文章を書く時に気になったことを質問します。あまりに初歩的過ぎる気もしますがご容赦ください。
セリフへの繋げ方、セリフからの繋ぎ方というのは決まっているのでしょうか。
例えば、
①
彼は得意げにこう言った。
「俺は毎日5キロは走ってるからね」
僕は10キロ走っているが、彼の笑顔を奪いたくないので敢えてそれを言わなかった。
②
彼は得意げに、
「俺は毎日5キロは走ってるからね」
と言った。
僕は10キロ走ってるが、彼の笑顔を奪いたくないので敢えてそれを言わなかった。
③
彼は得意げに、
「俺は毎日5キロは走ってるからね」。
僕は10キロ走ってるが、彼の笑顔を奪いたくないので敢えてそれを言わなかった。
④
彼は得意げに、
「俺は毎日5キロは走ってるからね」
僕は10キロ走ってるが、彼の笑顔を奪いたくないので敢えてそれを言わなかった。
の四つの場合どれが正しいと言えるのでしょうか。(セリフの繋げ方だけ見た時)
どうか教えてください。お願いします。
また、この他に違う表現があるならぜひ教えてください。
どれも大差ない、ということは押さえておきたいと思います。奇異な感じがしない、分かりやすいのであれば、気にせず書き進めてしまうのが得策です。大事な部分のみ、効果を考えて推敲のときにちょっと工夫を試みるくらいでしょうか。
細かい差ではあるんですが、差は差です。以下、少し説明を試みてみます。
> ①
> 彼は得意げにこう言った。
> 「俺は毎日5キロは走ってるからね」
> 僕は10キロ走っているが、彼の笑顔を奪いたくないので敢えてそれを言わなかった。
> ②
> 彼は得意げに、
> 「俺は毎日5キロは走ってるからね」
> と言った。
> 僕は10キロ走ってるが、彼の笑顔を奪いたくないので敢えてそれを言わなかった。
この2パターンが基本でしょう。動詞が「言った」だから2つの差は目立たないんですが、動詞を変えると印象が異なるようにできます。
> ①’
> 彼は得意げに笑った。
> 「俺は毎日5キロは走ってるからね」
> 僕は10キロ走っているが、彼の笑顔を奪いたくないので敢えてそれを言わなかった。
> ②’
> 彼は得意げに、
> 「俺は毎日5キロは走ってるからね」
> と笑った。
> 僕は10キロ走ってるが、彼の笑顔を奪いたくないので敢えてそれを言わなかった。
②’はこのままではちょっと不自然で、次のように直したくなるでしょう。
> ②’’
> 彼は、
> 「俺は毎日5キロは走ってるからね」
> と得意げに笑った。
> 僕は10キロ走ってるが、彼の笑顔を奪いたくないので敢えてそれを言わなかった。
台詞と動作が一致している場合、台詞と動作の順序でインパクトなどが異なります。
――――――――
「出ていけ!」
彼はさっとドアを指さした。
――――――――
彼はさっとドアを指さした。
「出ていけ!」
――――――――
おおむね、動作が先になるほう(上記の後者)がインパクトが強まります。強いほうが必ずしもいいわけじゃなくて、例えば、上記の「さっと」を「おずおずと」にするなら、台詞を先にしたほうが緩い雰囲気が出るでしょう。台詞も「おずおず」向きに少し変えるとこんな感じ。
――――――――
「出ていってくれないか?」
彼はおずおずとドアを指さした。
――――――――
彼はおずおずとドアを指さした。
「出ていってくれないか?」
――――――――
この効果は上記①②(ダッシュつけた改変文も含む)でも現れると考えて差し支えありません。それに加えて、「彼」の演出効果の差も出てきます。一瞬ですが、「彼」の感情が読者に伝わるタイミングが変わるわけです。
それがあるので「言った」では目立たないと申し上げました。「得意げに笑う」ですと、台詞の前に入れれば、「彼」の感情がまず確定し、続く台詞のニュアンスも確定します。紛れがなく直截な印象を出しやすい。
逆に台詞の後で「得意げに笑う」ですと、台詞時点では「彼」の感情は曖昧で、台詞の後で確定し、それが直前の台詞に波及していきます。ちょっとした謎が解ける、みたいな感じですね。
どちらもシーン的な進行や意味合いに大差はないですが、インパクトの強さや、ちょっとした揺らぎをどうしたいかで決めることになると思います。
> ③
> 彼は得意げに、
> 「俺は毎日5キロは走ってるからね」。
> 僕は10キロ走ってるが、彼の笑顔を奪いたくないので敢えてそれを言わなかった。
これは記法として通常は使いません。読者としては「なぜ台詞の直後に句点がついてる?」と疑問に思い、「書き間違えたんだろう」くらいに思うでしょう。避けるべきです。
ただ、台詞を開業しないときは、そう書きたくなることがあります。
> 彼は得意げに、「俺は毎日5キロは走ってるからね」。
こういう書き方(台詞で改行しない)、ときどきあります。あまり台詞を台詞として重視しないときなどですね。しかしやはりおさまりが悪い。最後に「と言った」は必要でしょう。
> ④
> 彼は得意げに、
> 「俺は毎日5キロは走ってるからね」
> 僕は10キロ走ってるが、彼の笑顔を奪いたくないので敢えてそれを言わなかった。
これらは③同様、変則的でおさまりが悪く(文になってない)、あまり用いるべきではありません。「得意げに、」で読者が期待する「それでどうした?」が解決されないからです。「言った。」でもいいから文を書ききることが大事です。
ただ、上述のように書きたくなることがないとは申しません。例えば「台詞主が分かりにくいが、「僕」の反応を台詞の直後の地の文で出したい」とかです。地の文ではなく「僕」の台詞が続くケースでは、さらに起こりやすくなります。
――――――――
彼は得意げに、
「俺は毎日5キロは走ってるからね」
「僕なんか……、いやそうか、5キロは凄いな」
実は10キロ走ってるけど、彼の気分に水を差さなくてもいいか。
――――――――
やはり台詞の直前の地の文は文として確定させるべきでしょう。「得意げに、」が浮いたままで、読者の期待(得意げにどうした?)を外しています。この文例に即して最短で直すなら以下の感じでしょうか。
――――――――
彼は得意げだ。
「俺は毎日5キロは走ってるからね」
「僕なんか……、いやそうか、5キロは凄いな」
実は10キロ走ってるけど、彼の気分に水を差さなくてもいいか。
――――――――
繰り返しですが、細かい差でしかないと言ってもいいでしょう。あまり気にする必要はありません。基本は奇をてらわず、分かりやすく、おさまりが良いように書けば充分です。そのうえで、大事な部分はときどき効果を考えて、細かい調整をしてみればいいと思います。