうしようもなく気持ち悪い。少し指を動かす、肺がむせ返るように空気を送り出し、胃がそれにつられて中の物をもう一度食道から胃へと逆流させる。嘔吐感がまたやってきて、手を引っこ抜く。
また、胃からソレが出てくる、吐き出される、飛び散る。全身から力が抜けそうになるのを必死に堪えながら、中にあるものを全部吐き出す。意識が飛びそうになる、視界がぐらついて耳鳴りも酷い。それでもようやく気分が落ち着いてきて、吐き気も収まってくる。ふう、とようやく深呼吸できるようになり、大きく息を吸ったあと流水レバーを引いた。
「……汚い」
あはは、と。たぶん、力なく笑った。あーあ、いったい誰のせいでこうなったと思ってるんだか。こんな事態を引き起こしたのは、全部の責任を取ると言ったのは、そして彼女に傷を負わせたのは、さて誰だろうか。
「全部、俺のせいだろ?」
久しぶりに、自分自身のことを俺、と呼んだ。
あの日から─彼女から何もかもを奪ってから、久しく私という一人称で自分のことを誤魔化し続けてきた。いや、誤魔化してさえいない。
仮面を被った。
自分は冷徹で非情な貴族だと、そういう仮面をかぶって、それを演じ続けてきた。だから、こうして吐く資格も、感情のままにトイレに駆け込む資格も、本当はありはしない。私は貴族だから。
これまで私は、何人傷つけてきたのだろうか。あるいは、サイン一つで何人を死刑台に送った? 声一つで何人を不幸に、紙一枚で何人を犯罪者にしてきた?
言い出したらきりが無い、それくらいには悪行を重ねてきた身だ。それにもかかわらずこうして吐く日々も珍しくなかったあたり、私は徹頭徹尾子供でしか無かったのだろう。所詮は子供が大人のロールプレイをしてきただけ、まあ欠けた自分にはふさわしいのかもしれないが。
はあ、と。一つ、また溜息をついた。
つい先程までそこにあった吐瀉物は綺麗に何処かへと消えていて、それと同時にどす黒い何かが胸の中へとしまい込まれていくのを感じた。
(b)直後のパート
財力と教育、そして大きな権利と権限を与えられる代わりに、それを国のために使うのが貴族であるという。であるのならば、今のこの国に貴族という概念はほとんど残っていないだろう。
列車の外を覗き見る、広がっているのは古来からの田園風景ではなく、鉄筋コンクリートとガラスに彩られた都市だ。それに、夕方の赤い光を丸ごと打ち消すかのように光り輝くネオンサインと、人工灯と、そしてそれに酔いしれた人々と。そんな街を分断するかのように敷かれたこの鉄道は、しかしもともとは田園を走っていた。
ここ数十年の間に、この国は大きく変わった。
もともとこの国の科学技術は諸外国と比べても遜色ないほどには高かった。だが精密機械工業と電気電子工学の飛躍的発達、いわゆる産業革命は既存の社会や環境を丸ごと塗り替えていった。
その影響はもちろん社会規範や道徳、それに社会システムにも変革を強制した。伝統的な支配体制だった貴族制は能力制へと取って代わられ、かつてはお見合いの会場として栄えた旅館は、今となっては風俗バーとしてわずかに残る程度。街中では声高に自由が叫ばれ、親が結婚相手を決める時代など遠の昔のものと言わんばかりに自由恋愛が盛んとなっている。
「……良いこと、だったんだろうか?」
窓から目線を外し、手紙へと目を遣る。先ほどの嘔吐のせいで視界がぼやけて仕方ないので、外部入力端子を使って視覚補正を行った。多重に見えていた手紙の文字がすっきりと一つの形へと縮退していく。
先ほど吐いたこともあって読むのをやめようかとも思ったが、ここでまた逃げたら昔と変わらない。覚悟を決めて、手紙と向かい合う。胸の中にある黒い何かが、また胸を切り裂いて喉元へと迫ってくるのを感じる。(以降省略)
物語開始後の説明パートについての返信
スレ主 若宮 澪 投稿日時: : 0
読むせん様、三度目のコメントありがとうございます! あまり婚約破棄もの(というか受けているラノベ全般)を嗜まないもので昨今の事情はよくわからないのですが、確かに広告などでは「あれだけ自分を押し殺して尽くしたのに婚約者や家族から裏切られた→ふざけんな! もう好き勝手させてもらいますからね!」みたいな漫画が沢山流れてきますね。あれが主流となると、女性の自罰傾向、内省が珍しくないというのも理解できます。というか、寧ろ一昔前に流行っていたゲーム世界への悪役令嬢転生ものの方が若干奇をてらっていたのかも?とも思いました。
−−−−
んまあ内面描写と内省が読み飛ばされるのはある意味想定内ではあります。というか今回こんなに自罰傾向の強い主人公を書いたのって、もとをただせば「書きたいから」というだけですからね……。やっぱりちゃんと公開するときには減らすように心がけます、あんまり濃いと読みにくいですしね。
っと、ここまで少し長くなっちゃいましたが。実のところ、書きたいものは「婚約破棄もの」じゃないんですよね。どちらかと言えばロミオとジュリエットみたいな「悲恋」を書きたい。それなのに「婚約破棄」というジャンルを利用しちゃってる。だから「婚約破棄」ジャンルに分類しようとしている割には異常に内面描写が濃くなってしまうわけです。(という言い訳、実際は自罰傾向の強いメンタル限界の男性を描きたいだけ)
だからこの物語って、ヒロインが悪役として展開していくわけじゃないんですよね。強いて言うなら公太子、婚約破棄もので喩えるなら「バックにいる国王陛下」が悪役で、彼が婚約破棄の直接的な原因となる。けれどもなぜ彼が婚約破棄を強いたのかといえば、結局は国の構造や体制、価値観にその根本的な原因がある。それゆえ主人公は……みたいな感じで展開していく。まあ正確には、主人公が行動してから随分と経ってるので、物語としては過ぎ去って戻らない過去への回想、という形になるのですが。その過ぎ去って戻らない最悪の過去を主人公と結びつけているのが冒頭の「手紙」なわけです。だから始めに、内面描写を色濃くしておく必要があったんですね(後付け) 主人公が、これ以外の過去を選べたんじゃないか、というのも込みで公太子に強いられた婚約破棄を受け入れたことを後悔し、嘔吐さえしてしまう。こんな感じを描きたかったからこそのあの冒頭になっております。
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凄い長くなっちゃったので、軽くまとめます。
《内面描写は流し読みしちゃうかも》→習作なので(言い訳) 公開するときにはある程度減らすつもりです、あんまり濃いと読みにくいと思うので。
《傷つけた側は知るかヴォケ!》→とならないように頑張って描写していきたい。ここに貼り付けた時点では一応、女性が「手紙の送り主」に感情移入すると想定して「こいつ婚約破棄して女のこと傷つけたんだろうけど、本人なりには愛してたんだろうな」&「嘔吐するくらい後悔しててざまあみろ!」となるようにした。機能しているかは知らない。
《いやいやいやいや、それ主人公悪くないじゃん????ヒロイン悪質やん?主人公そこまで自分を責めんなよー!!!》→大丈夫ヒロインも悪くない、悪いのは世界だ(某ルルーシュ)という物語の流れなので前提条件が違う(本当は最初に提示するべきでしたね、すみませんでした)
といったところでしょうか? 書きながら私も頭の中も整理していたので、特に中盤は文章が崩壊しているかもです。読みにくかったらごめんなさい……。
ちゃんと整理して思ったのは「そういう構造にするなら、そもそも婚約破棄ものとして期待させない方が良い」っていうことですね。あとは、主人公や婚約者の人格を早めに、回想などで提示した方が良さそうな感じもします。
色々と意見を頂きましたので、一度持ち帰ってどう書くか検討し直してみます。コメントありがとうございました!
カテゴリー : 文章・描写 スレッド: 物語開始後の説明パートについて