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伊藤真琴さんの返信一覧。投稿の古い順4ページ目

元記事:返信前半の返信

>遠因&成長しない理由だってことは3年ぐらい前から本当に分かってたんですよ。
キャラの動きや物事をもっと単純化してごらん。
「こういう主人公がいる」「こんな行動を取る」「その結果こうなった」
基本的にはこれだけなんだけど、「こういう人物がいる」という状況だけを見せられても「ふーん」としか思わないし、それは漫画の1話目でも映画の最初の10分でも同じ。
だから、そのシーンだけ見せられても「ふーん」で終わって評価のしようがない。せいぜいが文章的にどうかってことくらい。
正直、意見がほしいですワンシーンだけですって言われて読むときこのパターンがすっげえ多い。
たぶん、連載漫画だと一話目だけで面白さがわかったりするから同じノリで短いワンシーンの意見を求めてきてる人が多いんだとは思うのだけど、
連載漫画はほぼ必ず一話目で「こんな行動を取る・こんな事態が起こる」まで書いてる。
そうしないと、「それからどうなるの?」という興味につながらないため。
「ふーん」で一話を終わらせてる連載漫画なんてほぼない。

本編をガッツリ書くわけじゃないんだから、そこにある物語なんて簡単なものでいいんだよ。
例えば今回の例題であれば「養ってる弟に薬徒試験を強く薦められて、自分自身のために生きてよと言われ主人公の考えに少し変化が起こった」とか。
あるいは「患者にもらった鶏肉を持って帰ると弟が喜んで久しぶりに豪華な夕飯になった」とか。
そこまで書けてれば、前者なら「心境に変化があった主人公はその後どうするんだろう」とか、後者なら「この兄弟の雰囲気が良いなもっと読みたい」とか、そう思うことが出来る。
物語と相性のいい読者なら素直にそう感じるし、そうでない読者に対しても作者の技量である程度は興味を持ってもらえるように書き上げることができる。
この簡単な物語が作れてない状態で「どうしたら魅力的か、読者を惹きつけられるか」と考えたところで、そもそも作品(そのワンシーン)自体にまだ魅力を見つけられるような状態ができてないから、この時点で魅力を出すってのは非常に難しい。

>実際なんかやってみる。けど作者側がある意味ガチのアホというか勢いでどう押し通せばいい? とまたもや「ありき思考」が絡む。
スレ主さんは、ある程度は「Aという状態」は書けてる。
問題は「A’という状態」の想定と、その状態へどう繋げたらいいのかっていう構成。
「薬徒をしているジャンシェは現状にある程度満足していて向上心がない」
No10のシーンはそんな印象を受けた。
そこに、例えばだけど「弟に言われて心境に変化が起きた」っていう「A'という状態」を想定したとすると、
次は、その切っ掛けとなる出来事や、前回の返信では省略して書かなかったけど、あるいは「後押しされる出来事」を考えてみる。
例えば「師匠に薬徒試験を薦められて断るが、チャンスであることは理解している」という「切っ掛け・後押し」を想定してみる。
まとめると、
「薬徒をしているジャンシェは現状にある程度満足していて向上心がない」
「師匠に薬徒試験を薦められて断るが、チャンスであることは理解している」
「弟に自分自身のために生きてよと言われ主人公の考えに少し変化が起こった」
という「物語」になる。
簡易的にはこれら3つの要素をそのまま書ければ成立するけど、もっと丁寧に考えるならそれぞれの要素間でのつながりを意識して、「向上心がない主人公に師匠が呆れた顔で薬徒試験の資料を突きつける」・「師匠に押し付けられた試験の資料を弟に見つけられて弟のほうが強くおしてくる」という展開にしてスムーズな流れを作る。
で。
ここまで考えれば、「何か変化を起こそう!」と漠然と考えるんではなく、次なにをすべきかってのがわかると思う。
「主人公は向上心がない」というNo10のシーンの後は当然「師匠が出てきて薬徒試験を薦めてくる」という状況の変化になる。

正直、プライベートメッセージのほうでやり取りしてた頃は、スレ主さんって何だかんだで理屈で考えるほうが向いてる人なんかなーって印象があったんだけど、創作に関してはけっこう感覚だけで突っ走ろうとしますよね。

>書き起こせるか、維持できるか、持久力があるかという事に関しては問題ありません。毎週のレポートで鍛えられています。
問題ないんだとしたら、いまごろ完成して数巻分は書いてると思うよ。
ワンシーンだけじゃわからんって書いたけども、あのワンシーンからでもわかることで言えば、会話が始まった途端に意識が会話文に向いちゃってて、背景やらキャラの動きやらを忘れて状況のイメージが維持できてないよね。

>長ったらしい説明の前に会話文があった方が何となくわかりやすいのか、その説明を最初に持ってくことで概略を理解できるのか、と悩んでいました。
状況による。
個人的に思うという程度だけど、シリーズものや物語中盤のシーン冒頭などであるなら会話文から始まって前提を書いていくのは効果的だと思う。
でも、完全初見の冒頭では、割とマイナスだと思う。
読者の中に既に作品イメージがあるかないかの違いで、作品イメージがあれば意味不明な会話文でもそこからイメージが繋がるし前提に興味を持ちやすい。
けどイメージがない場合は、繋がるイメージがないから、そもそも意味不明なだけでセンセーショナルなものから始めようという作者の空回りになる可能性が高いと思う。

>あくまで話題にしている人物から伴走している黒子が提出した文書、みたいな体にすればいいって感じなんですかね?
やっぱこういうとこは自分で納得できる理屈を考えようとして、感性では突っ走らないんですよねぇ。
感性で書くことは悪いことじゃないけど、やっぱ物語の構成も勢いで突っ走るのではなく理屈でしっかり作ったほうがいいんじゃない?
ほんで地の文についてだけども、三人称ってのは第三者の観点ってことだから、主人公のことを見てる作者の言葉で書けば良いだけです。
その場面に臨場感を出したいといったときは、単純に作者の言葉で臨場感が出るよう書けばいいだけ。確かに簡単なことではないけど、そんな考え方の話じゃなくて、作者の見方で書けばいい。
一応。
本当にそのまま作者の言葉で書くと作者の人格が文章に反映されてしまうので、文章に作者の姿が見えてこないように作者が黒子に徹するという感じじゃないかな。
ただ、これ、なんだ、言っていいのかな。
そもそも初期設定生きてんのかな。
これミズキ(だっけ? 主人公の本体っていうか)が書いた小説って設定でしょ。とするとそもそも、その仮想作者っぽさが出てくるのも演出の一つで否定できないんで、正直あまりに凝ったことをしようとしてるので一般論では通じない部分がけっこうあると思う。

上記の回答(返信前半の返信の返信)

スレ主 伊藤真琴 : 0 投稿日時:

そもそも初期設定生きてんのかな。
 これミズキ(だっけ? 主人公の本体っていうか)が書いた小説って設定でしょ。
→生きてます。そもそも今回の試験の案が出て来た理由はいきさつ関係なく性格的に本体がガチの超学歴厨だからです。自分で笑い飛ばせる客観性があるだけマシですが、いきさつに関係なくマーチ以下はクソだと素で思ってます。(以下300文字長いので略。

 筆者が望んでいるのは飽く迄同じような場面の再演の上での脱却。(そこでジャンシェや町の誰かに無茶苦茶皺寄せが来るので超迷惑)そこから前へ進む。ヒロインが求めるのは本当の意味での良心の呵責。そのために頼りたくないが無意識に筆者の迷惑が起こる事を望む上に「そんな事意味がない」と薄々分かってて実質どうでもいいと流される爆破はデカいが始末に負えないキャラ。人を選ぶのは上手いのにその上で疑り深く、おまけに嫌がられる具合を空間的に目視することで人を知ろうとするいわば地雷。→なんで受験勉強に付きあってやらにゃならんのだと思ってたり教える相手を内心嘲笑ってるのがモロばれていてもなんだかんだでエンジョイしてる。みたいな感じ。

肝心のとこだけど、理屈で書こうとすると「行動を取る、事件が起きる」を新聞か瓦版みたいにツラツラ書く癖がどうしても出てしまう。こち亀方式が一番助かると思ってます。両さん&寺井か本田みたいなのを書きたいんですけど……。氏はその際にそれに追随する感情(例えば擦り切れない下駄を売りさばいたとか言った釣り好き爺さんの足元をちらっと見るとか)は厳密には説明なんですか?台詞なんですか?

 飽く迄もジャンシェは勉強を教えてもらう/助けるだけの知り合い、というか別々に友達がいた上でヒロインと他人でいて一番輝くタイプだと……いいなって思うのよ。お中元渡すぐらいには。
 というか作品の都合で受け入れなくてもいいから彼自身の意見をしっかり持って動くことが一番だと思う。-

 この書き方をするぶんにはエロゲが生きてくるわけですけども、やった本数少ないんですよねー。
 本当にヤバい読者不人気(ある意味狂信者発生型)ヒロインを抱えるエロゲって主人公さえしっかりしてたら大丈夫なの? 今の時代だからこそ作っていいって感じ?「転生ごときで逃げられるとでも、兄さん?」の妹ちゃん(不人気というより読者の恐怖の対象な上に彼女が誰に憑依しているのかわからずゾクゾクする)みたいに一種のキャラとしてしっかり立たせることのダブルコンボが必須? きちんと書いたら知識マウント野郎とか嫌いな奴でも無名よりマシで大方の人は認めてくれる? 意外と他人は自分の事は気にしてないので「そういうキャラです」で動かしますけども。実際に商業化する分に大変そうですね。
一つ気になったのは、昔のハードボイルド調のこち亀ってたぶんカテエラでしょ? ってところですかね。

>本編をガッツリ書くわけじゃないんだから、そこにある物語なんて簡単なものでいいんだよ。
→前も申したか分かりませんが、例えばアニメ制作工程って、大まかな作画の中割をの動きを細かくちまちま埋めていくじゃないですか。あれをどうしても想起してしまいます。芸術家魂(聞いてない)がどうしても書くのを邪魔してしまって本末転倒って感じですね。まあ経験上9割9分ろくなもんではないので最後の仕上げに回すとして、なろうばっかの現在読者をどのぐらい奪えるのか。またその勝算はあるのかというのもどうしても気になりますね。というか話が浅いと言っている人も深読みしすぎている人も割と思い込みだなーって思う部分が少なくないです。

>物語と相性のいい読者なら素直にそう感じるし、そうでない読者に対しても作者の技量である程度は興味を持ってもらえるように書き上げることができる。
→シーンはいっぱい書き溜めするしか思い浮かばない。稚拙な組み合わせ、ありきたりの言葉の応酬しか思い浮かばないし根はフツーだとさえ思ってる。あくまで一理屈があるんだよってことを知り続ける方法を取った結果、一応、自身や恐怖の対象でさえ掛け金違いの真人間としての演算ができると思っているからなのか誰が何をしてもどこまでも平たんにしか見えなくて、自分で書く分にはその立体構造部分がわからない。うまく書く分には偏見のコレクションをキャラとして押し出すのが正解だとは思うんですけどね。核は分かってもって感じ。

何というかよくわからないけど、誰と会話していても自分が思っている以上に人は人の言葉が刺さるんだなーって思う。力を籠めすぎるとすり抜けるのに。

 あ、そういえば向上心がないって何となく今どきの人って感じがする。モーレツ社員時代あるある家族のための向上心(+自分の生計)は一応あったけど、自分の為の目標がなくて今すぐ獲れるほうに流されるって感じ? まったくのゼロやマイナスでなくても大丈夫……なはずだよね(剣桃太郎とか男塾(高校)に入った時は前の学校が退屈だからつまらなくない場所で己を鍛える事が目的だった。)
 向上心のベクトルを変える……までだと少女漫画文脈だからそこから何かを掴まなければならない、と考えてますよ。
「試験に合格したら延命手術の麻酔作りをやった上で考えられる流感の薬剤全部打ってやる(昔、侵襲性の高い薬を義姉に打ち込んでたぶん結果的に殺したことがあると言えず最初は大反対だった)」という条件を元に命がけで体にあわない受験勉強をする話……かな。
 ブラックジャックが求めた命の対価のカネを学歴に変えただけ。求める「本気度」は同じ。
 一応安中散など昔から対策を立てれば重病化することは少なく、脾腫に効く現地の虫を調合すれば何とかなった(オカダンゴムシはマラリヤ由来の脾腫にしか効かないから違うけど)はずが健康以外の「己」を優先しすぎたことによって、色々めっちゃめちゃになったってことにする。

 細かい事はともかく氏の例題のありがたみをどうにか現実的に持っていきたい。

>個人的に思うという程度だけど、シリーズものや物語中盤のシーン冒頭などであるなら会話文から始まって前提を書いていくのは効果的だと思う。
でも、完全初見の冒頭では、割とマイナスだと思う。
読者の中に既に作品イメージがあるかないかの違いで、作品イメージがあれば意味不明な会話文でもそこからイメージが繋がるし前提に興味を持ちやすい。
けどイメージがない場合は、繋がるイメージがないから、そもそも意味不明なだけでセンセーショナルなものから始めようという作者の空回りになる可能性が高いと思う。

>その場面に臨場感を出したいといったときは、単純に作者の言葉で臨場感が出るよう書けばいいだけ。確かに簡単なことではないけど、そんな考え方の話じゃなくて、作者の見方で書けばいい。
 →どこの誰をみてももとをただせば普通の人にしか見えない。「キャラ」で動かせるのが逆に羨ましい。

カテゴリー : ストーリー スレッド: 効率と主人公交替

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元記事:返信前半の返信の返信の返信

>→生きてます。
そうすっと、ぶっちゃけ文章に関してはほとんど一般論は通じないと思うよ。

>その際にそれに追随する感情(例えば擦り切れない下駄を売りさばいたとか言った釣り好き爺さんの足元をちらっと見るとか)は厳密には説明なんですか?台詞なんですか?
描写です。
例えば、「履物を見やると、爺さんは下駄ではなく足袋を履いていた。それもボロボロに履き古していて擦り切れた底に布や皮の切れ端が縫い付けてあった。」と書くと、爺さんの言葉と見た目が合ってないから、「うさんくさい爺さんだ」というイメージができますよね。
また、そんな爺さんに「これが最後の下駄だ、買わんかね?」と言われて断る主人公の図を書けば、詐欺を回避した主人公はそこそこ頭が回ってしっかり者だってイメージができますよね。
地の文で「こう見えて主人公は頭がよく家族を養うしっかり者だ」と書くのが「説明」で、その言いたいこと(今回は私が勝手に想定したが)を表現していくのが「描写」だと思ってます。
別に爺さんが「胡散臭い人」でなくても、「人の良さそうな爺さん」だったとしても、「確かに爺さんの履物はちょっとやそっとじゃ草臥れそうにないしっかりした下駄だった。爺さんの真面目な人生が伝わってくるようだ。」とでも書けば、好々爺なイメージができる描写になりますよね。
主人公も爺さんに友好的だって印象が伝わってくる。
会話文ではこういうところに気がつかずセリフを連ねてしまうことが多いと思いますが、こういうところは描写のチャンスで、しっかりイメージを作ってくところだと思います。

ついでに、釣り竿に注目する場合は、例えば「釣り竿の先が天井につっかえていた」とか書くと釣り竿を利用してその場の空間がなんとなく伝わりませんかね。竿が天井につっかえてる様子をイメージできるので、馬車(の待合所だったっけ?)の規模感がわかりますよね。
こうやって、キャラクターの心情や関係性または背景のイメージなどを描写していきます。

>理屈で書こうとすると「行動を取る、事件が起きる」を新聞か瓦版みたいにツラツラ書く癖がどうしても出てしまう。
それは書くことを事前に決めてるからで、しかし読者は書いてあることを事前に知ってるわけではないので、つまりそう思ってるのは作者だけで実は読者はそうは感じてないと思う。
作者の気分の問題でテンションがのらないんじゃって事なら、詳細に決めるのではなく「起こる出来事だけ決める」とか「どの程度決めるのが自分に適しているか」を手探りで探ってみたら良いと思う。

>本当にヤバい読者不人気(ある意味狂信者発生型)ヒロインを抱えるエロゲって主人公さえしっかりしてたら大丈夫なの?
逆。「だから良いんだよ」っていう人気。
かなり極端に、ほぼほぼ間違ってる例えで言うと、NTRとかと同じ。寝取られ系ね。
自分の恋人が他人に寝取られるなんて絶対嫌じゃん? でも1ジャンルとして成立してるでしょ。
人気不人気じゃなくて、何であろうと突き詰めたところに面白さがあって、それを表現してる、面白おかしく書いてる、という感じ。
だから、人気や需要を考える人多いけど、まあそれも大事だけど、やりたいことが流行に合わないのなら突き抜ける勇気が必要。突き抜けるためにどうしたらいいのか考える頭が大事。

>「試験に合格したら延命手術の麻酔作りをやった上で考えられる流感の薬剤全部打ってやる(昔、侵襲性の高い薬を義姉に打ち込んでたぶん結果的に殺したことがあると言えず最初は大反対だった)」という条件を元に命がけで体にあわない受験勉強をする話……かな。
もっとコンパクトに! シンプルに!
ようは「延命の手伝いを条件に大変な試験に挑む話」でしょ。

>→どこの誰をみてももとをただせば普通の人にしか見えない。「キャラ」で動かせるのが逆に羨ましい。
いや、私もどっちかっていうと「キャラ」で考えられない人だよ。
セリフとかすげえ普通の事しか思いつかないし。
ただ、まあこれは本当に持論も持論なんだけど、「キャラ」じゃなく「役柄」で考えてるからね、私は。
ドラえもんは「道具を出して主人公を助ける役」
ジャイアンは「主人公をいじめて困らせる役」
そんな感じ。「主人公をいじめて困らせるような人間性」で書いてるだけで、「ガキ大将というキャラクター」で書いてるわけじゃない。
人の心がわからん私のような人間にも書けるくらいだから、たぶん何らかの考え方次第で書けるようになるんじゃないかな。

上記の回答(返信前半の返信)

スレ主 伊藤真琴 : 0 投稿日時:

簡単導入:

「要点だけを抑えると」
 興宜六年現在。允という国で薬師になる方法は二つだ。
 まず上澄みは専門の学舎で励み、免状付きの薬師を目指す。或いは卒業した彼らの下につき、教材の貸与禁止を条件に一代限りの相伝の糧となるかの二択。
 前者はどこへ出しても恥ずかしくなく正薬師と呼ばれ、後者は薬師にきちんと付いていれば時代柄、見逃してもらえた薬師の徒弟、略して薬徒と呼ばれた。勿論、前者と後者には違った意味で厳しい条件が付き、後者が店を構える事は一代限りとされた。
 そう述べるのは寫宏という薬師で、業病により高い腕を持つ。少年と話す間も愛想を拵えさえしなかったが、「聞き逃したり分からなかったりする処はないか」などと声をかけ続け、落としどころを探る。
 彼の話を聞いていた少年は覚えず急いていた。薬師にもいろいろ居ること。彼の兄が頑として「俺は薬師じゃあねえしただの下働きだ」と言い続けたこと。手紙では家族に親しい態度なのに会う事だけは避けていたこと。他にも色々、全部がつながった気がした。
「しかし、いつ訪ねようが頑として断るのであれば諦めるしか無かろう。兄の面子を立てるという事は別に、見下すわけではないのだからな」
 案内してくれないかとがたがたと喰らいつくし断る理由はない。しかし、急な弟の来局で困る事もある。まず素性を知る限り弟妹たちに金をつなぐに越したことはなしと言うぶん、疲弊した姿を見せたくないと零していたことを噛んで説明してもなお彼は会いたいという。
「とりあえず丞灯薬房の行き方を教えておこう。再度連絡を入れてくれたら日程の調整もできるし向こうからも断れる」
 久しぶりの休日。珍しく街に出た折に顔を知らぬはずの部下の弟に声をかけられ、なし崩しに奢ることになった。圧をかけてはなるまいと思い最初に多めに注文したが、この少年は彼の予想の三倍近くもの何かをほおばり続けた。
「そんなに旨い?」
 寫宏側の料理も順調には減っているが、今の時点でようやっと客単価一人分の半量である。寝不足明けに効く蜆汁を飲み干し、まだ湯気の立つ茹で野菜をつつく。
「美味しい所知ってるんっすね」
 まだ会ってすぐなのに詰みあがった肉の骨代だけでも小鉢を何か一つ注文できそうだ。どうも、と答えながら懐の銀貨を数えてもだいぶ余裕はあるが、次からは絶対奢るまいと焦れる。
「つまり、兄貴はちゃんと薬師で、俺たちの考えが及ばない位にすごく沢山の人を治せる力量があるって事でしょうか。寫宏さん」
 話を振られ、そのまま返すかどうか一瞬迷った。
「そうだな。お前の兄貴は良い薬師になれるかもな」
 あくまでも素材だけの話だ。
「でも、何かまどろっこしいですね。その、薬徒が教わるとき、変な人にあたったらどうするんですか? 資格は誰が決めるんですか?」
 差し向きのない光ある目をしていると思っていたが、案外変な所で飲み込みが早い。
「あまり聞かないな。薬徒試験という非公式の試験があって、なかでも名の通る難度のものに及第し独立の可能性を見出すか、本薬師の誰かに雇われ続けるか、師を欺いて闇医者になるかの三択だな。誰が決めるかという事に関してハッキリしているわけではないが、変な人にあたったと感じたら届け出はできるだろう」
「どうして」
「これは私見も含むが、戦時中の医療人材不足の名残で、こういう育て方も模索されている、という事だ。火傷をしたら冷やすぐらいはするだろう。医療関係でなくてもできる事は沢山あるはずだ。誰がどう育てても取り越し苦労に近かろうな。」
「なんか歯切れの悪い言い方ですね。」
 これは薬師という者の性質によるものである。秘技を大衆に一面的に知らせすぎると情報の混乱が起き、万人薬師というより更なる混乱を生むだけだ。だからこそ誰かを数名、効率的に雇う方が妄に奔らず技を伝えることができるのだ。
「ん? 外が騒がしいな。まあどっちみち薬師として心配するほど悪いものでもなかろう」
 この一言で納得するとは思っていない。しかしまあ職場に行きたいという者は珍しい。
 丞灯薬房は元々、名もない片田舎が本籍である。機動上の問題を考え、街中に越してからの座職を含めた上で風諒(ジャンシェ)という青年はここにもう九年ほど務めていたが、体感上てんで腕が上がるなどは眼中になかった。確かにざっとした範囲で沢山の人を治してきたし、偽薬師と分かってても世話になりたがる者は少なくなかった。大半は、彼のような薄給ながら少しでもいい処置を受けたいと望む奴ばかり。お高く留まった本薬師が出る幕ではないかもしれない。
「お願いします。ここでなくてもいいので一度会わせてくれませんか」

―――――――――――――――――――

「こっちの勉強が終わったら久しぶりに八並べしない?」
 普通は七並べじゃないのかって? と言われそうだがなんて事はない。最初からJのジャック(廷臣や兵士)、Qのクイーン(女王)、Kのキング(王)だけでなくEのエンペラー(皇帝)とPのポープ(教皇)を足して教えて少し時間稼ぎをしただけだ。
「何度やってもおまえが負けるのにか?」
「接待ですよ接待」
 とか言いながら、言い出した女は声が弾んでいる。青年は札を切りながら終わりを待っていたが、なかなかそうなる気配がない。どうだ少し見てやろうと身を乗り出したその時。風諒が左上腹を抱えて蹲る。神経性胃炎だと思ってちょっと大丈夫?!と言いかけるのもつかの間、彼は立ち上がって口を噤む。
「やっぱ、また今度にしよう、俺寝るから――――」
「お大事に」
 医者の不養生がごとく、彼こそ薬代をけちっている事は何となく想像がついていた。逆に意味深に考え過ぎという筋もある。喋らせるわけにもいかず、部屋の前の机に白湯と手巾、リストメモ用の紙と硬筆、そして何が原因か分からないので適当に既製品の丸薬を五、六種類乗せて置いておいた。
「ご家族に連絡を取りましょうか?」
「余計なことをするな」

カテゴリー : ストーリー スレッド: 効率と主人公交替

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元記事:プロを目指す上で。

はじめまして、名無しの三平と申します。自分はひっそりとラノベを書いているのですが、やっていくうちに疑問に思ったことがあり、そこで皆様の意見を頂戴したいと思い、こうして掲示板に書かせていただいた次第です。

自分はプロを目指してるのですが、まだしがない新人であっても、読者に受けるものを書いていくべきでしょうか? それとも自分が思いついたネタをとにかく小説という形にしていくという反復(?)創作をしていくべきでしょうか?

現在、いくつもネタがあるものの、小説という形に落とし込むことに躊躇しています。どうか、皆様の意見をお聞かせ願いたいです。よろしくお願いします。

上記の回答(プロを目指す上で。の返信)

投稿者 伊藤真琴 : 1 投稿日時:

そうですね。三平さん
読者にはおおむね3パターン存在します。
①自分に同調する作品を捕捉的に読みたい
②テンプレに従いながらも意外な切り口から読みたい
③完璧に自分とは違った異界を見つけたい

あと変則的ですが「アンチとしてこの作品を読む」

どのファンを重点的に味方につけたいか、という点に着目するといいかもです。
勿論三平さんが書きたい作品を描くのが一番ですが「楽しさが分かる」作品であれば読者は勝手に食いつきます。

最初は好きなように書いても構わないし、ロジカルハジケリスト目指しても構わない。
表現者は、描いている最中は実は意外と作品自体に無関心だと聞いたことがあります。「えるたんハアハア」みたいな事を言っても、どこかにバネがないと作品は作れないのです。

おそれる事はありません。まずはヘタでも好きなことを適当に書く。作者と読者の感性はどこかで繋がっているのでその人たちのために冷静になって構成者のように見直す。そして最後にくすっとくる小ネタやフレーバー文をつめて雰囲気を整え最終確認。

もう少しわからないことがあったら聞いてくださいね

カテゴリー : やる気・動機・スランプ スレッド: プロを目指す上で。

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元記事:裏切りそうなキャラの特徴とは?

現在、処女作の執筆中です。
「絶対に裏切りそうな少女をなんとかして光堕ちさせる」という題材(そんなに真剣な感じではない)なのですが……
なかなか「裏切りそうなやつの特徴」が掴めずに困っております。

参考になりそうなキャラ、あとは男女間での違いなども教えていただけると有り難いです。

上記の回答(裏切りそうなキャラの特徴とは?の返信)

投稿者 伊藤真琴 : 0 投稿日時:

極論言えば、「普通の幸せを求めている人」です。

カテゴリー : キャラクター スレッド: 裏切りそうなキャラの特徴とは?

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元記事:小説の設定に無理があるのか不安です

小説のストーリーといいますか、ざっくりとした設定を思いつきました。
それが、無理のあるものではないか心配なので、ぜひアドバイス頂きたいです。

主人公の男子高生が、クラスメートの目立たないが優しい美少女に告白する。
しかし実は彼女はお嬢様で、許婚がいると言われてしまう。
諦めようとする主人公だが、彼女に「実は、諦めきれない初恋の人がいる。相手はどこの誰か分からないから、家族には言ったことがなかったけれど、婚約が確定する前にどうしても探しに行きたい。探すのを手伝ってくれないか?」
と頼まれる。主人公はそれを受けて、彼女と初恋相手を探す。

なかなか見つけられないまま、1か月が経ってしまう。
主人公は落胆し、彼女との登校中ぼんやりしていたために自転車とぶつかるが、なんと、自転車に乗っていたのが彼女の初恋相手だった。
しかも、その人は男子のようなだけの女子(イケメン女子)で、彼女の勘違い…

主人公たちがその人に事情を説明すると、「彼女の許婚は、もしかしたら自分が片思いしている他校の生徒かも……」という返答が。

主人公は許婚とその人をくっつけようと奔走し、2人はめでたく交際することに。
そして、主人公と彼女も両思いになりハッピーエンド。

というストーリーなのですが、もしかして無理がある設定なのではないか?と不安です。

アドバイスお待ちしています!
よろしくお願いします。

上記の回答(小説の設定に無理があるのか不安ですの返信)

投稿者 【本人から削除依頼】 : 1

 主な登場人物は4人ですね。4人中、ヒロインの婚約者だけは積極的に動いて物語を動かすのではなく、一種の物語上の障壁(主人公が克服すべきこと・もの)になっているようです。

 A. 主人公(男子高校生、ヒロインに惚れる)
 B.ヒロイン(婚約者あり、別に初恋の人あり)
 C.サブヒロイン(ヒロインの初恋の人、ヒロインの婚約者に片思い)
 D. 婚約者(主人公の勝利条件を有する受動的キャラ、他のキャラの行動の要)

 ストーリーの時系列的な流れは以下のようになっていますね。

01:主人公がヒロインに告白する。
 →ごく普通のイベント。
02:ヒロインは婚約者がいるとして断る。
 →ごく普通の破局。
03:ヒロインが主人公に初恋の人(片思い?)探しを協力依頼、主人公同意する。
 →意外な展開(無理が生じる可能性あり)
04:(初恋の人探し、難航)
 →いったん盛り下げる(第一の山場の準備に必要)。
05:主人公がアクシデントでヒロインの初恋の人発見。
 →意外な展開(無理が生じる可能性あり)
06:しかし初恋の人は女性(サブヒロイン)だった。
 →意外で、ヒロインには最大の障壁(最大の無理が生じそう)
07:サブヒロインからの情報「婚約者は自分の片思い相手」
 →問題解決のヒント(ここも無理が生じる恐れ)
08:(主人公がサブヒロインと婚約者を接近させようと努力する。)
 →いったん盛り下げる(ラストん山場の準備に必要)
09:サブヒロインと婚約者の交際成立=婚約者のヒロインとの別れ
 →最大の障害を突破
10:主人公とヒロインのカップル成立
 →副作用による問題解決(物語構造上の無理が生じる恐れ)

 上記で、単に「無理」と書いたものは、実はそれほど恐れる必要はないと思います。そんな偶然があるのか、と現実ではなりますが、フィクションです。無理を無理と感じさせないようにするのがリアリティの技術であり、作者の腕前です。

 言葉を変えて言うなら、無理がある部分こそ見せ場とできる、ということになります。全てあり得て必然に感じられ、奇跡や幸運(あるいは事故や不運)がないフィクションなんて、つまらないではないですか。工夫のしどころです。
(もちろん、無理を通しさえすればいい、なんてことではない。それでは単にあり得なさだけが目立つ。)

 どうしようもない無理が生じるとすれば、上記の10(主人公とヒロインのハッピーエンド)です。どうみても、直前の09(サブヒロインと婚約者のカップル成立)のほうが山場、見せ場です。なぜなら、その前段の08で主人公が努力するのが09の成就のためなのですから。08~09にはヒロインが重きを成していません。

 つまり、主人公の問題解決のために「婚約者がヒロインと決別してまで、サブヒロインを選ぶ」にスポットが当たってしまいます。婚約者の意思が、物語を左右してしまうわけですね。これが敵役ならラスボスで、倒してしまうべき存在ですが、この話だとハッピーエンドに持っていかなければなりません。

 言い換えれば、主人公が最大の努力を傾注する婚約者であり、婚約者がサブヒロインを選ぶかどうかでハラハラするわけです。ヒロインの決断といったことがそっちのけになります。結果として、印象に残るのは努力をした主人公以外では、重大な意思決定をした婚約者です。そしてサブヒロインに花が持たされる。どのキャラの印象が強くなるかは明らかだと思います。

 そこが構造上の問題点です。上記で無理と表現したのは、主人公とヒロインのカップル成立が印象に残りにくい運びという意味で申し上げてみました。物語進行上の無理とは性質が異なり、書き方次第で解消できるものではなさそうです。

 これを解消する一案としては(ベタですが)、ヒロインが勘違いの初恋を諦めるところを強調しておいて、諦めるために初恋の人の恋愛を成就させようと決意させてはどうかと思います。苦渋の決断であり、初恋が破れても好意は変わらないというヒロイン像ですね。そこを主人公も協力する。

 あるカップルを成立させようと、恋愛感情がないキャラ2名が奔走しているうち、奔走していたキャラが接近して、成り行き的にカップルになるなんて話はよくあったと思います(上記でベタと申し上げた要素の一つ)。

 あくまでも参考の一例ですが、ヒロインに充分にスポットを当てておいてから、主人公とヒロインが一緒に行動させることをメインで描くなら、婚約者とサブヒロインを目立たせすぎることなく、主人公とヒロインのキャラを立てることもできそうに思います。

カテゴリー : 設定(世界観) スレッド: 小説の設定に無理があるのか不安です

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元記事:マンスリーセレブの改稿依頼

以前、『マンスリーセレブ』のプロットを投稿して意見を貰った後、小説を書いたのですが、ちょっとネタ切れを起こしてしまいましたので、皆さんのお力を借りつつ、改稿していきたいと思っております。

個人的には、
・亘宏が屋敷の住人や豪奢な生活に違和感・不信感を持つ場面を入れたい。
・ショーから逃げる途中のアクションをどうにかしたい。
・他にも、何か豪遊するシーンを入れたい。

 他にも、こうした方が良いのではないかという意見がありましたら、よろしくお願いします。
 あくまで、改稿が目的なので、ダメ出し・批評はご遠慮願います。

マンスリーセレブ
https://slib.net/89839

上記の回答(マンスリーセレブの改稿依頼の返信)

投稿者 ドラ猫 : 0

横から失礼します。冒頭で亘宏が騙されてついて行ってしまうことに対する意見になります。
親にも教師にも見捨てられ、周囲から腫れもの扱いされる人生を歩んでいるのですから、見知らぬ美女から差し出された手を取ってしまうのも仕方がないかなと思います。その辺りは十分に納得できました。

カテゴリー : その他 スレッド: マンスリーセレブの改稿依頼

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元記事:大正舞台の恋物語、主観における言葉遣い

現在、五万字想定の大正時代を舞台にした恋物語を描いています。
それなりに執筆は順調で、もうすぐ一万字に届きそうなのですが、ここで新たな悩みが発生しました。

作中は主人公の少年の一人称で、リズムを重視して描いています。設定として都会で問題を起こして田舎に放逐された少年なので、地の文での景色の表現、歳時記の引用及び比喩などの教養が出る部分に違和感はないかなと思っているのですが、そこまで詰めるとやはり気になるのが言葉遣い。

一応、その時代の言葉を調べ(例として深間にはまる→男女の恋愛)、取り入れてはいるのですが、やはりかなり暖めていたネタですので、描くのならきっちりと描きたいというのが本音です。

己の文体を鑑みて、京極堂シリーズほど硬くはなくとも少々の時代を感じさせる程度が適切だろうと感じています。

ですので、どこかそういう言葉遣いをまとめていたり、もう使われないような慣用表現を残しているようなサイトがあれば教えていただきたいです。
どうかよろしくお願いします。

上記の回答(大正舞台の恋物語、主観における言葉遣いの返信)

投稿者 ふ じ た に : 1

青空文庫で著作権の切れた作品が掲載されていますけど、
当時の文体のままで載っていると思われます。
例えば、芥川龍之介先生の芋粥ですと、初出が大正五年と書かれているので、ちょうど想定年代と同じくらいだと思いましたよ。
何か参考になれば幸いです。

カテゴリー : 文章・描写 スレッド: 大正舞台の恋物語、主観における言葉遣い

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