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先入観には2種類あります

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描写の特殊なテクニック(元記事)

小説を読んで地の文の描写や、イメージ描写でちょっと気になるものがあったので質問します。
ちょっと自分でもどう説明すればいいのか分からないのですが、「限られた地の文を用いて、読者がそこから背景や状況をイメージさせる」ものでした。
どういったものかと言うと例をあげるとすると、

①主人公は好きだった同じ会社に勤めている先輩女性に振られる。

②そのせいで主人公は何杯もビールを飲む。向かいの席で他人事のように笑っている同期の親友。

ここの②の部分ですが、主人公が直接居酒屋に行ったという表現は書かれていません。ただ、書いてあった表現、地の文は、
●もう何杯ビールを飲んだかわからない。
●向かいの席で話を聞いた同期が笑っている。
●失恋したことを知った主人公は同期に電話して呼び出した。
●愚痴を吐いている主人公を見て、隣の席で飲んでいるOLが笑っている。

……これくらいですが、自分はこれですぐに主人公は振られたから友達誘って居酒屋でやけ酒しているということが分かりました。
しかし、さっきも言った通り、居酒屋という単語、または居酒屋の類義語は一切使われておりませんでした。なのに、確実に主人公が居酒屋で飲んでいるということは理解出来る。

他の作品でも、学校や教室という表現も使われていないのに、主人公と親友達が学校の教室で会話していることがイメージできる、というものも見ました。

限られた地の文から状況や場所を把握する。
こういうテクニックはどう使えばいいのでしょう?
自分は、主人公がやけ酒している。向かいの席で話を聞いた同期が笑っている……の辺りで、すぐにその場所が居酒屋と分かったので、読者の先入観を利用しているということでしょうか?

先入観には2種類あります

投稿者 あまくさ 投稿日時: : 0

>あと、自分で「読者の先入観を利用している」と言っといてなんですが、読者の先入観とはどこまで信用していいものなんでしょうか?

上で返信返信という形でいくつか考えを述べましたが、少し説明が足りなかったかもしれないのであらためて。

読者がいだく先入観には2種類あります。

1)一般常識からくる、作者と読者の共通の知識。

2)ストーリー展開上のお決まりパターン。

居酒屋を例とするなら。
1については日本のサラリーマンは雑談や交流の場として居酒屋を多用するという背景や、店員につまみを追加注文するなどワンポイントで居酒屋をイメージしやすい要素になります。
また教室の例で言えば、「前の席の~が話しかけてきた」など。「高校生+前後に席が並んでいる場=教室」ということですね。

2について。
テレビ・ドラマのサラリーマンものなどでは、何か事件が起こった後で居酒屋でそれについて話題にしているお決まりシーンをよく見かけます。あまりに多用された結果、受け手側の頭に知らず知らずのうちにインプットされている定番シーンです。

居酒屋と書かなくても分かる理由は、1と2の組み合わせなのだと考えられます。作品を作る上で、1と2がうまく一致すれば分かりやすさという点ではかなり強力でしょう。

ところで面白いのは、1と2には微妙なズレが生じる場合もあるということです。そのズレを利用するというテクニックもあるんですね。
例えば「死亡フラグ」。
「この戦いが終わったら、故郷に帰って~するんだ」とか言うキャラは、たいてい戦死するわけです(笑
現実にはそんな必然性はありませんが、読者(視聴者)は物語パターンの刷り込みから反射的に「あっ、こいつ死亡しそう」と思ってしまいます。それを利用して、読者の心を何となく不安にさせるという心理操作が可能です。これは緊迫感を作る上で有効。

また。
以下はサタンさんとのやりとりですが、好例だと思ったので失礼して便乗させていただきます。

(サタンさん)
>「よくある」という事は「次がどうなるか」がなんとなくわかるので、それを外して意図的な意外性を作ることもできるし、

(林檎県さん)
>上記についてですが、よくある以下のパターンはそれに当てはまりますか?
>①主人公が仲間キャラにいきなり銃を向けられる(就寝中など主人公が油断してた時に)
>②仲間が裏切ったのかと思い、いよいよ撃たれるかと思ったら銃口から飛び出したのはクラッカーの中身だった。つまり仲間のジョーク。

>読者は多分、仲間キャラにいきなり銃を向けられたのでそいつが裏切った、銃の中にあるのはもちろん銃弾、と理解すると思うのです。
>よくある手法なので先の展開は予想されてしまい、意外性は無いですが。

(サタンさん)
>そもそも大前提として「主人公が死ぬわけない」ので、「相手は撃たない」「主人公が対処する」「芝居だった」「空砲」「横槍が入る」という、「主人公が無事」である事をイメージします。
>なので、「仲間のジョークだった」というのはむしろ想定内でしょう。銃を向けられただけで「裏切った」と思うことはないかなと。

上で私が分類した1・2に当てはめると、「銃を向ける=殺意」は1の一般常識、「主人公は死ぬわけないから、おそらくこれは仲間のジョークだろう」は2のストーリー・パターンからの予想になります。この場合は1よりも2の方が優勢だから、意外性として機能しないとサタンさんは仰っているんですね。

なので、逆に仲間キャラが銃を突きつけたのはジョークだろうという予想の方を「読者の先入観」と位置付けて、それをもう一度ひっくり返すのなら有効です。

(サタンさん)
>意外性を書きたいなら、この展開のおかげで「仲間はやっぱり信頼できる」と考えるので、「信頼を得るために一芝居打っただけで、本当にスパイだった」みたいなオチにすると意外性が出てきますね。

要するに先読みしがちな読者心理を、もう一捻りするというワザです。
ここで、

>あと、自分で「読者の先入観を利用している」と言っといてなんですが、読者の先入観とはどこまで信用していいものなんでしょうか?

あらためて、この質問にもどります。

この点に関しては、あざらしさんから素晴らしい指摘があったので、またしても勝手に引用させて頂いちゃいます(他の方の意見の流用ばかりですみません。きわめて重要な指摘だったので)。

(あざらしさん)
>これをかみ砕くと『読者(鑑賞者)が感じ、自ら導き出した答え』です。
>これは直接的な表現と比較して、遙かに強烈に印象に残ります。例えは悪いですが『洗脳の基本』『詐欺師手口の基本』なんかもコレです。

読者に絶対に伝えたいことは、作者から明示するのではなく、読者自身に予想させる方が効果的。
これですよ!
それを実現するための具体的な仕掛けとしては、まさに「読者の先入観を利用する」をベースとし、さりげない伏線やフラグによって誘導、真相を直接的に開示する直前に読者自身に予想させるんです。そうすると読者は、「おや、これはこういうことかな?」と予想した直後に「やった、予想が当たったぜ!」という気分を体験できるわけです。これは読者の自尊心を満足させると共に、自分で気がついたことに対しては強い確信が生まれるという、まさに詐欺師的心理操作術です。
これはおそらく、ストーリー作りの奥義の一つだと思いますよ。

もう一つ。
「読者に自分で気づかせる」に似た手法として、「読者の想いがキャラに通じたように錯覚させる」というテクニックもあります。
例えば優柔不断で、つねに肝心な場面で決断できない主人公がいたとします。読者はフラストレーションを募らせますよね?
そして、物語の大詰め。主人公を、またしても決断をためらいそうな試練に直面させます。読者は「こいつなら、どうせまた決断できないのだろう」と半ば諦めながら、「それでも立ち上がってくれ!」と強く願います。
そこで主人公が立ち上がれば、読者は自分の想いが彼に通じたように錯覚してしまうのです。アニメなら視聴者は「よっしゃあ!」とガッツポーズし、画面には最終決戦モードのBGMが流れ始めるというあの熱い展開です。

読者の予想は裏切れ。しかし期待は裏切るな。

これはエンタメの鉄則と言っていいと思います。

先にそんな大袈裟な話ではないとか言っておきながら、だいぶ大袈裟になってきました。すみません(汗

大袈裟ついでに、叙述トリックについて触れておきます。これも読者の先入観を利用する手法の一つと言えます。
分かりやすいのは性別誤認のミスリード。「ボク」「オレ」などの一人称を使えば、読者は話者は男性だと思いますよね。しかし中にはそういう話し方をする女性だっているわけで。「男だなんて言った覚えはないぜ」ってことです。まあ、ラノベの場合「ボクっ娘」というテンプレもありますから容易に見抜かれるかもしれませんが。
先の居酒屋にしてもトリックとして使用するとしたら「居酒屋だなんて言った覚えはないぜ」ということです。

まとめると。
読者の先入観を信じる信じないではなくて、想定読者がどのような先入観を持っているかを作者が分析する。その先入観には現実でのそれとフィクション特有のそれがあるということが注意点です。

カテゴリー : 文章・描写 スレッド: 描写の特殊なテクニック

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