2015/10/04(日曜日)水すましさんの質問
ジジさん、初めまして。
私は読書の対象は基本的には一般文芸で、疲れたときにライトノベルを読んでいます。
これまではライトノベルをそれなりに楽しめていたのですが、最近、「良い意味での安易さ」を良い意味で受け取れなくなってきました。
特に顕著なのが、善悪の区別の仕方と恋愛の部分です。
主人公に都合の良い人・褒めてくれる人=善人
主人公と対立する人・批判的な人=悪人
という単純な善悪二元論のことが多く、いまいちのれません。
水戸黄門のようなカタルシスを狙ってのことかもしれませんが、「悪人」とされている人たちのやることが、そこまで悪いことではなかったり(主人公たちにとって都合が悪いだけ)、主人公たちのやっていることもけっこうひどかったりするために、制裁を加えられている場面を読んでも「自己中心的でモンスターな連中に眼を付けられたかわいそうな人たちが理不尽な仕打ちを受けている」ようにしか見えないことがけっこうあります。
また、恋愛にしても、主人公がやたらと周囲の男子の羨望の眼差しを意識していたり、自分は浮気性のくせにヒロインが他の男子と和やかにしているだけで嫉妬したり。ヒロインを対等な人間としてではなく、愛玩用のペットか、自分のステータスを上げるアクセサリーとしてしか見ていないように思えて、願望の充足よりも不快感の方が先に来るようになってきてしまいました。
長々と書いてしまいましたが、結局は、私がライトノベルのコンセプトである「難しいことは考えずに楽しめる」や「読者の願望の充足」にのれなくなってしまったのが原因なのだと思っています。
実はここ何年か、MW文庫賞狙いで送っている電撃小説大賞でコンスタントに三次、四次選考に残れるようになってきたのですが、最終選考にどうしても残れないのは、この辺りの感性のズレが原因かな、と分析しています。
ジジさんは、倫理観や恋愛に関して、主人公(つまりは読者)に対して厳しい作品は受け入れられるとお思いでしょうか。
また、最終選考の一歩手前で落選する作品の傾向等あれば、教えていただけると幸いです。
●下読みジジさんの回答
娯楽というものには役割がありますので、「対象ユーザーがもっとも望む形にする」しかない部分がどうしてもあるわけです。
逆に言えば、結果を出さなければならない立場だからこそ、そのやりかたを選ばざるをえないという感じですね。
ただ、娯楽というものは「ユーザーが選択」して楽しむものですので、楽しめないとなれば離れてしまえばよいでしょう。
また、最終選考の一歩手前で落選する作品の傾向等あれば、教えていただけると幸いです。
読んでいない状態ではなんとも言い難いのですが、そこまで残れているなら、問題はズレだけではない可能性が高いですね。
まず、大人向けラノベを含む一般向けエンタメというジャンルの審査基準についてざっくりまとめますと、
1.設定にオリジナリティがある
2.キャラが立っている
3.物語としての完成度が出版レベルにある
4.文章レベルが一定水準以上
この4点が問題になります。ラノベは3と4についてあまり気にしないものですが、このふたつの要素が加わることで受賞がかなり難しくなっています。
3次4次まで残るということは、おそらく1と2については一定の水準にあると言えるでしょう。そうなると、考えられる落選理由は以下のふたつ。
1.設定やキャラはそれなりに書けているが、売りになるほどの強さはない
2.設定やキャラに大きな問題はないが、物語としての完成度が水準に届いていない
あとは評価シートなどの情報と合わせて考えていただければ。