返信一覧の表示
描写の特殊なテクニック (No: 1)
スレ主 林檎県 投稿日時:
小説を読んで地の文の描写や、イメージ描写でちょっと気になるものがあったので質問します。
ちょっと自分でもどう説明すればいいのか分からないのですが、「限られた地の文を用いて、読者がそこから背景や状況をイメージさせる」ものでした。
どういったものかと言うと例をあげるとすると、
①主人公は好きだった同じ会社に勤めている先輩女性に振られる。
↓
②そのせいで主人公は何杯もビールを飲む。向かいの席で他人事のように笑っている同期の親友。
ここの②の部分ですが、主人公が直接居酒屋に行ったという表現は書かれていません。ただ、書いてあった表現、地の文は、
●もう何杯ビールを飲んだかわからない。
●向かいの席で話を聞いた同期が笑っている。
●失恋したことを知った主人公は同期に電話して呼び出した。
●愚痴を吐いている主人公を見て、隣の席で飲んでいるOLが笑っている。
……これくらいですが、自分はこれですぐに主人公は振られたから友達誘って居酒屋でやけ酒しているということが分かりました。
しかし、さっきも言った通り、居酒屋という単語、または居酒屋の類義語は一切使われておりませんでした。なのに、確実に主人公が居酒屋で飲んでいるということは理解出来る。
他の作品でも、学校や教室という表現も使われていないのに、主人公と親友達が学校の教室で会話していることがイメージできる、というものも見ました。
限られた地の文から状況や場所を把握する。
こういうテクニックはどう使えばいいのでしょう?
自分は、主人公がやけ酒している。向かいの席で話を聞いた同期が笑っている……の辺りで、すぐにその場所が居酒屋と分かったので、読者の先入観を利用しているということでしょうか?
カテゴリー: 文章・描写
この質問に返信する!描写の特殊なテクニックの返信 (No: 2)
投稿日時:
すいません、脱字がありました
>ちょっと自分でもどう説明すればいいのか分からないのですが、「限られた地の文を用いて、読者がそこから背景や状況をイメージさせる」ものでした。
↓
ちょっと自分でもどう説明すればいいのか分からないのですが、その気になった部分は「限られた地の文を用いて、読者がそこから背景や状況をイメージさせる」というテクニックを用いた描写でした。
描写の特殊なテクニックの返信 (No: 3)
投稿日時:
簡単に説明するとかえって難しくなるような気がする。
別の例えをしてみましょうか。
・Aはお金がないと言っていた。
・Aはギャンブルがとても好きだ。
・Aは友人であるBの部屋の合鍵を持っていた。
・Bの部屋に大金がある事を、Aは知っていた。
・Aは学生の頃に補導歴がある。
・ある日、Bが自宅で殺された。部屋にあったハズの大金がなくなっていた。
・よくBとつるんでたAにとってはBの部屋にAの指紋があるのは当然で、凶器にも指紋があった。
さて。犯人は誰でしょう?
林檎県さんは「Aが犯人だろう」と思いましたね。まあ被害者B以外はAしか登場人物がいないからというのもありますが、何人いても本質は変わらんので、それは置いといて。
明確にAがBを殺したと証明できない場合でも、このように「明らかにAだろう」と思われる状況では裁判で有罪になる事もあります。
これらを状況証拠または間接証拠と言います。
ポイントは、「Aは金がないと言っていた」など、一つの状況証拠だけでは立証できないという事で、「凶器に指紋がついていた」というのもBの部屋によく行く以上は別にAの指紋があっても不自然じゃないので、犯人とは限らない。
けど、そうした状況証拠が何個も積み重なると、直接証拠が無くとも状況的に犯人だと判決を下すことが出来るようになります。
本質的にはこの話と同じ事なんだけど、ピンと来ただろうか。
要するに「フラれた」「べろんべろんに酔ってる」「同期が相席してる」という状況証拠から「同期とやけ酒してる」という結論にたどり着いてるわけです。
この手の表現が上手い人は、単純に文章表現や説明が上手い人です。
例えば先のAとBの話で続けると、
・Cという友人はBと仲が良くない。
といった関係ない要素を追加したりすると瞬時に「Aが犯人だ」とはわかりにくくなる。
あるいは、「ギャンブルがとても好きだ」という情報を最後に出していたら「Aに金がないのはギャンブルでスッたからだ」というイメージもしにくいですよね。
言いたい事柄に対して余計な情報をはさまず、情報を小出しする順番も適切で、まるで詰み将棋のように読者の思考を誘導している。
そうイメージせざるをえない展開で書いてたりする。
なので、単純に上手い。
もちろん私が例に出したように、簡単な事柄なら誰にでも出来るので、余計なことをしなければ案外簡単です。
余計なことというのは、初心者や中級者にありがちだけど、「これじゃ都合が良すぎるから関係ないCの要素を追加しよう」みたいな事ですね。
間をつなぐために関係ない話題を振ってみよう、とか。
伏線のために~とか。
こういうことすると余計な情報が入ってしまうので、やらないほうが良い事のほうが多いです。
また、今回の「フラれてやけ酒」だけでなく「他の作品でも」というのは、おそらくですが、割と「ベタ」な展開、割とよく見る展開ではなかったでしょうか。
少なくとも「フラれたから友人に愚痴りながらやけ酒」というのは、ままあるパターンですよね。
そういうのは思考誘導しやすいので、よくある展開では使いやすく、このくらいなら誰にでも出来る範囲かなと思います。
「よくあるパターン」というのは、意図的に避けようとする人がけっこういますが、イメージしやすいというメリットがデカいのでむしろ積極的に使ったほうが良いと個人的には思います。
「よくある」という事は「次がどうなるか」がなんとなくわかるので、それを外して意図的な意外性を作ることもできるし、「よくある」というのは「説明されなくても知ってる」事なので、仰る通り「先入観」を利用してもいます。
まとめると、
・適切な情報整理と情報開示による思考誘導。
・「よくあるパターン」を使ったイメージのしやすさ。
・それによる先入観の利用。
といった感じです。
上手い人は「よくあるパターン」を使わなくても情報整理だけで理解できる内容に仕上げてきたりするからほんとに凄い。
そういうところまで行くと一種の才能でしょう。
書いてない事を言外に語るってのは個人的に好きな描写なので私もかなり研究しましたが、正直真似するのはしんどいですね。
居酒屋に行ったのなら「居酒屋に行った」と書いてしまったほうが楽だし、表現の問題なので、結果的にあんま変わらんしね。
でも、「状況証拠」の例を少し物語テイストに考えてみればわかると思うけど、情報整理による思考誘導はミスリードを作るときに役立つので、今回の文章作成の事に限らず、頭のどっかにそういうテクニックがあると考えておけば物語作成で役立つこともあると思う。
逆に「わかりにくいシーン」なんかも情報を伝える順番または伝え方に目をやるとあっさり解決したりすることもあるので。
描写の特殊なテクニックの返信の返信 (No: 8)
投稿日時:
ありがとうございます
この技法に対して漠然としたイメージしかなかったのですが、まるで詰み将棋のように読者の思考を誘導している。という表現でようやく自分なりに理解することができました。
もう一つ質問すいません。
>「よくある」という事は「次がどうなるか」がなんとなくわかるので、それを外して意図的な意外性を作ることもできるし、
上記についてですが、よくある以下のパターンはそれに当てはまりますか?
①主人公が仲間キャラにいきなり銃を向けられる(就寝中など主人公が油断してた時に)
②仲間が裏切ったのかと思い、いよいよ撃たれるかと思ったら銃口から飛び出したのはクラッカーの中身だった。つまり仲間のジョーク。
読者は多分、仲間キャラにいきなり銃を向けられたのでそいつが裏切った、銃の中にあるのはもちろん銃弾、と理解すると思うのです。
よくある手法なので先の展開は予想されてしまい、意外性は無いですが。
描写の特殊なテクニックの返信の返信の返信 (No: 13)
投稿日時:
>よくある以下のパターンはそれに当てはまりますか?
「よくあるパターン」ってのは展開を指して言っています。
例えば「曲がり角で同じ学生服の異性とぶつかる」こういうシーン単体の事じゃなく、「ぶつかった異性が転校生としてやってきた」という展開のこと。
前レスの例で言うと「フラれた」というシーンから「やけ酒してる」という展開が「よくある」という話です。
この「よくある」というのも極力わかりやすい例えとして表現しているだけで、正確には「ありがちな」というか「想定しやすい」というか、「イメージしやすい」といったら身も蓋もないけど、結局は「流れで連想しやすい展開」です。
テンプレをはじめ王道など誰でも知ってるような「よくあるパターン」は、知ってる以上その連想がしやすいよね、というだけの話。
なので、「仲間に銃を向けられる」という場面が連想しやすい前準備が必要でしょうね。
例えば、
「主人公が甘い理想論を言う」「理想論を看過できない仲間に銃を向けられる」「こういう裏切りもあるぞと諭して引き金を引き、ただのクラッカーだと笑って驚かしたことを詫びる」
という展開ならよくあるんじゃないでしょうか。
「理想論が嫌いな仲間」と「それを目指してる主人公」という図があれば、主人公が甘い理想論を口にすれば二人が衝突することは容易に想像できるでしょ。もちろん「衝突する図」が見えやすければ理由は何でも良いわけだけど。
意外性を書きたいなら、この展開のおかげで「仲間はやっぱり信頼できる」と考えるので、「信頼を得るために一芝居打っただけで、本当にスパイだった」みたいなオチにすると意外性が出てきますね。
>読者は多分、仲間キャラにいきなり銃を向けられたのでそいつが裏切った、銃の中にあるのはもちろん銃弾、と理解すると思うのです。
そもそも大前提として「主人公が死ぬわけない」ので、「相手は撃たない」「主人公が対処する」「芝居だった」「空砲」「横槍が入る」という、「主人公が無事」である事をイメージします。
なので、「仲間のジョークだった」というのはむしろ想定内でしょう。銃を向けられただけで「裏切った」と思うことはないかなと。
少年誌をはじめアクションは好まれるけど、この「主人公が死ぬわけない」という大前提は物語的にも覆すことが難しいので、主人公が活きるか死ぬかという場面をスリリングに書くのは本当に難しいです。
「どうせ無事なんだろ?」という感覚がどうしても読者の中にあるので、これを打ち消すための工夫を凝らさないと「仲間の裏切り」などの場面をうまく書くことは難しいです。
それをした上で「マジで裏切るのか」と思わせられれば、「実はクラッカーでした」とジョークで〆るのは意外性になるでしょう。
でも前述した通りすんごく難しいと思う。
描写の特殊なテクニックの返信 (No: 4)
投稿日時:
それは短編ではよく使われるテクニックです。長編でも使われますが、テンポの良さが狙いなので短編ほど効果的ではない場合もあるかもしれません。
>読者の先入観を利用しているということでしょうか?
まあ、そういうことです。退社後に同僚と酒を飲んでいれば、自宅で飲み会をしている可能性も無くはありませんが、居酒屋だろうと普通は思いますよね?
他にポイントとしては。
そういうシーンは居酒屋であることは重要でない場合が多いということもあります。主人公が振られたというエピソードを受けて話を先に進めようとしているパートなんですね。しかし、地の文で説明すると退屈になるので、シーンを作って描写しているだけ。そこが居酒屋であることは何となく伝わればいいのです。
理屈で説明するなら、そんなようなことです。
しかし、もっと重要なのは林檎県さんがそういう手法があると気づかれたことです。「これで伝わるものなんだ!」という軽い驚きを、読者として体験されたわけですよね。これから意識してプロの作品を読んでみると、けっこうよく使われている手法だと分かると思います。
この手のテクニックは、どういう呼吸で挿入すればよいのか感覚的につかんでしまうことが大事です。コツが呑み込めてしまえば、意外とできるようになるものですよ。
描写の特殊なテクニックの返信の返信 (No: 9)
投稿日時:
ありがとうございます
この手法については何となくこういうものがあるのだろう程度でしか把握してなかったので良かったです。
あと、自分で「読者の先入観を利用している」と言っといてなんですが、読者の先入観とはどこまで信用していいものなんでしょうか?
描写の特殊なテクニックの返信の返信の返信 (No: 14)
投稿日時:
>読者の先入観とはどこまで信用していいものなんでしょうか?
そんな大袈裟な話ではありません。
これはストーリーをソツなく先に進めるためのちょっとした小技。それ以上でも、それ以下でもありません。
林檎県さんが読まれた居酒屋の例では、そこが居酒屋であること、主人公がやけ酒を呑んでいることは大して重要ではなかったんじゃないですか? 重要なのは主人公の愚痴の内容か、あるいは同期からもたらされた何らかの情報とかアドバイスなど。そういったものを引き出すのがそのシーンの目的で、そこからストーリーはさらに先に展開していく。そんな構成になっていなかったでしょうか?
そういう目的のシーンなら、何も居酒屋を強調する必要はないわけです。退社後に同期と呑んでいるというだけでだいたい想像はつきますし、想像できない読者もいるかもしれないと不安なら「居酒屋」と書いてしまっても別にかまわないのですが、どうせなら追加注文の豚肉のキムチ炒めか何かを持ってきた店員が会話を小耳にはさんで口を出すとか。そんなことをサラッと入れて居酒屋らしい雰囲気を演出する方がスマートじゃないですか。
それだけのことです。
ただし小技ではあってもこういうのをマスターしておくと、描写のセンスは磨かれて、いろいろと応用はききます。
サタンさんが仰っている叙述トリックに利用するというのも、その一つです。
追記 (No: 15)
投稿日時:
ちなみに描写のセンスを書きましたが、描写というのは華麗な文章力や比喩を駆使することではありませんよ。ポイントを押さえた最小限の記述で居酒屋と書かなくても居酒屋だと分かり、空気感まで読者に感じさせることが出来れば最高の描写です。
誤字 (No: 16)
投稿日時:
描写のセンスを書きましたが → 描写のセンスと書きましたが
描写の特殊なテクニックの返信 (No: 5)
投稿日時:
あー・・・・歌詞には多いよ?
米津玄師のやつとか。
【喝采をあびる妄想を考えながら貧増(ひんそう)なメシを食らっている】
【今日も明日も十時に最寄り駅】
【馬券見つめて天使が泣く】
【今日から栄(は)えある一文無し】
楽ばっかしてギャンブルに依存し、チート妄想に逃げ込んで、それでも僕は元気です。
みたいな?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
あとは「9マイルは遠すぎる」とかね
アレンジ翻訳になるけれど
「7.8キロは遠すぎる。まして雨の中となると、もう最悪」
という言葉から、そう言った人物が
①
恐らく歩いている(自転車やバイク、車に乗ればそう遠くない)
②
行きたくて行っている可能性が低い(あきらか嫌々)
③
おそらく独りで向かっている(雨の移動だし、いたらそいつに愚痴っていると思う)
④
明確な目的地がある(細かい距離から、スマホのナビとかで距離を確認していそう)
⑤
目的地に行くのに電車やバスなどの公共機関を使っていなさそう
(待ち時間とか移動時間に一切ふれていない)
⑥
貧乏人(タクシー使っていない)
⑦
行きたくないけれど、行かねばならない事情があった(そうじゃなかったら、そんな日に移動しない)
・・・くらいは現代でも読み取れる感じ。(原作小説は時代と国が違うから、また事情が変わる)
===========================
後は・・・・サブリミナル?
洗脳のほうでなく、映像の合間に別のイメージを挿入することで印象操作するというやつ
男が酒を浴びるように飲む
↓
・苦笑いをして慰めの言葉をかける同僚
男が酒を浴びるように飲む
↓
・めんどくさそうな顔しつつも話を聞いてくれる妻(スッピン)
男が酒を浴びるように飲む
↓
・チヤホヤするキャバ嬢
男が酒を浴びるように飲む
↓
・男を称賛する同僚達
男が酒を浴びるように飲む
↓
・小さなテーブルにはコンビニで買った某よっちゃ●イカが一袋
男が酒を浴びるように飲む
↓
ブランコが男の体重にギシギシ鳴る。街灯が明るい。
男が酒を浴びるように飲む
↓
買い物客が嫌そうにこちらをチラ見して、足早に逃げていく
・・・・というかんじ。印象違うべ?
描写の特殊なテクニックの返信の返信 (No: 10)
投稿日時:
ありがとうございます
確かに歌詞はいくつかの文章から色々と把握できたりするので、音楽を聴く時にもっと意識してみます
描写の特殊なテクニックの返信 (No: 6)
投稿日時:
言葉で描写するとイメージ(映像、音声等)がどうなるかという心理学実験があります。例えば、人の顔を覚えるとして、ある人Aの写真を見た後、(一定時間を置いて)似たような人の写真多数とある人Aの写真を混ぜて見せて、Aがどれか当てるという実験。
1.無念無想で写真を見て覚える。
2.写真を見て特徴を言語化して覚える。
という2グループで行うと、1のグループの成績が2より明らかに良いのです。2は写真を見ながら「男、髪は短い縮れ毛、眉毛は太く、あご髭があって、目は(略)」と考えながら覚えます。普通に行いそうな記憶法ですよね。
だけど、例えば「あご髭」のある「男」が複数いると、どれか判別できなくなりがちなんです。理由は未解明のもの含めていろいろあるんでしょうけど、「あご髭」という名詞で記号化、抽象化したため、具体的なイメージがどうだったかが記憶に残らないようです。しかも、抽象化した記号イメージが複数あって全体を構成してしまっている(記憶→想起で混乱を起こしがち)。
これと同じことが、小説などの文章描写でも起こるようです。キャラだと仕方ない面があります。ヒロインは設定を言語化して、黒髪、長髪、切れ長でぱっちりした目等々とするしかありません。それでも、一気に全部描写するとわけが分からなくなります。覚えられないし、言葉からイメージ再構成するのも手間取ります。前に聞いたコツでは、「人物の外見特徴は1つか2つ出せばいい。くどくど描写するな」というのがありました。たぶん、上記の心理学実験のようなことが、経験的に分かったんじゃないかと思います。
居酒屋ですと、だいたいの人は一般的な特徴を知ってますよね(知識であり、先入観でもある)。前を通り過ぎるだけなら、「居酒屋の前を通り過ぎた」とでも書いておくしかありません。居酒屋と言わないようにするとしたら、「○○酒処の暖簾」としておくくらいでしょうか。ただ、あまり意味はありません。むしろ、居酒屋は居酒屋でも作品内で何らかの特別な意味があるのか、みたいな誤解を招きかねません。
しかし、シーンの場所が居酒屋だと違ってきます。シーンの雰囲気を作るためにも、中の様子を描写することになります。通しをつまんでいると店員がビールを持ってくる、鶏の唐揚げを追加注文する、ビールを飲む、連れと話をする、周囲にいろんな客がいる、等々ですね。居酒屋では当たり前の風景です。
そうなると、「ここは居酒屋だ」みたいなことを言う必要があるかどうか迷います。居酒屋っぽい描写をしたら、居酒屋だと思う読者が大半のはずです(主人公がどういう人となりでストーリーはどう進んでて等々の文脈的なことも影響するけど割愛)。
じゃあ、居酒屋と言わなきゃいいんです。言わないでも分かることを、わざわざ書くとくどくなります。それだけではありません。上記の心理学実験で申したように、「居酒屋」と明示的に書くと、イメージがぼやけるのです。「居酒屋」にイメージが集約されてしまい、どういうシーンでどんな雰囲気だったかを読んでも覚えなくなる恐れがあるわけです。
そういう描写の作り方としては、全部書いてから削るというのも1つの手です。例に挙げられたものに少し足してみます。
1. 主人公は同期に電話して、居酒屋に誘う。
2. 歓楽街にいくつもある居酒屋のうち、地味そうな店を選ぶ(実は愚痴りたいので客の少なそうと思った)。
3. 店に入ると、店員が「らっしゃい! 2名様ですね、こちらへどうぞ」と言う。
4. 席につき、お品書き眺めながら、とりあえずビールとつまみをいくつか注文する。
5. 同期と飲みながら他愛のない話をする
6. 次第に酔いが回って、雑談が愚痴に変わって来る。
7. もう何杯ビールを飲んだかわからない。
8. 向かいの席で話を聞いた同期が笑っている。
9. 同期に、失恋したこと、それが誘った理由でもあると同期に打ち明ける。
10. 愚痴を吐いている主人公を見て、隣の席で飲んでいるOLが笑っている。
こういう段取りを描いてある事例は少なくないと思います(自戒でもある)。大事なのは9の「酔った勢いで失恋の悩みを打ち明けたかった」ですよね。
飲むのは自宅でもいいでしょうし、バーでもいい。居酒屋をシーンに選んだのは、特に理由はない(はず)。飲んでいる状況も示してリアリティを出したかったに過ぎない。居酒屋に行く段取りだって、9に対してはどうでもいい。
じゃあ、どうでもいいものはできるだけ削りましょう、となってきます。1~5がなくても6以降は分かるから、削っていい。10で居酒屋らしいと分かるし、絶対に居酒屋をイメージしてもらわなければシーンが成立しないわけでもない。だから、居酒屋と明示する必要はない。名詞を出したゆえにイメージがぼやけるリスクを増す必要もない。できるだけ、読者に覚えて欲しいことに絞りたい。といった感じです。
長くなりました。簡潔にまとめますと、
・どうでもいいものは一般名詞で済ませておく(イメージをあいまいにして印象を残さない≒読者の負担を低減)。
・大事なシーンでは逆一般名詞を避け、特徴を少なく出しておく(一読して覚えられる程度に印象付けし、後は読者の引き出しで)。
ということになると思います。
描写の特殊なテクニックの返信の返信 (No: 11)
投稿日時:
ありがとうございます
描写の方、参考にしてみます
人気回答!描写の特殊なテクニックの返信 (No: 7)
投稿日時:
まずは、おめでとうございます。
着目された事柄を突き詰めて身につけられると、おそらくラノベ系、特に新人さんでは希有な著者さんになられる可能性があると感じます。
私のような読書好きからすれば大歓迎。
のっけから賞賛しましたが、前置きとして如何体かを。
直接的ではありませんが、仰っていること、これは小説に限らず『あらゆる物語の文法』のひとつと申して差し支えないと思います。
形式論理や認知的には『概念メタファー』ちょっと離れますが絵画等で使用される『アレゴリー』も延長線として扱っても良いように感じます。
認知としての話から入ります。
書き込みされています例のシーンですが、もっと情報が少なくとも(面白みは置いといて)成立はしますよね。
1)対面に友人がいてビールを飲んでいる
2)隣の席で飲んでいるOLが笑っている
この2点だけの情報で『さて、どのような場所でしょう?』とクイズにされても答えられますよね。
導き出すヒントは1)対面に友人、これだけでは家かもしれませんし、なんなら終業後の社内でもありえます。
ところが2)に人物名では無くOLという一般名詞があり、ここから”誰かはわからないのだろう”同時に”その状況で不自然では無いのだろう”という推論ができます。
まぁ状況としては移動中の新幹線車内だってありえますが、一般的に多くの人が抱く概念としては居酒屋ですね。
これをかみ砕くと『読者(鑑賞者)が感じ、自ら導き出した答え』です。
これは直接的な表現と比較して、遙かに強烈に印象に残ります。例えは悪いですが『洗脳の基本』『詐欺師手口の基本』なんかもコレです。
ここらは実際、林檎県さんが”気になった”と書いてらっしゃいますね。こうなったのは小説を執筆されている立場だけでもなく、そうなるように著者が読者をコントロールした技でしょう。
冒頭で『あらゆる物語の文法』と書きましたので、使い方については映像作品を例にさせて頂きます。
誤解を恐れずに明言してしまうと、テレビと映画の違いです。
一応書きますが、以下はメディアとしての優劣ではなく、性質だとお考え下さい。
【前置きが長くなります。●マークをつけときますので不要なら飛ばして下さい】
●
テレビ番組、特に民放の場合は視聴率という宿命が課せられていますよね。
映画の場合は興行収入がこれに当たります。
一見似ていますが、映画は入場料をもらった時点で収益が決定されます。
あくまで極論すれば、ですが『観客にブーイングくらおうと、絶賛を得ようと、入場者が多ければそれで商売になる』という事実です。(極論は、口コミや批評というモロモロをすっ飛ばしている点)
いやらしい話、俳優の人気・広告費なんかで興行収益を予め計算して作り、中身がスカスカでもビジネスとして成り立つ……と、まあ某日本映画の悪口みたいな話。
解りやすい例は、洋画に演技力を無視して芸の無い芸能人を吹き替え声優として起用するケース。映画ファンの間で炎上騒ぎになった【プロメテウス(2012年米英)】なんかが有名ですね。
一方で観客は金を払ってから観るわけですから、映像作品として大冒険もできるという可能性があります。
人によっては退屈と感じられてしまうようなペースで淡々と物語をすすめ、中盤から徐々に盛り上がっていくような物語は映画の方がやりやすい。
好例としては【ディアハンター(1978年米)】でしょうか。冒頭よりありふれた日常生活から結婚式までのシーンがかなり長く30分近くあります。もちろん見終わると重要なシーンで、だからこそ物語が引き立つのですが、小説でこれをやると、かなり高度な筆致が要求、というかプロであっても凡百の著者ではハッキリと無理でしょう。
テレビは簡単ですね。
民放の場合、お金を払うのはスポンサーであって視聴者じゃありません。
全てとは申しませんが『おもしろさで勝負!』『無名俳優でも上手ければ使う』といったドラマ作品は、ゴールデン枠からはずれ、22時以降~深夜帯が指定席になってます。(深夜帯なら面白い、なんて戯れ言は死んでもいいませんが)
極論すれば、テレビ局にとって重要なのはCM。テレビ局の立場にすればCMの間にドラマの放送をやってます。
言い方を変えれば『テレビ離れが進んでる時代、とにかくスポンサーにそっぽ向かれない』が最優先事項かつ至上命題で、視聴者はそのための存在です。
結果として(今が旬の顔を出す&枯れ木も山の賑わい)(チャンネルを変えられない工夫)(家事をしてようが携帯ゲームをやってようが成立する番組作り)(誰でもわかる内容)こういったところに落ち着きがちです。
口悪く言えばバカですら観てくれないと困るのが民放。(テレビ局に恨みはないんですけど。もちろん時間帯による視聴者の集中度合いってのもありますよ)
もっと言えば、ぶっちゃけ『少なくとも稼ぎどころの時間帯では、真剣に観ないとついていけない』という番組作りはやりにくい。
不特定多数、誰がどのような状況で観ようとクエスチョンマークの出ないわかりやすさ。これがテレビドラマの王道になってます。
●
さて、長々と書きましたがメリット・デメリットがあって故です。
メリットは冒頭でも書きましたが、読者本人が状況から導き出した答えですので、それだけ印象が強くなりますし、ものによってはインパクトさえ与えてくれます。
デメリットの筆頭は、やはり使い方次第で物語を楽しむハードルにも転じます。
実例を交えるために一本映画から。
【黒澤明監督:椿三十郎】レンタルで簡単に視聴できますのでどうぞ。工夫の塊、物語展開のお手本みたいな映画です。
件の映画ですが、冒頭のシーン。主人公の椿三十郎がある村に足を踏み入れます。
ここで人気の見当たらない寂しげな村の奥から一匹の野良犬が歩いてきて、その口には刀で斬首されたとおぼしき人間の手が咥えられています。
時間にして、ほんの数秒ですがこれだけで『その村が置かれている状況の一片』が観衆に理解できる素晴らしいシーンです。
わざわざ書くほどではありませんが、
1)犬が咥えている手の持ち主がいるだろうことから、少なくとも無人では無い
2)斬った相手の存在を推定できることから、最低でも複数。
3)おそらく治安は良くないであろう
こういった事です。
ここまで来ると、観衆の興味は『村にいる人』に注がれますよね。
窓の隙間から主人公をのぞき見る視線、これだけで更に状況説明ができてしまいます。
テンポが素晴らしくよく物語が運んでいく、という訳ですね。
はい、小説でも使えるテクニックです。
同時にこれはテレビには不向きな方法。
『真剣にスクリーン(画面)を見つめている』という大前提でこそ成立します。
一瞬手元の携帯を見たり、そこまでいかずとも”おかずに伸ばした箸の先”に視線を落としただけで見落とすような時間ですし、そうなると物語に置いてけぼりを食らいますよね。
もうひとつのデメリット。
この程度の読解力に頭の良さは不要、並で十二分ですが、やっぱり世の中は広いので、言葉が悪いですが、その、オツムに血の巡りが悪い方にはサッパリになります。
ある意味『読者(観衆)の一部に物語を100%楽しみきれない人が発生する可能性』があります。うん、テレビ的には向きません。
ぶっちゃけ小説も同じです。
結構、小説ってのも二極化してます。
A)『誰でも楽しめるように徹底的にハードルを排除する』
B)『解る人に(より)楽しんで欲しい』
どっちが悪いってことじゃありませんので、これは著者さんのスタンスでしょう。
小説によってB)のハードルは様々です。
極端な代表例はハードSFですね。興味がないひとは無論、下敷きとなる知識がないと読むのが苦痛という話になりかねません。ここらはひとえに分母の大きさ。イーガンの小説が各国語に翻訳されるのはハードSFの熱狂的ファンが存在するから、というような話です。
同時に、物語が面白ければ、B)を楽しめる人はA)も楽しめます。趣味の問題だけ。
A)を楽しめる人にB)も楽しめるようにするのが本題。
ここは『理解できない人にも楽しめる書き方、』そのハードルのさじ加減。
A)をターゲットにしても同じです。
さじ加減を間違って、読者の読解力を徹底的に疑うと極めて読みにくい小説になります。
さすがにここまでになるとプロではなく素人さんの小説になりますが、極端な著者さんになると、個人的にも”もうちょい読者を信用したれよ”という感想を書いたりすることもあります。
なんだかんだいっても、使いどころと見せ方はやっぱりセンスがものをいいます。
抽象的感覚的なこと故、ざーっと流しても長くなっちゃいましたがお許しを。
ではでは執筆がんばってください。
応援いたします。
描写の特殊なテクニックの返信の返信 (No: 12)
投稿日時:
応援ありがとうございます
とりあえず知ることはできたので、今度は技法を身につけられるように頑張ります!
描写の特殊なテクニックの返信 (No: 17)
投稿日時:
あったことを説明するのではなく、その場面で起こっていることを描写する。それだけのことです。
その場所が美術館であることを説明するよりも、飾られている絵や、それに見入っている客の様子を描写したほうが読者のイメージを喚起しやすいということです。
説明抜きでは分からない方は別として。
ライトノベル作法研究所管理人うっぴー /運営スタッフ:小説家・瀬川コウ:大手出版社編集者Y - エンタメノベルラボ - DMM オンラインサロン
プロ作家、編集者にアドバイスしてもらえる!勉強会で腕を高めあえる!小説で飯を食べていきたい人のための創作コミュニティ。学生には交通費1000円を支給。
先入観には2種類あります (No: 18)
投稿日時:
>あと、自分で「読者の先入観を利用している」と言っといてなんですが、読者の先入観とはどこまで信用していいものなんでしょうか?
上で返信返信という形でいくつか考えを述べましたが、少し説明が足りなかったかもしれないのであらためて。
読者がいだく先入観には2種類あります。
1)一般常識からくる、作者と読者の共通の知識。
2)ストーリー展開上のお決まりパターン。
居酒屋を例とするなら。
1については日本のサラリーマンは雑談や交流の場として居酒屋を多用するという背景や、店員につまみを追加注文するなどワンポイントで居酒屋をイメージしやすい要素になります。
また教室の例で言えば、「前の席の~が話しかけてきた」など。「高校生+前後に席が並んでいる場=教室」ということですね。
2について。
テレビ・ドラマのサラリーマンものなどでは、何か事件が起こった後で居酒屋でそれについて話題にしているお決まりシーンをよく見かけます。あまりに多用された結果、受け手側の頭に知らず知らずのうちにインプットされている定番シーンです。
居酒屋と書かなくても分かる理由は、1と2の組み合わせなのだと考えられます。作品を作る上で、1と2がうまく一致すれば分かりやすさという点ではかなり強力でしょう。
ところで面白いのは、1と2には微妙なズレが生じる場合もあるということです。そのズレを利用するというテクニックもあるんですね。
例えば「死亡フラグ」。
「この戦いが終わったら、故郷に帰って~するんだ」とか言うキャラは、たいてい戦死するわけです(笑
現実にはそんな必然性はありませんが、読者(視聴者)は物語パターンの刷り込みから反射的に「あっ、こいつ死亡しそう」と思ってしまいます。それを利用して、読者の心を何となく不安にさせるという心理操作が可能です。これは緊迫感を作る上で有効。
また。
以下はサタンさんとのやりとりですが、好例だと思ったので失礼して便乗させていただきます。
(サタンさん)
>「よくある」という事は「次がどうなるか」がなんとなくわかるので、それを外して意図的な意外性を作ることもできるし、
(林檎県さん)
>上記についてですが、よくある以下のパターンはそれに当てはまりますか?
>①主人公が仲間キャラにいきなり銃を向けられる(就寝中など主人公が油断してた時に)
>②仲間が裏切ったのかと思い、いよいよ撃たれるかと思ったら銃口から飛び出したのはクラッカーの中身だった。つまり仲間のジョーク。
>読者は多分、仲間キャラにいきなり銃を向けられたのでそいつが裏切った、銃の中にあるのはもちろん銃弾、と理解すると思うのです。
>よくある手法なので先の展開は予想されてしまい、意外性は無いですが。
(サタンさん)
>そもそも大前提として「主人公が死ぬわけない」ので、「相手は撃たない」「主人公が対処する」「芝居だった」「空砲」「横槍が入る」という、「主人公が無事」である事をイメージします。
>なので、「仲間のジョークだった」というのはむしろ想定内でしょう。銃を向けられただけで「裏切った」と思うことはないかなと。
上で私が分類した1・2に当てはめると、「銃を向ける=殺意」は1の一般常識、「主人公は死ぬわけないから、おそらくこれは仲間のジョークだろう」は2のストーリー・パターンからの予想になります。この場合は1よりも2の方が優勢だから、意外性として機能しないとサタンさんは仰っているんですね。
なので、逆に仲間キャラが銃を突きつけたのはジョークだろうという予想の方を「読者の先入観」と位置付けて、それをもう一度ひっくり返すのなら有効です。
(サタンさん)
>意外性を書きたいなら、この展開のおかげで「仲間はやっぱり信頼できる」と考えるので、「信頼を得るために一芝居打っただけで、本当にスパイだった」みたいなオチにすると意外性が出てきますね。
要するに先読みしがちな読者心理を、もう一捻りするというワザです。
ここで、
>あと、自分で「読者の先入観を利用している」と言っといてなんですが、読者の先入観とはどこまで信用していいものなんでしょうか?
あらためて、この質問にもどります。
この点に関しては、あざらしさんから素晴らしい指摘があったので、またしても勝手に引用させて頂いちゃいます(他の方の意見の流用ばかりですみません。きわめて重要な指摘だったので)。
(あざらしさん)
>これをかみ砕くと『読者(鑑賞者)が感じ、自ら導き出した答え』です。
>これは直接的な表現と比較して、遙かに強烈に印象に残ります。例えは悪いですが『洗脳の基本』『詐欺師手口の基本』なんかもコレです。
読者に絶対に伝えたいことは、作者から明示するのではなく、読者自身に予想させる方が効果的。
これですよ!
それを実現するための具体的な仕掛けとしては、まさに「読者の先入観を利用する」をベースとし、さりげない伏線やフラグによって誘導、真相を直接的に開示する直前に読者自身に予想させるんです。そうすると読者は、「おや、これはこういうことかな?」と予想した直後に「やった、予想が当たったぜ!」という気分を体験できるわけです。これは読者の自尊心を満足させると共に、自分で気がついたことに対しては強い確信が生まれるという、まさに詐欺師的心理操作術です。
これはおそらく、ストーリー作りの奥義の一つだと思いますよ。
もう一つ。
「読者に自分で気づかせる」に似た手法として、「読者の想いがキャラに通じたように錯覚させる」というテクニックもあります。
例えば優柔不断で、つねに肝心な場面で決断できない主人公がいたとします。読者はフラストレーションを募らせますよね?
そして、物語の大詰め。主人公を、またしても決断をためらいそうな試練に直面させます。読者は「こいつなら、どうせまた決断できないのだろう」と半ば諦めながら、「それでも立ち上がってくれ!」と強く願います。
そこで主人公が立ち上がれば、読者は自分の想いが彼に通じたように錯覚してしまうのです。アニメなら視聴者は「よっしゃあ!」とガッツポーズし、画面には最終決戦モードのBGMが流れ始めるというあの熱い展開です。
読者の予想は裏切れ。しかし期待は裏切るな。
これはエンタメの鉄則と言っていいと思います。
先にそんな大袈裟な話ではないとか言っておきながら、だいぶ大袈裟になってきました。すみません(汗
大袈裟ついでに、叙述トリックについて触れておきます。これも読者の先入観を利用する手法の一つと言えます。
分かりやすいのは性別誤認のミスリード。「ボク」「オレ」などの一人称を使えば、読者は話者は男性だと思いますよね。しかし中にはそういう話し方をする女性だっているわけで。「男だなんて言った覚えはないぜ」ってことです。まあ、ラノベの場合「ボクっ娘」というテンプレもありますから容易に見抜かれるかもしれませんが。
先の居酒屋にしてもトリックとして使用するとしたら「居酒屋だなんて言った覚えはないぜ」ということです。
まとめると。
読者の先入観を信じる信じないではなくて、想定読者がどのような先入観を持っているかを作者が分析する。その先入観には現実でのそれとフィクション特有のそれがあるということが注意点です。
追記 (No: 21)
投稿日時:
追記が多くて申し訳ありません。
先の書き込みでそんなに大袈裟な話ではないと書いたのは、最初に示された居酒屋の例が話のつなぎ程度のシーンと思えたので、そういうものならコツさえ呑み込めばそんなに難しくはありませんよと。そういう意味でした。
しかし、林檎県さんの質問の意図は、小説の描写についての理解を深めたいという方向に向いているようにも思えたので、他の方のご意見も参考にしながら考察してみました。
描写の特殊なテクニックの返信 (No: 19)
投稿日時:
>しかし、さっきも言った通り、居酒屋という単語、または居酒屋の類義語は一切使われておりませんでした。なのに、確実に主人公が居酒屋で飲んでいるということは理解出来る。(これはなぜか?)
『居酒屋』という知識を書き手と読み手の間で共有しているからです。
『私たちはいわゆる典型的(ステレオタイプ的)な状況の連続を記憶の中に保持しており、それに関係する語に遭遇したとき、常に背景にその「保持された枠組み」を喚起する。(~中略~)。語はその語の言語的「意味」だけではなく、その語にまつわる実に様々な社会的常識や知識(百科事典的知識という)をも喚起する。』
※引用:認知言語学の基礎/河上誓作編著/p39
上記を踏まえて、今回の場合は、読み手は『居酒屋』に関する社会的常識や知識を有しており、書き手がその社会的常識や知識を「それが居酒屋で行われたことである」と特定するのに十分な量提示したため、読み手は直接的に記述されていなくても『ここは居酒屋である』と類推できたのです。
注意すべきは、書き手の記そうとしている情報について読み手がその知識を有していない場合、当然類推することはできないため、意味の分からない文として映ってしまうことです。例えば、居酒屋のことを知らない小学生1年生などには、その文章を正しく理解することはできないと推測されます。
描写の特殊なテクニックの返信 (No: 20)
投稿日時:
まずは、あまくささんに御礼を。
説明不足にフォーローしてくださり感謝しております。
本題。
すみません、映画を一本紹介してましたがタイトル間違ってました。
汗顔の至り。
シーンの紹介に引用した映画ですが、正しくは【黒澤明監督:用心棒】です。
間違っていた【黒澤明監督:椿三十郎】は、続編に相当します。
こちらも見事な映画ですので興味がありましたらどうぞ。
ネタばれちゃあネタばれなんですが、映画史に残る有名なシーンもあります。
”逆抜き不意打ち斬り”という『これを殺陣に使うか!』という抜刀術。
あえてネタばれシーンですが、昔の映画に食わず嫌いを持たれている方がいらっしゃいましたら是非どうぞ。
一見の価値があります。https://www.youtube.com/watch?v=cbENunuojXA